44 王都到達への必須事項
《 闇は全てのものに安らぎを、主の思うがままに操る力デス 》
確かに、ハッピーのアドバイスは抽象的で理解しづらい。
これはナコの質問の仕方がどうこうというよりは、本当にこの言葉通りに扱う力なのではと受け取ることもできる。
ナコは魔装デバイス以外、スキルを全く覚えない。
魔法少女は個人個人に属性を持っており、それを自由自在に操るという、その一点に特化したジョブなのではないだろうか。
だとすると、ハッピーの説明にも納得がいく。
難しく考えることで枷をかけず、ナコにはいつも通り戦ってもらうのが一番だろう。
オンリーワンのスタイルこそが魔法少女の強みに違いない。
「ナコ、好きなように動いて大丈夫だよ」
ナコの頭がショートする前に、僕は簡潔に伝える。
「まずは力加減さえどうにかなれば問題ないから――そうそう、明日からは冒険所でクエストを受註していこうと思うんだ。クエストっていうのは色々な場所からの困りごとを冒険所が依頼として請け負っていてね」
次いで、僕はある『必須事項』について説明する。
「僕たちの今の冒険所ランクは『F』、クエストをこなして『B』まで上げたいんだ。何故かというと、王都に渡るための最低条件がこのラインでね。Bランク以上の冒険者に発行される『乗龍パスポート』を手に入れなきゃならない」
「乗龍パスポート、ですか?」
「王都は大陸図的に始まりの三国の真ん中にあるって話は覚えてるかな。国同士を行き来できる乗り物――『大陸龍』っていうのを王都が管理していてね。定期的に三国を巡ったあと、王都に戻るっていう順路を繰り返しているんだよ」
「電車みたいなものでしょうか?」
「そういった認識で問題ないかな。ただ、僕たちがもといた世界のようにお金を払って気軽に乗ることはできないんだよ。乗るためには資格が必要でね、それがさっきの話に繋がる――Bランクに上がることなんだ」
「私たち、今はFランクですよね」
ひぃふぅみぃ、ナコが指を折々としながら、
「E、D、C。クーラ、結構離れてますよっ?!」
「大丈夫、今の僕たちには帰る場所もあるからね――地道に進めていこう」
そう締め括り、僕たちは明日に備えてホームへと帰還する。
「クーラはメインキャラクターの時、ランクはいくつだったんですか?」
「僕? 僕のメインのランクは――」




