表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら倉庫キャラ♀でした。  作者: ともQ
魔法少女遭遇編
2/434

02 水の都アクアニアス

 目を覚ますと、見知らぬ場所――いや、ある意味でよく見知った場所にいた。

 自分自身になにが起きたのかを確認するため街中を練り歩く。先ほどまでいたであろう風景からは全てが一転していた。


 ……一体、どうなっているんだ?


 僕は街の真ん中、噴水広場の水面に映った自分を見て――言葉を失った。

 状況を整理しよう。僕はついさっきまで念願のオフ会に行こうとして新幹線に乗ろうとしていた。


 だが、今はどうだ? 

 生い茂った木々の中に立つ街並み、下を見渡せば雲海が広がっている。新幹線の『し』の字もないかけ離れた風景――その全てに見覚えがあった。

 これは大樹を基盤にして建造された国、迷わずこの噴水広場まで来たのも記憶にあるからというのが正しい。


「ここ、オンリー・テイルの世界じゃないか」


 僕は死んだはずじゃ?

 確かに、隕石が街中に降り注いで――その衝撃が僕を巻き込んだはずだ。まだ記憶に新しいものの、一瞬のことだったので恐怖すら残っていない。

 気が付けば――ここにいた、という感じだ。


「おほおー、お嬢さん可愛いね。よかったらお茶でも飲まなーい?」


 噴水の側に座っていた僕を見て、街の人が声をかけてくる。

 そういえば、ゲームの時からここってパーティー待ちの人が集まったり、コミュニティの勧誘が多かったりとそういった場所だったっけ。リアルでは僕の世界でいうナンパスポットみたいになるのか。いやまあ、リアルと言っていいのかまだ不明だけれど。

 とりあえず、僕は男の声に頷き返しながら、


「僕も自分を見て思ったんです、どう考えてもおかしいですよねこれ。可愛すぎるんですよ本当に、マジでどうなってんの?」

「えっ? そ、そうだね? か、可愛いと思うよ」

「質問なんですがここってオンリー・テイルの世界、始まりの三国の一つ水の都『アクアニアス』であっていますよね?」

「いや当たり前でしょ。君、大丈夫? なんかごめんね」


 ナンパして来た相手が僕の返答に戸惑い、颯爽とその場を去っていく。

 頭のおかしい人と思われたに違いない。日本人が「ここは日本ですか?」と聞いているようなものだ。見知らぬ人に急に言われたら軽いホラーである。


 今の人同様、僕も迷わず距離を置いて逃げるであろう。しかし、わかった点も一つだけあった。

 僕の今の一言を変だ、おかしいと感じたのならば、あの人はここの世界の純粋な住人に違いない。


 ……NPC、ということになるのか?


 最早、定義がわからない。その点についてはひとまず置いといて、僕が男にナンパされたという事実について考えよう。


 僕は改めて噴水の水面に映った自身を見つめ直す。

 長く腰辺りまで伸びた金色の髪、赤いルビーのような瞳、誰が贔屓目に見ても抜群に可愛らしい容姿をしている。

 日本にいた頃の僕とは似ても似つかない姿形――というか、性別自体が違うので当たり前である。


 これさぁ、妹のアカウントで作った倉庫キャラじゃん。 


 リアルにするとこんな感じなのか、ぶっちゃけ超絶可愛い。それもそのはず、自分で言うのもなんだが、かなり時間をかけて作成したキャラクターだ。

 倉庫だからといって手を抜くことはしない。例えゲーム画面といえども、動かすキャラクターは可愛いのが正義というのが僕の持論である。

 好みど直球で作成した自分をほめてあげたい、最高の出来ですよ。


「……ただ、それを動かすのが僕自身というのはどうなんだろう」


 僕は深呼吸をしながら、自身の胸を何度か揉みしだき冷静さを取り戻していく。

 ボーっとしていても仕方ない、まずは現状を把握するべく色々な確認から始めてみよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ