地獄に救い主
こんばんは!21グラムです!
やっと第2話更新できました……!
待っていてくれた読者の方がいたら、すっごく大きい声で「お待たせしました!!」って言いたいくらい「更新できてよかったなぁ」と思います!
それでは、本篇どうぞ!!
痛い。身体中が痛い。
特に、お腹と鎖骨の下、洋服で隠せそうなところが、熱を帯びていて、じんじんと痛い。
「次はないからね!」
「そうだよ!今度やったら、絶対許さないから!」
どうして、人の声が聞こえるんだろう。しかも、聞こえたのが、私が殺した魔術学院のクラスメイトの声だなんて。
え?次はない??
「……」
閉じていた瞼をゆっくりと開けて、周りに何があるのか、恐る恐る確認する。
まず、ぼんやり見えたのは、細い緑色の何か。
視界がどんどんクリアになって、緑色の何かは、芝生の草だということが分かった。
じゃり。
首を少し動かすと、後頭部が固くて少しザラザラしてる何かと擦れる感覚があった。
私はこの感覚をよく知ってる。
これは、身体が芝生の上に横たわっている時の感覚だ。
芝生越しに、斉膳魔術学院の校舎が見えた。
「なんだ……地獄はこんなところなんだ……」
地獄は、落とされた罪人にとって苦痛になるものを与える場所。私にとっての苦痛は、斉膳魔術学院での日々。
なるほど、この地獄は、私にとっての苦痛の日々を再現しているんだ。
私が殺したクラスメイトの、肥田 阿奈 と、その取り巻きの池林 樹里は、倒れている私をこの場に放置して、校舎へと歩いていた。
「別の地獄なら良かったのに……この地獄は辛いな……」
私が今いる場所から見て、肥田と池林が豆粒大の大きさになったのを確認してから、独り言ちる。
聞こえていたら、余計に何かされるのは目に見えてる。
「じゃあ、どの地獄なら良かったの?阿鼻地獄とか?それとも、煉獄?」
「……え……雨宮……くん……?」
陶磁器のような白い肌。
綺麗に右側に流されている、サラサラの髪は、烏の濡れ羽色。
淡い紫色の瞳は垂れ目で、いつも少し困ったように下がっている眉毛と、綺麗な形の小鼻と桜色の薄い唇は、腕のいいアンティークドール職人の造形美と言っても過言じゃないくらい、整った顔立ち。
どうして、地獄に救い主がいるんだろう。
「君はいつもボロボロだね。とりあえず、保健室に行こうか。」
「あの……え……?」
「保健室に行きたくない?もし行きたくないなら、僕が手当するから、ちょっとお腹のところめくって?」
「なん……で……ど……して……っ……」
芝生の上に横たわっていた私に、雨宮くんは手を差し伸べてくれて、その手を掴めば、力加減をして、私の上半身を優しく助け起こしてくれた。
上半身だけ起きていて、足を地面に伸ばしている状態の私の左隣に、雨宮くんは腰を下ろす。
目の奥がじんわりと熱を帯びて、大粒の涙が頬を伝い、喉のあたりが少し苦しくなったのがわかる。
久しぶりに雨宮くんの優しさに触れて、私はどうしようもなく嬉しくなって、そのすぐあとに、これでもかというくらい申し訳なくなった。
彼は黙ってハンカチを取り出して、私の涙をぬぐう。
「よ……汚れ……ぢゃう……汚れちゃ……から……」
「君は失敬だなぁ。僕のハンカチは汚くないよ。だから、君の顔は汚れない。」
元から少し下がっている眉をさらに下げ、目をこれでもかというくらい細め、口元は緩く弧を描くようにして、雨宮くんは穏やかに微笑む。
私はその笑顔がどうしようもなく好きだったのに、あんなに酷いことを言ってしまったんだ。
後悔と罪悪感が、津波のように押し寄せて、涙腺が決壊したんじゃないかと思うくらい、涙は止まらなくなった。
「ちがっ……ひっ……ぢがうの……!わだ……わだじ……の……えぐっ……顔……わだし……きだな……うぐっ……汚……い……からっ……!!」
「下らない奴らの下らない価値観に振り回されちゃ駄目だよ。君はいつだって、自分らしくいるべきだ。」
「ご……ひっ……ごべん……なざ……お……うぐっ……怒ら……ないで……ひぐっ……」
「ごめんね、少し怖い顔になっちゃってたかもしれないね。でもね、君にはちゃんと魅力があるってこと、それだけは分かって欲しいんだ。」
「ひぐっ……あ……えぐっ……あめみ……雨宮……ぐん……ひっ……あの……」
気づけば私は、大量殺人犯になったこと、死刑になったこと、そうなる前に何があったかを、雨宮くんに酷いことを言ったことを除いて、話せる範囲で全部を話していた。
「なるほど、それは面白くない話だね。」
「……つまらなかった……よね……ごめんなさい……」
話している途中は見ることのなかった雨宮くんの方を、顔色を伺いたくてちらりと見る。
雨宮くんは眉間に皺を寄せ、困ったように眉毛を八の字にして、苦笑いを浮かべていた。
「そうじゃないよ。僕は、君の話をつまらないと思ったことは一度もない。面白くないっていうのは、君が死ぬことが面白くないから言ったんだよ。」
「え……あ……ありが……とう……?」
「どういたしまして。もしかしたら、君は死刑になった日から、過去の世界に来たのかもね。それも魂だけじゃなくて、肉体ごと。あのね、心して聞いて欲しいことがあるんだけど、いいかな?」
雨宮くんは、今度は眉を釣り上げて、目を少し見開いて、私の肩をガシッと掴んだ。
その態度は至って真剣で、ふざけている様子は微塵も感じられない。
「な……なに……?」
生唾を飲んで、いつもに増して真剣な彼をまっすぐ見る。
「えっとね、すごく言い難いんだけど、君が殺人鬼になった未来に戻る方法は、僕は知らないし、絶対とは言いきれないけど、戻る方法はないと思う。」
「え……」
「地獄に救い主」を読んでくれてありがとうございました!
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アカウント名は「21グラム」で、ユーザー名は「@sousakugalovei」です!
もしかしたら、明日くらいに、また更新するかもです!
(更新できなかったらすみません!出来るだけ、早めに更新出来るようにします!)
暑さに負けず、程よく頑張っていきましょう!
それでは、また次回お会いしましょう!
追記
ツイッターにのっけてる登場人物の見た目やエピソードは、流れ防止も兼ねて、ほとんどは画像をつけてツイートしています。
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