北棟の入り口、『神』の能力
『ほれ、この先が北棟………………結界と警備の管理をしているところじゃ』
古書さんの案内で移動してきた私たちは、本棚の陰からこっそりと北棟をのぞいていた。
北棟の建物へと続く道には屈強なガードマン。入れるのは職員だけらしい。まぁ、当然といえば当然なのだけど。
『警備が厳重ですね………………見張りの男も、かなり強そうです』
緊張した面持ちでミアが呟く。ただ、悪目立ちを避けるために【精神感応】を使っているため、口は動いていなかったが。
『そうね…………中はどうなっているのかしら』
『ワシも中までは見たことがないのう。じゃが、魔宝石の加工もあの中で行っているそうじゃから、正確な情報もあると思うんじゃが…………』
本である古書さんが『中を見たことがない』と言うのも仕方ないだろう。でも、情報があるのかも分からないまま侵入するのは危険すぎる。
要するに、『中が視えればいい』のだ。
だから、【眼】を借りる。
『マリア、【眼】を貸してちょうだい』
天界に向かって思念を送り、マリアの持つ【神の眼】を借りる。
【神の眼】は、森羅万象を見通す特別な瞳。
建物の中くらい簡単に透視できる。
………………天界であの女神が『やぁっとわたしの出番ですねぇ〜♪』とか言ってるのが聞こえるけど、無視、無視だ。
『も〜、わたし何時出番が来るのかなってずぅぅぅぅっと待ってたんですよぅ?』
無視、無視無視無視無視………………………
『それなのにファウナは新しく造った人格と仲良くしてますし、ヒドくないですかぁ?ね、貴女は人間なんですからもっと神を頼ってもいいと思いますよ?』
無視……………(イラッ)
『人間はそのまんまじゃ無力ですよぅ?その点わたし達はサイキョームテキですし?そこんとこどーなんですか、ねぇファウナ?』
…………………………うっっっっっっっっっざ。
『あー……………その件に関しては一旦持ち帰らせていただき前向きに検討することを善処させていただいてもいいかしら。それより集中できないから黙っててもらえる?』
『むぅぅぅぅ………………分かりましたぁ』
マリアは不服そうではあったがちゃんと黙った。よしよし。
ほっとため息をついて、私は再び【神の眼】を使う。
「へぇ……………」
全てを見通す【神の眼】の力によって、北棟の内部が文字通り透けて見えた。
建物は全部で3階建て…………他の棟に比べると低い、でも広い。
その中でも結界・警備の管理をしていると見られるのは3階。複数の魔術液晶と遠隔魔道具が見える。
その部屋に向かうまでの警備は……………ほぼ人。所々に結界もあるけど、これなら簡単に誤魔化せそうね。
「ふぅ………………」
『どうでしたか?ファウナ様』
ミアが古書さんを腕に抱えながら尋ねてきた。
『大丈夫。問題なさそうよ』
微笑んで答えてから、再びゆっくりと目を閉じる。
さぁ、もう一度『奇跡』を使いましょうか。
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