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11話 ヒヨコの考察

 ヒヨコは激戦を繰り広げていた。

 タマの攻撃 ヒヨコは身をかわした。

 大白虎さんモドキの攻撃 ヒヨコは身をかわした。


 ピ~ヨピヨピヨ、その動き、メタルスライムのごとし。


 おい、誰のHPが3だと言ったか!?え、ヒヨコの紙装甲ならHPが高くても1撃で終わる?

「にゃんっ!」

「ピヨッ!?」

 屈むようにヒヨコは転がってかわすが、避けたところで危険な爪が飛んでくる。

 絶体絶命のピンチにヒヨコはうっかり足でも手羽でもなく嘴が反応してしまう。

「グルゥア!」

「ピヨヨッ!?」

 いきなり襲い掛かって来た大白虎さんモドキに、ヒヨコはつい火を吐いてしまった。考え事をしていたからピヨリと火が噴いてしまった。うっかりだ。

 だがヒヨコの火を食らった大白虎さんモドキは一瞬でも燃え尽きてしまうのだった。

「ピヨッ!?」

 なんという事だ。ヒヨコは大白虎さんモドキを燃やしてしまった。白い虎さんが燃え尽きてしまった。真っ白にな。………はっ、元から真っ白だ!

「にゃにゃにゃっ!?」

 タマは慌てて逃げ出してしまう。ヒヨコを恐れたというより火を恐れたようだ。

 そうか!

 奴らは火を恐れるケダモノだったのか!?ヒヨコの身を守る術は炎だったのか!?


 だが、虎放火事件でヒヨコが逮捕されてしまう。死んではいかんぞ。そうだ、ヒヨコの羽で生き返らせられるはずだ。ヒヨコは頭を近づけようと恐る恐る近づくと、燃え尽きて真っ白になった大白虎さんモドキの体にノイズが走って、巨体が消えると共に人の形をした紙が燃えながらひらりと落ちていく。


「ピヨピヨ」

 ヒヨコは燃えている人の形をした紙を嘴で拾い上げる。そうかこれが式神という奴か。

 誰だ!?ヒヨコが出来なかった式神を使ったやつは!?陰陽師ごっこできるやつがいるというのか!?うらやましすぎる。

 いや、別にヒヨコは嫉妬していないぞ?


 するとヒヨコに与えられていたスマホがピヨピヨピヨと鳴る。

 駿介の奴め。ヒヨコ用のスマホを買ってくれるのは良いが、着信音をピヨピヨにするのはやめてもらいたい。自分の呼吸音と着信音の区別がつかぬ。


 ヒヨコは部屋に戻ってスマホの画面をペンを咥えてタップする。駿介の声が聞こえてくるが、ヒヨコはタマと大白虎さんモドキとの対応に忙しいと伝えた。いや、すでに終わったのだが、面倒臭いから断固拒否の構えであった。

 ヒヨコは昨晩駿介にやられたことを決して忘れてはいない。決して許さぬのだ。


 ピヨピヨピヨ、ざまあみろだ。


 だが、スマホを切ると突然大白虎さんモドキが復活する。

「ピヨヨーッ!?」

 ヒヨコは慌てて庭に戻る。どういうことだ?

 まさかまさかの展開だ。駿介に嘘ついたから嘘が本当になってしまったのだろうか?

 嘘から出た真なのか?


 燃えてなお復活するとはまるでヒヨコの羽を与えたような展開だ。

 あるいはマ●オが死んでやり直すような感じだ。


 ならば残機の減った大白虎さんモドキにはプレイヤーがいるのだろうか?

 グルグル言ってる大白虎さんモドキはヒヨコを見下ろしていた。おや、自分で言ってみて何かすんなり腑に落ちた感じだぞ?これこそが嘘から出た真なのか?


 大白虎さんモドキを神眼(ヒヨコアイ)で観察すると、生きているようで生きていない。式神とはどうやら魔力を使って一時的に仮初の受肉をさせるようだ。

 ファ●ナルファ●タジー風に言うなら召喚獣的な感じだ。

 女神から借りてた神眼は情報量が多いけど、ヒヨコ向きではない。ヒヨコアイは魔力を完璧に観察可能だ。変な情報を失う事でヒヨコの目はいろいろと変わった。

 ちなみに鳥目なのに夜目が利くのもポイントだ。


 大白虎さんモドキを観察するに、魔力が電波みたいな感じで飛ばされているようで、遠くからコントロールしているようだ。

 コントローラー(?)を持っているのはあっちのマンションの3階からこっちをのぞき込んでるお兄さんのようだ。どこかにいる大白虎さんモドキにアクセスしてそこから力を引き出しているようだ。

 だが、そのお兄さんを倒したら殺人事件である。ヒヨコの火吐息(バレットブレス)で脳髄貫通させればイチコロだがな。イチコロとは一口コロッケではなく一撃コロリの略称だぞ?

 じゃあ、プレイヤーを倒さず、召喚獣は倒してもエンドレスで復活するならば、如何すれば良いのか?プレ●テを壊せばいいじゃない。


 何でそんな発想ができるのかって?昨日、ヒヨコが陰陽師アニメを堪能したので、モン●ンワールド:アイ●ボーンをせっせとやっていたのだが、駿介が『俺は寝るから静かにしろ』とか言って、プレ●テ4を蹴り飛ばしやがったのだ。

 一瞬壊れて使えなくなるのではないかと心配したものだ。

 ゲームは途中で終わってしまったから、今朝は初心に戻って陰陽師アニメを見ていたのだ。


 さて、この大白虎さんモドキゲームのプレイヤーを見つけた。肝心のプレ●テの場所を探ろうじゃないか。開始しているプレ●テの位置は………ピヨヨヨヨーン!ここではないどこかにありそうだ!


 ヒヨコセンサーを使って魔力の糸を辿り……この世界ではなく、何だろう?アイテムボックスのような仮想空間らしき場所につながってる?そうか、移動のし易い仮想空間へのアクセス、これが陰陽師の式神の正体か。

 陰陽お姉さんが元の世界に戻れる自信があったのも、場所を測ろうとしていたのも、この技術を持っていたからか!確かにこの技術のからくりを察していた陰陽お姉さんなら、自力で戻る手段を得ていたはずだ。しかも時空の流れを無視して到達できる。 

 意外にすごいぞ陰陽師。


 さて、魔力のつながりを辿ってプレ●テを蹴っ飛ばしに、否、……リアル大白虎さんモドキの所に行ってみよう。


 目の前に現れた大白虎さんモドキはとりあえず保留で、ヒヨコは魔力のつながりのある糸を辿るように、嘴をつながっている時空間に突っ込んでヒヨコの通れる時空の道を切り開く。

 そう、ヒヨコの嘴は神を殺すし、駿介のように次元だって切れるのだ。

 それではヒヨコはゲーム機を壊しに行くぞ!


 ヒヨコは嘴を使って時空間を貫き、こじ開けた別の時空間の穴にぴょいんと飛び込むのだった。




***




 ヒヨコがやって来たのは真白な空間に透明な箱があり、その箱の中に大白虎さんモドキが眠りつくようにそこにいた。さっきの大白虎さんモドキより倍くらい大きいけど、どれもモドキだからオリジナルがどうとか何でもいいな。


「ピヨピヨー(こんにちはー)」

 ヒヨコは元気よく大白虎さんモドキに声をかけるがごろごろしていてヒヨコをガン無視である。


 返事がない。

 つまり、ただの屍のようだ、という事か!?

「ガルルァアアアッ!(誰が屍か!?)」

「ピヨピヨ(元気そうだ。どうもヒヨコです。屍じゃないなら何だろう?まあまあ、暇そうだからヒヨコとお話しをしようじゃないか)」

「ぐるるぅ(人間どもの回し者か?よく分からぬが、貴様などと話すことはない)」

「ピヨピヨ(そこを何とか。暇だろう?屍でないなら話は早い。ヒヨコと話をしよう。しかばねえから相手をしてやろうと言ってくれても良いだろう?)」


 ………


 いかん!大白虎さんモドキがだんまりなせいで、ヒヨコが滑ってしまったかのような空気になってしまった。大白虎さんモドキも内心面白いと思っているかもしれないのに、黙ってしまったのがいかん。

 ここは鉄板の「ふとんがふっとんだ」で笑いをとれるか?聞く猫耳を持たぬといった感じだから、タイミング悪くだんまりされるとヒヨコがまるで寒い芸人のような扱いをされてしまう。

 どうしたらヒヨコは面白い芸人のように見られるだろうか、ここは慎重に話しかけねばならぬ。


 …………………………違う!ヒヨコは別に面白芸人扱いされたいわけじゃない。


「ピヨピヨ(大白虎さんモドキよ。何でそんな狭い箱にいるんだ?箱から出てきてヒヨコと話そう)」

 あの箱がプレ●テだとおもうのだが。差し詰め大白虎さんモドキはゲームソフトかな?魔力を対価に仮想大白虎さんモドキを操って遊べるゲームといった感じだ。


「がるぅ(不愉快だ。失せろ)」

「ピヨヨーッ!(世界で一番愉快なヒヨコのキャッチフレーズで活動してるこのヒヨコに不愉快だと!?取り消せ!)」

「ガルアッ!」

 ヒヨコが抗議して近づこうとすると大白虎さんモドキは襲い掛かろうとするが、透明の箱に隔てられて虎の爪は届かない。

「ピヨピヨ(びっくりした。……………ハッ!?まさか、貴様、ヒヨコが取り消せと言ったのを聞き間違えて鳥消そうとしたのではあるまいな?鳥は消してはいかんぞ?そんなことをされたら、ヒヨコは悲しい)」

「ぐるぅ(………霊体でなく、ここにきて、しかも自由に動いている。結界に入れられてもいないという事は、奴らの手のものではないのだな?)」

 大白虎さんモドキはヒヨコを怪訝に見て何かを察したようにつぶやく。

「ピヨピヨ(よくわからんがヒヨコはプレ●テを探しに来たのだ。いや、今年発売されるという噂のプレ●テ5の発売日がまだ分からないから予約も取れないのだがな。いや、そんな話をしに来たのではないのだ)」

「ぐるるぅ(ふん、よく分からんが、奴らの手のものではない事は分かったが、関係ないのであれば去れ。貴様と話すことはない)」

「ピヨピヨ(取り敢えずその透明の箱から出てくれないか?どうもその箱がプレ●テのようでな?さっきからお外で大白虎さんモドキが次々と出る仕掛けになっていて面倒なのだ)」

「ぐるるぅ(出れるなら自ら出ているわ!……我らは1000年前に人間どもに魂を囚われ、永久の牢獄で力を搾取され続けている。この空間から出ようともがいていたがそれが適わなかったのだ)」

「ピヨ?ピヨピヨ(そうなのか?ならばヒヨコが壊していいか?出てきたら爪で引っ搔いたりしない?)」

「グルゥ(壊す?)」

「ピヨッ!」


 ヒヨコはいつものピヨファイアを吐く。ヒヨコ神に至ったヒヨコはもはやヒヨコの中のヒヨコ。火を扱わせたら、ミシェ●ンで三ツ星を受けたステーキ店のシェフに匹敵する。ウェルダンでもレアでもミディアムでも可能だ。白大虎さんモドキをおいしく焼き上げるだろう。


「ガルガルッ!?(この炎は俺にも向かってないか!?)」

 火が徐々に迫る中白大虎さんモドキにも迫り、慌てて火から逃げる白大虎さんモドキだった。

「ピヨヨッ!?ピヨピヨ(しまった!結界だけのつもりだったのに、うっかり大白虎さんモドキをミディアムレアでおいしく焼こうとしてしまった!)」


 昨夜はモン●ンをやっていたからか、おいしく焼かなければと妙なこだわりを持ってしまったのは失敗だ。


 じっくりコトコト四角い透明な空間を焼くと燃えて消えるのだった。

「ピヨピヨ(おいしく焼けたぞ!)」

「グルグル(おお、なんという事だ。いとも簡単にこの結界を。感謝するぞ、そこなヒヨコよ)」

「ピヨピヨ(ヒヨコも引っかかれなくなってWIN-WINな関係だからな)」

「グルルゥ~(ここは人間どもが作った特殊な空間らしく、我らは長らく囚われていたのだ)」

「ピヨピヨ(人間が作った特殊な……虎割れていた?)」

 別に割れていないが?

「ガウガウ(できれば他の者たちの自由を取り戻してもらいたい)」

「ピヨヨ?(自由を鳥戻す?)」

 鳥を戻してどうするのだろうか?ヒヨコはもう一度あの箱を戻すのか?

 ヒヨコは本格的によく分からなくなってきたぞ?ヒヨコの偉大なる灰色の脳細胞がよく分からんと訴えかけている。だが、ヒヨコは知能派を装うため、分かったふりをする。

 自称知能派の駿介に負けてはいられぬ。ヒヨコも知能派と呼ばれたいのだ。


「ピヨピヨ(つまり………桶屋丸儲けと?)」

「ガウアッ!?(何がどうしてそうなった!?)」

 どうやら違うらしい。残念無念だ。ヒヨコには知能派を気取る事さえも許されないというのか。


 大白虎さんモドキは細かく説明してくれる。がうがうとらとらと説明されてヒヨコは納得する。

 同じように透明な箱に入っている知り合いがいるらしい。レーカクというのが高い生物が囚われているそうだ。そんな友達を開放して欲しいらしい。

 なるほど、友達思いの虎さんだったのか。


「ピヨヨ~(よく分からんが、大白虎さんモドキと同じ境遇の知り合いを解放しろと?)」

「ガウガウガウガウ(うむ。あと、我が名はこの国の発音でいえば白虎(びゃっこ)であってオーシロトラサンモドキという名ではない)」

 漢字だと大差ない気もするが………呼ぶのが長いから短くしたかったので採用だ!

「ピヨピヨピヨピヨ(とにかく知り合いを助ければ良いのだろう?似たように封じられている感じのレーカクの高い生物を探せばよいのだな?)」

「ガウガウ(うむ、その通りだ。ざっと100以上いるが……)」

「ピヨヨ~(そんなにあるのか?)」

「ガウガウガウガウ(1000年以上もの長い期間で封じられた怪異である)」

「ピヨピヨ(なるほど。まあ、たくさんあっても近くにアイテムボックスがたくさんある感じなのだろう?)」

「ガウガウ?(アイテムボックスとはよく分からんが…)」

「ピヨッ(まあ良い!ヒヨコにお任せあれ!)」

 ヒヨコはいつものように魔力センサを飛ばし、似たような空間と高いレーカクという生き物を探す。

 あれかな?突込みお姉さんを含む神の勇者のように何か神の祝福を受けたような魂がコーティングされたような感じの魔力体でいいのかな?それであるならば確かに近場にたくさん感じるな。じゃあ、片っ端から解放していくか。


 今日のヒヨコは勇者ヒヨコでなければ忍者ヒヨコでもないし、ましてや陰陽師ヒヨコでもない。

 今日のヒヨコは牢獄を暴く怪盗だ。つまりはヒヨ~コ三世。


 ピ~ヨッピヨ~ ピ~ヨヨ~ ピッヨッピヨ~ ピ~ヨッピヨ~

 ピヨピヨ~ ピ~ヨピ~ヨ~ ピ~ヨヨ~ ピ~ヨヨ~


 そう、今日のヒヨコは大怪盗ヒヨコ!

 必ず牢獄を暴いて見せる!じっちゃんのナニ賭けてな!


 ………いかん、これ大怪盗ヒヨコじゃなくて事件簿の方だった。うっかりだ!




 それはそれとしてヒヨコは次元嘴で次々とプレ●テのある場所に行ってはソフト…ではなく、結界に入っている鬼やら鬼やら鳥やら鬼やら蛇やら龍やら鬼やらを開放していく。

 鬼多くね?


 最初はセーリュー君。おや、陰陽お姉さんに使役されてた子かな?

 次はキジン君。何か偉そうな奴だ。ヒヨコが睨んだら小さくなったので許してやろう。

 コーチン君という蛇を開放した。名古屋コーチンの知り合いかな?だが、鳥ではなさそうだ。

 リクゴー君、テンコーちゃん、タイインちゃん、タイジョー君とか色々と仲間になっていく。

 トーシャ君、テンクー君、ゲンブ君もヒヨコに従うようだ。

 スザク君というヒヨコの同類のような子も仲間になった。スザク君はどうやらヒヨコを崇めだした。殿下とか言われても困るのだが。フェルナント君と勘違いしていないか?ヒヨコはプリンスピヨちゃんではないぞ?我が主!とかいうでない。ヒヨコはスライムでもないぞ?


 更にサクサクと行こう。


 イヌガミ君というコボルトのお友達みたいな子を開放した。

 お友達のタヌキみたいな子を解放してあげたら感謝された。

 ゼンキ君とゴキちゃんという鬼を開放した。夫婦らしい。リア充は成仏しているがよろし。


 だが、ヒヨコは勘違いしていた。

 ここに封じられているのは囚われてしまった英霊や幻獣だけではないという事を。

 まさか鬼の中の鬼、鬼神と呼ばれる存在が封じられていて、瘴気にあふれる悪鬼の類が多くいるとは思いもしてなかったのだ。

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