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1章16話 狐は運命と出会う

※あとがきを更新しました。

 ローゼンブルク帝国領北東部、竜王領とベルグスランド聖王国に隣接した皇領ヴァイスフェルト領、そこに黄金の髪と黄金の狐耳と黄金の狐の尾を持つ一人の少女がいた。


 3年前、獣王国から追放され、ローゼンブルク帝国で、獣王国から流れる小川沿いにある町フルシュドルフに帝国民として移り住んでいた。


 彼女の名はステラ・ノーランド。

 かつて獣王国では巫女姫フローラ・ノーランドの娘として生まれ、とある事情で国から追放された身である。

 巫女姫の称号を持つ占師でもある。


 才能を開花する事で尾を増やすという特殊な一族らしく、普段は人化の法をつかって尾の本数を1本に見せている。その為、見た目だけは普通の狐人族と変わらない。

 とはいえ、種族名は妖狐族と言い、エルフに近い存在でもあった。


 そんなステラであるが、今はローゼンブルク帝国で平穏に暮らしていた。

 下宿先の犬人族の老夫婦の開いている雑貨屋の手伝いなどをしながら、占い師の仕事をしたりして、生計を立てていた。


 ステラが暇そうに雑貨屋の店番をしていると

「おーい、ステラー。ドロケーやるから一緒にやろうぜー」

「ドロケーやろう、ドロケー」

 やんちゃそうな4人の少年少女たちが声を掛けて来る。

 10歳前後の人間の少年と少女、それに犬人族の少年とドワーフの少女などもおり、人種差別を感じさせない子供達であった。帝国には法的に人種差別は存在しない。勿論、個々人によって違うのだが、この田舎町は流れの獣人も多いし、様々な冒険者がやってくるのでそういったものが無いに等しかった。

 この町を治めている太守代行の貴族は非常に


「あのね、私、店番してんだけど。それにもう子供じゃないんだからそんな遊びしないよ」

「何だよステラのくせに」

「ノエちゃんよりちびっ子なのに」

 男達がステラを指して笑う。

「な、何をーっ!」

「やべー、ステラが怒ったー」

「逃げろー」

 ステラが拳を握って振り上げると、慌てたように子供達が散って行く。


「まったくもう、子供なんだから」

「あらあら、別に遊んできたっていいんだよ。店番は私もいるんだし」

「って、お婆ちゃんまで!?」

 ステラはショックを受けたように下宿先のお婆ちゃんに抗議する。とはいえ食う物もなくこの町で行き倒れかけていたステラを拾ってくれた下宿先のお爺ちゃんとお婆ちゃんには頭が上がらないのである。


 とはいえ、さすがにステラも16歳になりとっくに成人を迎えている。帝国では15歳が成人を示す。

 なので子供と遊んだりはしない。立派な大人なのである。見た目は12~3歳程度であるが。

 店番だけでなく占い師の仕事もやり、それなりに生計を立てているのだ。


 が、見た目は思春期前の少女に見える為、子供達にもからかわれ、大人達にも子供扱いされていた。まあ、老夫婦からみれば10歳も20歳も子供と言えば子供なのではあるが。

 彼ら老夫婦は王国奴隷で亡命して帝国に来たらしく、幼い頃は獣王国にも住んでいたという。


 当然だが、巫女姫である事実は隠している。

 獣王と並ぶ獣王国の貴人である為、孫娘のように可愛がってくれるお爺ちゃんたちに気を遣わせたくないから、自分の素性を話せずにいた。

 最初は獣王国から追放された為であるが、今ではそれを告げても問題ない程度の信頼を互いに得ていたが、今更、よくしてくれた老夫婦に自分が巫女姫だと告げて、畏まられてしまうかもしれないのが嫌でもあった。

 その為、心苦しい部分は確かにあった。


「じゃあ、お婆ちゃん。私、川で洗濯しに行くね」

「あら、私が行くわよ?」

「うーん、何かね、今日の占いにあったんだよー」

「ふふふ、スーちゃんの占いは当たるものね。自分を占って何が出たんだい?」

「変な結果だよ。『運命の出会いがあるかも。川で洗濯をすると良いでしょう。ラッキーカラーは桃色』だって」

「もうスーちゃんも良い年なんだから、そろそろ相手が見つかるのかしら」

「さっき子供扱いしてたのに、それなの!?」

 ステラは思い切り頬を膨らませて呻くのだった。


 とはいえ、ステラも16歳、獣人族や王国ならば結婚していてもおかしくない年齢でもある。そういえばお兄ちゃんもマーサさんと出会ったのはその位だと聞いていた。

 自分にもそんな出会いがあるだろうか?


 この帝国には義務教育制度というものがあり、8歳から14歳まで教育を行ない、14歳から15歳になるまでの間は仕事の見習いにつくのが通例だ。その為、結婚は他国と比べると比較的遅く、20歳前後が適齢期である。


 14歳になると冒険者志望ならば冒険者学校に入るし、高等学舎への入学を目指すなら予備校に通ったりする。

 鍛冶師や職人ならば見習いとして師匠の下につくし、貴族ならばそこから1年の受験期間を経て高等学術機関へ入る。

 騎士志望なら正騎士の下につきながら騎士学校に入る必要があったりして凄く大変なのだ。


 ステラは占い師であるから本来であれば師匠の下につくべきだが、師匠がいる訳でもないので、既に一人で仕事を始めていた。

 よく当たるので多くの人に頼りにされているが、大都市では無いので細々と生計を立てる程度の稼ぎしかないのが難点だった。

 それでも、長閑なこの地が好きだったので、移住しようとは思わなかったのが現在の状況である。


 そんな境遇である為、勿論、同じ学舎に通った友達もいる。

 実際には既に結婚している友達もいるし、同年代の男子から幼女扱いされたりして腹立たしい思いをしてきた為、残念ながらそういう相手には恵まれなかった。


 だが、これは種族的なもので仕方ないのだ。

 狐人族のような見た目であるが、本当の種族は妖狐族という狐の姿をしたエルフのような種族だから、発育が遅いのである。

 母親は500歳という有史以前に生まれている年長者であったが、見た目は30歳前くらいの妖艶な容姿をしており、我儘な体を持て余していた。

 数年前に寿命を迎えたというのに、うらやまけしからん肢体をしていたので、自分もそうなると信じて疑わなかった。

 フローラが十代前半からうらやまけしからん肢体だった事実は横に置いてであるが。


「良い人が流れて来ると言いねえ」

「さすがに川で洗濯してたらドンブラコッコと流れてこないと思うけど。桃太郎じゃあるまいし」

「ふふふ、確かにそうだねぇ」

 お婆ちゃんのボケに突っ込みを入れるステラ。お婆ちゃんも自分で言って苦笑してしまう。


 ちなみに、『桃太郎』というのはかつてこの帝国を救った勇者シュンスケが伝えた御伽草子である。彼の世界では桃から生まれた桃太郎が悪い鬼を退治してお金持ちになり幸せに暮らしたなどという昔話があるらしい。どこまで本当かは不明だが。


「それにそれは私が洗濯に行かないと桃は拾えないものね。あれはお婆ちゃんが拾うものだから」

「そういえば、お婆ちゃんが川に洗濯に行くんだもんね」

 ステラと下宿先のお婆ちゃんはそんな他愛無い話をしていた。


 ステラは洗濯籠の置いてある方へと向かう。

 暫くして家を出ると、店番を代わったお婆ちゃんに一声かけに顔を出す。

「じゃあ、洗濯しに行くね」

「たのんだよ、スーちゃん」

 ヒラヒラと手を振るお祖母ちゃんの見送りを受けながら、洗濯物が入った籠を背負って、ステラは川へと向かう。




***




 ステラは川で洗濯をしていた。全部洗い終えて帰り支度をしている頃の事だった。

 するとどうでしょう。

 上流からどんぶらこっこ、どんぶらこっこと桃色の塊が流れてくるではありませんか。


「え、うそ」

 さすがのステラも困惑する。

 まさか本当に大きな桃でも流れて来たのかと思って目を丸くする。上流の方からゆっくりと流されてきて、所々で岩にぶつかって動きが止まったりしながらゆっくりと流されて近づいてくる。


 驚きながらその大きな桃色の塊を岸に引き上げると、なんとそれは桃ではなく桃色の巨大なヒヨコだった。体中が傷ついてボロボロではあるが、間違いなくヒヨコである。


「ラッキーカラーは確かに桃色だけれども……えー、これが運命の出会いなの?それとも腹でも割いたらイケメンが生まれたりするのかなぁ」

 物騒な事を口走るステラにヒヨコは殺気でも感じて反応したのだろうか、眠っている様子だったが、ゆっくりと目を覚ます。


 ヒヨコは周りを見渡し、そして川の水面に映る自分の姿を見て首を傾げる

「ピヨ?…………ピヨヨピヨ?ピヨピヨピヨ?(ここは誰?このヒヨコはどこ?)」


 ヒヨコは不思議そうに首を捻りステラに訊ねる。

 念話を使えるステラはヒヨコの鳴き声でヒヨコが何を思ったか理解してしまう。


 ステラが拾ったのは人間大の大きさの、世にも珍しい記憶喪失のカラーヒヨコだった。とはいえ、ステラにとって魔物との出会いなどが運命であるわけもないと頭の中で処理する。

 ともすれば、残る運命はと言えば……

「……運命の出会いって……運命だと思う程美味しいヒヨコなのかな」

「ピヨ!?」

 ステラは腰にさしてある護身用の短剣を取り出しながら小さくつぶやくと、ヒヨコはあまりの恐怖にべそをかいてしまう。


 ヒヨコの明日はどっちだ!?

女神「あとがき担当の女神です。はじめましての人は分からないと思いますが、1章のまえがきもあとがきがなくなっている!とお気付きの人もいるでしょう。2021年12月半ば、ヒヨコはリニューアル中です!と言う事で、ゲストに500年前、帝国に召喚された勇者シュンスケ・オキタ君も迎えてみました。」

勇者「どーも。初めまして。……んっ!?初めまして!?何かデジャヴ!?どういう事だ!?」

女神「そうです。1部完と言う事で作者が書き直しています。私が唯一活躍する場まで奪っていきました。初めての態と言うかこれから初めて読む人は初めてなので初めましてです。」

勇者「で、俺、何でここにいるの?」

女神「貴方の魂の行き着く先でもあるヒヨコの物語のあとがきコーナーに呼んだだけです」

勇者「魂の行き先?」

女神「つまりここは未来の世界です。貴方が死んでから先の話、大体あなたがここにきて500年後くらいの未来ですね」

勇者「マジかー。え、俺、将来、このヒヨコになるの?」

女神「まあ、その間にも何度か転生してますけどね」

勇者「なるほど。でもそうすると未来の俺の魂と、未来の俺の子孫が邂逅するという事もあるのか。なんという運命の邂逅。ちょっと胸熱ですね」

女神「え?子孫なんて1人も残してないのにどうやって?…ああ、そういえばここに呼んだシュンスケ君は魔神を倒した後でまだ女性陣には愛想つかされてなかったんでしたっけ。ソーデスネ、ミライハムゲンダイ。ガンバッテクダサイネ。シソンヲノコセルヨウニ」

勇者「な、何故棒読み?え、俺、まさか子孫を残せないの!?くっ……や、やはりマリアとの婚姻は進めるべきか……しかし俺には姫様が………フローラのモフモフ狐尻尾と爆乳も捨てがたい………ああ、どうすれば」

女神「まあ、ここであった事はすべて忘れるので、意味ないんですけどね」

勇者「くっ………まあ、未来は無限大ですものね。目指せハーレム!」

女神「さて、ヒヨコ伝説ですが、人気が出るようにアドバイスを貰いたいと作者の弁です」

勇者「ふっ、かつてなろうに10タイトル以上を投稿して累計にして20ポイントを稼いだこの俺がアドバイスをしようじゃないか」

女神(自慢にならないポイント数。2021年12月21日1600PT突破中の作者作品に対して……何故、上から目線?)

勇者「まず、タイトルだな。この作者はセンスがないね。タイトルを変えるべきだね」

女神「始まって早々にタイトルへ駄目だしとは。ではどんなタイトルが良いと?」

勇者「そう、たくさん読んでもらえそうな、且つヒヨコを押し出したタイトルを。例えば『無職ヒヨコ~ヒヨコになったら本気だす~』でどうだろう?」

女神「確かにあのヒヨコはジョブが無職ですが露骨すぎやしませんか?先人のリスペクトパネェ感しか出てないですよ?」

勇者「むう、確かに。じゃあ、『ありふれたヒヨコで世界最強』」

女神「ありふれていませんよ、あのヒヨコ!」

勇者「むう、女神様は我儘だな。じゃあ『ヒヨコ科高校の劣等ヒヨコ』。物語もガラリと変えて、『さすヒヨ』と呼ばれるようになるのがベストだな」

女神「学園ものじゃない上に、何の話か全然分かりませんから!貴方がかつてなろう作家だったアピールやめてください」

勇者「なかなか難しいですね。じゃあ、『ピヨ:卵から始めるヒヨコ生活』」

女神「もはやタイトルを変えるのではなく、先輩のタイトルをパクろうぜ的な方向になってませんか?あ、そういえばあなたもこっちに来た時はジャージ姿で無一文でしたね」

勇者「やめて!悲しい過去がジクジク痛むから!じゃ、じゃあ、『この素晴らしいヒヨコに祝福を!』にしては」

女神「どうやらジャージ姿で無一文のまま飛ばされたのが本当にトラウマだったんですね?私はついて行きませんでしたが」

勇者「しまった!揃いも揃って俺と同じ転生仲間か!」


※女神様からの説明:勇者シュンスケは引き籠りがちな高校生1年生で、1学期の7月にトラックに引かれてこちらの世界にジャージ姿で無一文のままやってきた典型的(スタンダード)異世界転生者(チート野郎)です。


女神「貴方の境遇はどうでも良いので、もう少しましなアドバイスを送ってあげてください」

勇者「そ、そうだな。やはり転生系はあまりよくない。ここはなろうから離れて、『ヒヨコに出会いを求めるのは間違っているだろうか?』でどうだ!」

女神「いえ、それもなろうの出身ですよ?」

勇者「マジデ?」

女神「マジです」


※女神様の説明:某作品は書籍化にあたり削除されました。


勇者「ひ、ヒヨコの勇者の成り上がり…とか」

女神「そもそも先人のタイトルをパクろうとすると、累計10位の内、10作品が異世界転生系である以上、何を選んでも貴方の境遇と同じになりますから」

勇者「なんてこった」

女神「では、ポンコツな勇者のヨタ話(ヲタ話?)はここまでで。次回はキャラクターステータスを挟んで2章へ突入します。真なるヒヨコ伝説はここから始まります。それではまたお会いしましょう」

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