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聖女なんて、ぜっったいにお断りです!!〜転生した元聖女は自由に暮らしたい〜  作者: 霜月 アカリ
第二話 其処に眠るは・・・・・
12/18

ファウナの起こす『奇跡』

 私がとまどい顔のミアを引っ張ってやって来たのは、【書庫】の中でも利用者の少ない古書のエリアだった。



「あ、あのぉ……ファウナ様、ここで何を…………?」

「えーっと……………ちょっと待ってね」



 ずらりと古書が並ぶ中で、私が探すのは一番古そうな本だ。

 そう、例えば……………この【書庫】の歴史を、間近でずっと見ていたような。



「ふむ、この本が良いかしら」



 よいしょ、と本棚から引っこ抜いたその本は、表紙の金文字がほとんど剥がれ落ち、ページも茶色く変色している。見るからにボロボロだ。


 周りに人はいない。これならバレる心配はなさそうね。


 本を手に持ったまま、ゆっくりと瞼を閉じる。

 精神を己の内側に向け、魂の、そのまた奥にある『神の力』へ手をのばす。



「我に力を与えし者よ……………………」



 言葉とともに、私の周りが淡く輝き始める。



「神たるなんじの力をもって、声なきものに声を…………」



 光の色は白金。陽の光と交わって溶けていきそうなほど淡い………………だが、確かな神々しさを纏う色。


 光は、手元の本へと収束していく。



「意思なきものに意思を、心なきものに心を与えよ………………」



 私が紡ぐのは、神への祈りの言葉。


『神の愛し子』のみに許された神代の魔術。



「【人格付与パーソ・リゼート】」



 瞬間、本が光り輝き、私が込めた『力』が浸透していく。




「ファウナ様、今のは…………………」

「私の『奇跡』の一つ。知ってるでしょ?私は【心】を操るのよ」



 さてさて、『奇跡』はうまくいったかしら。



「こんにちは、古書さん。少し教えて頂きたいことがあるのですが、いいですか?」



 私は手の中の古書に話しかける。はたから見ればモノに話しかけているただのヤバい奴だろう。


 しかし、驚くべきことに返事があった。



『ふぉふぉふぉ、構わんよ。ワシはこの【書庫】ができた当初からいるからのう。何でも聞いてくれて良いぞ』



 やった。『奇跡』はしっかり発動してくれているみたい。



「ありがとうございます。頼りにさせていただきますね」

『うむ!任せい』



 それにしても、【書庫】の建設当初からいるなんてラッキーだわ。やっぱり、分からないことは年上に聞く。これ鉄則。



「す、すごい…………本当に本が話してますね。こちらの、かた?には何をお聞きになるんですか?」

「【書庫】の建設当初から、どれくらい改良が施されたか、ね。家にあったのは初版だけだったから、情報がぜんぜん足りないわ」

「そうなんですか?」

「ええ。例えば、さっき通った入り口の短距離転移魔術は地図には記載されていなかったし、城壁の結界もより強固なものになっていたの」

「……………つまり?」

「このまま行ったら予期せぬトラップに引っかかって『ドォン』ってなるかもしれないってことよ」

「な、る、ほど…………?」



『ドォン』の内容を想像したのか、ミアの頬は若干引きつっている。

 ま、良くて即死、悪くて拷問だろうから、そうなるのも分かるけど。



『なんじゃ、お主ら立ち入り禁止エリアに行きたいのか?』

「はい。何かご存知なのですか?」

『うむ。それなら結界の管理施設が北棟にあったはずじゃ。そこに詳しい情報があると思うぞ』

「本当ですか!?ありがとうございます!」



 思わず明るい声がでる。北棟…………地図にはなかったから、おそらく私が死んだ後に建設されたものだろう。



「でも、いいのですか?【書庫】の本がこんな悪事に手を貸してしまって」



 おずおずとミアが尋ねるが、返ってきたのは快活な声だった。



『ふぉふぉふぉ!そうじゃのう、まぁワシも久しぶりに手にとってもらえて嬉しいんじゃよ。

 それに、ワシに魔術をかけた銀髪のお前さん、『神の愛し子』じゃろう?ならば情報を悪用するようなことはあるまい。悪意も感じんしな。

 悪党というものは手に取られた時に解るものじゃ……………そんな輩には手を貸さんよ、ワシは』



 さすが、長く読まれ続けた本だわ。『本は人を選ぶ』という言葉もあるけど、このひとは本当に読者の内面を見抜いている。



「………………じゃあ、まずは北棟へ行きましょうか。古書さん、案内していただけますか?」

『うむ!任せておれ!』



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