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19話 百鬼夜行の長にピヨはなる

 僕が生まれてから900年の時が経つ。

 お母さんは僕と同じ狐さんだ。お母さんはこの国のミカドってのを誑かして僕を産んだらしい。

 だけど、オンミョージって人に狐だってことがバレて逃げたんだってさ。しかも英雄とか言われる人たちが集団でお母さんを捕まえて封印する為に追いかけて来たんだって。狐は騙すものなのに酷いよね。

 お母さんは頑張った。よく分からないけど超頑張ったらしい。怪異の女王様なお母さんはどんな封印をかけてもかけても逃げようとしたらしいんだ。それが問題だったらしいの。

 人間達はお母さんが隠れる為に石に化けたら、人間達はその石をこの地を守る龍神様に食べさせたんだって。なんでも人間さん達は龍神様を良いように利用していたけど、その封印が解けそうだったから、お母さんと龍神様を弱らせたかったんだってさ。


 え?ハブとマングースかなって?

 僕は狐であってマングースじゃないよ。それに龍神様は毒を持ってなかったよ。え?毒のないヒドラ君なんてヒドラ君じゃない?それって泣く程の事なのかな?毒があったら、僕生きてないよぉ。


 それはそれとして、その結果、お母さんは生き延びるために怪異の王様のお腹の中で頑張ったんだって。ぼっとしていると消化されちゃうんだってさ。恐ろしいよね。

 あ、僕がいつ生まれたのかって?300年前くらいかな?お母さんは産みたくても中々産めなかったらしいの。お腹の中に何百年も入れたまま、龍神様のお腹の中で戦ってきたんだって。

 お腹の中にいるお母さんのお腹に何年もいるのは大変だな、だって?でも生まれたらそのまま元怪異の王様に食べられちゃうからダメなんだって。

 へー、君も長い間、卵の中にいたの?卵の中って快適?君も同じくらい卵の中にいたって?奇遇だね。

 え?生まれ変わったらそんなヒヨコだった?リンネテンセーってやつだね?

 何でそんな難しい四文字熟語を知っているのかって?ふふん、僕はお母さんにいろいろと教わって生きてきたから賢いんだよ。タイキョーっていうんだって。


 それでね、お母さんが寿命を迎えつつあったから、最期に頑張って僕を産んだのが300年位前だったと思うんだ。こうして生きてこれたのはお母さんのタイキョーのお陰だよ。

 ん?寂しくないのかって?そりゃ、寂しいけど生きていく知恵はお母さんから教わって来たからどうにかなったよ。龍神様のお腹を食べれば生きていけるんだって。

 え?お腹は美味しかったかって?僕は龍神様のお腹しか食べたことが無いから分からないよ。偶に草とか石とか動物の死体が落ちていたから食べたけど、酸っぱいから美味しくなかった。あれはくさっていたのかな?そういう意味では元怪異の王様が一番美味しいのかな?


 でもびっくりだよね。さっき突然、龍神様のお腹が潰れだしてね。

 お腹も呪力から反発しなくなったから、もしかしてここから逃げれるかなぁ、と思って外に出ようとしたら外から僕に向けて殺気が向かってくるんだもの。聞いていた通り、人間ってコワッ!って思ったの。

 そこで、幻術を使って目をそらしている内に逃げようって。えっ……………、上手くいってた?そっかぁ、良かった~。


 ところであの狐は何だって?

 お母さんだよ。生まれて出てきたときに横たわって死んでたお母さん。寂しい時は幻術で再現してたんだよ。毛触りとかこだわってみたけど、如何かな?

 初めて見た外の景色は何か聞いてたのと違うし、いきなり人間さんと戦う事になりそうだったし、幻術で気を引いてもらってさっさと森の中に逃げようかなって。


 ところでヒヨコさんはどこのヒヨコさん?


 え?ヒヨコさんが新しい怪異の王様だったんだー。駿介が暴れているから、いい加減終わらせて欲しいって?でも人間さんって怖いんでしょ?王様どうにかしてくれるの?

 ど、どうにか出来ちゃうんだぁ………。

 凄いなぁ、王様は。え?ピヨちゃん様っていうの?ピヨちゃん?……様はいらないの?

 そっかぁ、ピヨちゃんはえらいんだねぇ。

 でも戻りたくないんだけど。ピヨちゃん助けてくれる?ホント?ホントにホント?

 分かったよ、一緒に戻るよぉ。




***




 駿介が木刀を握りながら次々と攻撃してくる双尾の大妖狐は食らっても死んだりしない。吹き飛んでも吹き飛んでも復活する。攻撃をすれば大爆発するし実際の魔力による攻撃もできる。

 なるほど、狐が化かしているにしては再現能力が高すぎる。


「分かった!これは式神と同じ感じだろ」

 駿介は大きく後退って陰陽お姉さんたちの方に訊ねる。

「うっすらとそう感じてはいたけど、私達じゃ攻撃が届かないから。強力な呪力体と言ってもあまりにも無尽蔵すぎるわ」

「うーん、どうだろう?」

 駿介と陰陽お姉さんはうんうんと考えながら大妖狐さん(幻)と戦っていて、陰陽お兄さんは腕を組んで考えていた。

「何か違うのか?」

 駿介は陰陽お兄さんを見る。

「狸や狐の類の化かされ方に似ている。本物がどこかに隠れていて実物がどこかにいるんじゃないか?」

「化かされるって、狸や狐の化かされ方ってここまで本格的なのか?」

「過去には本物の高位僧侶が化かされるレベルだからね」

 陰陽お兄さんが腕を組んで悩まし気にぼやく。

「………はっ!だったら、ヒヨコだ。ヒヨコ。お前、最初から分かってただろ!何で言わなかった!?」

 駿介がヒヨコを探すので、ヒヨコはキツネ君の頭に乗ったまま駿介を見上げる。

「ピヨピヨ(ヒヨコが何か言おうとする度に無視する上に、勝手に遊んでるから、何かしたいのかな?と眺めていただけだが)」

「言えよ!こっちは必死に戦ってたのに!」

「ピヨピヨ(ヒヨコには楽しそうにしか見えなかったのだが?)」

 ヒヨコの説明に陰陽お姉さんはそう言えば、みたいな顔をしていた。陰陽お兄さんは溜息を吐きながら赤い空を仰ぐ。

「で、あの幻術はどうやれば解ける!使ってる本体を探し出してくれ!」

「ピヨピヨピヨ(と、いう事なので、キツネ君よ。ご本人が解いてあげて欲しいのだが)」

「フォン(分かったよ、ピヨちゃん)」

 すると大妖狐の姿が消えていく。




………




「って、何でいつの間にヒヨコが狐の頭の上に載ってるの?っていうか、その狐誰?」

「ピヨピヨ(キツネ君は龍神様とやらの腹の中に封じられていた玉藻前という怪異の王の息子らしいぞ。ヒヨコ同様に長い間、胎児時代を過ごして生まれたらしくてな。生まれた時に母親は亡くなったらしい。駿介、この子はヒヨコの子分にすると決めたのだが、飼っていいか?)」

「流石ピヨちゃん、近くにいるのに、まるで私たちと全く違う世界で生きている」

 陰陽お姉さんは片手でこめかみを抑えながら、あちゃあという感じでヒヨコ達を見ていた。

 そこに痺れて憧れてくれても良いんだよ?


「つまり、その狐が玉藻前から生まれた狐って事?何で俺らに襲い掛かって来てんだよ」

「フォ~ン」

 狐君は小さく丸くなるように頭を抱えてヒヨコを下ろしてから背後に隠れようとするが、子狐であってもヒヨコより大きいので頭も隠せてなかった。

「ピヨピヨ(無理を言うな。駿介みたいな英雄神の殺気を、生まれて龍神君の腹の中しか知らない子狐が受けられるはずがないだろう。怯え切っているではないか。キツネ君もヒヨコの配下、ヒヨコの百鬼夜行の一員だ)」

「これから白熱のバトルとか、大妖狐との決戦とか想像してたのに、何でこんな斜め下にはじけた終わり方なんだよ!」

「ピヨヨーッ!(魔神と熱い戦いを繰り広げて楽しい思い出のある駿介に、ヒヨコの気持ちはわかるまい。)


 ヒヨコは思い出す。

 ヒヨコVSイグッちゃん:トルテの介入で不戦勝(イグッちゃんの八百長疑惑あり)

 ヒヨコ陣営VS第三皇子陣営:法廷勝負は王様乱入で不戦勝

 ヒヨコVSベルグスランドの勇者:勇者が自滅してよく分からない内に不戦勝

 ヒヨコVSキメラ君:レースに勝って勝負に負け、再戦果たせず

 ヒヨコVS後輩君:武闘大会にてヒヨコブレス炸裂で反則負け

 ヒヨコ陣営VS悪神陣営:悪神逃亡、とどめを腹黒公爵さんに奪われる

 ヒヨコ陣営VS異世界人パーティ:ピヨちゃんズゲートにより異世界人達逃亡

 ヒヨコVS炎髪灼眼のおっさん:捨て台詞を吐いておっさん逃亡

 ヒヨコ陣営VSケルナグール君:勝手にドロドロになってよく分からない生物になって不戦勝

 ヒヨコVS闇竜神:イグッちゃん介入で世界から逃亡も、逃亡先でうっかり轢いてしまい死亡


 今気づいたが、まともに戦った例が全くなかった。しかもラスボス系は皆逃亡していた。

 ヒヨコのライバルはキメラ君だけだったのか!?

 ヒヨコ無双とかそんな感じのゲームができる勢いだぞ?


「ピヨピヨ(ヒヨコなんてまともな戦いなんてしたこともないのだぞ?ライバルはグラキエス君とトルテだけだからな!?神なんて大体皆逃げるじゃないか!)」

「うぐぅ。でもなぁ………」

「何がでもなの?」

 陰陽お姉さんが渋っている駿介を見る。

「いや、我が家って一般家庭なのに、ペットに不死鳥の子供と玉藻前の子供がいるってどうなの?

「「あー」」

 陰陽お姉さんと陰陽お兄さんが得心言ったという顔でうなづくのだった。


「フォンフォン(オジさん、よろしくね)」

「明らかに俺より長生きしてる子狐にオジさん呼ばわりされたくないわ!」

 忘れているかもしれないが駿介は500歳オーバーだから、ヒヨコとキツネ君は生まれた後の期間を考えると、ヒヨコ達が年下なのは間違いないのだ。


 陰陽お兄さんは腕を組み大きく溜息を吐く。

「でもその狐の言葉で理解したよ。八岐大蛇は八頭八尾の大蛇、だがあれは九頭に一尾の龍、そうか、九頭龍伝承の龍神様だったか」

「九頭龍伝説っていうと鬼を閉じ込めたとか、疫病を食べたとかそんなの?」

「そうだね。僕ら陰陽師は神であろうと必ず魂を縛って利用する。であれば九頭竜伝承の龍とて使役する。縛り付けて逃げないよう十二天将によって封じてたんだろう。疫病を食う九頭龍ならば平城京に疫病を食うのがいた筈だ。遷都の際に移動させたんだろうね。そして玉藻前も食らわせたわけだ」



「やべ。殺しちゃったんですけど」

 駿介はその事実に気付く。しれっとこの男、漫画剣術で龍神を殺害していた。九頭龍様は漫画剣法・九頭●閃で。

「ピヨヨ~?(何を言っているのだ、駿介。)」

「何って?いや、さっき殺しちゃって…」

 ヒヨコはブルブルブルと体をゆすると頭頂にたくさん並ぶ赤い羽毛がふわりと風に流され九頭龍の死骸の近くに降りる。

 光り輝いた九頭龍はあっという間に爆散した九本の頭が蘇り、のそりと起き上がる。

「「「「「「「「「シーギャーッ」」」」」」」」」


「だからって簡単に生き返すな!」

 駿介は理不尽なことを叫びながらヒヨコの頭をはたくのだった。

 ヒヨコが何をしたというのだろうか?だが、こうしてヒヨコは万事解決と言えるだろう。そう、ヒヨコは思った。

「お前が思うならそうなんだろうよ。お前の中だけでな」

 駿介コレクションの漫画か何かのセリフがヒヨコに吐かれたが、ヒヨコには関係ないことだった。

 九頭龍君もヒヨコの百鬼夜行に勧誘することにしよう。




***




 それから数日後、突っ込みお姉さんの周りから悪意ある視線がピタリと止まった。

 陰陽師達がどうなったかと言えばあらゆる家が混乱の渦中にあった中、龍脈さえも失った所為で、家門が一気に衰退した。それぞれが各家に責任を押し付け合ったし、陰陽お兄さんの家もかなり責められたそうだ。

 それどころかアイテムボックスではなく、九頭龍君のような封印をされていた悪鬼達の封印も解けてしまいあちこちで悪さをしだしたそうだ。

 政府高官からも責められる事になり自力で納める力も失い権力は急速に落ちぶれたそうだ。


 ヒヨコの配下以外の悪鬼君には困ったものだ。

 なので、ちょっとヒヨコの百鬼夜行の鬼君たちに話をしたら、子分にして戻ってきた。どうやらヒヨコの配下はそこそこ凄い鬼君らしい。

しゅてんどーじ君とか言ったかな?親分とか言われるとチュン助達を思い出すではないか。悪くない気分だ。


 そんな混乱中に、陰陽お姉さんたちは陰陽師の五大老に無断で龍脈を裏社会に公開することにした。

 というか、裏社会に公開した事で、お偉方は陰陽お姉さん達に激怒したらしいが、陰陽お姉さんは九頭龍神と交渉すればいいと丸投げしたのだった。

 仮にも神である九頭龍君はまともな交渉なんてできない。そう、まともな交渉が出来ないから陰陽お姉さんは皆に丸投げしたのだ。


 そもそも、何で九頭龍君が縛り付けられたかと言えば、中央集権を画策する大和朝廷が当時の民草1万以上の生贄と数千の呪術者が命を懸けて作った結界で奈良に封じ込めたらしい。さらに、遷都に伴って移動した時も千単位の呪術師によって行われたそうだ。


 今の時代、技術は上がっても、そんなにたくさん呪術師はいないし、全員が全員でまとまってもいない。それに生贄なんて使えない。

 九頭龍君を利用するという考えは、時代にそぐわないのだ。


 今の日本は民主主義国家である。陰陽師だけの問題ではないのだから丸投げは悪く無い策だった。


 九頭龍君は駿介に殺され、ヒヨコに生き返してもらったからか、ヒヨコの配下になってしまった。

 ヒヨコの言う事は聞いてくれはするんだけどな。

 だが、ヒヨコは元の世界に戻りたいので、こっちの世界の人間達の為に何かをする予定はないのだ。

 新型コロナを食わせろだと?お腹壊すからやめなさい。お母さん、そんな事許しませんよ?


 それはそれとして、陰陽師達の失脚は日本魔術業界を大混乱に陥られたのだった。

 まあ、でも、ヒヨコ達には関係ない事だがな。

 そう、百鬼夜行の主にピヨはなるのだから。

 陰陽お兄さんとお姉さんがきっと頑張るのだろう。

女神「あとがきコーナーの時間です」

ピヨ「久しいな。何かいいことあったのかい?」

女神「2年前ほどに作者が投降したこの物語の未来のお話、「婚約破棄した王子の末路 ~ヒヨコ騎士の原作ブレイク~」を覚えていますか?」

ピヨ「今、女神の声が聴こえる。ここにおいでと。寂しさに負けそうなヒヨコに」

女神「いや、別に、『愛、おぼえていますか?』なんて聞いてませんよ?」

ピヨ「ピヨヨッ!?違ったのか?」

女神「違います」

ピヨ「しかし、当作品は愛の話だろう?フェルナント君がモニちゃんに隠れてリディアちゃんに粉かけている話ではなかったか?」

女神「そもそもモニちゃんの命令で搔っ攫ってきたという裏話なのですけどね。二人で尻に敷こうぜって言う話し合いが為されているかもしれません」

ピヨ「で、未来のお話に何があったのだ?」

女神「実は2025年7月12~13日にかけて200位台ではあるのですが、ランキングに乗っていたのです」

ピヨ「な、何だと!?」

女神「忘れた頃にランキング報告が届くという奇蹟。まあ、ただの事後報告なんですけどね」

ピヨ「まて、ヒヨコは?ヒヨコ伝説のランキング状況は!?」

女神「入った事ないでしょう?」

ピヨ「本家本元が、長々と飽きるまで作者が弄り倒してるヒヨコが、まさかスピンオフ作品に負けたのか!?魔法少女リリカル●のはのように!?」

女神「それ大元の作品がR18ですからね!?『とらハ』を知ってる人がどれだけいると思っているですか!?」

ピヨ「とある雷竜(トルテ)超電磁砲(レールガン)としてスピンオフなんて出したら、ヒヨコは許しませんよ!」

女神「安心してください。作者にそんな力はありませんから。それにヒヨコだってまだまだ負けてませんよ。 総合ポイントは1000Pt差をつけて勝ってますから」

ピヨ「しかし、これが単発作品の強みか。それともブームに乗ったざまあ系作品の強みなのだろうか」

女神「作者はざまあ系作品も準備してますが、途中で書くの辞めちゃって、完全に読み専ですからね。やはりペットで遊ぶ方が楽しいそうです」

ピヨ「ペットで遊ぶとは何たる怠慢!ちゃんと書け作者!」

女神「まあ、だから我々の出番がちょくちょく出るんですけどね。ペット(ヒヨコ)で遊んでるから。それではまた会いましょう。次はいつ会えるのやら………」



ピヨ「………ところで天照ちゃんはいつ本編に出るのだろうか?」

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