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2章13話 ヒヨコの異世界事情

 ヒヨコ達の休んでいた宿屋の一室に大きい穴を開いていた。


「もう、駄目ですよ。いくらトニトルテ様でもメッです」

 宿屋の娘さんに怒られていた。

 可愛い娘さんなのでヒヨコはトルテを叱る宿屋の娘さんを応援していた。

「きゅうきゅう【すまないのよね。ヒヨコが若き日の傷をえぐるからうっかりブレスを放っちゃったのよね。そしたら部屋がえぐれちゃったのよね】」

「ピヨピヨ【ヒヨコが悪いのか!?】」

『うちの妹が申し訳ないのだ。ちゃんと弁償するのだ。いくらくらいかかるのだ?』

 グラキエス君がヒヨコの頭の上で紳士的に宿屋の娘さんに声をかける。

「グラキエス様からお代を取る訳には……」

『問題ないのだ。トニトルテの粗相は我ら竜族全体の粗相。相場を教えてくれればその額をちゃんと払うのだ』

「金貨1枚もあれば大丈夫ですけど………」

『ならば金貨2枚なのだ………。ちなみに僕は持ってないのだ』

「私達も禄に持ってないわよ?」

「きゅう~【お金なんて持ち歩かないのよね】」

「僕も馬車に忍び込むためにモノを整理してきたからお金持ってないよ?」

 全員の視線がヒヨコに集まる。

「ピヨヨーッ!?【被害者のヒヨコに金を出させるのか!?】」

 ヒヨコは両手羽で頭を押さえて涙目で呻くのだった。


 ドラゴンとはとんでもない奴らだ。


 でも、宿屋の娘さんはとってもかわいいのでヒヨコは喜んで支払おう。

 ヒヨコは懐に手を入れて時空魔法の<異空間収納(アイテムボックス)>を使ってニクス竜王国の金貨を3枚取り出す。

 そこは色を付けて払うのがヒヨコの流儀。だって、ヒヨコは金持ち(リッチ)だから。死霊王(リッチー)ではないぞ?

 だが、覚えておれ、トルテめ。ヒヨコは決して許さない。いつかピヨピヨしてやる。




***




 それからヒヨコ達はオーウェンズ公爵領の領都リトレに戻ってきていた。

「なるほど、無理だったのですね」

 騎士隊隊長さんはグラキエス君から話しを聞いて一言ぼやく。

 勇者が離脱されれば大きい話であった為、どこか残念さが滲んでいた。

「はい。説得を試みたのですが言葉巧みに騙されて」

「あいつは昔からああいう奴よ。日本でも散々振り回されたじゃない。智子の友達だから手を貸してやってたけど、私たちはあいつの保護者じゃないのよ」

 ガッカリしている三つ編みお姉さんとは対称的に剣術お姉さんは憤慨していた。


『まあ、向こうにも向こうの事情があるのだ。人間は大変そうなのだ』

 グラキエス君が笑って流し、エマーソンは苦笑して眉をハの字に垂れ下げる。

「グラキエス様に言われてしまうと実も蓋もありませんな」

『でも勇者の狙いは母ちゃん達だからな。この大陸から離れるというのも一つの手だとは思うのだ。振り上げた拳の落とし所をなくしてやっても良いのだ。また、皆で家族旅行も良い事なのだ』

「そういう事を言われても……。一介の騎士隊長の私にはどうしようもないので」

 その通り、師匠やオーウェンズ公爵辺りと話した方が良いだろう。

『それもそうなのだ。でも、僕らは国に愛着がある訳ではないけど、優しい皆が大好きなのだ。魔物の脅威からは守るけど、人間同士が仲良くできない事に対して仲介なんて出来ないのだ』

「ありがとうございます。…その、………話は飛びますけど、サクスムは無事でしたか?」

「さくすむ?」

 首を捻る異世界お姉さんズ。

「ここに戻る前に一泊した街だよ」

 とフェルナント君が教えてくれる。ヒヨコもすっかり忘れていたがそんな感じの名前だったと思い出す。

『そこのすぐ近くまで王国軍が来ていたけど、まだ戦争前の状態だったから無事だったのだ。でも厳戒態勢を敷いていたのだ』

「そ、そうですか。………。くそっ、この国がもう少し一つにまとまってれば……」

 騎士隊長さんはがっくりしてつぶやく。

「どういう事?」

 首を捻る剣術お姉さん。

「本来、ニクス竜王国は北海王国に後れを取ることは無いんだよ。今、前国主が亡くなってから、次期国主を三大貴族の中で争っているらしいんだ。本来、戦争になるようなら中央軍が東西の守りを固めるために出るんだけど。国主不在で、各領主は足の引っ張り合いをしているんだ。東部は偏西風の吹く西部ほど暖かくないから戦争のできる状況じゃないんだけど、軍を遠征させるのを拒んでいてね。グランヴィル辺境伯もラングリッジ侯爵もこっちへの進軍の兵を中央から出させないようにしているんだ。公爵は今、一番国主に近いからね。この戦争で負ければ一気に形成が傾くからチャンスだと思っているんじゃないかってのが見解」

 フェルナント君は国の状況を説明する。

「そ、そんな理由で中央軍が出て来ないのですか!?」

「ごめんね。これは僕も関わっている事だから。何せ帝国との貿易でオーウェンズ公爵は一気に力を付けてしまったからね。時期が凄く悪かったんだよ。」

 フェルナント君は申し訳なさそうにする。

「い、いえ。そのようなことは。……他の貴族こそが問題ですから」

 騎士隊長さんは首を横に振る。

「そんなに帝国との貿易って儲かるの?」

 と尋ねてくるのは剣術お姉さんであった。


「こっちにある特産品と帝国にある特産品は違うからどちらもかなりお金が行き来してるんだ。帝国は大きい金鉱脈があるからね。逆にこっちは鉄や銅みたいな金属が安い。帝国は今文明開化中だから鉄を凄く欲しているんだ。大型輸送船もたくさんできているし、あと大北海大陸の魔絹は質が良いから貴族たちはそっちを好んでるね」

「最近見たのですが魔導列車は凄いですな。あれがあれば国の南部を短時間で横断できますし」

「僕が生まれるちょっと前に正式に帝都と辺境伯領を繋げて町中を度肝抜いたって聞いてるよ?」

「ピヨヨッ!【フェルナント君のお父さんが出資して、今の皇帝が極秘裏に進めていた大事業だからな】」

『その列車なら僕も乗ったのだ』

「きゅう~【楽しい列車旅だったのよね。ヒヨコが貨物に乗せられた辺りがとっても】」

「ピヨピヨ【ヒヨコ達が頼んで乗せてやったのに、何でヒヨコを貨物に乗せて喜ぶか!?】」

『頼んだのは父ちゃんだったのだ』

「ピヨピヨ【ヒヨコが最初に頼んだのだ。ヒヨコの顔の広さを崇め奉るが良い】」

「というか、その頃、列車の乗車許可したのって究極的に言えば僕の父さんじゃ」

 ヒヨコ達が手柄争いをしていたが、フェルナント君の鋭い指摘にヒヨコ達はショボンと萎びかける。

「ピヨヨ~」

「きゅ~」

『そだね』」

 誰が頼んだかは関係なく、偉いのはフェルナント君のお父さんだと思い知ったからだ。

 懐かしい話である。ステちゃんは元気であろうか?

 よし、今度遊びに行こう。あと3年の辛抱だ。ヒヨコは辛抱強くフェルナント君の護衛を務め終えるまで頑張るのだ。

 というと囚人みたいだな。


「ピヨヨ?【でも何で騎士隊長さんはサクスムの事を?】」

「娘が独り立ちしてあそこの宿屋で働いているのです。妻に先立たれ男手一つで育てたので心配ではあるのです……」

「ピヨヨ~【おお、あの可愛いらしい宿屋の娘さんか。………親子には一切見えんが】」

「いや、はははは。自慢の娘ですよ。ですから戦場になると聞いて心配しているのです」

「ピヨピヨ【それは大変だ。………ヒヨコもつい最近、魔物の子分たちが冒険者のターゲットにされてしまってな。助けに行くのが遅れて見つけた時には遺体だったぞ。とっても悲しいのだ。大事にしてやって欲しい】」

 チュン助もミルマスもドスも悪い子ではなかったのに、人間にはそれが分からないのだ。人間だって悪い奴ばかりではないのだが、あの子達もそれが分からなかった。

 確かにあの子達はヒヨコのアホ毛を引っこ抜いて遊ぶ悪戯坊主ではあったが、決して悪い子達ではなかった。

 悲しいすれ違いだ。そういう悲劇は無い方が良いだろう。


「もちろんです。故にこそ、勇者殿の懐柔は成功してもらいたかったところですが…」

「向こうはこっちの情報がなく、こっちは向こうの情報がない。だから戦う必要もないのにすれ違ってるって感じもするのよね。高城はバカだけど、正義感は強いから、正義感だけで動いているってことは分かってないのよ。こっちの事情を私たちがもっと説明できれば止まれたんじゃないかとも思いますけど……」

「戦とはそう言うものです。とはいえ、上の方は分かっておりましょう。ただ、光十字教圏内の国家の上はどこか分かりませんが」

 それは北海王国の軍部の上が分かっているのか、王国政府の上が分かっているのか、光十字教国の上が分かっているのかという話しだろう。

 少なくとも姫さんは全く分かっていなかったからな。

「東部諸国連合などは主不在で多くの小国が光十字教国の傀儡になっていると聞きます。北海王国が話を聞く耳があるかなど我らにはわかりませんからな。80年前の戦は、会談を持とうとしたが使者が殺されたが故に、今では宣戦布告もなく殺し合いですよ」

「何かお互いの話を聞いてもドロドロしちゃって分からないわね。なるほど、だから得てしてそういうものって事なのか」

 剣術お姉さんは大きくため息を吐く。

 ニクス竜王国も国がまとまらず貴族は足の引っ張り合い。

 北海王国は国そのものが傀儡の可能性もある。

 酷い内容ばかりを耳にする。


「それにしてもフェルナント君が崇められてるのって、結局、帝国がたくさんお金を落とすからなんだ」

「まあ、関税だけでオーウェンズ公爵領の年間予算が倍になったらしいからね。そのせいもあって学校じゃ良い迷惑だよ」

 フェルナント君は肩をすくめて溜息を吐くのだった。

「そうなの?」

「最初は余所者扱いだったのに、それが分かって来ると女の子が擦り寄って来るし。モニカが壁になってくれてるけど、何か女子の眼が獲物を見る目なんだよね。怖いよ」

「あははははは。それは確かに怖いかもね」

「僕はパトラッシュ以外連れ帰る予定は無いんだけどなぁ。父上は5人までなら連れ帰っても良いよとか言うからややこしい」

「帝国って一夫多妻制なの?」

 剣術お姉さんは首を捻る。

「ううん。一夫一妻制だよ。ただ、貴族は家のことがあるから免除されてるけど。花国みたいな一夫多妻制国家なんかは奥さんを正室、側室って呼び分けるけど、うちでは妻と妾で妻に正や側なんてないから。」

「ピヨピヨ【フェルナント君の家は新興だけど国内最大の大貴族だから親族が欲しいらしい】」

「んー?でも両親にだって家族はいるでしょ?」

「母方の祖父上の弟、つまり僕の大叔父がクーデターを起こして、皇族を皆殺しにして皇帝になろうとしたらしいんだ。そのクーデター側には父方の祖父もいたらしい。父上は平民冒険者の身の上ながら、祖父上をクーデターの現場から逃し、クーデターを起こした大叔父上を反逆者として討伐するよう貴族を動かして引っ繰り返したんだ。父上は帝国最大のダンジョン攻略冒険者だけでなく、皇太子を救った英雄でもあるから帝国の英雄と言われていたんだよ」

「す、凄いお父さんなのね。ヒヨコが腹黒公爵さんって言うから変な人だと思ってたよ」

 剣術お姉さんは引きつって責めるようにヒヨコを見る。

「平民から英雄になってお姫様を貰って公爵になったの?なんか一つの英雄譚が出来ちゃうね」

 三つ編みお姉さんは目を輝かせていた。

「父上はダンジョンの深奥で戦った魔神の眷属の呪いを食らった為に、子供を残せない体にされたから、貴族にはなれないって皇族から距離を取ってたらしいんだ。母上とはその頃から両想いだったらしいんだけどね」

「呪いのせいで別たれる二人。何かドラマチックな展開になってる!?」

 三つ編みお姉さん、物語が好きだからなぁ。

「ピヨピヨ【それから10年後、独身を貫いていた二人はステちゃんの占いに導かれて、常夏の街で再会し、ヒヨコの魔法で呪いを解かれた腹黒公爵さんは剣聖皇妹さんに俵のように担がれてコテージに監禁され、その10か月と10日後辺りに生まれたのがフェルナント君だ!」

「身も蓋もない裏話は聞かされたよ。ピヨちゃんのせいでロマンチックからエロチックな話になっちゃったよ」

「ヒヨコが二人の縁結びってそういう事なの?」

「ピヨピヨ【ステちゃんが剣聖皇妹さんに占って出会いの場を提供し、ヒヨコが二人の別れる事になった原因である呪いを解いた為に起こった悲劇だな】」

「まあ、それはそれとして、新興でも家の規模が大陸第二の国家花国の王よりも遥かに金も力もある。そもそも前皇帝を玉座に導いて、現皇帝の親友で、帝国皇帝の妹を妻にもち、帝国最後のダンジョンを攻略し、大陸の産業革命の立役者だからね。父上は凄く凄いんだよ」

「ピヨヨ~【勇者ヒヨコと勇者後輩君と並び勇者じゃないのに悪神殺しの称号持ちだからな。腹黒公爵さんはあらゆる分野において並ぶものがないのだ。ヒヨコを見出した男だから当然だな】」

「ほとんど大陸の支配者に近いんじゃ……」

「ピヨヨ【というよりも本人がそういう事に興味がないだけで、その力を持っているぞ。貴族相手に戦おうとしなかったし、皇家を立てていたから特に公に出なかったけど、今の皇帝で国を落ち着かせるために、腹黒公爵さんもそれに力を貸した結果、帝国最大貴族の地位になったという所だ。今の皇帝は繰り上がりだからな。繰り上がる前の皇帝候補の後ろ盾は全部、腹黒公爵さんが持っているから、今の帝国は盤石と言っていい。頭を抱えているのは後継者問題位だ】」

「「あー」」

 異世界お姉さんズはフェルナント君を見て納得する。

「む、むう、僕なんかよりもこの国の事だよ。このままじゃ留学だってままならないんだから」

「ピヨピヨ【一度撤収も視野に入れねばならないだろう】」

「良いの?帰っても!?」

 目を輝かすフェルナント君にヒヨコは小さくため息を吐く。好んでここにきているわけでもないのだ。帰れるとなれば嬉しいだろう。

「ピヨピヨ【ただ、皇太子が決まるまで他に留学する羽目になりそうな気もするが………】」

「もう、カール兄ちゃんで良いじゃん、そんなの。他にいないじゃない。大体、ローゼンハイムの家の跡継ぎなのになんで僕が皇太子候補なのかさえ意味わかんないよ」

「ピヨヨ~【全くその通りなんだよな……】」

「はい、もうおうちの話は良いよ。それよりも異世界勇者の事だよ。面倒な話だとは思っていたけど、よく考えたら異世界から来るって事は500年前の勇者と同じ類の人間なんでしょ?それってかなり拙いよね?お姉さん達を見てたから大したことないと思っていたけど……」

「ピヨピヨ【そういえばエルフの女王さんから聞いていたが、勇者は世界のシステム構築時に勇者を元に作ったらしく、チキュウという世界の人間は適応しやすいらしいぞ?だが、強くなるかは別の話だと思うがな。ヒヨコが聞いた限りでは確か勇者はハナクニキシモノガタリとかいうエロゲ?とか言う奴のシステムを流用したとか】」

「最低な勇者だ」

「でも、そういう事だとすると、光の精霊の加護を受けた異世界人が強くなるってのは冗談ではなく可能性としてあり得るってこと?」

「可能性は高いわね」

 三つ編みお姉さんと剣術お姉さんの2人は互いに深刻そうな顔をする。

「何でそんなに困った顔をするの?」

 フェルナント君は首を捻る。


「ウチの国では人殺しなんて絶対にありえないのよ。いくら他所の世界でもそういう事に積極的に加担するような事になるのは好ましくないわ。友人なら尚更よ」

 百合の言葉にうんうんとうなずく智子の姿があった。

「ピヨピヨ【戦争は略奪、強姦、殺人だからなぁ。勇者たちももう染まってるんじゃないかな?実際、セントランドの使者を捕らえた連中はそういう輩だったし】」

「あいつらは元々そういう連中よ。犯罪者予備軍だもん。鬼頭に至っては兄貴がヤーだったらしいし。警察がいないこの世界でタガが外れれば簡単に転ぶわ」

「ピヨヨ~【高城君とやらも口先では正義を騙っていたが、内心では戦争で力を使って女を犯すことに快楽を覚えて、戻りたくなかっただけでは?】」

「それは絶対にないよ!」

 ヒヨコの首を絞めて振り回すのは三つ編みお姉さん。いかん、ヒヨコは虎の尾を踏んだようだ。


「でもそんなに大事なら無理にでも連れ帰ってくればよかったのに」

「それは……出来ないよ」

 三つ編みお姉さんは首を横に振る。

 ヒヨコもフェルナント君もグラキエス君もトルテも不思議そうに首を傾げる。

「高城君がああいう事をし始めたのは私のせいでもあるし」

「別に智子のせいって事でもないでしょう」

「ピヨヨ~?」

 ヒヨコ達はさらに首を傾げる。


「高城君は小さい頃、虐められていた私を助けてくれたの。それ以来かな、正義の味方みたいのに憧れて、小学時代からそういう立ち回りを始めたの。………でも年齢を重ねるごとにやっぱり虐めも複雑になってくるから……」


 剣術お姉さん曰く、虐めにしても色んなパターンがあるのだとか。

 友人の恋人を奪った女子を周りの女子が遠巻きになったとか、虐めてるのは自分なのに被害者のようにふるまう輩がいたり、加害者が被害者を装うケースなどもあったらしい。大体、男女のもつれまで絡んでくると、ぐちゃぐちゃになっている問題が多かったそうだ。

 有力者、あるいは影響力がある人間が個人を嫌いだと言い出し、周りがそれに従い、エスカレートしてしまう例が多いそうだが、そういう問題ならまだ楽らしい。

 だが、厄介なケースが多かったそうで、首を突っ込んだものの解決どころか悪化したりするため、そこで剣術お姉さんの幼馴染がでてくるのだとか。

 剣術お姉さんの幼馴染は腕力だけでなく頭の周りが良いようで、原因そのものを取り除く事で、虐めそのものはなくなっていたらしい。ただやり過ぎてその幼馴染が皆に嫌われていたそうだ。

 その幼馴染こそがアホなのではないだろうか?


「でも、高城君はどこかでうらやんでいたんだと思うよ?駿介君って嫌われ役を買っても、皆を幸せにする人だからね。仲良くしていてもどこか嫌悪していたっていうか………。駿介君が死んだときも、まるで自分が殺したような罪悪感ある顔をしてたし」

「ピヨピヨッピヨヨッ」

「きゅ~きゅ~」

 謎が深まりそうな音楽(<某劇場>よりアイキャッチ)をヒヨコとトルテが流す。

 剣術お姉さんは「何故、火曜サス●ンス劇場……。500年前の勇者最悪だな」とぼやくのだった。

「いや、実際に殺したわけじゃないけど、いつもなら虐められている人を見たら助けるのに、駿介君が虐められているのを知ってて放置していたからさ。らしくないなって思っていて。多分、どこかでしこりがあったんだと思うよ」

「ピヨピヨ【しかし、いじめを苦にして自殺とはあまりに悲しい結末。ヒヨコは涙を禁じえぬぞ】」

「いやいや、自殺じゃないから!トラックに轢かれて海というか川に落ちて遺体が上がらなかっただけで」

「ピヨヨ~【トラックとはよく分からないが、木っ端みじんになってしまい遺体が水の中で判別不可能になったのだな……。異世界、恐ろしい所だ】」

「きゅう~【トラック、怖いのよね】」

「「そんな物騒なモノじゃないよ!」」

 ヒヨコとトルテはトラックが何か得体のしれないものと感じてガタガタ震えるのだが、異世界お姉さんズはそれを否定する。

「駿介君の話はともかく、私としては高城君を今回の戦争から遠ざけたいんだよ」

「ま、戦争は正義の味方なんて存在しないしなぁ」

 フェルナント君はうんうんとうなずく。

「ピヨヨ~【そうだぞ、戦争は正義の味方なんて存在しないのだ】」

「そうなの?」

『どんな卑怯な手を使おうと、どんな虐殺で敵兵を亡き者にしようと、どんなに民間人を殺そうと、勝った方が正義なのだ』

「ピヨピヨ【つまりヒヨコが加担したらヒヨコの加担した側が正義になり、敵は全て悪になるのだ!】」

 ヒヨコの言葉を呆れたような様子で、異世界お姉さんズがジトリとヒヨコに視線を向ける。

「きゅうきゅう【しかしトニトルテ☆参戦!突如、ヒヨコは悪者になるのよね!】」

『ドラゴン兄妹の腕の見せ所なのだ。打倒ピヨちゃんなのだ』

「ピヨヨーッ!【ドラゴン兄妹が裏切った!?何故、ヒヨコの敵に回る!?】」


 最近、ドラゴン兄妹が反抗的でヒヨコが悲しい。


 ……………おや?そういえばトルテは10年前からこんなだったような…………。

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