閑話 シィーリアの帰り道
〜シィーリア〜
皆が帰った後、会議室を施錠し、他の部屋の戸締りも確認する。
……全く。査問委員会はなんと無茶な要求を言って来るのじゃ。全員S級? ふざけた事を。ジーク達を客寄せパンダにする魂胆が見え見えじゃぞ。戦闘力の低い者まで強引にSにしようとしおって。
まぁ、あの時鯱女王が質問してくれて良かったの。妾がデメリットを説明するタイミングにもなったし。
じゃが、461達のランクはおおよそ妾の予想通りになった。あのランク上昇ならば、彼らの今後の活動にも支障は無いじゃろう。鯱女王の時と事情が違うのじゃ。鯱女王は奔放すぎる故、Sで縛っておかぬとこの日本からも飛び出しかねなかったからの。
「まぁ、妥協点としてエキスパートの称号は授けた。ヤツら査問委員会が表向きは探索者を称える為と言った以上、この処置に文句は言えぬじゃろう」
……。
戸締りを終え、階段を降りるとジークとミナセが廊下で待っていた。
「なんじゃ? 2人とも帰っていなかったのか?」
「一緒に帰ろうかな〜って思って。ほら、ここって休みだと人が少ないでしょ? シィーリア1人だと心配じゃん?」
「なんじゃそれは? 子供扱いしおって」
「いいじゃ〜ん! ほら、帰ろ?」
ミナセが妾の右手を取って歩き出す。離せと言おうとしたが、笑顔の彼女を見ていたら言う気が無くなってしまった。
ふと、左手に感触がして見上げると、ジークも妾の手を握っていた。
「なんじゃジーク?」
「いや、まぁ……たまにはいいかなと」
顔を赤くしながら顔を背けるジーク。両手を引かれて歩く妾。なんじゃこれは……これではどう見ても妾が子供じゃぞ。
「今日もシィーリアの家に泊まってくね?」
「な、なんじゃと……!? ちょっとは妾にゆっくりさせんか!」
「俺達がそうしたいんだ」
ため息が出る。ホントにこの子らは……。
そこまで考えてやめた。2人が嬉しそうな顔をしていたから。ジークも昨日の様子から立ち直っているようじゃしの……。
「好きにするが良い」
「やった!」
「ミナセ、ユイに連絡しておいてくれ」
「オッケー!」
2人の顔を見る。その顔を見ていると、気苦労も吹き飛んだような気がした。
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あとがき。
次回はランクアップを受けての掲示板回です。そしてその次からは海ほたる海底ダンジョン編をお送り致します。