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1章5話 ヒヨコ、獣人族の集落に辿り着く

※今回は名作文学シリーズです。

「ピヨッピヨピヨ、ピヨピヨピヨピヨ、ピヨヨ」

「大きい草木は蹴り飛ばせ、ちっちゃいモンスターも蹴り飛ばせ」

「ピヨッピヨピヨ、ピヨピヨピヨピヨ、ピヨヨ」


 リズミカルにピヨピヨと鳴きながら森を歩く俺と、俺に乗る猫耳少女。

 背は低く成人男性の腰元程度。恐らく10歳満たずという感じだろう。茶色い髪に茶色い瞳、どこにでもいそうな猫人族だ。髪は肩口まで伸びており、可愛いらしい顔立ちの少女だ。

 まあ、この世界の獣人が何歳でどのくらい大きくなるか分からない為、正確な年齢は分からないが見た目からして8~9歳児くらいと見た。

 何でこんな少女が森の中をうろうろしてたのだろうか?そもそもどこに向かってるのだろうか?


「ところでヒヨコさん。どこに向かってるの?」

「ピヨッ」


 え、この子について行っただけなんですけど!?本人が行く方向知らないんですか?


 少女の何気ない質問に俺は驚愕する。

「もしかして迷子さん?」

「ピヨ……」

「じゃあ、私がお家に連れてってあげる!」

 少女はビシッと遥かなる山の頂上の方を指す。はるか遠くにある白い雪に覆われた山だった。残念ながらその山は違うと思います。


「ピヨヨピヨピヨピヨピッヨピヨピヨ?(君のお家に連れて行ってほしかったんですが?)」


 どうしてそうなるの?そもそもお家知らないし。崖から落ちたので、この惰弱なヒヨコボディでは今更、崖の上に登る気も起きないんですけど。


「それとも家出したの?ダメなんだよ、家出しちゃ。お母さんにメッてされちゃうの」

「ピヨピヨ」


 俺の思いは全く伝わらないようで、明後日な方向性の返事が返ってくる。

 どうやら全く言葉が通じてないらしい。俺が人間だったとしても、少女の論理が分からないのだから仕方ない。この少女は天然さんの上、子供は突拍子もないから仕方ない。

 しかも残念な事にヒヨコボイスからは人語を捻り出したくてもピヨピヨしか出てこないのだ。


「家……………????……そういえば私のお家、どこ?」

「ピヨヨ、ピヨピヨピヨヨピヨピヨ!(むしろ、自分が迷子じゃないか!)」

「ふえーん、お母さーん」

「ピヨー、ピヨッピヨッ」

 俺は必至になだめようとするが猫耳少女は泣き止む様子が無かった。


 くそっなんてこった。迷子の子猫ちゃんのお守なんて俺に出来る筈もない。どうしよう。どうしよう。こんな所で泣かれたら魔物が近づいてくるかもしれないし。


 そんな時、何者かの足音がものすごい勢いでこちらへと向かってくるのが聞こえてくる。


「魔物め!ミーシャから離れろ!」

 短剣をもって俺と猫耳少女の間に入るように滑り込んでくるのは茶色い髪の上に茶色い犬耳をつけた青年だった。ギラリと光る刃を俺に振るうが、俺はスウェーバックで慌てて避けて背後に丸いボディをピヨコロリと転がして、どうにか立ち上がる。

 俺の前に現れたのは切れ長の瞳を持った美形な犬人族である。


「ふえ……お巡りさんだー」


 迷子の子猫ちゃんの前に、犬のおまわりさん登場である。

 迷子の子猫ちゃんはヒシッと犬のおまわりさんに抱き着く。これで俺も迷子の世話をせずによくなったのだが、………俺が拙くないか?


 どうやら俺が子猫ちゃんを襲って泣かせてる風になっているように見える。


 ジリジリと近づく犬のおまわりさん。

 ジリジリと下がる(ヒヨコ)


「お巡りさん、ヒヨコさんを虐めちゃだめだよ」

「い、虐めちゃダメって……こいつは魔物で君を食べようとしてたんだよ」

「ふにゃ?」


 やっぱり食べようと思われていたらしい。ちょっとショックだけど、自分でもそういう風に見えるだろうなとは思っていた。

 幼女というの近づいた誰かを犯罪臭を匂わすように見せる属性があるのだ。


「ピヨピヨ、ピヨ、ピヨピヨピヨヨピヨピヨ?(ボク、わるいヒヨコじゃないよ?)」

「ほら、悪いヒヨコじゃないって言ってるよ」


 おおお、ついに俺の言葉が分かったか猫耳少女よ。

 俺は感動に打ちひしがれていた。


「だが、こんな巨大なカラーヒヨコなんて見た事も聞いた事もない。とんでもない魔獣の雛かもしれない。村に連れ帰って、後で親鳥が怒ってやってきたらどうするんだ」

「大丈夫だよ。このヒヨコさんはきっと親鳥さんを説得してくれるよ。こんなに可愛いし。きっと将来はヒヨコブレイバーになるの」

「ピヨピヨピヨヨピヨ(さすがにそれはない)」

 俺は翼を使ってそれを否定するよう横に振る。元勇者ですが、さすがにヒヨコブレイバーはないだろ。ピヨピヨのヒヨコですよ?

 なったとしても鳥だ。


「ほら、ヒヨコさんも否定しているだろ?んん?……もしかしてお前、俺達の言葉が分かるのか?」

「ピヨ」

 俺はコクコクと首を頷かせる。

「ふーむ、信じられん。たかが魔物の雛のくせに」

「よくわかんないけど大丈夫だと思うの」

「い、いや、それ全然大丈夫じゃないと思うが……。と、とにかくこの魔物の雛とは別れよう。な?」

「うううううう」

 ジンワリ涙をためる猫耳少女。まさに泣いてばかりいる子猫ちゃんに、犬のおまわりさんは困っていた。


「はあ、仕方ない。村長様に相談しよう。今すぐ暴れる様子もないし、厄介そうなら長老に縛って貰えば良い。良いな、ミーシャ」

「やったー」

 犬のおまわりさんが折れたようだ。


 こうして、俺は猫耳少女、ミーシャと呼ばれる子供と一緒に犬のおまわりさんに保護されるのだった。




***




 森の中の長い獣道を抜けると集落が見えてくる。森の木々に隠れた細い道を抜けると暗かった空が明るくなる。


 辿り着いたのは獣人族の集落だった。森に囲まれた小さい木の家が立ち並び、田舎の農村のような小ざっぱりした印象を受ける。


 俺は犬耳の青年に連れられて、猫耳少女ミーシャを背に乗せながら入口まで歩く。

「ベン。ミーシャは大丈夫だったか」

 村の入口付近に立っていた犬耳の青年は槍を俺に向けて警戒した様子で訊ねる。とはいえ、俺の背にはミーシャが乗っているので何かするという様子はなかったが。


「ええ。結局、迷子になっていたようで。全く子供なのに無茶をする子だ」

「まあ、マーサ様の子供だしなぁ」

 乾いた笑いをする二人。


「と、ところでその魔物は?」

「さあ、ミーシャがなんだか手懐けたようで………」

「……まあ、エミリオ様の子供だしなぁ」

 再び二人は乾いた笑いをする。


 両親からして問題児だと言っているように聞こえるのはヒヨコだけではないだろう。

 手懐けられた覚えはないが、まあ、いたいけな子供を虐める趣味はない。


「ヒヨコさんは良い子なの。怖い鎧の人達から助けてくれたの」

「「は?」」

 2人の大人が凍り付く。そういえば、まだ人間に襲われていた話を伝えてなかったなぁ、と俺はぼんやりと考えていた。


「鎧の人とは?」

「何か怖い人間だったの。私を捕まえてどっかに連れて行こうとしてたの。でもね、ヒヨコさんが助けてくれたの」

ピヨピヨまあね

 まだステータスは低いけど、意外と強力な嘴スキルがあるからキラーマンティスや鎧の騎士とも戦えたのだ。幸運が大きいけど。


「ま、まさか人間が攻めて来たのか!?」

「もうここまで来ていたとでも……」


 パニックを起こす男達だが、ミーシャは意味が分からず首を傾げていた。なので大人を無視するように俺の頭をペシペシ叩いて

「ヒヨコさん、私のお家に連れてって」

 とか言い出す。


「ピヨ!?」

 そんな道を知っている筈もない。恐るべしお子様。まさかの無茶振りである。


「まて、ミーシャ。一体、その男達はどんな鎧を付けていたんだ」

「ほえ?えーと。白いライオンさんだったの」

「「なっ!?」」

 大人達は絶句する。


 ぬぬぬぬ?ヒヨコの微妙な視界ではよく分からなかったが、白い獅子の紋章?

 まさか、アルブム王国ではなかろうな?異世界ではなく、まさかここは俺が前に生きていた世界という落ちではないか?

 思えばさ迷い歩いた森も、獣王国の大森林によく似ていた気がする。


 凍り付いている大人達をよそに、ミーシャは俺の頭を引っ張って自分の家に進むように指をさす。俺はそれに従うようにミーシャを乗せて、ピヨピヨと歩きながら小さな家へと向かう。


 家の前に辿り着くと、ミーシャは俺から飛び降りて自分の家へ飛び込んでいく。忙しい少女であった。なので俺もそれについて行こうとしたのだが………

 ヒヨコはログハウスの中に入ろうとしたが、体が玄関に閊えて中に入る事が出来なかった。諦めるように玄関の前で座り込み、ヒョコリと顔だけ出して様子を観察する。


「ママー、薬草を取って来たの。これで病気治る?」

 ミーシャはポーチの中から薬草を取り出そうとする。ガサガサと探すが出てこない。

「あれれ?…………………………あ」

 ミーシャは俺の右手羽元辺りに張られてある薬草を見て気付く。どうやら取って来た薬草を俺に使ってしまったらしい。

 ぬぬぬ。今から剥がして使えないかな?


 俺とミーシャが困っていると

「ゴホッゴホッ……お外に出ていたの?危ない事をしてはだめじゃない」

 母親はミーシャの頭を撫でながらも行動に対して咎める。


 確かにこの森は獣人でも厳しい場所だ。子供の一人歩きなんて危なすぎる。というか、サーペントってC級冒険者パーティでようやく倒せるような魔獣がいるのだ。いくら身体能力に長けた獣人でも厳しい相手である。ましてお子様ではなおさらだ。

「ヒヨコさんがいたから大丈夫なの」

「ヒヨコさん?……お、…………大きいヒヨコさんね」

「ピヨピヨ~(ですよね~)」

 俺も同感とばかりに頷く。


 ミーシャのお母さんの方は俺を見て思い切り引きつっていた。だが、その気持ちは痛い程よく分かる。俺だって自分の大きさを知った時は結構引いたからだ。こんな巨大ヒヨコ見た事ない。

 しかも火まで吐くんだぜ。どんなヒヨコだよ、おい。


「そのヒヨコさんは何て名前なの?」

 ミーシャの母は聞いてくる。

 俺はヒヨコである。名前はまだ無い。どこで生まれたか見当がつかぬ。何か卵の上でピヨピヨ鳴いていた事だけは記憶している。


「ピヨちゃん」

「ピヨッ!?」

 だが、勝手に名付けられてしまった。勝手に名付けないで欲し……って、


 コラーッ!女神様!勝手に俺のステータス欄の名前を『ピヨ』に書き換えるな!どういう事だ!


 驚くべきことにいつの間にかステータス欄の名前の部分が一瞬で名無しの『―』だったのが『ピヨ』に代わっていた。

 名前が勝手につけられていたのだ。

 そのあまりにあんまりな名前にヒヨコは激怒した。必ず、かの傍若無人の女神を説教してやらなければならぬと決意した。


 だが、怒りの続かぬ俺は、打ちひしがれたように座りこむ。すると、俺の後から白衣を着た猫耳の老人が現れるのだった。

「おーい。マーサさんの診察に来たぞい。玄関に座ってるヒヨコをどかしてくれんかの」

 家の中に老人が声を掛ける。


「お医者様。踏んづけて入って来て大丈夫なの」

「え」

「ピヨ」

 ミーシャのとんでもない発言に白衣の老人と俺は驚愕の声をあげて互いに見合わせる。

 互いにそれはさすがにないだろうと言う目と目の会話で話し合う。

 一拍して、俺は横に体を引きずるようにスライドして玄関のスペースを開けると、白衣の老人はそのスペースを歩いて部屋に入る。

 良かった、お医者さんは良い人だった。


 ミーシャ、恐ろしい子!


「ほれ、ミーシャ。診察に入るからちょっと家から出て行こうな。そういえばさっきお前、ヒヨコを連れて村長様の方へ行くようにベンの奴が言っていたぞ」

「そういえばそうだったの。ヒヨコさんをお祖父ちゃんのお家に連れて行かないと行けなかった気がするの」

 ミーシャはピョコンと耳を立たせて、ポムと手を打つ。

「じゃー、ヒヨコさん。お祖父ちゃんの家にGOなの」

「ピヨピヨ」

 だから、俺はこの集落の地理は全く知らんのだ。あたかも知ってるかのように指示しないでもらいたい。

 俺はミーシャを乗せて諦めて村長さん?お祖父ちゃんとやら家とやらを探しに向かう。


 とはいえ、ミーシャの母親が病気っぽいのでちょっと気になった為、そっちの方へと耳を傾ける。

 ヒヨコイヤーは意外と何でも拾えて便利だった。


 俺はミーシャを背に乗せながら、集落を歩きつつ、医者とマーヤの会話を盗み聞く事にする。


「すまないね、マーサさん。私が口を滑らしたばかりに。薬草なんかで治る訳もないのに、まさかあんな危険な事を…」

「いえ。でも……今回は良かったのかもしれません。私も長くないですから。ペットが出来れば私がいなくなってもきっと寂しくないだろうし」

「そう言わんでください。私も最大限努力しますから」

「そうですね」


 なんか、明るいミーシャを背に乗せながら、残された家ではその母親と医者が物凄く深刻そうな話をしていた。もしかしてミーシャの母親は命に関わる病気なのだろうか?


 ところでペットって俺の事ですか?


 何となく納得いかないが、取り敢えず村長とやらの家へとヒヨコ足を向けるのだった。どこにあるか知らんけどな。

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