4章5話 ヒヨコと皇女様の邂逅
町長さん達と飲み会を解散してヒヨコは夜風に当たっていた。
たくさんお酒を飲んでしまったのでフラフラである。なんだか足が千鳥足になっている。はて、ヒヨコ足より千鳥足の方がしっかりしているように感じるのは俺だけだろうか?
大きな船の甲板でヒヨコが一羽、魔導灯を放つ巨大な豪華客船が暗い海を進む。
「ピヨ」
夜風が気持ちいいなぁ。
薄暗い月夜にヒヨコがピヨリ。なんてクールなんだろう。
まあ、真実はステちゃんの部屋に行こうと思ったけど酒臭いからトルテに『酒臭いのよね。どっか行けなのよね』とか言って、結局追い出されそうだから遠慮してるだけなのだけど。
もう少し優しくしてくれてもええんやないの?とモノ申したい今日この頃。
ちょっと町長さん達と盛り上がって飲みすぎてしまった。おお、ステータスに酩酊状態になってる。毒耐性があるから酒に酔わないと思ってたのに。
まあ、ちょっとくらい酔いたい気分なのだ。何せ、ヒヨコのおかげで豪華客船クルーズ&北国リゾートの旅なのに、当のヒヨコが貨物扱いって酷いだろう?
グレたくもなるのだ。
『ピヨは酩酊耐性LV1のスキルを獲得した』
『スキル効果によりヒヨコの酩酊状態が解除された』
な、何だと!?
酔いたい気分だって言った矢先に女神様の嫌がらせがここで発動した!?
「ピヨピヨピヨー」
水平線の彼方へ向けてヒヨコの遠吠えが響き渡る。
流石に冬なので海の上でも夜風が寒い。もう少し北へ行けば暖かくなるのだろうか?
ブルリと震えたヒヨコは船の縁の上に立ち、立ちションを敢行する。トイレでやれっていう人もいるがヒヨコは人間と比べて縦には大きくないが横幅と奥行きが大きいので、この船のように小さなトイレには入れないのである。
なのでこういう場所でちょろちょろとやるしかないのだ。
海面に波紋を起こしてヒヨコは用を足す。ふう、すっきり。
屋内に入ろうかなと思うと船の居住区当たりの出入り口から一人の女性が歩いてやってくる。拳が微妙に血に染まっているように見えるのだが殺人事件でもあったのだろうか?
よくよく見ればその女性は種馬皇子の妹、お姫様にして魔王様と呼ばれていた人だった。死んだのは種馬皇子か。
「え、魔物!?」
するとお姫様は俺を見るなりいきなり腰を落として手を前に出して構える。
「ピヨッ!?」
いきなり臨戦態勢!?どうする。どうするヒヨコ。
おうじょさまがあらわれた。
>おうじょさま ‐ 1ぴき
ピヨ
たたかう
>にげる
ぼうぎょ
どうぐ
ヒヨコは にげだした
しかし まわりこまれてしまった!
「知らなかったようね。私からは逃げられない」
「ピヨッ(やっぱり魔王だった!)」
ヒヨコは戦慄した。目の前の女は魔王であると理解したからだ。恐怖で足が震えてくる。生まれたての小鹿のような足になっていた。
ヒヨコ足→千鳥足→小鹿のような足、ヒヨコの足は3段変形するのだった。
だが、敵は魔王である。ならばとるべき手段はただ一つ。
「ピヨピヨ(僕、悪いヒヨコじゃないよ?)」
上目遣いで媚びるようなポーズ。僕は可愛いヒヨコですアピール。
魔物レース場のお客さんたちの心を鷲掴みにした必殺技である。ヒヨコなのに鷲掴みとはこれ如何にとは思うかもしれないが、ヒヨコの丸秘奥義である。
※このヒヨコは鷲ではありません
「何かあざとい。あやしい」
「ピヨピヨピヨピヨ(そんな事は無いですぜ、姉御。おいら、本当に無害なヒヨコちゃんでさぁ。やれというなら3周回ってピヨッとかできますぜ。何なら靴の裏をなめて恭順を示しますぜ)」
ヒヨコは命を長らえる為に必死に恭順をアピールする。
「ピヨピヨ何を訴えているんだろう?」
しまった!
しかもこの人間の女、ヒヨコ言語が分からないのだった!
通訳いない中でどうやってこの女を説得するのか?どうしようどうしよう。甲板で右往左往。ここは必殺の奥の手で……
ヒヨコは宙に飛び上がる。ピンと足を伸ばして背面へ2回転に加え3回捻ってから、膝(?)で着地し、土下座。これぞヒヨコ必殺のムーンサルト土下座、別名ヒヨコ3。
「ピヨピヨ(ヒヨコは何が悪いか分からないけど謝りますのでお許しください)」
ヒヨコの雄姿を見た魔王様、是非ご慈悲を。
「……ルーク?」
「ピヨッ?」
ルーク?誰だろう、聞いた事がない名前だ。いや、何か聞き覚えがあるような。………そう、家名は確か空を歩きそうな名前で………ピヨピロリン♪
思い出した!
その名は勇者ルーク。フォースの力を使って敵を討つ!悪を討ったら、実は父ちゃんだったのだ!何という悲劇のヒヨコ!
ピヨピヨリ。
いや、そんな記憶はないな。何の勘違いをしたのだろう?
※その著作権には決して触れないで下さい
ヒヨコはコテンと首を傾げて魔王様を見上げる。
すると魔王様はヒヨコに興味を持ったようにペチペチと顔や体を障ってくる。これはセクハラではないだろうか?いやヒヨコハラスメント?ピヨハラ?
「魔物にしてはずいぶんおとなしいのね」
「ピヨピヨ(ヒヨコは強者の前では比較的おとなしいです)」
「何だろう?こう、すごくプライドの無さそうな返答をされたような気がする」
魔王様はわさわさとヒヨコの頭をなでながら胡乱気な目で見降ろしてくる。
さらに嘴の下あたりをなでる。気持ちいい。目が細くなってしまう。
一通りヒヨコでモフモフすると、どうやらヒヨコは無害な魔物だと分かってくれたようだ。そうだ、ここはヒヨコの常に装備しているこれを見てもらおう。肩から掛けている襷にはちゃんと書いてあるのだ。
「ピヨピヨ」
襷に書いてある文字を手羽先で示しながら訴えてみる。
「フルシュドルフ親善大使?………ああ、地域振興のゆるキャラ」
「ピヨッ」
それだっと言わんばかりに王女様を差してコクリコクリとヒヨコは頷く。
「ヒューゲル様が連れてきたのかしら?まあ、無害ならいいわ」
「ピヨピヨ(そう、ヒヨコは無害です。いや、むしろ有益です。フルシュドルフダンスの達人は北方でもダンス布教活動をする所存であります)」
「何か色々伝えたいようだけど、全然わかんないわ。ふむ、賢いヒヨコなのね?それとも、中に人でも入ってるのかしら」
バシバシッ
ヒヨコの頭を叩かないでほしいのだが。壊れるから。壊れやすいから。ヒヨコの防御力は紙装甲だから!
「生身の生き物なんだ」
「ピヨ」
ヒヨコは若干距離を取ろうと後退る。だが船の舳先に追い詰められていてヒヨコは逃げられない。
「まあ、良いわ。取って食ったりしないわよ。何でそんなに怯えてるのかしら?野生の勘?」
「ピヨピヨ(確かにヒヨコには野生の勘というスキルがありますが、皇女様を恐れていたのは野生じゃない人たちも同じですが)」
町長さんも種馬皇子もイケメンオークさんも恐れていた。
「まったく、みんなして直に怯えるんだもの。大体腰抜け過ぎなのよ。ただ私は王国と戦争をしたいって言っているだけなのに」
「ピヨッ!?(この人、すごく物騒だ!)」
「何か悪いの?」
「ピヨピヨ(戦争は痛いし怖いし楽しくないぞ。ヒヨコは生きるために狩りをするのは良いけど、むやみやたらに戦うのはよくないのだ。戦争経験者たるヒヨコが言うのだから間違いない。あまり覚えてないけど)」
フイフイッと首を横に振ってみると魔王様は顎に手を当てて少し考え込む。
「王国を討つ大義名分はあるのよ」
「ピヨピヨピヨピヨ(喧嘩する理由があろうと喧嘩をしない努力をすべきだとヒヨコは思うのです)」
それはそれ、これはこれといった感じでジェスチャーしてみる。するとふむむと魔王様は腕を組んで考えこむ。おお、話が通じたようだ。
「……わかってはいるのよ。愚かだってのは。でも何で勇者様が殺されなければならなかったの!?悪いのは王国じゃない。あの国を叩きのめせるのは帝国だけなのよ。だったらやるべきでしょ?」
「ピヨピヨ(なるほどなるほど。よくわからん)」
ヒヨコはコテンと首を傾げて魔王様を見る。どうやら魔王様は……何を言っているのかよくわからんのだ。勇者が殺されて、悪いのは王国で、王国をとっちめられるのは帝国。
ヒヨコに適当にしゃべっているからきっと伝える気がないのだろう。
そんなヒヨコの気持ちが伝わったのか、魔王様は船のヘリに腰を掛けて大きく溜息を吐く。
「勇者様は王国に騙されていたのよ。勇者様は、世のため人の為と命をとしてたった一人で悪魔王ベルファゴスを倒したけど、王国はその権威を全て奪う為に、勇者様を偽勇者として殺し、アルベルトのようなザコを勇者として祭り上げた。にも拘わらず、あの国はのうのうと存続している。世界を救った英雄を自分たちの利益の為に殺すなんて、許されない事をしたというのに」
「ピヨピヨピヨピヨ(そもそも勇者が偽物でなかったという証拠はあるのか?)」
ヒヨコは不思議に思って尋ねてみる。まあ、伝わってはいないようだ。
そもそも王国の人間が勇者だったから、どっちでも良いような気がするが。
「私は男装をしてラファエルという名で、かのパーティにいたのよ。私だけが真実を知っているのに、誰も話を聞こうとしないわ」
「ピヨピヨッ!(なんと、魔王様が勇者パーティ?………これまた衝撃の事実。ヒヨコパーティでも敵うまい………)」
驚きの声が出てしまう。
ヒヨコパーティ:勇者ヒヨコ、占い師ステラ、遊び人トルテ、
実際の所、ヒヨコパーティの戦力が微妙だ。戦闘職がヒヨコしかいないではないか。
それはそれとして、皇女さんが何故に男装を?
いや、そもそも、どうやって男の振りが出来るのだろうか?
明らかに男にはついていないものがある。胸元についている二つのふくらみはどうやっても隠せるものとは思えない。ステちゃんにもついていないものだ。
と言ったら殴られそうだからステちゃんにはオフレコで。
それにしても勇者君にはバレなかったのだろうか?
すると魔王様はヒヨコの視線に気付いて
「勇者様は鈍感でちょっと……いや、ものすごく迂闊な人だったからバレる事は無かったけど。自称聖女に誑かされて、必死に敵と戦っている頃、恋人だと思っている自称聖女は王国の貴人と逢瀬を楽しんでいた程度には騙しやすい人だったから」
「ピヨピヨ(なんだか残念な男だな。ヒヨコと違って迂闊な男なのだろう)」
ブブーッ
何やら警告音が鳴り響き、ヒヨコの目の前に神眼によるヒヨコステータスが開かれ、『迂闊者』の称号が点滅していた。
え?ヒヨコも迂闊だと?しかし気付けばついていた称号。ヒヨコの記憶にない以上、ヒヨコには関係のない事である。
簡単に女に騙されて殺されてしまう愚か者としか言いようがない勇者君と利発なヒヨコを比べないでもらいたい。
ブブブーッ
何やら警告音がもう一度鳴り響き、ヒヨコの目の前に神眼によるヒヨコステータスが開かれ、『真の愚者』の称号が点滅していた。
何だろう、これは。これが女神様の突込み、略してメガ突込みという奴だろうか?通常の100万倍の威力。ヒヨコは死ぬ。
「ピヨピヨ」
「分かってくれるか!」
ヒシッと魔王様はヒヨコに抱き着いてくる。何だろう、何か話が続いていたのだろうか?ヒヨコは自分のステータスと戦っていたので気付かなかったが、良い感じの相槌を打ってしまったのか?
なんという事だろう。ヒヨコの天賦の才は伊達ではなかった。
「ともに王国を滅ぼそうじゃないか!」
魔王様の言葉にヒヨコは凍り付く。どうやらとんでもないタイミングで相槌を打ってしまったようだ。なんて迂闊な…。
するとピコピコとヒヨコの神眼に映るステータスに迂闊者の称号が7色に点滅していた。女神さまがなんだか勝ち誇っているみたいで腹が立った。
「ピヨピヨ」
ヒヨコはどうどうと魔王様をお収めしようとクールダウンするようにジェスチャーする。
「そこを収めろと?」
「ピヨッ!」
「ならば負け戦であろうと私の名を使って人間を集めて一戦やらかすのみよ!」
魔王様はまさに殺る気満々であった。
このお方はどこのいくさ人だろうか?ヒヨコとは生きてる世界が違う気がする。見た目は美しき令嬢だというのに、中身は戦の時代を生きているもののふのようであった。
だが、ヒヨコは戦争で多くの人が犠牲になるからよくないと思うのだ。
天下のかぶき者ならば『負け戦だからこそおもしろい』とかいうかもしれないが、天下のヒヨコ者は多くの民が苦しむのは見ていられない。
いくさによって飢える彼らはヒヨコを見て思う事になるだろう。『オオキイヒヨコ、オイシソウ』とな。その状況はヒヨコの望む事ではないのである。ヒヨコは民を苦しめる戦が嫌いなのだ。
巡り巡ってヒヨコがピンチ。
だからヒヨコは戦が嫌いなのである。
「何だ、文句でもあるの?」
「ピヨピヨ」
慌ててヒヨコは首を横に振る。魔王様の本気の迫力は真に迫るものがあった。
なるほど種馬皇子や町長さんが及び腰になるのも分かる。
ヒヨコは生きながらえる為に必死に首を横に振る。それほど目の前の魔王様は美しくも恐ろしい存在だった。
そう、彼女は皇女でありながら勇ましく凶悪、つまり………
ピヨピヨリーン
この魔王様は今日から残念皇女さんだ!
なのでヒヨコは一生懸命ジェスチャーを駆使して、戦争を避けて平和裏に王国を潰したら如何かと説得を開始する。ヒヨコの説得よ、届け!
「つまり、王国の民全てを皆殺しにしろと?王国民すべて我が餌にすべし?さ、さすがにそこまではやりすぎだと思うんだけど」
「ピヨッ!(なんでやねん!)」
まさかの誤訳。ヒヨコはそんなに凶悪ではない。こんな事をしでかしたら最強ヒヨコ伝説が最凶ヒヨコ伝説となって後世に語り継がれてしまうではないか。
もっと穏便にお願いします。
※この物語は最初から最凶ヒヨコ伝説です。
『戦を辞めよう』と伝えたかったのにどうして『戦でもっと殺せ』という誤訳されてしまったのだろうか?誰か説明してもらいたい。
「そうね。ヒヨコがあまりに残酷なことを言うから、気付かされたわ。せめて関係者の国王、王太子、偽聖女、それに女神教会の王国支部のトップくらいで我慢するべきね」
とんでもない誤訳だったがそれが逆に冷静になって頂けたようで何より。
だが、偽聖女?
なんだかがっかり感のあるフレーズである。王国は変人が多いのだろか?考えてみれば種馬皇子と残念皇女という変な子たちがいるのだから帝国も大差ないのだろう。目糞鼻糞を笑う。50歩100歩といった所か。もとより、次期皇帝が失脚しているしな。大丈夫なのだろうか、この大陸。
とはいえ、王国から王様と王太子を抜いたらとっても大変になるのだと思うが。
「ピヨピヨ(それはそれで国が滅びそうですが………。考え直していただき恐縮です)」
勇者を欺いて殺したのがそのメンバーなのだから戦争で叩き潰しでもしなければ首を差し出すとも思えないのだろう。
きっと残念皇女様の中では
勇者様が殺された
⇒王国の主要人物が犯人
⇒王国の主要人物の犯罪を暴いて国際的に処罰したい
⇒でも王国は絶対に譲らない
⇒譲らないなら戦争で勝利して要求するしかない
という途中式があったのだろう。だが、
勇者様が殺された
⇒よし、王国と戦争だ
としか聞かされていないとみんなが不安になるだろう。頭大丈夫なの?と。
途中式が分れば、もう少し議論の余地がありそうだ。
「とはいえ、噂では自称本物の勇者は聖剣を咥えた魔物に襲われて片腕を失い、既に国の要職から降ろされてクーデターを起こして死んだというし。天罰でも下ったのね」
「ピヨヨ?」
どこかで聞き覚えのある話だ。そういえばヒヨコも獣人たちを守って口に剣を咥えて戦った記憶がある。
剣を咥えて戦う魔物、ブームなのだろうか?ヒヨコの作ったムーブメントに他の魔物が乗ったのか?
ヒヨコが首をひねっていると、一通り話して満足したのか残念皇女様はヒヨコの頭をワシワシと撫でてからその場を去っていく。
ヒヨコもまた貨物室へ戻ろうと歩いていくと、途中で種馬皇子がイケメンだった面影がないほどタコ殴りにされて転がされていた。血まみれである。どうやら残念皇女様がヒヨコの近くに来る際、拳を血に濡らしていたのはこれが原因のようだ。
「ピヨッ!?」
ヒヨコは目の前の死体を見てとりあえず肩を嘴でつついてみる。
返事がない。ただの屍のようだ。
ヒヨコは冥福を祈ってから、その場を去ろうとすると、
「う、う~ん。もう、たべられないよ~」
何んともテンプレな寝言を口にする種馬皇子がいた。
どうやら生きていたか。
しかし、こんな状態だが、意外とタフだったらしい。
この男、思えば町長さんと同じく紅玉級冒険者だったはず。
妹を宥める為に甘んじて殴られたのだろうか?よくよく見れば魔法系のスキルも豊富だ。エルフのお兄さんが師匠だったらしいし、魔法職ではないようだが魔法剣士というジョブのようだし、回復魔法も持っている。
最初は猟奇殺人が行われたのかと畏怖したが、犯人は明らかな上に、犯人が逃亡できる場所でもないので問題はないだろう。というか犯人が暴れたらやばそうだから放置だな。
そもそも紅玉級冒険者パーティが本気で残念皇女さんを無力化しようと思えば出来た筈だ。
町長さんのスキルとエルフのお兄さんのスキルがあれば余裕で完封できる。対魔法に特化していて、賢者の称号を持つ魔法使いが二人もいて、才能があると言っても若い賢者がどうにかなるとは思えない。
残念皇女さんを帝都から離すというよりは、怒り狂っている残念皇女さんを帝都から離して気晴らしでもさせてあげようという計らいなのかもしれない。
お茶らけているようで彼らも経験値の高い大人だ。
あれ?あの人たちって真っ当な大人か?
まあ、残念皇女さんよりは心に余裕のある大人なのは確かだ。
残念皇女さんの言い分が悪いなら説得する所だが、それをしないとする皇女様の言い分が完全に間違ってはいないのだろう。
詳しくは明日にでも町長さんに聞いてみよう。
とりあえずここで転がっているズタ袋みたいな感じのブサメンになっている種馬皇子の顔を治すか。
「ピーヨ(<治癒>)」
ヒヨコの神聖魔法によって種馬皇子さんの体が治っていき、ボコボコの顔が元の顔に戻っていく。
「ピヨ」
とりあえず、貨物室に戻ろう。
ヒヨコの寝床をどこか探さないといけないな。そんなことを思いながら暫定の寝床である貨物室へと向かうのだった。
女神「あとがき担当の女神です。なんと、今回はゲストにヒヨコのピヨちゃんを呼びました」
ピヨ「はて、『知らない天井だ』という事を言ってみたかったので、いつも立って寝ているのに、貨物室においてあった角材を斜めに立たせて寄りかかりながら寝ることで天井を見て寝ようとしていたのに、何でこんな場所に」
女神「いや、別にどうでも良い事やっていますよね。あと昨晩もやっていましたよね」
ピヨ「今朝は残念なことに起きた時にうっかり忘れていて口にしなかったので今朝こそは………って、誰だ、お前は!」
女神「今になって驚かれても。まさか忘れました?」
ピヨ「はっ………白い翼の生えた人間………………お前が俺の母ちゃんか!」
女神「違います。そしてそのネタは私に対して二度目です」
ピヨ「違うのか。で、ここはどこ?ヒヨコはピヨ?」
女神「記憶喪失のような質問をしないでください。とはいえ、その通り貴方はピヨです。そして、ここは『最凶!ヒヨコ伝説』のあとがきゾーンです」
ピヨ「ピヨッ!?……最強ではなく最凶……だと?では俺は王国を皆殺しにしてしまったとでもいうのか!」
女神「いえ、元々最凶でしたけど」
ピヨ「タイトル改正に物申す!どこら辺が最凶だというのだ!」
女神「迂闊な行動ばかりする鳥に生まれ変わった事が大吉か中吉か凶かといえば最凶かと」
ピヨ「ピヨヨ~ピヨピヨピ~ヨ~ピヨヨ~ピヨピヨ~(※バッハ作『トッカータとフーガニ短調』)」
女神「じゃあ、どんなタイトルが良かったのでしょう?念の為に教えてください」
ピヨ「ピヨピヨ、そうだな。『ヒヨコの下克上~鳥になる為には手段を選んでいられません~』というかんじでどうだろう?」
女神(何故でしょう?ヒヨコはなろうを知らない筈なのに、思い切り方向性がシュンスケと被っていますが)
女神「残念ですが似たようなタイトルがあるのでダメですね」
ピヨ「なるほど。残念だ。では『ヒヨコのひとりごと』で行きましょう。日々、ヒヨコのピヨピヨに隠された声が聞こえます」
女神「それも似たようなのがあるので」
ピヨ「むむむ、難しいな。では『ヒヨコ、大きさは平均値でって言ったよね!』という感じで。若干大きい体が不便なのでここら辺をどうにかしたいのだが」
女神「OK。前世も現世も同じ方向性にしか行けないという事が分かったので、もう貴方にタイトル案を聞くのは辞めましょう」
ピヨ「何故?3つ案を出しただけなのに人生どころか魂の存在までも否定された気分だ」
女神「では今後の目標などを聞いてみましょう」
ピヨ「むむむ。目標か。ならば、このヒヨコ伝説を有名にして、やがてはこの小説を読まれている国の首都に我が姿を形どった饅頭でも作って売れる位有名になりましょうぞ!銘菓ヒヨコ」
女神「いや、既にあるので今から作るのは商標的に厳しいかと。パクリ扱いですね」
ピヨ「あるの!?そんな~」
女神「ええ」
※東京銘菓ひよ子は株式会社ひよ子様より販売されています。当然ですが、本物語のヒヨコとは一切関係がありません。
ピヨ「そうか……ではその国一番の人気キャラクターに成り代わるのはどうだろう?」
女神「大きく出ましたね。パッと思い付く限りでは某ゲームキャラクターにしてアニメキャラクターとしても有名なピカ●ュウでしょうか。まあ、黄色と黒の電気ネズミですね。大体、向こうの世界ではネズミが人気です。首都にあると偽っている隣の県にある有名テーマパークのネズミもクラスのリーダーですし」
ピヨ「くくくくく、所詮はネズミよ。語学堪能なヒヨコの前では電気ネズミなど電気蜥蜴のトルテの上位互換でしかないわ」
女神「語学堪能って………ヒヨコは念話でこそ色々と喋ってますけど実際はピヨしか喋ってないじゃないですか」
ピヨ「ピヨッ!?そんな馬鹿な!ほ、他にも言っていた筈。ピヨコロリとか、ピヨヨヨーンとかピヨピヨリとか」
女神「それ、全部貴方の心の声であって、実際に喋っていませんよ?」
ピヨ「そ、そんな~」
女神「向こうは少なくとも『ピ』と『カ』と『●ュー』の3音は使いますからね。『ピ』と『ヨ』の2音しか使わないヒヨコとでは勝負にならないかと。しかも1文字かぶってますし」
ピヨ「そうか、ヒヨコは何をやっても二番煎じだったのか。だが、破壊力ならば負けない!そう、強さこそが全て!焼肉定食のこの世界において攻撃力が全て!」
※本ヒヨコは弱肉強食を焼肉定食と勘違いしています。
女神「残念ながら敵はテレビ画面の越しから国中の視聴者をも無差別に倒すような恐るべき力を持っているので勝負にならないでしょう」
※若い子は知らないかもしれませんが、1997年に某アニメを見ていた子供達が光過敏性発作による体調不良を起こす事件が発生し、放送が休止された事が有ります。
ピヨ「マジカ!?………異世界恐るべし」
女神「さて、次回の話ですが…『ヒヨコ、進化する』です。おめでとう」
ピヨ「ま、まさか母ちゃん」
女神「母ちゃんではありません」
ピヨ「ピヨピヨリ。女神様。ついに次回最終回ですね!?そうか、だから今回、あとがきに呼ばれたのか!最凶ヒヨコ伝説~完~…………ありがとう、ありがとう。皆さま、ご声援ありがとうございました。次回、ヒヨコは羽搏きます。そして次々回からはタイトルの変更『鳥ですが、なにか?』に変更と相成ります」
女神「………」
ピヨ「それではまた来週!サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」
(勝手に去っていくヒヨコ)
女神「と、いう事で4章は序盤がやっと終わり中盤に入ります。まだまだ続きますのでご心配なく。タイトルも変わりません。ちなみにここでの出来事は綺麗すっぱり忘れる設定なので問題ありません。まあ、覚えていても問題ないのですけどね。だってヒヨコですから」