改めまして本題に
「それで………………ファウナはどうやってその『光の神子』を選ぶつもりなんです?」
「そうね………はぁっ…………『光の神子』自体は結構いるから………ぜぇっ………あとは魔力の量次第、ふぅ、かしら」
ケンカも落ち着き、再び優雅に紅茶を飲み始めた強欲女神の質問に、私は息を切らしながら答える。
ちなみに、私は『神の愛し子』とはいえ普通に人間の体なので疲れるし病気にもなるし怪我もする。
しかし女神であるマリアの体は仮のもの。いわばただの人形に過ぎないので疲れないし病気もしないしおまけに物理攻撃、魔法攻撃ともに一切通用しない。
そんな奴に追いかけ回されて、結局マドレーヌを2つも渡すことになってしまった。
…………………………チッ。
「ファウナ様、お茶をどうぞ」
「あり、がとうミア。いただくわ」
乾いた喉に紅茶がしみる。しかもいい感じに砂糖も入ってて美味しい………………
はーっ、と深呼吸すれば、紅茶の香りに癒やされる。
本当に、ミアは気の利くいい子だ。
「ファウナ様、先ほど『魔力の量次第』と仰っていましたが、魔力の量を調べるのは難しいのではありませんか?」
「そうね。『光の神子』であることは公にしていても魔力量までは解らないし」
【光】の魔力自体がそもそもは珍しいものだ。まぁ、とある理由でこの国には多いけど…………………
でも、それもわずかなもので、大体の人は弱い光魔法が扱える、というくらいだろう。
「では、どうやって調べるおつもりなのですか?」
「…………………国の【書庫】に保存されている記録を見るわ」
「っ!?」
私の言葉を聞いて、ミアが驚愕の表情を浮かべる。
「正っ………気、ですかファウナ様。【書庫】…………しかも『光の神子』の記録なんて最重要機密ですよ!?」
「そうよ。だから見に行くの」
珍しく語気を強めたミアに、私は淡々と答える。
なぜなら――――――――――――――
「国の情報なら、間違いがないから、ですかぁ?」
「ご名答。やるじゃない、マリア」
「これでも女神ですからね〜、敬う気になりましたぁ?」
「全然?」
「ひどい!」
「どう、いうことでしょうか。ファウナ様、マリア様」
まだ理解しきれていない様子のミア……………だけど、それもうなずける。
あの【書庫】に、不法侵入すると言っているようなものなのだから。
国立図書館―――――通称【書庫】。
王宮の一部に位置する国内最大級の図書館で、この国の本はもちろん、遥か彼方の異国の本まで取りそろえているという。
そして【書庫】の地下には国の歴史的資料や、国の重要な記録も保存されている。
記録と言っても様々だけど、私のお目当ては『光の神子』のリストだ。
名前、家、身分、そして計測した魔力量など様々な情報が記されており、警備は厳重。
幾重もの結界と即死級のトラップが施されており、そのひとつでも破られれば警報が発動するという厄介なおまけ付きだ。
国の軍事機密、政治の記録e.t.c.…………もちろん狙う人も多いが、あのトラップの中で生き残れた人は…………………………………まだ誰もいない。
かつては毎日のように盗人の死体が積み上がっていたと噂の【書庫】に侵入ると言うのだから、ミアの驚きも相当なものだろう。
でも、それをしなくてはならない理由があるのだ。