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6話 不審者発見

 日本の裏社会ともいうべき異能者を取りまとめる集団は3つある。

 一つは平安時代から表や裏で日本を支えていた陰陽師集団である。

 一つは鎌倉時代から裏で坊主として活動をしていた密教僧集団である。

 一つは幕末に入ってきた海外の魔術師集団である。


 そんな会話をしているのがIDPKの地球管理班は各勢力について話し合っていた。

「一番、厄介なのは海外魔術師集団と思われます。ついで陰陽師集団、密教僧集団かと」

「一線を踏み越える可能性があるのがその順番ではあるが確率に関してはともかく、問題を起こす可能性があるのは横並びじゃないかな?」

 説明をする部下の話を頷いて見せるが、一つ反論を口にする。IDPKの地球管理班の監督役をする闘神イリアス君の言葉に周りの部下たちは神妙な顔をする。

「横並びですか?」

「ですが、神や英霊を得ようとする思想の強さは海外魔術師集団でしょう。世界的な後ろ盾もあるし無理に介入する可能性もあります」

「それを言ったら、どこの勢力も変わらないだろう」

 神や英霊の霊格を持つ存在は、裏社会において引く手数多だ。手を出そうとするだけならすべてが要注意である。

「神や英霊の資質を持つ生きた人間が世界に知られる事なく存在する。かなり例外的な事例だろう?」

「それはそうですが……」

 ヒヨコも知らない事であったが、どうやら地球には魔法を知る者たちがいるらしい。

 陰陽師というかつて日本を支配していた組織、民衆の中から出来た密教僧という多数ある小規模組織、そして国外から入ってきた欧州魔術結社を主とする世界最大組織の末端。

 いずれも神やそれに連なる者を使役するだとか、真言で神やそれに連なる力を降ろすだとか、召喚魔術で悪魔やら英霊だとかを降ろすだとか色々するらしい。

 異世界で勇者、こちらの世界でいう所の生きたまま英霊となってしまった突込みお姉さんはどうやら各組織に狙われているようだ。突込みお姉さんは人気者なのだな。


「僕も英霊である妹と共に現世にいた時代があったからね。値千金の存在が手に入れられる場所に、そして僕らに何をしたって咎められない状況があり、欲するものがいれば関係なく手を出そうとするだろうね」

「全部、チェックしないと危ないと」

 部下達がイリアス君に訊ねるようにする。

「そうは言わない。そもそも僕らの仕事の範疇の外だからね。だが、英霊を害せる可能性がありそうなものだけでいいんじゃないかな?」

「英霊を害せる?」

「だってそうだろう。人間のまま神になった男が近くにいる上、不死なる太陽神の直系までもいるんだ。しかも後者は魔力感知能力が高い上、偶然とはいえ闇竜神を殺しているんだ。実質、二柱がそこにいるだけで正面からぶつかって勝てる存在はそうそういないだろう?」

「言われてみれば……」

 イリアス君の言葉に部下達は納得した様子で頷く。

「問題は彼らを搦手で分断させようとした時だね。彼らよりも英霊の保護だ。神を殺せる方法は知られていても手段を取れる人間はほとんどいない。だが英霊はいくらでも手段がある。」

「守るべきはユリ・ミサキのみとして、3勢力をチェックという事ですね」

「無論、俗世にかかわれない我らの出来ることは少ないけどね。出来る事は現地にいる浅香のサポートくらいじゃないかな?」

「ピヨピヨ(よく分からんがそう言う事だ)」

「なるほど」


 ………………………………………

 ………………………………

 ………………………

 ………………

 ………


「「「「「えええ」」」」」

 全員が、何故かそこにいるヒヨコの方に視線を向ける。

 おかしいぞ、ヒヨコは最初からこの会議に参加していたのに。会議室の机の上にある空っぽになったコップが良い感じにヒヨコが収まったからな。

「い、いつから?ど、どうやってこの艦に」

 オペレータらしき一人が驚いた様子でヒヨコを指差して訊ねて来る。

「ピヨピヨ(駿介はヒヨコの探知能力なんて大したことが無いというからな?ヒヨコの魔力感知の凄さを見せるべく、魔力感知を広げてみたら遠い所に巨大な魔力がたくさんあるのを見かけたのだ。エアフロートの魔法で空を飛んでみたのだが、風魔法は宇宙では使えなかったから、エクスプロージョンの魔法で吹っ飛んで気配と魔力を消して、こっそり中に入ってみたのだ)」

 ヒヨコはエヘンと胸を張って威張ってみる。

「いや、システム的に入れないだろ。艦長、ど、どうしましょう」

「ええと、ピヨ君と呼べばいいかな?僕はこの艦の艦長であり、世界の管理を任されているIDPKに複数いる副会長の1人、イリアスだ。どうやってこの船に入って来たんだい?」

「ピヨピヨ(辿り着いたが何やらバリアやらなにやら張ってあったから、ピヨッと魔力をコントロールして辿り着いたのだ)」

「生命体が入れないように魔力を通さないような仕組みがあったと思うけど」

「ピヨピヨ(おお、魔力を弾く仕組みだな?そんなの、弾こうとする魔力を弾かれないように変えれば問題ないのだ)」

 ヒヨコ言い分を、全員が何故か『この子の言っている意味が分からない』という顔をしていた。ヒヨコの言語は難しかっただろうか?

 元居た世界の言葉をしゃべってたから大丈夫だと思ったのだが。

 そもそも、魔力を操作すれば、無いように見せる事など容易いというのに。元より魔法とは魔力を実現象に変質させるものだ。魔力をヒヨコの中でバリアに引っ掛からないように適当に変質させれば良いだけだしな。

「えー……」

 テーブルに乗って小さいままのヒヨコがうんうんと頷いて見せるが誰も理解してくれなかった。


「そんな事が出来るのは地球の神でも、ルシファーのような魔法に通じた存在でもなければ不可能だが……」

「ピヨヨ~(あの駄女神の世界で魔力操作レベルがカンストしてたからな。駄女神の化身如きと比べられても困るぞ?)」

「暁の女神が自分の同格以上と認めるという事か」

 それはどうだろうか。駄女神基準より、倒すべき魔神基準でつけていたようにも感じる。

 だって、駄女神の過去の神様遍歴の中に剣神とかなかったはずだ。

 だから剣術系はさっぱりの筈。女神以上の剣術ならレベル5ほどもあればカンストしてもいいレベルだと思うが……。

 確かに魔力操作は腹黒公爵さんがLV5だったし、魔力操作に関しては基準が高かったように感じるが、あっちの世界の人間の魔力操作レベルが単に低かっただけかもしれない。

 実際、陰陽お姉さんはLV7、先生さんはLV9あった。


 こっちに来て知ったが、向こうの世界は魔力密度が低く魔力粘度が低かった。

 大気の中では自在に動けるけど、水中だと動きが遅くなり、ジェル状なら更に動きにくくなるように、向こうの世界の人間は魔力を弄るパワーが総じて足りないのだ。


「ピヨピヨ(所でここでは何をしてるんだ?)」

「異世界から来た神の対策だが」

「ピヨヨ~(神対策とな?)」

 チェーンソーで瞬殺できると思うぞ?


「異世界に行ったことで英霊となった少女が神の寵愛を受けているからな。俗にいる人間が英霊を手にせんとした場合、現人神が暴走したらどうなるか分からん」

 イリアス君はそんな事を言う。

 つまり英霊の身柄(ツッコミお姉さん)を手にしようとした組織が、現人神(駿介)の逆鱗に触れる事による被害が最も怖いという話だ。

「ピヨヨ~(だがしかし、突込みお姉さんは死なないぞ?ヒヨコがいるもの)」

 頭頂の羽の事を言ったつもりだが、意図せずファーストチルドレンみたいなことを言ってしまった。

 今後のきめ台詞として使うのはどうだろうか?検討しておこう。


「だがどうかな?それをした組織を滅ぼす為に世界が危険になる可能性は無視できない」

 言われてみれば駿介は家族を痛めつけられて、怒りで暴力団を皆殺しにした過去がある。そして駿介は突込みお姉さんが大好きだ。日本の権力者が敵に回れば政権崩壊に。世界を左右するような人間が敵に回れば世界情勢を破壊する。

 あながち大丈夫と言い切れない男である。そして、奴は今であれば世界を滅ぼせる能力があるのだ。

 だが殺人事件を起こすだろうか?否、起こすまいて。ヒヨコの事件簿に駿介が記録するのだろうか?だが……

「ピヨピヨ(奴はそこまで危険ではないぞ?ヒヨコの魂に賭けて…………、否、こういう時はジャパニーズ様式美としてこう言おう。駿介はそんな事などしない!じっちゃんのナニ賭けてな!キリッ!)」

「突然話が不穏な話になった」

 殺人事件が起こりそうな不穏な話ではなかったのか?

「現人神の危険性の話が突然迷宮入りしたぞ?」

「ジャパニーズ様式美って何?」

「そして別にどこかの探偵の孫の話でもない」

「ヒヨコのじっちゃんって誰なんだろ」

「太陽神の親って金●一●助だったっけ?」

「まず最初に、じっちゃんの名に賭けるのであって、じっちゃんのナニ賭けちゃ駄目だと思う」

 イリアス君の部下達は変な事を口にしていた。

 おかしいぞ?ヒヨコは変な事を口にしたのだろうか?ヒヨコはとある探偵でもないくせに探偵ぶる少年のアニメ(駿介コレクションBD参照)の真似をしただけなのに。


「ピヨピヨ(ところでヒヨコは皆にお願いがあるのだが………。)」

「お願い?」

「ピヨピヨ(折角、宇宙に来たのだから何かお土産を持ち帰りたいのだが?)」

「「「「えー」」」」

 IDPKのオペレータ達は微妙な顔をして呻いていた。




***




 そんな頃、イギリスのロンドンにて魔術師たちが集会を行なっていた。

 闇夜よりも暗い円卓の間にて各魔術結社の者達が集まり、とある人物が報告を上げていた。

「日本に多くの魔術師が出現した?」

「正確には日本のとあるハイスクールの学生達にです」

「それは真か?」

「何故、そのような事が?」

 一つの報告に多くの魔術結社の人間たちが驚きの声を上げていた。

「神隠し……からの帰還者、チェンジリングだと思われます。そして問題はそれだけではありません。その内一人は現人神となっており、そしてもう一人は生き永らえたまま英霊の霊格を手にしておりました」

「なんと」

「それならば手に入れなければなるまい。神と英霊の格はどの程度か?」

「レベル2程度もあれば良いのだがな」

 神や英霊にも格が存在する。

 ソロモンの悪魔召還でもあまり知られていない低位爵位を持つ悪魔と4大悪魔であり王に序するアスモダイとでは御する為の難易度も異なる。

「英霊のレベルは1相当との推察されます。彼女は一般的な学生で剣術を使うだけのようで」

「まあ、殺して霊的に使役すれば使えなくもあるまい」

 英霊の格はレベルによってあらわされる。大した逸話も力もなくても運よく英霊の格を身に着けてしまった者を現すのがレベル1である。

 そうであっても、現代社会でそれを得るのは非常に難しかった。

 日本人で英霊が出たのは実に第二次世界大戦以来ともいえるだろう。無論、その多くが戦犯として亡くなり欧米諸国の所有されるものとなったが。

「現人神は使えるのだろう?」

「レベルは分かりません」

「分からないだと?どういう事だ?」

「神格は鑑定されたのですが権能を全く使っていないのです。魔術師でもない為、測定が出来ません」

「なるほど。だが魔術が使えないとなれば大した神でもあるまい」

「殺しますか?」

「二人共殺して我らのモノにしてしまおう。神隠しのお陰で今年は中々の収穫よ」

 魔術結社連合は着実に手を伸ばそうとしていた。

 だが、最初に手を出したのは彼らではなかった。




***




 静岡の大都市に隣接した街に密教僧集団がやって来ていた。

 密教僧というと胴着を着た僧兵姿や編笠をかぶった姿を想像しがちであるが、今は令和である。ユ●クロのシャツを着ていたりするし、スマホで連絡を取り合っており、普通に今時の小父さんや若者が多い。

「ターゲットを駅前にて確認。学校の帰りのようだ」

『どうやら本当に学生のようだな』

 一人の男がポニーテールの美少女を目視しながら小さい声でスマホに語り掛ける。

「●松北高、どちらも3年生ですね。大した力があるようには思えんが」

『ぬかるなよ。既に二度ほど追跡したものが振り切られた上に街中で寝た状態で発見されている。どちらも、よく分からぬうちにやられているようだからな』

「昨年末の大規模チェンジリング事件がありましたし、陰陽師の次期総領がこの地にやって来たというし、他派閥は侮れませんしね。油断はしませんよ」

『頼むぞ』

 男はゆっくりとポニーテールの美少女と距離を取りながらつけて歩く。


「恐らく他の派閥だろう。力は弱いしこれならいくらでも手に入れられる。障害にはならないだろう。武術の嗜みはあるが所詮は小娘よ。余程幸運が転がり込んで格を手に入れたのだろう」

『侮るなよ。低位であっても英霊だ』

「大丈夫ですよ。今の所、バレてないみたいですしね。いくらでも料理しますぜ」

 男は舌なめずりをして美少女を眺めていた。

 スマホを切ってニヤリと笑う。

「良い体してやがる。殺して英霊として封じれば良いだけだ。それさえできるなら何をしたってかまわねえんだろ?美味しい仕事だぜ」

 現代魔導に身を落とした密教僧集団は、理論が明確になり力の源が明確になった現代となっては、当時のストイックさは全く無くなっていた。




***




「ピヨッ」

 帰ってきたぞ。ヒヨコは日本に!

 早速、ヒヨコは駿介の家の鳥かごに入って、置いてある小鳥用の餌をほおばっていた。

「どこ行ってきたんだ?母さんが逃げ出したんじゃないかと心配してたぞ?」

「ピヨヨーッ(お前がヒヨコの魔力感知を侮るから、宇宙まで飛んで魔力の元のある場所に行ったのだ。その証拠にお土産を持ってきたぞ!)」

 ヒヨコはアイテムボックスの魔法からお土産を取り出す。

『宇宙庵・田子の月』『宇宙堂・うなぎパイ』『宇宙商店・黒はんぺん』

「そーはならんだろ!」

「ピヨピヨ(ちゃんと向こうにいるお兄さんにせびって来たんだぞ?宇宙土産をと)」

「っていうか、静岡土産の一部分を修正テープで消してボールペンで宇宙って書いてあるだけじゃねーか!うなぎパイを見た時点で気づけよ!地元民なんだから!」

「ピヨヨーッ(ヒヨコは騙されたのか!?言われてみれば…微妙に字が下手糞だぞ!?…おのれ、オペレータのお兄さんめ!だが、このお土産。美味い!美味すぎる!)」

 ヒヨコは悔しがりながらも黒はんぺんをつつく。

「それは埼玉のCMだからな?黒はんぺんは十●石饅頭じゃねーよ」

「ピヨヨ~(そう言えば、こっちに戻ったらまた魔力持ちが家の近くでチョロチョロしているみたいだぞ?)」

 ヒヨコは駿介に訊ねる。

「2時間前あたりから変なのが近くにいる事には気になっていたけど、気配がモヤッてたからなぁ。ウチを見てるのか、百合を見ているのか分からないしさ」

 駿介はともかく、突込みお姉さんの場合美人だから単に好きな人の家を知りたい的な感じでストーキングしてしまう場合もあるので駿介も殲滅の可否を苦慮していた。

「ピヨピヨ(そう言えばなんとかって言う3つの組織が突込みお姉さんと駿介の身柄をデッドオアアライブで狙っているらしいぞ?)」

「命を奪うのもありなのか?」

「ピヨピヨ(よく分からんが英霊や神というのは何かと利用できるらしい。殺してからでも問題ないそうだな)」

「なるほど。………向こうで百合が勇者になってどうしたかとは思ったが、英霊扱いになってしまったか。こうなると分かっていたなら女神に向こうでの履歴を消去して貰っておくべきだったかな」

 駿介はアニメを見ながらウムウムと頷いていた。

 おそらく神の勇者だけでなく賢者とか剣聖、神滅者とかも、霊格みたいなのが上がるとみている。

 るしふぇる浅香は元々英霊に類する人間らしいが、確か向こうでは神滅者の称号持ちだったはずだ。ヒヨコは英霊ではなく神霊だが、ヒヨコの前世はいろいろと称号持ちだったからヒヨコの魂はもはやすごいことになってるだろう。


「ピヨヨ~(IDPKは突込みお姉さんを害されるのを避けたいようだ。駿介が暴走すると危惧してる。ヒヨコの羽根があれば早々死ぬ事はない。この世界はあっちの世界と違って死んでもすぐに魂が消える世界でもないから、後出しでヒヨコの羽根を使っても問題ないと思うぞ?)」

 さらに報告していなかったが、ヒヨコの羽は神になったせいか、この世界のせいか知らないが、使った人間は二度目は復活できないという制限がなくなっている。何度死んでも生き返られるようだ。

 つまり地球のシェン●ンではなく、ナメ●ク星のポル●ガという事だ。


「ふむ。どうかな。英霊や神が死んで問題ないのはその魂を利用するのが目的だからだ。生贄扱いの可能性がある以上、死そのものが危険だ。俺はともかく、百合は弱いまま勇者になっているし一番危険なのは間違いない。………さて、百合に手を出して俺に喧嘩を売ろうって言うアホな組織はどこかなぁ。一番巨大で一番手を出せないような場所を見せしめに滅ぼせば、二度と馬鹿な真似をしようとする奴らはあらわれまいよ」

 クククククと笑う駿介であるが………ラブコメアニメを見ながら悪魔のように笑う様はちょっとやばい感じである。

 2020年夏、やはり駿介の青春ラブコメは間違っているとヒヨコは思うのだがどうだろう?元ヒッキーのくせに過激な奴である。

 するとヒヨコセンサーと駿介センサーが同時に反応する。

 外にいた何者かが突込みお姉さんの家に近付く動きがみられたのだ。駿介はお祭りでも買ったような木刀を手にして立ち上がり窓を開けずに目をつぶる。

 ちなみにお祭りで買ったような木刀には大仏の絵柄と奈良という文字が…………。お祭りではなく奈良に行った時のお土産だろうか?

 旅行のノリで買ってしまった家に帰って全く使わない意味のない自分へのお土産ってやつだな?


 男が魔法を使っているのをヒヨコセンサがとらえた。

 男は手の中で印を結んだのかシュパパパと絹すれの音と共に「オン バロダヤ ソワカ」とかよく分からない事を声がヒヨコの耳に聞こえてくる。

「ピヨヨ!(突込みお姉さんのいる場所当たりの水を操作しているっぽいぞ。溺死狙いか!?)」

 ヒヨコは魔力の流れを見て、男が何をしているのかを察する。魔力操作が成ってないが起動するレベルは有りそうだった。

「させねーよ」

 ビュッと駿介は木刀を男のいる方に向けて振る。

 家の壁越しであるが、お隣の家へ侵入しようとする不埒者に対し、見えない斬撃を駿介は叩き込んだのだった。

「ガヒッ」

 怪しげな呻き声が漏れたところで駿介は窓を開けて外を見る。

 岬家の敷地の細い隙間に怪しげな男が倒れていた。


「百合を狙う勢力が多いというのは本当だったな」

「ピヨピヨ(神よりも英霊の方が与しやすく使いやすいのかもしれんな。今度陰陽お姉さんに聞いたらどうだろう)」

「倉橋に?聞いてみるのも手かもしれないけど、狙ってる組織の一角かもしれないんだよな。倉橋が百合を狙うとは思えないけど、下っ端が上に無理やり情報提供させられる可能性が無い訳じゃないからな。不幸な人間が増えるだけだし」

「ピヨピヨ(ヒヨコ達の力を知って敵対する愚かでもないと思うぞ?)」

 陰陽お姉さんは賢くて理性的だ。光十字教から一人で逃げて、単独で大白虎さんとうまくコミュニケーションをとれる程度には世渡り上手さんだ。

 危険察知能力の高い陰陽お姉さんが駿介の危険性を察知しないとは思わない。

「俺達が既に勘づいているという情報を倉橋から吹聴させる必要もないだろ」

 駿介はあまり人を信じていない面がある。陰陽お姉さんはヒヨコの友達なのに。


 駿介は家の窓から飛び降りて、岬家の細い通路で倒れた男を拾いに行く。

「全く、面倒な……どうしよ、これ。警察に連絡した方が良いのかな……?」

 駿介はヒヨコに小さい声でぼやくように尋ねる。訊ねるというより独り言だろうか。

「ピヨピヨピヨピヨ(警察に連絡で済む問題か?犯人は駿介だぞ?)」

 今日のヒヨコは勇者でも忍者でもない。そう、今日のヒヨコは名探偵ピヨ!

 犯人は必ずヒヨコが暴いてやる。じっちゃんのナニ賭けて!真実はいつもヒヨコ。

 え?いろいろと混ぜるなって?そういわれても困るぞ。


「ガサガサピヨピヨ煩い!ヒヨコ、他人の風呂場の前で何を……」

 ガラガラッと隣の家の窓が開くと明らかにバスタオルで胸元を隠した突込みお姉さんが怒鳴り声をあげていた。

「ピヨピヨ(おお、すまんな。不審者を取り締まっていたのだ)


 突っ込みお姉さんはヒヨコを見てから、その近くに立っている駿介を見る。

 駿介と突込みお姉さんの目が合う。突込みお姉さんはにこりと笑う。


「不審者、死ねやああああああああああああああっ!」

 カコーン

 風呂桶が飛び、駿介の頭に凄く軽い音が響くのだった。


「ピヨピヨ(おお、違うぞ。不審者は……ってもう窓が閉まってしまったか)」

「俺、悪くないよね」

 見知らぬお兄さんの横でぐったりと倒れる駿介だった。どうやら時間と場所が悪かったようだ。お風呂場に入っている突込みお姉さんをのぞこうとしていたように見られたのだろう。

 哀れ駿介である。

女神「さあ、あとがきコーナーの時間です」

ピヨ「ピーヨヨピヨヨピーヨヨピヨヨ…」

女神「あ、いや、今日は女神ちゃんの部屋の時間じゃないので」

ピヨ「あとがきコーナーをそんなに頻繁にやると書くネタが無くなるぞ?」

女神「さあ、本編がついにローファンタジーと化した昨今、陰陽師業界、魔術師業界、密教僧業界などが迫り争いが始まりそうな状況ですが……、そこでピヨちゃんに朗報です」

ピヨ「朗報とは?」

女神「2025年3月ついに来ましたよ?何と…」

ピヨ「なんと?」

女神「6年5か月ぶりに東京レイ●ンズの新刊が発行されました」

ピヨ「な、なんと。2020年7月現在に生きるヒヨコはあと5年も待たねばならぬのか!?」

女神「そうなりますね。」

ピヨ「ヒヨコはあのアニソンが好きなのだが。そろそろあの作品も最終回に向かうからアニメ2期制作を願うぞ?はっ……まさか裏をかいて東京ピヨチャンズが…」

女神「出ません」

ピヨ「そういえば本編でも土御門って名前が………本作品にも春●や夏●や秋●、冬●が」

女神「出ません。っていうか伏字の場所のせいで春夏秋冬になってますからね。作品知らないとさっぱりなので辞めなさい」

ピヨ「だが既に本作では土御門と倉橋が出たのだぞ?」

女神「作者は現実世界にある陰陽師の大家をもとにしていますから。忍者関係者に三雲とか出ています。陰陽関係を出すと某作と苗字かぶりが大量増産するでしょう。向こうもそっちから苗字出ていますし。ちょっと調べればわかる苗字です」

ピヨ「ならば、忍者関係者が出てくる可能性もあるのか。それは楽しみだな。風間君(風魔忍者)とか服部君(伊賀忍者)とか出たりするのか?」

女神「さあ、どうでしょう?」

ピヨ「だがヒヨコは確信している」

女神「何にですが」

ピヨ「きっと四乃森君が出てくると」

女神「出ませんって。それはフィクション!史実にない苗字は間違いなく出ませんよ」

ピヨ「そうか、魔術師サイドを描くときはきっと間桐とか遠坂とか出るものとばかり…」

女神「それもフィクション!」

ピヨ「じゃあ、ヒヨコは」

女神「それもフィクション」

ピヨ「ヒヨコの目の前でフィクション扱いは酷いぞ!?」

女神「あとがきコーナーに出てる時点で言われましても……」

ピヨ「ピヨヨーッ!?」

女神「それではあとがきコーナーもここまで。次回『陰陽師の陰謀』でお送りします」

ピヨ「ついに陰陽師が出るのか!はっ、サブタイは『東京ピヨチャンズ』じゃないのか!?」

女神「やるにしても地理的に言えば『静岡ピヨチャンズ』になりますが何か?」

ピヨ「ピヨヨーッ!?」

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