1章2話 ヒヨコ誕生
俺は突然覚醒した。
死んだと思っていたが、突然の痛みが走った。痛みがあると言う事は生きているという事だ。
ゴツンという音が聞こえると同時に体が大きく揺れ、さらには体がゴロゴロと回転する。
まさか死んでも意識があるのだろうか?
動かそうとするが体が重くて動けない。
チャップチャップと水の中に揺られている感じがする。
樽か何かに水と一緒に詰め込まれて転がされているような感覚だ。激しい痛みを体中に感じながらも、俺は体を丸めて身を守ろうとする。
そこで気付いたのだが、死んだはずの俺であるが、何故か体が動くのだ。
非常に動かしづらい。いや、そもそもどう動かせば良いのかも分からない。思ったように体が動かないし、目を開けようと思っても暗いままだ。
やがて衝撃的な音を聞くと同時に暗闇の中から光が差し込む。まるで暗室の壁に亀裂が入ったようにひび割れた場所から光が差し込む。
光だ!
俺はただ光を求めて体を伸ばそうとする。
上手く体が動かないけど、まるで手も足も切り取られて新しい何かを動かすかのように必死に光へと進もうと体を伸ばす。
壁に頭がぶつかるが、それでも俺は必死に光を求めて、ただただ頭を押し当てる。
すると壁の亀裂が割れていき、パラパラと砕かれて明るい世界が開かれる。
俺はその光の先を見ると………そこは森の中だった。
小さな木漏れ日の下に俺は目を覚ましたようだ。
だが体が上手く動かない。立とうとするが足元がしっかりしておらず、力もあまり入らず立つ事にも苦労する。
まるでよちよち歩きの赤ん坊、あるいは生まれたての小鹿の様な心境であった。
だが、俺はどうやら死んではいないようだ。
生きていたのか?
俺は首を捻る。何故か俺は巨大な森の中、白くて大きい、割れた皿みたいなものの上に立っていた。
不思議に思い足元を見る。焼き爛れた足だったり白骨だったりしたら嫌だなぁと思いつつも思い切って視線を割れた皿から更に下へと持っていき自分の足を見る。
そこにあったのは赤い鳥足だった。
???
首をひねってみるとグルンと真後ろが見える。背中は何故か赤色の羽毛だった。
よくよく見ると足元の割れた皿みたいなものはどうやら巨大な卵の殻のようだ。
「ピヨピヨ、ピヨヨピヨーピヨピヨ(一体、何がどうなって)…………………ピヨッ!?」
何故か喋ろうとするとピヨピヨと声が出る。
体が濡れているように感じるので、白い皿のような物の中を覗き見るとそこには水たまりがあった。
恐る恐るその水たまりを覗き込むと、水面に映し出されたのは赤いヒヨコだった。
「ピヨッピヨヨ!(なんでやねん!)」
余りの驚きに声を上げる。
やはりヒヨコの鳴き声だった。
何が起こったのか理解が出来ない。
確かに俺はあの時死んだはずだ。何で生きているのだろうか?
っていうかこの水面に映し出されているのは明らかに俺の意思で動いているという事は
俺=ヒヨコ
という構図なのである。まさかこれは生まれ変わったのか?
だがしかし、何でヒヨコ?
いやいや、ヒヨコはこの際に置いておこう。
動物に人間の記憶があるとか理解不能なのだが。そもそも鳥頭という位、鳥は記憶力が無いのだ。前世の記憶があるとかちょっとおかしいだろう。
俺は不思議な状況に戸惑い、自分のスキル構成を見ようと人間の時のように念じると、その時と同じように目の前に自分のステータスが見えるようになる。
名前:-
年齢:0歳
LV:1/50
種族:???(ヒヨコ)
性別:男
職業:無職
称号:復讐者
いつもの様にステータスが出てきた。
…………んんっ?よく考えたら何で神眼を使えるんだ?
これは俺が勇者になった時に取得したスキルだった筈。
これではヒヨコの着ぐるみを着たルークじゃないか。
何故か人間の時と同じようなスキル構成がついていた。
<剣術LV10>を含む膨大な魔法、莫大な体術系スキルが存在していた。
勇者時代のスキルだ。
だが、その中に混ざって見たことも無いスキルもあった。
<火吐息LV1>というのがある。
……え?このヒヨコ、ピヨピヨ言ってるくせに火を吐くの!?
というか勇者時代の膨大なスキルがスキル欄を埋めてあり、火吐息に気付いたのは偶然に近い。
だが、勇者時代のスキルって使えるのか?<剣術LV10>なんてあっても、ピヨピヨのヒヨコちゃんである俺は剣を振る手が無いんですけど。
分からん、何でなのかさっぱりわからん。
何でこんな事になっているんだ?
ぬぬぬぬぬ。
俺は恨めしそうに水面に映し出されている赤いヒヨコ姿を睨んでいると、とある事実に気付くのだった。
水面に映る俺、何か可愛いくね?
どこからどう見ても完全無欠のヒヨコだった。かわいらしいヒヨコちゃんだった。
丸っこい頭、小さい体と小さい翼、赤い羽毛に覆われた体とそれよりちょっと濃い赤い鳥脚を持っている。
もしかして俺はヒヨコ力が高いんじゃないか?勇者よりヒヨコに向いているのではなかろうか?
ちょっとポージングを取りつつ、後ろから、横から、斜めから、どこから見ても可愛いヒヨコちゃんだ。
だが配色が祭りの出店で売られているカラーヒヨコみたいな色をしている。
一体、俺は何のヒヨコなんだ?まさかお祭りのカラーヒヨコって本当に色を塗っていない天然もののヒヨコもいるのか!?
スキルを見るに火を吐くモンスターのヒヨコなのだろうか?フレイムバードとか煉獄鳥とかいたが、その類だろうか?
肝心の種族が『???』じゃ分からないじゃないか。神眼は神の目と同じ能力を持っていると聞いていた。
ならば神さえも知らない種族と言う事か?
いや、神は知っていても、まだ人類が種族名をつけていないから『???』なのかもしれない。
名前が無ければつけられないだろう。
流石に勇者時代のスキルは膨大で、自分でもどのスキルがあるかは覚えていないが、勇者時代の膨大なスキルがヒヨコの持つスキル欄を埋め尽くしていく。勇者でありヒヨコであるという感じになっていた。
その中に全く身に覚えのないスキルが存在していた。
『<忘れない想い>が全て反映されました。<忘れない想い>を消却します』
何だろう、おおっ、何かスキルがずらっと揃っているぞ。
もしかしてこれか?
死ぬ間際に神託スキルで聞こえてきた新しいスキルだと思っていた。
だが…………、まさか『忘れない想い』って死んで生まれ変わっても忘れないのか!?
なんて恐ろしいスキルだ。
やがて<忘れない想い>というスキルは消えてしまう。つまりスキルや記憶を移す為のスキルなのだろう。移し終えたら終わりという事だろう。
だが、突然、異なる神託が入る。
『肉体不適合の為スキルが消去されました』
という神託だった。
すると神眼に映る様々なスキルが点滅して半透明の文字が次々と消えて行く。
消えたスキルと新規のスキルはこんな感じだ。
新しく増えたスキル
暗視 音響探知 炎熱耐性LV10 火吐息LV1
消えたスキル
覇気LV5 勇気 根性LV10 超撃LV8 腕力強化LV10 跳躍LV8 高速移動LV10 脚力強化LV5 防御LV8 身体硬化LV5 計算LV1 高速思考LV5 極限LV5 鷹の目 気配感知LV10 水泳LV1 書記LV1 挑発LV5 疲労耐性LV8 精神耐性LV10 麻痺耐性LV5 呪耐性LV9 剣術LV10 弓術LV5 盾術LV8 格闘術LV6
残ったスキル
魔力操作LV10 回避LV5 神眼 神託 魔力感知LV10 火魔法LV10 水魔法LV5 氷魔法LV5 土魔法LV5 風魔法LV7 雷魔法LV8 神聖魔法LV9 即死耐性LV10
新しく増えたスキルは恐らくこの赤い鳥特有のスキルだろう。炎熱耐性は死ぬ間際に炎にあぶられて身につけたスキルか?だが、ファイアバードだったとしても高すぎる気はするが、
ざっと見ると体の動かし方、肉体の耐性に関わるスキルや頭の回転に関わるスキルは総じてなくなっている。
まあ、そりゃそうだろう。
このヒヨコボディではどうやっても剣や盾を持てないし、弓なんてもっての他だ。
格闘術にしても五体あって初めて使えるものだ。こんな可愛らしい姿じゃ挑発なんてできない。防御も何も身のこなしも異なるし。高速移動も跳躍も、そもそも足が異なるし。ペンも持てないから書くことも出来ない。
逆に魔法関連はほとんど残っていた。何故か神眼と神託も残っていたのは不思議であるが、勇者の称号が無くなったのに勇者の称号と共に手に入れた神眼、神託、即死耐性LV10が生きているのはどういう事か?なのに勇気と言うスキルが失われている。
まるで俺が腑抜けにでもなったみたいじゃないか。
ここら辺の事はよく分からん。
あと回避も何故か残っていた。回避って身体能力とは違うパラメータで作動するスキルなのだろうか?反射神経?
だが、鷹の目を奪わなくてもいいではないか。こっちの方が鷹に近い生物なのに!
くう、俺は鷹のヒヨコではなかったのか……。
そう言えば称号欄も何故か復讐者だけが残っていた。
剣聖や真の勇者、魔王討伐者、不死王討伐者などという称号が存在していたはずなのだが……。
暫くスキルに関しての検証をしてから次に自分を見る。
やっぱりどこからどう見てもヒヨコである。
それにしても勇者スキルを継承して生まれたヒヨコって、どうなっているんだろう?
それに称号欄は持っていた剣聖や真の勇者、魔王討伐者といったものは片っ端からなくなっていた。たしかに称号とはその個人に不随するのだから、体が違えば称号が異なるのも当然か。残ったのは『復讐者』だけである。
まあ、真の勇者という称号を持つヒヨコは世間的に泣けてくるから仕方ないのかもしれん。きっと女神様も配慮したんだろう。
それにしても何で俺は忘れない想いなんてものがあるほど、忘れたくなかったんだっけ?
何か大事な出来事があって、それで忘れちゃいけないと思ってたのに、スキルは忘れてなくても大事な部分を完全に忘れているような?
まあ、良いや。折角生まれ変わった鳥生なんだ。鳥は鳥らしく真面目に、今度は騙されたりしないように生きていこう。
ピーヨピヨピヨ、ピヨピヨリ。
俺は腕…というか小さな翼を組もうとして組めず、取り敢えずうむうむと頷き、水面に映るヒヨコ姿を眺めるのだった。相変わらずかわいらしい姿である。
そんなヒヨコの後ろに蛇の姿が映し出される。
なんだかヒヨコが丸呑みできそうな大きさの緑色をした蛇である。そういえば蛇は卵を一飲みするって聞いた事が……
恐る恐る後ろを見ると、大きく口を広げて俺を丸呑みにしようとする蛇の姿がいた。
「ピヨヨピヨピヨピヨピヨヨ?(俺は美味しくないですよ)」
「シャアアアアアアアアアアッ」
蛇が俺に襲い掛かる。残念ながら、蛇はヒヨコ語を解さないようだ。
「ピヨーッ」
俺は鋭く反応して攻撃を回避する。回避スキルLV5を発揮された瞬間だ。回避スキルが失われていなかったのがどういう理由かは分からないが、とりあえずラッキーと言っておこう。
パーティでは攻撃を引き付ける役なので回避よりも防御優先にしていたが、こんな事になるなら回避を中心に鍛えれば良かったと心底思うのだった。
蛇は俺を睨み更に襲い掛かろうとする。
ぬう、体が重い。腹も減った。生まれたてのヒヨコに何という困難を授けるんだ。元勇者じゃなかったらこの時点でバッドエンドじゃないか。
というか、今でも既にバッドエンドへ向かっているような気もするが。
ヒヨコの割には高いステータスを持っているが、目の前の蛇の方が明らかに強そうだ。そもそも攻撃手段が無いのがいただけない。
そのせいで相手にいただかれそうなのだが。
魔法を使いたくても生まれたてでMPが少ない。
スキル的には大魔法を使えるはずだ。神殺しの魔法も使えるヒヨコである。だがMPは無いのだ。残念なことだった。
魔力を伸ばす育て方をすれば、ヒヨコウィザードになれるのだろうか。というか、そもそも何のヒヨコなんだよ、俺。
というか母鳥はいずこへ!?
俺が蛇と対峙していると、蛇は機を見て襲い掛かって来る。その鋭い牙の攻撃を再びかわす。
そうだ、このヒヨコボディでも攻撃手段があった。それは嘴と火吐息だ。
シュルルルルル
二枚舌を震わせて俺を睨む蛇。
ふふふ、こっちがただのヒヨコだと思ったら大間違いだ。きっと名のある鳥の子に違いない。というか、多分魔物のヒヨコだよね、オレ。
そして魔物と知らずに襲い掛かってきた蛇風情が後で後悔するがいい。
「ピヨピヨピヨヨー!(火吐息)」
俺の口から火の息が発せられる。本能に任せて火を吐いてみたのだが……
ポムッと口から火の玉が飛んで、蛇の頭にポフッと当たって消える。蛇は何をされたのか気付きもしなかった。
しょぼ!
何てしょぼい火の吐息!
こんなんじゃ煙草の火だってつけられないぞ!
何故だ、俺の知る限り、どんなに弱い火吐息でも松明くらいは燃えるのに!ヒヨコの口から出たのはヒヨコの頭くらいの小さな炎。つまりマッチのような火だった。
蛇はバカにしたように俺を笑い(ヒヨコ視点ではそう見えた)、さらに鋭い牙を向けて襲い掛かる。俺は必至に後ろにはねて回避するが、未だに体が上手く動かず、後ろに転んでしまい、丸い体がそれを後押しするようにゴロゴロと転がり、俺の意図とは全く関係なく坂道を転がり降りていく。
「ピヨヨピヨピヨピヨピヨ~(なんて不便な体だ~)」
ゴロゴロ転がって行くとやがて凄まじい衝撃を頭に受けて、回転が止まる。
樹に頭を打ち付けたようだ。
目が回ってしまい、激しい衝撃で目の裏がチカチカしているような感覚に陥る。頭の上にピヨピヨとヒヨコが回っている感覚がする。いや、ピヨピヨ言っているヒヨコは俺だった。
だが、恐ろしい事に蛇はまだあきらめずに俺を追いかけて、山道をスルスルと下って来る。視線の先には俺。
大きな口をカパッと開けて、大きい体をバネのように使って、俺噛みつこうと飛んでくる。
ええい、勇者たるもの逃げてばかりいられるか。戦ってやる!
俺は覚悟を決めて特攻へと向かう。だが、人間の頃と違って体の勝手が違い、見事に踏み出そうとして足を滑らせてピヨコロリと転んでしまう。
やばいっ!
絶体絶命の危機。まさか悪魔王にさえ勝った元英雄たる俺が、蛇一匹相手にして足をもつれさせて転ぶとかどんなドジなのか!?
痛みを覚悟して反撃を……と思ったが、一向に痛みはやって来なかった。
どうしたものかと思い俺は周りを見渡すと、蛇は間抜けな事に俺の背後にある樹に牙を突き立てて刺さっていた。
こいつ、アホや
こけた俺が言うのもなんだが、この野生において敵に失策を見せるのはとても危険な事だ。強者が一転して弱者になる瞬間である。
くたばれ!
俺は敵に対して容赦をしないと決めたのだ!
殺される前に殺す!それが世の掟、つまり焼肉定食という奴だな!?
※焼肉定食× → 弱肉強食〇
本能のまま咄嗟に出た攻撃は悲しくも嘴攻撃だった。
悲しいかな、ついさっきまで人間だったのに、本能が既にヒヨコだったとは。メキリと蛇の背中に良い感じでダメージが入る。
よし、第2撃目であの鱗を突き破る!
さらに俺の嘴が蛇の背中に突き立てられる。ザクッと良い感じで蛇に大ダメージを与える。蛇は悲鳴っぽい声をあげて苦しんでいた。
クハハハハハ、ヒヨコを舐めるなよ。ヒヨコを!今日から元勇者の最強ヒヨコ伝説が開幕す…………ムゲッ
なんと、蛇は牙が上手く樹から取れないと感じたのか、樹に牙を差してぶら下がっている状態のまま、胴体を俺に巻き付けて来たのだ。
蛇の胴体が俺のヒヨコボディを締め付ける。
なんてこった!
ミシミシとヒヨコボディが悲鳴を上げる。
蛇の胴体に巻きつかれた俺は絞殺されそうになっていた。よく考えればどんなにスキルや知識があっても、今の俺の体がいたいけなヒヨコなのだ。
人間に蹴られたら軽く死んでしまう弱っちい存在だ。
HPがそこらの子供と大差ないほどだったのでヒヨコのわりにはちょっと高い気もしたけど、小さいヒヨコなのは間違いない。
弱者だった頃の感覚を忘れるとは、なんて愚かな行動をとったのだ。
くっ………だが、腐っても元勇者。騙されて燃やされても元勇者。
簡単に敗北を受け入れたりはしないのだ。この嘴がある限り雄々しく戦い続けるのだ。この嘴の誇りに掛けて。さあ、足の鍵爪で大地を踏ん張り命あるまで戦い続けるのだ。
あれ、なんだか元勇者の自尊心よりも、鳥としての自尊心の方が優勢の様な………。
ええい、どっちでも構わない。俺は首を振って必死に蛇の鱗をつつく。突いて突いて突きまくる。その雄姿はまさしくキツツキのごとし。
何故だろう、頑張れば頑張るほど、人間としての尊厳や矜持が消えていくような………。
蛇の鱗を突き破り、肉を徹底して突く。蛇からは血が飛び散り、俺は更に頑張って首を振る。蛇は力が抜けたのか、ついに俺を解放する。
俺を放したが最後だ。くたばれ、この蛇野郎!
蛇へとどめを刺しに特攻する。その瞬間、蛇は樹から牙を抜き、そして俺に対してその牙を向けるのだった。
ぬかった!何でこんなにミスをするんだ、俺!?
罠に罠を重ねて俺を倒そうとした不死王さえも上回った知略を持つこの勇者がどうしてこんな凡ミスを連発!?
だが、もはや引き返せない。俺は嘴に命を懸けて特攻する。
俺と蛇が交差する。
互いに擦れ違い、背を向け合う。ぐらりと揺れて倒れるのは蛇の方だった。
ついに蛇を倒した俺だったが、その代償は大きかった。蛇の牙がかすり、俺の体は急激に重くなる。蛇毒だ。頭の中でファンファーレが鳴り響き、レベルアップしたのが分かる。
だが、これは勝負に勝って、試合に負けたとはこのことだろうか。くっ……神聖魔法を……あれ、体にある魔力が少ない。
そういえば生まれたてでMPがほとんどなくなってたっけ。
……熱い、重い、苦しい……。
折角生まれ変わったのに、俺はここで朽ちるのか。
俺は重い体を引きずりながらも肉食動物に食われないように、大きな草木の茂る中に身を隠れるようにして倒れる。
HPが減って行く感覚がある。明らかにこれは不味い奴だ。ヒヨコの小さな体では毒など喰らえば生きていくのは困難だ。
ううう………死んでしまうのだろうか。折角、第二の人生ならぬ鳥生を今度は騙されないように真面目に生きようと誓った矢先なのに。
俺の意識はそこで途切れてしまう。
私、この世界の女神。ごくごく平凡な女神の筈だったのですが、何の因果か運命か、あとがき担当に任命されてしまいました。
待ち受けるのはどんな仕事?あと、まだ名前も聞いていないこのヒヨコは私の世界で管理しても大丈夫なのでしょうか?
次回、最凶ヒヨコ伝説 斜陽の王国。ピヨピヨヒヨコが頑張ります。
という事で、あとがき担当に任命されてしまったこの世界の唯一神である女神です。上記のあとがきは作者が書いた台本です。某魔法少女の第1話の次回予告をオマージュしただけのようですが気にしないでください。
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と、作者が言わないといったので女神が言ってみました。作者、こういう事を他人にやらせるとか汚い奴ですよね。ホント。
なので、ポチポチ押す作業よりも作者が面倒な奴だというのは横に置いてもらえると幸いです。
さて、本話において勇者は生まれ変わって鳥になりました。生まれ変わったのに記憶を継承してしまったのは私のミスではありません。ええ、ミスでは無いのです。
500年前に、この世界にスキルシステムを導入した際にアンデッドの存在などが元々実在した為、そういった現象を説明する為に敢えて作った記憶持ち越しシステムなのですが、生まれ変わる際に引き継いでしまったのでしょう。ほとんどヒヨコに取り付いた亡霊のごとしですね。
従来、長く生きると魂は摩耗してしまい、魂は単独だと風化して世界に魔力として拡散するのですが、生命の元が発生すると吸収されて新たな魂として生まれ変わるのです。
基本的に一つの命が一つの命に全て生まれ変わるという事はありません。
ただ、500年前にこの世界が魔神に攻められてしまい、危機を救う為に勇者シュンスケの魂を友人からもらったのですが、その魂はこの世界のシステムの順応性が高く、移動しても風化しにくい魂だったのです。
無論、そうでないとそもそも風化してこの世界に移動できないので。
と、ここまでが裏事情です。まあ、この事は覚えていても忘れてしまっても物語を楽しむ分には全く問題ありません。
という事で説明はここまで。皆さん、次回、またお会い致しましょう。