治療
微笑む姿は神が作り上げた彫刻のようで、息を飲む美しさだった。
「はい、よろしくお願い致します」
「うん、じゃあパパッとその欠損部位治しちゃおうか、あぁ、無理に動かなくていいよ、僕が移動させるから」
「まて……いえ、待ってください」
棺から出た魔女様は、軽い口調で治療をしようと言ってきた。流石に驚いて口調が乱れてしまう。
軍の治療術士でも治せない怪我を、こんなにも軽く……。
「どうしたの?」
魔女様は事の重大さを知らないのだろう。純粋な瞳でこちら見下げ、首を傾げている。
「いや、その、そんな簡単にできるものなのでしょうか」
「うん、できるよ。……あぁ、そっか、知らない人の治療を受けるのは不安だね」
見当違いではあるが、こちらを気遣う様子に安心する。機嫌を損ねない限りは優しく接して貰えるのだろうか。
「僕の手に触れられる?その足じゃ満足に動かせないでしょ」
そう言って、魔女様はゆっくりと手を差し伸べた。
その手に自分のをを重ねた。
「ちょっとだけ浮くから、気をつけて。絶対に落とさないから大丈夫だけどね」
夜空色の魔力が体を包み、足が体の重みから解放された。手は握られたままで、魔女様を歩くスピードに合わせて自分も進んで行く。
いつの間にか階段が目の前に現れ、それを登ると大きなドアがあった。そのドアに魔女様が触れるとひとりでに開いた。
中は白く清潔そうで、薬品の匂いがした。
中央のベッドの上へ移動されられると、魔力が離れてポスンと柔らかな布へ落とされる。
「着いたよ。ベッドにゆっくり横になって。無理はしなくていいよ」
「はい。……………これで、いいでしょうか」
無理も何も、上半身を倒すだけで良かった。寝転がり、魔女様を見上げると真剣な顔付きで腕の断面を見ていた。
「切り口に触るよ。痛いけどちょっと我慢してね」
「」
「そっか。………ごめんね、左手についてるこのブレスレット外していいかな?ちょっと魔力が阻害されちゃいそうなんだけど」
「それは…」
このブレスレットはここに来る直前に副団長からもらったもので、ただつけておけと渡されたものだから、そんな効果があるとは知らなかった
「もちろん治療が終わったらすぐ返すよ」
「外してもらって構わない」
「よかった、………中々の代物だね。ほら、ラシスビット、ここに置いておくね。今からちょっと作業に集中するから、何かあったらすぐ、僕の髪でも顔でも引っ張って。声に出してもあんまり気づかないかもしれないから」
「分かった、よろしく頼む」
「もちろん。これから麻酔魔法をかけるね。この治療かなり痛みが酷いから。すぐ眠くなってきて、体の感覚が無くなっていくよ」
光を纏った手が軽く頭に触れる
「ゆっくり深呼吸して。……そう、上手。気分はどう?しんどくない?」
ゆらゆらと視界が揺れる、意識はあるのに、体が液体になって溶けてしまったようではっきりしない
「ぁ、あ だい、じょうぶ、だ」
「そのまま寝てていいよ。今から始めるね」
優しい声にゆっくりと瞼を閉じた
side魔女
完全に寝てしまったのを確認して、作業に移る
随分乱暴に持っていかれたようでかなり酷い。負担をかけないようにゆっくり腕の時間を巻き戻してゆく、
どの捧げ人も恐怖に震えていたり、最期まで警戒をとかなかった者もいたらしい。彼はどうだろうか。心の中では怖いと思われているのだろうか。こんな存在しない 僕の次の器を……まぁ今考えても仕方が無いか。
あのブレスレットだって限られた者の魔力でしか作ることのできない貴重なものだ。まだあれを作れる者が残っていただなんて信じられないほどで、どれほど大切に想われ、慕われているのかが容易に推測できる
だからこそ、やるべき事が終わったらすぐにこの屋敷から解放しよう、というかすぐにでも迎えが来るだろけどね