王宮にやってきました
「き、来ちゃいましたね………………」
翌日。私たちは王宮へとやって来ていた。
本来【書庫】へ行く際は、王宮を通らず外部から直接入るのが一般的なのだが、私のような貴族子女は王宮の内部を通って行く………………いわばVIP待遇、というわけだ。
ちなみにマリアの姿はない。彼女はこの国においての戸籍がないため、身元確認を徹底している王宮には入れないからである。
「あの……………ファウナ様、こんな昼間に………しかも正面切って入っていっていいんですか?」
ミアがおずおずと尋ねる。
「いいのよミア。なんだかんだ言って、正面………というか入り口の結界やトラップが一番厳重なの。だから無理やり突破するより、正規の手順で中に入った方が効率もいいし、リスクも少なくて済むのよ」
「へぇ…………なるほど、そうだったんですね………………あれ?ですがファウナ様、その結界やトラップの情報、どこで手に入れたんです?」
「あぁそれね、シュヴァ―ベル伯爵家にあったのよ」
「えぇ!?」
我が伯爵家はエレノアが生きていた百年前から続く学者の家系だ。
そのため、この【書庫】の建設にも深い関わりがあり、建設当時の結界・トラップの全てが書き記された地図が、シュヴァ―ベル家には隠されている。
この地図はこの世に二つしかなく、一つは王宮、国王が毎日祈る神の像の下、そしてもう一つはシュヴァ―ベル伯爵家、当主の書斎の隠し小箱の中にある。
そのどちらにも高度な結界と『聖女』(もちろん私)による【神の加護】が施されており、存在を知らない人なら認識さえできないようになっている。
「そ、そんな…………何故そのような物がシュヴァ―ベル家に?」
「【書庫】が建設された当時……………ここのトラップや結界の配置を決めたのが、オーヴィット・サージュ・シュヴァ―ベル…………百年前のシュヴァ―ベル家当主だったからよ」
「っ!?……………確かに先祖オーヴィット様は、現在ですら並び立つ人がいないほどの優れた学者で、この国に古くから残る魔法システムのほとんどに携わられていますが…………………」
「そ。だから【書庫】に関わっていてもおかしくないでしょ?」
「そう、かもしれませんが………………」
ミアは未だ納得できそうにないらしい。ぽそりと「最近お話が超次元すぎてついていけない……………」とつぶやいたのが聞こえて、少し罪悪感を抱いてしまう。
と、足元の石畳が、レンガから大理石へと変わった。
「さて、と…………………着いたわよ」