その理由とは
「いいですか?ミア。『聖女』という者は、絶大な権力を持ちます」
「は、はい………ですが、それは誰しも知っていることでは?」
「そうですねぇ。でも、だからこそ、ですよ」
マリアがそう言えば、ミアはますます分からないという様な顔で首を傾げる。
「あのね、ミア。歴代の『聖女』『聖騎士』がそうであるように、『聖女』になれる人は完全にランダムなの。現に、初代『聖女』のエレノアだって元は平民だったわ」
「つまり、これから先はニセモノがぞろぞろ出てくるってことです」
「!!」
政治と宗教が密接に関わるこの国で、宗教側のトップである『聖女』や『聖騎士』は国のトップにも等しい。
権力、影響力、財力…………力を求める人なら誰もが憧れるのが『聖女』だ。
…………まぁ、自分の欲しか頭にない人が『聖女』とか『聖騎士』になっちゃって、国が滅茶苦茶になったら困るから、エレノアは実力と心根を見極める選定機………もとい、【標の水晶】を遺してあげたんだけど。
「つまり、【書庫】の記録で本当に正確な『光の神子』を知りたい、と…………?」
「ええ。名乗りあげるのを待っていれば、必ずニセモノが出てくる。それに、正確な記録はごくごくわずかの人間しか知らない…………だからニセモノを暴くのにも時間がかかる。…………やる価値は、あると思うわ」
「そう、ですか…………」
ミアは複雑な顔をしていたけれど、それ以上は何も言ってこなかった。
彼女は自分の出自もあってか、恩を受けた相手には何倍にもして恩返しをする、という所がある。
特に私に対しては有り余るくらいの恩を感じているようで、「一生をかけて恩返しをさせてください」と言ってきて………………話し相手くらいの役割で良かったのに、今となっては身の回りのことは全てミアがやってくれるようになっていた。
私としても、『神の愛し子』のことやエレノアのことを知っている人が側仕えで気が楽だったけれど、そこまでに至るミアの努力は計り知れない。
それに、ミアは人の感情に敏感だから、きっと私の考えも、よく分かっているんだろう。
それでも、たとえ私が考えを変えないと分かっていても、私の身を案じてくれた。
なんて、優しい子なんだろう…………………本当に。
「大丈夫ですよぉミア。ファウナは、自分のできないことはやろうとしませんから………………モグモグ」
「マリア様……………」
「そうよ、ミア。大丈夫」
私は不敵にほほえみ、ぴっと人差し指を立て、おまけにウィンク。
「私には、最強の作戦があるもの!」
「わー。さすがファウナ。たのもしいですねぇ」
あぁっ!?マリアそれ私のマドレーヌ!!
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