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最凶ヒヨコ伝説 ~裏切られた勇者はヒヨコに生まれ変わったので鳥生を謳歌します~  作者:
第1部5章 帝国首都ローゼンシュタット 燃えよヒヨコ
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5章7話 会談 With ヒヨコ

 色々と物議をかもした歓迎会だったが、概ね問題なく終わった。ヒヨコのジャーキーがトルテに食われたこと以外は。


 その翌日、ヒヨコとトルテはステちゃん、山賊皇帝さん、腹黒補佐さんと一緒に、ライオン小父さんことオラシオ君、狼耳小父さんことウルフィード君、猫耳お姉さんことマーサさん、猫耳少女ことミーシャの4人と会議室で落ち合うのだった。


「ピヨピヨ」

「フシャーッ」

 ヒヨコが挨拶しようと近づいた瞬間、ミーシャの飼っている白い小さな虎猫が飛び出してヒヨコをひっかく。

「ピヨピヨ(この子、何でおこってるの?)」

「わかんなーい」

 首を横に振るミーシャであるが、ヒヨコはどうもこの猫に嫌われているようだ。おかしいぞ、トルテは大丈夫なのに。或いはヒヨコは狩る獲物だと思われているのか?

「ごめんね、ピヨちゃん。どうもその子、ミーシャに近づく雄は種族に関わらず襲うみたいなの。元獣王陛下の子息ガラハド様もミーシャに近づくたびに引っ掛かれているから」

「ピヨピヨ(だからヒヨコばかり引っ掛かれていたのか!トルテが安全圏にいると思ったら)」

「きゅうきゅう(ご愁傷様なのよね)」


 するとマーサさん、オラシオ君、ウルフィード君の3人は膝をつく。

「失礼いたしました、巫女姫様。皆の見ている前で挨拶が出来ず」

「って、やめて~」

 ステちゃんは目をぐるぐる回して困り果てていた。やっぱり戴かれるタイプではないらしい。


「あー、やっぱ、こうなんだ。宰相の反応が正しいんだな」

「いや、でも獣王に追い出されているからそこまでとは思っていなかったんだが」

 納得いかないという顔で腕を組む腹黒補佐さん。


 一応、獣人達を取りなして、それぞれが会議室の席に座らせる。獣人側と帝国側に分かれて座り、中央にヒヨコとミーシャとステちゃんのお子様達が座る。

 え?トルテはどこに座ってるって?通常サイズに戻ったヒヨコの頭の上、つまりいつものポジショニングだ。


「ステちゃん偉い人なの?」

 不思議そうに小首をかしげるミーシャである。

「偉いのはお母さんであって、私じゃないから!」

「そうは言われましても巫女姫である以上、そういう訳にはいきません。獣王陛下は巫女姫であっても同胞と同じように接するように仰っておりましたが、当の獣王陛下がいない以上、そういう訳にはいきません」

 マーサさんはきっぱりと言い切る。ステちゃんは困った顔をしていた。義理の姉に畏まられるのはこそばゆいみたいだ。


「皇帝陛下、先ほどは我々のものが失礼を」

 ウルフィード君はその話を取り敢えず横に置いて山賊皇帝さんに謝る。

「気にしてはいない。俺は獣人の感性が知りたかったからな。ああいうものなのか?」

「若い連中は特に負ける経験が少ないですから。大人になる事で強さだけが全てではないという事も学んでいくことになります。元より我らは獣王陛下に負けていますので」

「ああ、そりゃそうか。とはいえ、俺は良い方だと思うぜ。力があれば認めるようだしな。ウチの貴族の連中は獣人を見下すのも多いしな。だから俺の周りの人間しか今回の歓迎会には参加させていない」

「まあ、そうでしょうね」

 ウルフィード君は苦笑して追従する。アルブムやベルグスランドでは奴隷扱いなのだ。

 いくら帝国は種族差別を禁じていても、そう簡単になくなるという筈もない。

 有史以前、獣人は人間の奴隷だったからだ。

 獣王国で人間差別をしているように人間の国が獣人差別をなくすことは非常に困難なのを統治者である狼王の身としてはよく分かっている事でもあった。

「とはいえ、純粋に力を認められるのならば力さえあれば良いのだからな。むしろ俺の側の貴族連中の方がよっぽど厄介だ。あんなの無礼の内にもならないだろう」

「そう言って貰えると助かります。」

「まあ、お互い様だろ」

 そこで、ふうと考え込む山賊皇帝さん。


「まあ、それは良いか。俺が話したいのは別の事だ。アンタら、巫女姫が女神を下ろしているのを見た事が有るか?」

 山賊皇帝さんの質問に3人は顔を挙げて山賊皇帝さんを見る。

「いや、俺はないな。先祖に見た事が有る人がいるとは聞いているが」

「俺の爺さんは見たって聞いたが」

「エミリオは頻繁に見たとは聞いていたわ。ただ、私は無いわね。私とエミリオが巫女姫様に会うときって、エミリオが実家に帰るタイミングだから、巫女姫様も女神様を呼んだりはしないし」

「じゃあ、見た事が有りそうな獣人は?」

「いない筈です。そもそも巫女姫様はそそう人前に出ませんし元獣王とてそうそう会えません。今回きた中でいるとしたら私の祖父くらいでしょうか?」

「噂のリンクスターの元頭領って奴か」

 山賊皇帝さんは腕を組んで何やら考え込む。

「今はただのジジバカですけどね。曾孫の才能がかつての従魔士一族歴代最高レベルだと気付き、天寿を全うする前に全部授けてやるんだと躍起になっておりますから」

「なるほどな。……まあ、代々、あんな数の魔獣を使役していたら誰も獣王国に攻め込まないし、獣王なんて存在自体がありえなかったろうからな。」

 山賊皇帝さんはちらりとミーシャの方を見る。ミーシャは不思議そうにしていた。この子、自分の力に無自覚なのかもしれない。ヒヨコをひっかく猫がいる時点で驚天動地だ。

 え?それはそこまでじゃないって?


「まあ、最初は獣王国のトップが誰になろうと上手くやる方法を模索してどうにか戦争を回避しようという目論見があった訳だが」

「最初は?そのつもりではなかったのですか?」

「それが巫女姫の嬢ちゃんが神を下ろした為に事情が大きく変わった。今回のアルブムの暴走はアルブムに魔神と同じような世界に害をなす存在が降臨したらしい。戦争を起こさせないという方向性は無しだ。もう戦争を起こすか起こさないかはともかくアルブム王国王太子レオナルドは殺すしかなくなった。俺達はそれを成すことが出来る存在をいくつか知っている。その一つがそこのヒヨコらしくてな。そこのヒヨコは神を殺せる手段を持っているらしい」

 山賊皇帝さんはヒヨコを指差してそんな事を宣う。


「ピヨピヨ(何かヒヨコは神殺しの魔法を二つほど使えるらしいぞ?)」

「いや、自分の事なのに何で疑問形なんだい?」

「ピヨッ(使ったことがないし。でも火魔法と神聖魔法は極めてるから使えるっぽいなぁ、的な?)」

「…ま、まあ、彼に託すのは不安ではあるけど、我々帝国の方針はアルブムのレオナルド王太子を討つという形は決定している。ステラ君のレベルが上がるのを女神様が待っていた節があり、つい先日そういう話が降りてきた」

 山賊皇帝さんの説明に獣人達は驚いた様子だった。


「………そして、奴は力を集める為に人を狩っている節がある。恐らく獣人を狩るのはそこにあるのだろう。人間の国で人間の体を得たから人間を狩るには厳しいと考えたのかもしれぬ。頭も悪くなさそうだ」

「オークを生贄にしようとしていたのはそういう事か」

 オラシオ君が腕を組んでううむと呻く。

「元々は戦争を回避するために我らと獣王国が同盟を組む予定だったが、奴らの目的が魂の回収にあると分かってしまったが故にやり方を変えざるを得ない」

 山賊皇帝さんの言葉にオラシオ君やウルフィード君は尚更複雑そうな顔をする。

 女神の言葉があったとなれば確かに状況は大きく変わる。国のいざこざを越えていた。


「逆に我々としては獣王擁立は必須となった気がしますね」

 マーサさんは諦めるようにぼやき他の二人の男も頷く。

「獣王擁立が必須?」

「我が連邦獣王国の気質ですと、仲間を殺されたら黙っていられないと防衛よりも攻勢に転じる可能性が高いのです。ベルグスランドの鉱山支配を目論み村や町を滅ぼされた際に、報復で向こうの村を焼くことも多々あります。この手の主導をしているのが各部族の長なのです。彼らを統括しているのが獣王で、獣王がいなければ各部族長は言う事を聞きませんから。基本、彼らは三勇士と自分を同格だと思っていますし」

「結果的に勝手に暴走して王国に囚われ、神の食い物にされる可能性があるってのは冗談じゃ済まされないなぁ」

「巫女姫様に立ってもらって声をかけて貰えばどうだ?」

「それはダメだと言った筈です。獣王様はそれを望んでいなかった」

 獣人族の3人はあーでもない、こーでもないと頭を悩ます様に話し合う。


「候補としては誰がいるんだ?」

 皇帝は首をひねりながら獣王国のトップたちに訊ねる。

「俺も三勇士から退く予定だから、獣王と三勇士が同時にいないという状況で…三勇士候補を上げるなら狼王を輩出しているウルフェンデ家の令嬢マーゴット。まあ、皇帝陛下を襲ったバカだな」

「あとは俺の甥のロバート・カッチェスターか。それと幼いがアルトリウス様の遺児ガラハドが次期アルトリウス様の後継だとタイガー家が言っていたな。熊王家のマキシムが前回の三勇士決定戦で3位だった猛者だ。それと従魔枠でミーシャって所か」

 ウルフィード君が溜息交じりに口にし、オラシオ君がおおよそ全部言ってしまう。

「あと、従魔枠はミーシャよりは、私の従兄でリンクスター家のクラーク・リンクスターというものもいます」

「なるほど」

 マーサさんが補正して山賊皇帝さんは納得するような様子を見せる。

 ヒヨコ的にはミーシャはともかく、ウルフィード君さんとオラシオ君しか見ていないが。


「あとは…マーサ殿が三勇士にと考えてはいるが」

「わ、私は着く予定はないのですが」

「獣王陛下の忠実な臣でありエミリオの妻でもあった貴殿が次期獣王を支えて頂ければ我らも安心できるというもの。というか、獣王でも構わんがね。今のところマーサ殿より腕の立つ候補はいないのだから」

 ウルフィード君はそんな事を口にする。

「だったら、オラシオ殿やウルフィード殿こそ勝手に退かないで頂きたい」

「我らはもう戦う者としては年齢的にはピークを過ぎているからなぁ」

 マーサさんの突込みに対してオラシオ君は苦笑して答える。

「というよりも、獣王陛下が退けばマーサ殿とエミリオが獣王として夫婦で切り盛りしてもらえると思っていたんだ」

「候補の筆頭だったという訳か」

「そういう意味ではモーガンが戻って来てくれたらという想いもある。外の世界を知る者は必要だ」

 チラッとオラシオ君が腹黒補佐さんを一瞥する。

「モーガンは獣王に忠誠はあったが、元々、集落に馴染めてないからな。一兵卒だから難しいと思うがな。確かに力はあるが、パーティでも俺がリーダーしていたしなぁ。俺に技術を教えてくれた師匠も獣人だったが、彼は亡くなってしまったし」

「貴殿も中々に強そうだな」

 ウルフィード君が腹黒補佐さんを見る。

「いえ、私などは…」

「とか言うが、この男が帝国最強だがな。帝国最強と言われていた妹を退け、大迷宮を踏破したパーティリーダーで、帝位争いでは親父の側につき帝都に平和をもたらし、竜王と決闘をして竜王に傷をつける事で対話の場を作り、竜の領域との不可侵や同盟を作ってる。基本裏方で人のいない場所で戦ってるから、有名じゃないが、そこらの英雄や勇者よりよほど英雄的行動をしているからな。昨年末に妹と結婚式を挙げて皇族の一員として迎え入れたんだが」


「帝国は強さを基準にしないと聞いていたが?」

「無論。だが、純粋に血の力でも決めない。後継者のいない家が有能な人間を取り込んでしまう例もある。今の宰相が実例で獣人族の元アルブムの逃亡奴隷だったが、貴族の奉公人から真面目さと頭の良さを買われて貴族の養子になり、学校で父にその知能を認められ右腕として活躍。大貴族の婿養子に迎えられ、国の中枢を支える人間となっている。そこの腹黒宰相補佐も貴族家から追い出されて平民として成り上がり、実力を買われて俺の妹の婿となり皇族に迎えられている」


「血というより家により有能な人間を上にあげるシステムがあるという事か。ウチの場合はそうでもないが…」

 ウルフィード君は腕を組み考え込むが

「いや、別に強くなくてもアルトリウス様の家宰は優れた治世を支えられるという一点でかなり優秀な人材を集めていましたよ。筆頭家宰は知恵も武勇も優れる方ですが、あらゆる種族の知恵ある者が集まっていましたから。前獣王アルトリウス様の最も優れていた点は強さ以上に政務において使える人材を揃えていた事です。歴史を紐解けば3年も獣王が立たない状況が起きれば内乱に次ぐ内乱が起こっていましたが、連邦獣王国のアルトリウス様の作った法律や憲法が機能しているし、王国に攻められても即座に対応可能だったのは情報網が優れていたからでもあります」

 マーサさんが獣王国の内情について説明する。


「驚いたな。俺はその手の法治国家の基盤みたいなものは獣王国にはないと思っていたが、前獣王は作っていたのか?」

 山賊皇帝さんは驚いた表情で呻く。

「はい。獣王陛下は獣王が変わる度に集落ごとで戦いになるのはあまり好ましくないとし、事前にある程度序列を決めていましたし、情報網でそれぞれの事情を把握できるようにしていました」

「獣王陛下ってのはかなりの傑物だったなぁ。ウチの国の人間だったら、300年前の皇帝と同様に教科書に重要人物として載せられる逸材だぞ」

「頭脳派だったのか?」

 腹黒補佐さんが手放しで上から目線で獣王を褒め、不思議そうに山賊皇帝さんは三勇士の方に話を振る。それに対して首を横に振るのがマーサさんである。


「いえ、頭が良いと言うほどではありませんが、こうしたいと思った事を応えられる存在を集めていました。元々情報網はそういった獣王陛下が欲しい答えを集める為のものでしたし。帝国にいた事のある人材も多いので、帝国の政治形態に近いというなら、それはアルトリウス様が集めた人材から出てきた内容が帝国のモノだったからかもしれませんね」

「物事を変えるというのは力が無ければ困難だ。獣王国を変えるとは恐れ入る。いやはや、獣王に会ってみたかったなぁ。手が必要ならクラウスを付けてやったのに」

「おいおい、皇帝、宰相閣下を売るような事を言うな」

 山賊皇帝さんが呵々と笑い、半眼で腹黒補佐さんが突っ込む。


「ふうむ、となると獣王国はある程度、他国と同盟する基盤みたいなものはあるんだな?」

「ただ、その同盟を結ぶには国主、つまり獣王ありきなんですよ。獣王の選定にここまで時間が掛かるのはそもそも想定外でして」

「法律には?」

「獣王選定についての法は『もっとも強き者である事』としか」

「そりゃ厳しいな」

 マーサさんが獣王選定には特に法律で定めていないという事を口にし、山賊皇帝さんは腕を組んで溜息を吐く。周りも重苦しい空気が滲んでくる。

 帝国から聞いた情報によりアルブムとの戦いは避けられそうにない。だが、アルブムは


「あ」

 だが、そこで腹黒補佐さんが何かを思い出したように口にする。

「「「「?」」」」

 周りの人間が腹黒補佐さんに視線が向く。


「い、いや、そういえば毎年3月にある武術大会で、皇帝陛下は自分の親衛隊をお披露目する予定でしたよね。いっそ、そこに獣王候補達も出したらどうかと」

 腹黒補佐さんはそんな事を口にする。

「ピヨッ!(何それ、ヒヨコも出たい!)」

「きゅうきゅう(武術大会。心躍らされるワードなのよね。アタシの活躍に恐れおののくと良いのよね)」

「ちなみに魔法禁止、ブレス禁止だから」

「ピヨピヨーッ!」

「きゅきゅきゅきゅーっ!」

 ヒヨコとトルテは運命に打ちひしがれるような音楽(※ベートーベン作『運命』)を鳴きつつ頭を抱えて項垂れる。


「ブレス禁止?そうなのか?」

「モーガンが<咆哮砲(ハウリングロア)>で対戦相手を悉く吹き飛ばして優勝して以来、禁止になった。今の帝国最強と言われる騎士も触れる事無く負けたしなぁ」

「あー、魔法禁止なのに<咆哮砲(ハウリングロア)>がありは酷いんじゃないかって話か」

「まさか人間の大会なのに吐息禁止なんて項目が出来るとは思いもしなかったな」

「ピヨッ!(しかし、ヒヨコが出れば優勝確実。ヒヨコに一票を!ヒヨコ獣王とかマジよくない)」

「おおー、ピヨちゃんが獣王様になる気満々だ!」

「「「いや、それはない」」」

 ミーシャがヒヨコを称賛するが、獣王国側の3人が同時に否定する。

「そもそもヒヨコ君は巫女姫のペット扱いだからな。獣王になったら巫女姫様の支配が続く羽目になるだろうが。それは獣王国民は喜ぶが、国としては誰も望んでいないだろうね」

 呆れるように突っ込む腹黒補佐さん。


「ピヨピヨ(まさか、身内に足を引っ張られるとは!ステちゃん最悪!)」

「誰が最悪なのよ、誰が。いきなり話の中に入ってきて偉そうにするな、このヒヨコ風情が」

 ステちゃんはヒヨコの首に腕を絡めてぎゅうぎゅう締めてくる。

「きゅきゅきゅ、きゅきゅきゅ(おっとっせ、おっとっせ)」

「ぴよぴよぴよ~」

 カクリンとヒヨコの意識はステちゃんのスリーパーホールドによって落とされるのだった。




***




 暗闇の中、ヒヨコを揺さぶられていた。

「ヒヨコ、ヒヨコ、おきなさい、ヒヨコ」

「ピヨッ!?(ここはどこ、ヒヨコはピヨ!?)」

「全く会議中に寝るなんて。もう会議は終わったよ」

 ステちゃんがヒヨコを起こしていた。


「ピヨピヨ(会議はどうなったんだろう?確かヒヨコは………って、無かった事にするな!人を締め落とすなんて)」

「そんなことしてないわよ。私は人なんて締め落としていない」

「きゅうきゅう(ステラが落としたのはヒヨコであって人ではないのよね)」

「ピヨピヨ~……ピヨッ!(なるほど~、それならセーフ……な訳あるか!)」


 しかし、もう会議が終わってたのか。よくよく見ればウルフィード君もオラシオ君も山賊皇帝さん、腹黒補佐さんもいなかった。

 ヒヨコはマーサさんとミーシャと狂暴な白虎君、そしてステちゃんとトルテがいるのを確認する。


「で、一応、帝城内になる客室に泊まる事が出来るらしいけどピヨちゃんはどうするの?」

「ピヨピヨ(ヒヨコには家があるので。まだ何の準備もしてないけれど)」

「幽霊屋敷だけど」

 ステちゃんが余計なことを言う。ヒヨコハウスを幽霊屋敷とは失礼な。


「ピヨピヨ(ステちゃんもそろそろヒヨコハウスに引っ越すべきだと愚考する)」

「きゅうきゅう(あんな怪しげな家、ちょっとアレなのよね)」

「ピヨ(ちょっとアレって何さ!?イグッちゃんに新居祝いを貰う予定なのに)」

「きゅうきゅう(いつの間にかアタシの父ちゃんと連絡とって、新居祝いを貰うとかどういう事なのよね!?)」

 ピヨピヨきゅうきゅうとヒヨコとトルテは口論をする。

「ピヨヨ?(そりゃ、ヒヨコハウスは大きさとは別に住むのはヒヨコ達だけだから寂しいのだ。そこで、お客さんとしてイグッちゃんが遊びに来る予定を作ったのだった。トルテにも部屋をやるから親子水入らずで過ごすと良い)」

「きゅうっ(余計なのよね!)」

 ヒヨコの助けをトルテは却下し、ヒヨコの顔をはたく。

「ピヨッ」

 ヒヨコは地面に倒れうずくまる。

「ピヨピヨッ(ぶったな!父ちゃんにもぶたれた事ないのに!…………父ちゃん見た事ないけども)」

「きゅうきゅう(キーラみたない軟弱者らしい台詞を吐くものじゃないのよね)」

 ヒヨコとトルテは喧嘩は止まらない。


「ええと、ミーシャ、何言ってるか分かる?」

「ピヨちゃんのおうちがあるらしいんだけど、トルテちゃんのお父さんが遊びに来る予定があるみたいでトルテちゃんがお父さんに会いたくないとかそんな感じ」

「きゅうきゅう(ウチの父ちゃんは人間の雌とお酒を飲んで帰ってくるダメ親父なのよね。アタシはヒヨコが悪いヒヨコにならないようお姉ちゃんとして教育してやってるのよね)」

「ピヨちゃんお子様だから仕方ないね」

「にゃー」

 トルテが訴えるとミーシャは何故か納得して、更にはうんうんと頷く子猫。

 何故ヒヨコが貶められているのだ!?解せぬ!


「久しぶりにステちゃんも一緒に寝ようよ」

 ミーシャはステちゃんに抱き付いて訴える。

 ステちゃんは困っている様子だった。マーサさんとは折り合いが悪いのだろうか?そういう風にも見えないが。

「ピヨッ!(ヒヨコはステちゃんのあったか毛布係なので付いていくぞ?)」

「ピヨちゃんとステちゃんと一緒が良い」

「もう、仕方ないなぁ。でも部屋が狭くなりませんか?」

「大丈夫だと思うけど。4~5人くらいは余裕だって話だったし」

「きゅうきゅう(仕方ないからステラに付き合ってやるのよね。寛大なトニトルテ様に感謝するが良いのよね)」

「トルテちゃんありがとー」

 ミーシャはキューッとトルテに抱き付いて、トルテは目を白黒させていた。

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