~~マーベル風になる~~
マーベルが妄想力の更なる飛躍を願ってやる気を出している事に気づくわけもない公様は嬉しそうに、力強く頷き
「では、まず今日はとても良い風が吹いている。いつも意識していなかった事を意識する事から始めようか」
「ここは聖山に近いから、大気中の魔力の濃度も高い、意識すればスグに感じる事が出来るはずだ」
「はい」
「大きく息を吸い、その息を身体に巡らす様にしながら不要な息を外にだす。まずはそのイメージからだ」
「はい」マーベルは大きく息をすった。そして目を閉じて、それを少しずつ身体に巡らすイメージをもつ
「体内の息、魔力を感じながら頭のてっぺんから足のつま先まで巡らすイメージで、そしてお臍の下辺りに意識を集中して、古い息をゆーっくりと少しずつ吐きだす」
マーベルは公様のテノールの様な落ち着いた心地よい声に導かれる様に身体の中を意識して、息を巡らせ、吐き出していく
「ふぅーーーーーーーーっ」
少しお臍の辺りが暖かくなってきている気がする。
「はい、もう1回」公様はそう言って大きく息を吸う、マーベルもモーリー様も大きく息を吸う
マーベルはふとその息が、いつもの様にただの息ではなくてすごく濃度の高い魔力を含んだ息であることに気づく。
その息を体内に巡らせると身体がより活性化してくるのだ。少しずつ少しずつ目覚めていく感じだ
「どうだ?何か感じるか?」
「はい、魔力が身体の隅々まで巡って、身体が少しずつ目覚めていく感じがします。喜んでる感じがします」
マーベルが目を開けてそう言うと、公様は嬉しそうににっこり笑い
「あぁ、そうだな。やっぱり飲み込みが早いな」
「そうしたら今度は目を閉じて、自分の周囲の大気に目を向けるんだ、魔力や精霊の存在、大気中に密んでいるものを感じるんだ」
マーベルは目を閉じて、公様の声を聴く(この声は魔力がひそんでる気がする!すごくいいお声)もちろんオンシジューム公の声に魔力等はなく、ただ単にすっごく良いお声なだけだった
マーベルは身体の中に向けていた意識を外に向ける。公様やモーリー様が居るのがいつものぼんやりした感じではなくてはっきりと立体的に感じている事に驚く、、、でも今はそうではなくて、もっと深く大気中の存在を感じる事に意識を向ける
マーベルは、自分の周りこの四阿の周辺に吹いている心地よい風、そして澄んだ臭いを感じ、また聖山の方から一際力強い風が吹いてくるのを感じた
(あぁ、そうか元々のこの辺りの風の力に聖山から吹いてくる風の魔力が混じりあってここらの大気はとても心地よい風、大気になってるんだな。)
「どうだ?」
マーベルは目を開けて
「はい聖山から吹いてくる風、ここら辺に満ちていてとても気持ち良い風になってました!」
公様は嬉しそうに目を細め
「よし!では、次に大気中に居る風の精霊に呼びかけて、自分の足に集まってくれる様にお願いするんだ」
「はい!」マーベルは勢いよく
「風の精霊様、私の足に来てください!」大きな声ではきはきと言った
「ブホッ」その瞬間、公様とモーリー様が、口を押さえて肩を震わした
「マーベル、そうではない。まずは大気中に意識を向けて心の中で風に向かってお願いするんだ。まずは存在を感じる事が大事だからね」
はっ!少し違ったみたい。めっちゃ恥ずかし、、、
マーベルは気を取り直して大気中に意識を向けた。すると呼びかける前に足の周りに風の魔力が集まってるのを感じた
「公様、お願いする前に、もう足の周りに集まってきてくれてる気がします」
「ふふふ、そうか。風の精霊はマーベルを気に入ってるんだね」
「それなら、マーベル立ち上がって、足に集まっきてくれている風の精霊にお願いするんだ。今から私が唱える詠唱を今度はハッキリと口にして」
「はい!」
「「風の精霊よ、誰よりも軽やかに遠くまで行く貴方達の力を少し私に分けておくれ」」
そう唱えると、足の周りに集まってきてくれていた風がより密着し、あたしの足がとても軽くなった気がした
「マーベル、少しここの庭をかけてごらん」
公様にそう言われ、私は走り出した。
「わっ!」身体が軽い、いつもの私のスピードの何十倍かの速さで、まるで羽が生えた様に軽やかに走れる。それにあたしにあわせて見ることは出来ないけど、風の魔力があたしの身体の周りにたくさんある気がする。これが精霊様なんだ!すごい、すごい!
私は夢中になって走っていた。するとどこからか「ぱん!」と、手を叩く音がして、はっ!として立ち止まる。振り返ると公様とモーリー様が笑ってみていた
あたしはスグに、ビュン!と戻った
「どうだい?」
「すごいです。すごい!身体が軽くて風になったみたいでした!すごい、これがルイ兄が感じてる景色!すごい、すごいです。公様!ありがとうございます」
「ふふふ、これはまだ始まったばかりだよ」
「そしたら、ここからが本格的な訓練と実益を兼ねたものだよ」
「???実益?」
公様はそう言うと、ニヤと笑った。隣でモーリー様は苦笑いしている
にっこりと笑って公様が言った
「今から東の方の森へ行き、お昼ご飯を狩りに行こう」
「おぉ〜、現地調達ですか!」
「マーベルちゃんは、お肉はけっこうレアとか、焼いただけとか好きだろ?」
「???!!!、、、どーしてわかったんですか???」
「ふふふ、一緒にご飯食べたら気づくよ。最初はその小さな身体のどこにそんなに入るのか、驚いたよ」
「はい〜普段は教会のご飯で充分なんですが、打ち上げとかはいくら食べても良いって言って貰えるので、またテーブルに沢山出るのでついついお腹いっぱいなるまでお肉たべちゃって。本当はテーブルに残ったのも持って帰りたいけど、お兄ちゃんがそれはダメだって、、、」
「くすくす、そうだね。それはちょっとマナー的に出来ないね。それにマーベルちゃんが全部持って帰ったら後で食事するメイド達はお肉なしの晩御飯になっちゃうね」
「はっ!そうか、全部捨てるわけではないんですね!」
「そうだと思うよ、取り分けもほとんど給仕達がするだろ?誰かの食べ残しというわけではないからね。パーティ料理は普段食べれるわけじゃないから、彼らの楽しみでもあるんじゃないかな?」
「そうかぁ〜、そうですよね!!!」マーベルは捨てるんじゃないと知ってとっても嬉しかった。小さい時のご飯があんまり食べれなかった時の事もあって、今の教会の生活はとても感謝しているし、マーベルに取って修行の旅の終わりの晩餐会は食べたこと無いもの美味しいものが沢山でてどれだけ食べても良いと聞いた時には気絶しそうなほど嬉しかった。こうゆう世界もあるのかと、、、仕事終わった後のご褒美とはこんなに嬉しいものなのかと、、、だから残ってるのは棄てられるのじゃないかと思ってとても悲しくて、結構頑張って食べていたのだ。お残しにはどうしても抵抗があった。でも目の前の皿を食べても食べても給仕さんが新しい皿を持ってくるので、最近は本当に困っていた。どのタイミングで持ってくるのを止めて貰えば良いのか、が最近のマーベルの悩みだった。でもそんな事で悩まなくても良いのだ。あれは仕事終わった後の給仕さん達のご褒美に変わるのか、良かったなぁ、マーベルは本当に嬉しかった。
マーベルが1人で納得して嬉しそうにしているのをオンシジューム公はにこにこと眺めていた。
「さて、これからあの森目掛けて走る、マーベルは走る速度を調整しながら身体に馴染ませる様に最高速度で駆けて構わない。私が合わせるから。森に着いたら手前でストップ。そこで森の様子をサーチする。サーチする時には今までよりも意識して?風の精霊にお願いするだ。どんなものがいるのか、その形、数を教えて欲しいと」
「解りました!」
「では行くよ」公様の合図であたしは東の森に向かって走り出した。今度は風の魔力を身体全体に張り巡らせてみた、さっきは足だけ速くて少し身体がついていくのに重かったからだ。けっこう全力で走ってるけど、公様とモーリー様は涼し気な余裕そうな感じでピッタリと隣を走ってる。
(もっと早く走れる様になるのかな、、、)
東の森の入口手前で止まった。けっこう離れてみえたけど、風の精霊のおかげで30分も走ってない。私は心の中で「ありがとう」と呟いた。
「よし、初めてにしては良い感じに魔法が使えてるね。」
「では、始めてご覧。ただサーチするのではなくて、風の精霊にお願いしながらじっくりとサーチするんだ」
マーベルは身体に張り巡らせていた風の魔力を解き、今度は深呼吸して、身体の中に巡らせて集中した。〈風の精霊様、前の森にいる危険な魔物を教えて下さい〉
今までの様に闇雲に集中するのではなく、風の精霊にお願いする事でその魔力を濃ゆく前方に拡げて中の様子を探る事が出来た。あっ、右の方にはアルミラージかしら?アルミラージも美味しいは美味しいけども、、、少し奥の方にはちょっと大きめで美味しそうなのが居る気がする、あれをもっと見たい!
マーベルはその食欲で魔力の質が上達していくようだった。




