第187話 461さんパーティ、都庁を登る。
〜天王洲アイル〜
旧都庁、南棟。
「グアグ!!」
リザードマンが部屋の角から襲いかかる。その攻撃を剣でいなしたヨロイさんがアスカルオの切先を叩き付けた。壁と刃に挟まれ悲鳴をあげるリザードマン。ヨロイさんは、そのまま力任せに敵を真っ二つにした。
「ジーク!! 前方のリザードマンを頼む!」
「了解した!!」
ヨロイさんの言葉でジークが地面を蹴る。閃光を発動したジークが、リザードマンへと一気に距離を詰めた。
「グア!?」
ジークは、リザードマンが突き出した槍を躱し、1体の足を払った。リザードマンがバランスを崩し倒れた所にバルムンクを突き刺す。リザードマンは、しばらくもがいた後、レベルポイントの光を溢れさせた。
「グアアッ!!」
「カズ君!」
ジークの背後を取ろうとリザードマンが飛びかかる。ミナセさんがそれを金色のロッドで防ぎ、流れるように回転してロッドを薙ぎ払った。
「ガッ!?」
ドサリと倒れるリザードマン。ミナセさんがもう一度ロッドを叩き込むと、リザードマンはその体からレベルポイントの光を溢れさせながら動かなくなった。
「ふぅ。魔力温存するには物理攻撃が1番だねぇ」
「俺だけでも問題無かったぞ」
「いやぁ、こっちはみんな倒しちゃったし」
ミナセさんが恥ずかしそうに頭を掻く。その背後にはミナセさんが倒したであろうリザードマンが3体。障壁魔法を習得してからミナセさんは格段に強くなった。まさか防御の為の障壁がここまで彼女の戦闘力を上げるなんて……すごいわね。
「っと、みんなに気を取られてちゃダメよね!」
杖を構える。視線の先では勝者マンとナーゴがリザードマン達と戦っていた。勝者マンは3体を一気に相手していて、ナーゴにまで気が回らないみたい。
「ナーゴ! 勝者マン! 一旦離れて!」
「分かったにゃアイルちゃん!」
「っ!?」
ナーゴ達が後ろに飛び退いたタイミングで氷結晶魔法を発動。ナーゴ達が戦っていた5体のリザードマンが一気に凍り付いた。
「ありがとにゃ!」
「勝者ファイッ!!」
勝者マンが3体のリザードマンを爆槍魔法の槍でまとめて串刺しにする。爆発するかと思って身構えたけど槍は爆発せず、凍ったリザードマンだけが粉々になった。
あ、あの魔法……普通の武器としても使えるのね……。
「にゃにゃにゃ!!」
ナーゴが凍ったリザードマンをクローで引っ掻く。リザードマンがバリンと粉々になったのを確認して最後の1体へ。
「にゃっ!!!」
ナーゴがクローで渾身の一撃を加えると、最後のリザードマンも砕け散った。
「フロア確認するまで気を抜くなよ」
ヨロイさん達とフロア内を見て周り、敵がいない事を確認する。全ての敵が倒れているのを見て、25階も制圧できたのだと分かった。
「ずっとリザードマンばっかりじゃない?」
「……なんかありそうだな」
ヨロイさんが考え込むような仕草をする。得体のしれない気持ち悪さを感じながら、私達は上の階へと登った。
◇◇◇
〜461さん〜
リザードマンだらけの南棟を登り、俺達は展望台のある45階へと辿り着いた。円形の広いフロア。そこには見知った奴が中央に立っていた。
深緑色の体に剣を携えた竜人の男。ラムルザが。その周囲には3体の竜人戦士と2体の竜人魔導士が控えていた。
「来たか」
ラムルザが両手で剣を構える。左腕はヤツ自ら切断したはずだが……再生魔法を使えるヤツがいる? 再生魔法なんて今まで戦ったボスでも数えるほどしか出会ったことが無いぞ。竜人の司祭ってヤツが使うのか? だがそれにしては左眼は再生していない……なぜだ。
「待ち構えていたにしては随分と数が少ないんじゃねぇか?」
ラムルザが片目を窓の外へ向ける。その顔は、どことなく憂いを帯びたもののように思えた。
「本丸は北棟だ。貴様らはハズレを引いたという訳だ」
ハズレ? じゃあ司祭ってヤツは向こう側にいるのか。自分を守る為に竜人を配備しているのか。向こうには鯱女王がいるから大丈夫だとは思うが、面倒くさいことしやがるな。
「だけどなんでお前がハズレ側にいるんだよ」
「分断された貴様達を確実に殺す為だ。私は運がいい……もう一度貴様と戦うことができるのだからな!!」
ラムルザが剣を構えると、奥の竜人が叫んだ。
「ラムルザは鎧の男を倒せ! 他の者はヤツの一騎打ちを邪魔させるな!」
他の竜人達がアイル達へと襲いかかる。剣士の攻撃をジークがいなし、反撃に波動斬を放つのが視界の隅に映る。
「アイル!」
「仲間の事を気にする余裕があるとはな!!」
ラムルザが剣を叩き付ける。それをサイドステップで避け、ヤツの左側。失った眼の死角に飛び込んだ。
「やはりそこを狙うかっ!!!」
アスカルオで斬撃を放つ直前、ヤツの剣が俺の首目がけて放たれた。
「っぶねぇ!?」
咄嗟に大地を蹴る。距離を取るとラムルザは、真っ直ぐに剣を向けた。
「もはや私に奇襲は通じんぞ」
……なるほどな。左眼を放置したのは俺がそこを狙うと分かっていたからか。
「今回は女魔導士も手出しできん。正真正銘の一騎打ち……俺を倒してみせろ」
ちっ、分かってはいたが竜人の数が多いとこうなっちまうか……。
ラムルザから目を離せない状態ではアイル達がどんな状態なのかも分からない。だが、俺の仲間は竜人如きにやられる器じゃねぇ。
「アイル! みんなのこと頼んだぜ!」
「任せてヨロイさん!! みんなは私の指示に従って!」
背後から聞こえるアイルの声。本当に頼もしくなったぜアイルのヤツ。アイルに任せておけば、後は大丈夫だ。俺は自分の戦闘に集中しろ。
「物理攻撃上昇・二連!!」
剣を構えた瞬間、ミナセが強化魔法を発動し、俺の体が青く輝いた。
「これでアイツにキッツイ一撃喰らわせてあげてね!」
「ありがとなミナセ!」
以前やり合った時はヤツの身体能力の方が高かったからな。ラムルザにも感じて貰うか。生死の狭間ってヤツを。
……。
ヤバイな。鯱女王じゃねえが……。
笑みが溢れる。生と死の狭間で体感する攻略の実感。それが俺の全身を熱く燃え上がらせる。
「いいぜラムルザ。その一騎打ち……乗ってやるよ」
「その気になったか。この屈辱……今度こそ晴らさせて貰う!!」
「今度はお前を攻略させて貰うぜ!!」
俺達は、同時に踏み込んだ──。
次回、ラムルザvs461さんの再戦です。果たして勝負の行方は……?
次回は10/23(水)12:10投稿です。よろしくお願いします。
お知らせ
土曜日に「閑話 利己の支配者」を読まれた方にお知らせです。その前話にあたる「186話 突破する砦」が投稿できていなかったので改めて投稿し直しました。もしよろしければお読みください。