第1話 創造スキル
白い世界だ。
浮いているのか?
前も後ろも、上も下もわからない。
とりあえず何もない。
そういえば身体もないみたい。
困ったぞ。
うーん。
ふと、オレンジ色の光の球が浮いている。
いつの間に…。
「ようやく意識がかたまってきたようだな。」
突然声が聞こえる。
オレンジ色の球からか?
どうやらこちらに話しかけてきたようだ。
「何だいったい?」
思わずつぶやいてみたが、声はでない。意識のみだ。
不思議と、夢という感じはしない。
「ここは輪廻の空間だ。死んだ君は生まれ変わる。」
オレンジ球は感情もなく言う。
死んだ? 何だ突然…。死んだときの記憶はない。
本当にどうなってるんだ。
「いつの間に死んだんだ。たしか仕事をしていた気がするが…。あなたは?」
「私は神のようなものだ。君には違う世界に生まれ変わってもらう。記憶をもったままな。」
えっ…
「知的生命体は定期的に異なる宇宙に転生させることになっている。今回は君が選ばれた。」
「転生? 異なる宇宙?」
「そうだ」
死んだといわれたが、なぜか前世に執着がなくなって、受け入れられる気がしてきた。
神様といわれても、疑う気持ちがわかない。
この空間の働きかな?
「話についていけないが。まあ生まれ変わるのか。…どんなところなんだ。」
「魔法やスキルがある世界だ。ゲームとやらでなじみがあろう。そういう世界だ。」
「ゲームみたいな世界か。さっぱり実感がわかないな。」
「宇宙は繭のようなものだ。宇宙ごとに法則がある。転生先の宇宙は、魔素でできた世界だ。」
「魔素…それで魔法があるのか。なんでそんなところに?」
「我々は文化の多様性を促し観察しつづけている。異なる宇宙に転生させることによって、文化を多様化させるのが目的だ。魔法のない世界の者を魔法のある世界に転生させることで、全く新しい文化が生まれよう。」
なるほどね。
「自分が初めてか?」
「すでに過去に様々な星に何人もが転生が済んでいる。一つの星に一人のみだ。」
うーん。話が大きい。正直よくわからん。まあいいや。考えてもしょうがなさそうだし。
さっきからなぜか執着心がほとんどない。
自分のやることに制約はあるのかな?
「何か使命があったりするのか?」
「そんなものはない。人間に神の使命を負う力はない。好きに生きてかまわない。」
「そっか。少し安心したよ。普通に生きればいいんだな。」
「それでよい。ただ、死ににくいように、いくつかスキル、能力を与える。希望はあるか。」
おっ。これはありがたい。
スキルねえ。
どんな世界かわからんからな。
せっかく記憶が維持されてるんだから、地球の情報が使えればいいか。
「インターネットが使えればありがたい。」
「地球との通信はできない。死亡時の地球に存在した情報を検索できるようにしよう。」
「それは便利だ。それなら、その情報をもとに色んなものが作れればいいな。」
「それならば、創造能力も与える。魔力を消費するがな。」
「スキルは魔力を消費するのか。それでいい。魔法は使えるのか?」
「魔法は誰でも使える。ただし使いこなすためには経験や能力が必要だ。転生後に身につけるといい。」
「わかった。色々と感謝する。」
「付属能力も授けておく。まずは生き残ることだ。」
生き残る…か。何となく厳しい世界っぽいな。
まあ、神様の考えなんてわからん。与えられた条件で頑張るだけか。
「肉体の寿命は長くなっているからな。長生きするといい。では転生させよう。」
長生きできるのか。まあ、のんびり生きれたらいいな。
意識が遠くなっていく…