私の将来の夢は
こんにちは!21グラムです!
まず、最初に謝罪をさせてください。
前回の、「地獄に救い主」を投稿した際、「明日くらいに、更新するかもです!」と話しましたが、更新できなくて本当にすみません!!
前回のお詫びも兼ねて、今回は、「私の将来の夢は」も含めて、2話まとめて更新します!
それでは、本編どうぞ!!
「時間操作の魔法で、1つの物体の時間だけを進めて、物体を老朽化させる魔法があるのは知ってるよね?その魔法みたいに、時間を進める魔法があるのは知ってる。でもね、」
雨宮くんは真剣な表現を崩して、今度は、悲しげな表現になる。
「その魔法を応用できたとしても、僕の魔力じゃ、せいぜい学院都市の建物の半分を老朽化させることくらいしかできないと思う。悪魔、いや、テネブルと契約でもしないと、未来に戻るのは難しい。」
この世界には、不幸を司る存在がいる。
ある人は「悪魔」と呼び、またある人は「テネブル」と呼ぶその生き物は、召喚陣を描き、詠唱を唱えれば、か弱い幼子の言うことでも聞いてくれる。
だけど、召喚する人は、愛する人を失うほどの不幸を経験していないといけない。
真面目な彼がテネブルという存在を話に持ち出して、私はようやく、事の重大さを理解した。
「脅かすようで申し訳ないし、あくまでも憶測だけど、もしかしたら、君は無意識のうちに、自分の死を対価に、何かすごい魔法を発動させたのかも。」
「何か……すごい魔法……?」
雨宮くんほど、頭が良くてテストの順位が良いわけでも得意魔法が多いわけでもない、馬鹿で、得意魔法が数少ない私は、『すごい魔法を発動させた』と言われても、なんの検討もつかない。
「これは、西洋の民話なんだけどね。誰からも相手にされない孤独な青年が、事故の影響で仮死状態になって、死後の世界に行くんだ。」
「う……うん」
「そこでテネブルと『友達をつくるから、生き返らせてくれ』という取引をして、生き返って、現世に戻ってきたらしいんだよ。でも、青年には取引をした記憶も何も残ってなかった。」
「その民話の登場人物は……どうなった……の……?」
「孤独なまま年老いて、また死後の世界に行ったとき、取引をしたテネブルと再会して、『お前は何も約束を果たさなかった』って言われて、魂を喰われたんだ。」
「……っ!!」
その民話の登場人物の身に起こったことは、他人事とは思えない。
雨宮くんが、悲しいものの多い西洋の民話を話に持ち出した時点で、何となく嫌な予感はしていた。
あの死刑台を見た時の、背中に幽霊でも張り付いているんじゃないかと疑うほどの悪寒よりも、もっと冷え冷えとした感覚が、全身を襲う。
がたがた、がたがた。
身体の震えが止まらない。
〝 この子は、不幸に愛されてます 〟
小さい頃、私が産まれてすぐに死んだという長兄のことで教会に行ったことがある。
その時、胡散臭い笑顔の神父に言われた言葉を、最悪のタイミングで鮮明に思い出す。
嫌だ、やめて。あんな言葉、思い出したくない。
〝 若いうちに命を落とすでしょう……ですが……天国のお兄さんが魂を救ってくれる 〟
がっ、ごんっ。
聞きたくない音楽を流しはじめたCDプレイヤーのように、思い出したくない声と言葉を再生し始めた脳みそを責めるように、こんな言葉を言われた自分を戒めるように、私は自分の頭を自分の拳で、思い切り叩く。
天国とか地獄でじゃなくて、今この瞬間に救ってよ。
アルバムの中でしか会ったことのない長兄は、天真爛漫な人だったけれど、穏やかで優しくて、誰よりも強い魔力を持つクラスの人気者で、クラスの落ちこぼれを不良から庇って死んだらしい。
そんな聖人君子の鑑が天国にいるなら、私を、この落ちこぼれも、救ってよ。
ごつっ、がっ。
自分の頭を殴る。パーじゃなくて、グーで。何度も、何度も。
「たんこぶになっちゃうよ。そろそろやめて?」
穏やかで優しい声が聞こえたすぐ後、手首を優しく、けれども強い力で掴まれた。
あぁ、これは、雨宮くんの手だ。
自分の世界にいたから、彼の存在をすっかり忘れてた。
「ねぇ、君は、今この時代で何がしたいの?」
「え……どういう……こと?」
私の手首を掴んだまま、雨宮くんは私に漠然とした問いを投げる。
「言い方を変えるね。未来を変えられるかもしれない、この時間軸で、君は何をしたい?大人になってからやりたい仕事のことでも、何でもいいよ。僕に教えて。」
「……私……は……」
馬鹿だと思われるかもしれない、失望されるかもしれないけど、また復讐がしたい。今度は、成功させたい。
いじめの主犯格、斉膳 信明の、息の根を止めて、最高の地獄に落としてやりたい。
「何も怖がらないでいいから、教えてよ。」
くすり。
そんな効果音がつきそうな、片眉を下げて口角を控えめにあげた、これから一緒に悪戯の作戦を考える悪戯仲間のような、そんな笑顔を雨宮くんは私にむける。
「私……は……」
途切れ途切れになりながらも、言葉を紡ごうとしたその時、本能が警鐘を鳴らす。
言うのはやめておけ。この人は、この救(雨宮)い主は、絶対に、作戦に協力するから。巻き込みたくないなら、やめておけ。
「小説……書きたい……」
「小説?」
「うん……」
小説を書きたいと言うのは、あながち嘘じゃなかった。
夢を馬鹿にされるのが怖くて、お前には出来ないと誰かに否定されるのが辛くて、ずっと誰にも言っていなかっただけで、私の将来の夢は、稀代の大量殺人犯じゃない。小説家だ。
「そっかあ。じゃあ、小説家になるまでの間は、何かしたいことはある?」
「……何も……」
「じゃあ、何もしたいことがないなら、僕と一緒に復讐しようよ。」
今、雨宮くんはなんて言った?
「私の将来の夢は」を読んでくれてありがとうございました!
前書きでお話したとおり、このエピソードも含めて、今日は2話まとめて更新します!
次の更新は、19時に予約しましたので、よければ時間潰し感覚で読んでやってください!
それでは!19時にまたお会いしましょう!