第13話 楽しいお仕事だぜ!
今日は長い帰路でヘトヘトだ。
工房に帰ってきたら、明日、仕事を再開する為に下準備をしておこうと考えていたが、今日は一日ゆっくり休んで、明日の仕事に備えよう。
休業の誓いを立てた矢先、それを打ち砕く騒音がサイか像の足音みたいに迫り、工房の扉を勢いよく開けた。
「職人さん!」
「な、なんだ!? 今日の工房は休みだぞ」
息を切らした若い農夫が、瞳を輝かせて私の聖域へ踏み込む。
「産まれたんだよ! オラの子供!」
「そーかい。それは、おめでとう」
「嬉しくてつい、職人さんにも聞いてほしくてね。アンタに心を磨いてもらったおかげで、夫婦仲も戻った。本当にありがとう」
「お役に立てて良かったよ。何か祝いの品を考えておくよ」
「いや、いいんだ、何もいらない。気持ちだけでいい。オラ、これから子供に目一杯、愛してると言うよ。嬉しい時も、悲しい時も、辛いことがあっても、子供には愛してると言い続ける」
「…………そーかい」
幸せに満ち足りた若い農夫を見て、自分の考えが揺らぐ。
もし私が神なら、こう付け足そうか。
清潔な心では汚い世界を生きていけない。
しかし、穢れた心では愛を育むことはできない。
「職人さん。次はいつ工房を開けるんだい?」
「いや、気が変わった。この後、すぐ仕事を始めるよ」
 




