2章10話 ヒヨコは大人だからな
オーウェンズ公爵領南部、現在北海王国竜王国軍に占拠されている男爵領の居城にて剣術お姉さんと三つ編みお姉さんとフェルナント君とヒヨコは、たくさんの兵隊さんに囲まれながら、北海王国の王女さんと女騎士さんと、噂の高城君とやらと対面していた。
「では、そちらが勇斗の友人であるトモコ・スズキ殿とユリ・ミサキ殿ですか?」
と女騎士が尋ねる。
「二人とも光の精霊様に保護されなかったから心配してたんだよ」
「どこら辺だったかな?オタル近郊の荒野に放り出されて、山賊に捕らえられたんだっけ」
「ピヨちゃんが私たちを助けてくれなかったらどうなってたか」
「ピヨヨッ!」
ヒヨコはエヘンと胸を張る。
「その赤いヒヨコに助けられたの?」
「ピヨピヨ」
ヒヨコはコクコクと首を縦に振る。
「そのあと、ピヨちゃんがお世話になっていたニクス竜王国まで運んでもらって平和に暮らしてたんだけど、戦争が起こったとか、そこに高城君がいるらしい話を聞いて、どうにかしようと思ってここに来たんだけど」
と三つ編みお姉さんが説明をする。
「ニクス竜王国に!?」
高城君改め天然ジゴロ君は驚きの声を上げる
「ニクス竜王国からの使者ですか?」
ジロリとこちらに視線を向けてくる女騎士さんであった。
「い、いえ、そう言う訳では……」
その視線は敵を見る目だった為、三つ編みお姉さんは慌てて首を横に振る。
「戦争なんてやめろって言いに来たんだけど……主にこの唐変木に」
気にしない様子で剣術お姉さんは天然ジゴロ君を指さして口にする。
「確かに戦争は良くないよ。でもニクス竜王国のやっていることを二人は知っているのか?」
キッとして視線を二人に向けるので、二人は互いに見合わせて首を横に振る。
「あの国はこの国の民に対してどれほど酷い事を…」
「あー、そういうの良いから」
天然ジゴロ君から戦争のあらましが話されそうになるとフェルナント君は呆れたようにぼやく。
「なっ、何だい、君は?」
「僕はニクス竜王国に留学中でピヨちゃんの友達、ローゼンブルク帝国公爵のフェルナント・フォン・ローゼンハイム。一応、帝位継承権5位の皇族だ」
「ローゼン……???」
聞いた事のない国名に首を傾げる天然ジゴロであった。異世界転生者だから国名を聞いてもピンとは来るまい。
「この大北海大陸の裏側にあるコロニア大陸という魔神に荒らされ、文明の遅れた野蛮な大陸と聞いています」
「ようするに蛮族の王子といった所でしょうか」
お姫様と女騎士が天然ジゴロに説明する。かなり酷い説明だ。
「まともな魔導機関もなければ、人種差別の激しい宗教と国家が蔓延る大陸の人に文明の遅れた野蛮な大陸とか言われた!?ルモエなんていう寂れたボロい城に住んでる国の人に蛮族の王子なんて言われたくないよ!うちの国の伯爵レベルの国家じゃん!滅びかけたアルブムより酷い国の人にこんな事言われてるよ、ピヨちゃん~」
「ピヨヨ~」
ヒヨコはフェルナント君の背中を撫でて慰める。
鬼人領やマーレ共和国は帝国より早くこの大陸と貿易をしていたが、主に西方の白秋連邦やブーツ共和国と関わっていた為、光十字教圏ではコロニア大陸に関してはあまり詳しくない可能性が高い。
そして嘆くフェルナント君の指摘は正しい。おバカだけど、やはり腹黒公爵さんの息子で頭の周りはかなり良いのだ。
つまり帝国からすれば、子爵家程度の大きい町ルモエに男爵家以下の町や村がたくさん立ち並んでいる程度の国家と言える。伯爵家というよりは辺境子爵家とでもいった方が近いだろう。
「なっ、何て失敬な子供だ!」
剣を抜く女騎士さん。
フェルナント君は腰の剣を抜こうとして剣を持ってきてない事に気づき、両手を前に出して迎え撃とうと構える。
「ピヨヨ」
ペシッとヒヨコは手羽先チョップをフェルナント君の頭に叩き込む。
「あいたっ………って、さっきから何でピヨちゃん、喋らないの?ピヨピヨ言ってて分からないんだけど」
「は?」
「喋る?」
目を丸くするお姫様と女騎士さんは驚いた顔をしてヒヨコを見る。
「ピヨヨッ!【ヒヨコの名前はピヨちゃん!ローゼンブルク帝国の親善大使にしてフルシュドルフダンスの普及する活動を務めている帝国の勇者だ】」
「帝国っていうのはこんなヒヨコが勇者なの?」
天然ジゴロ君がヒヨコを指さして訊ねる。
「ピヨちゃんは凄いんだよ。3つの国を滅ぼした異世界より現れた悪神を圧倒し、悪神が裸足で逃げ出したほどの猛者なのだ!悪神との戦いでうっかり吐いた炎が変なところに落ちて、リトレ城の倍はあるケンプフェルト辺境伯城の天守を壊滅させたんだから」
てってれ~と効果音でも流れそうな感じでフェルナント君はヒヨコを掲げてどや顔する。
「ピヨピヨ【そういう最凶ヒヨコ伝説を知らない人に説明しなくてもよろし!】」
ヒヨコはぐるりと首を回してビシビシとフェルナント君の頭を嘴でつつく。
「はいはい、そこのヒヨコとお子様。漫才しない」
「ピヨッ!?」
剣術お姉さんに酷い事を言われてヒヨコはとっても傷ついた。ヒヨコとフェルナント君は漫才なんてしていない。真剣に戦っているのだ。
「むー」
フェルナント君も膨れっ面で抗議したそうな目を剣術お姉さんに向けていた。
「智子と私は勇者なんて訳の分からない事してないでニクス竜王国に保護してもらおうと思ったのだけど」
剣術お姉さんはそんなヒヨコ達を無視して天然ジゴロ君に話をする。
「そんな事は出来ないよ。ニクス竜王国は彼女たちの国の民を拉致している。そんなテロ国家に囚われた国民を解放しなければならないんだ。何よりも自国民が奪われ彼女たちが困っている。戦争で親しい人も殺されている。そんな国を許すつもりもないし、そんな国に保護されるなんて真っ平だ」
「拉致?ニクス竜王国が?……そんな話は聞いていないけど……」
「それに、ニクスを含め5体の魔王を殺さないと2人だって元の世界に帰れないんだよ?」
「…その話は聞いたけど、当のニクス様自身は全く身に覚えがなくて困っていたけど」
「騙されているんだよ!どれだけ邪悪なドラゴンなのか分かっていないからそんな悠長なことを……」
「邪悪って言われても……喋るのが苦手な口下手お姉さんなだけなんだけどなぁ。悪い人じゃないし……」
剣術お姉さんはかなりピンポイントで青竜女王さんの示していた。
「そう見せられているだけです」
「事実、我が北海王国の苦しい状況を作ってるのはニクス竜王国のせいなのですから」
「僕は北海王国の為にも国民を取り返したいと思っているんだ」
お姫様や女騎士さん、天然ジゴロ君は逆に剣術お姉さん達を説得に掛かる。
「国民が攫われてここ数年、国境沿いの村から多くの人がいなくなっています」
「僕としてはニクス竜王国なんかに二人にはいて欲しくない。むしろ二人がこっちに来るべきだよ。それに光十字教国には多くのクラスの皆が集まっているらしいよ」
手を差し伸べる天然ジゴロ君に対し、露骨にいやそうな顔をする剣術お姉さんであるが、ちらりと視線を三つ編みお姉さんを見る。
「そりゃ、国民が攫われてるんじゃなくて、北海王国から逃げただけでしょ」
と口にするのはフェルナント君だった。
「ピヨピヨ、ピヨピヨ、ピーヨピヨピヨ【まあ、ニクス竜王国は税金が安いからな。北海王国の税率が七公三民に対して竜王国は四公六民だ。しかも人種差別がない。貴族は煩い奴が多いがそれを踏まえても帝国より人種差別が薄い国は初めてだったぞ。】」
「北海王国の北方は亜人や獣人を利用していて、彼らが逃げられてるだけでしょ。戦争と言いながら奪え返す村を滅ぼしておいて、民を奪い返すとか嘘ばかりじゃん。人民解放を歌いながら敵を殺して進軍している連中を信じるとか頭がお花畑すぎるんだけど、こんな王族と勇者で大丈夫なの?」
「なっ!?」
「失礼な!わが国はそのような国ではありません。確かに進軍の都合上、多くの村を滅ぼしているのは事実ですが、それは竜王国に対する恨みからくるもので…。そもそも獣人という種族は暴力的でしっかりと抑え込む必要があるからです」
お姫様はムキになってフェルナント君をにらみつける。
「はいはい、悪いのは竜王国で、私たちは仕方ないんです~。税金たくさん取るのも竜王国の脅威から守るために仕方ないんです~。悪いのは全部竜王国なんです~。私たちの政治は素晴らしくて、竜王国の存在がいけないんです~。竜王国が栄えているのも、北海王国がド田舎なのも全部竜王国のせいなんです~」
フェルナント君は煽るように相手の口ぶりをわざと悪意的に間延びさせて返す。こう言う所は父親似だなぁ。父親はもっと腹の奥に抱え込んでドカンとやるタイプだから、フェルナント君はまだまだ子供だと言わざるをえまい。
「貴様!姫様を愚弄する気か!」
女騎士さんは立ち上がり剣をフェルナント君に向ける。振った剣がフェルナント君の前髪を切ったようでパラパラと前髪がテーブルに落ちる。
「おや、亜人より貴族の方が奴隷にして躾ないといけないのでは?この北海王国とかいう国の貴族令嬢は他国の皇族に対し剣を向けて話すのか。中々、面白い礼儀のある国だな、北海王国は。留学から帰ったら父上に教えてやろう。皇族に剣を向けて会話する騎士がいる北海王国という蛮族の国があったと」
10歳の子供ながら、フェルナント君はわざとらしく軽蔑するような視線を北海王国のお姉さん達に向ける。
「ピヨピヨ【フェルナント君は母国を野蛮な国扱いされて怒ってるだけだから許してほしい。】」
ヒヨコは手羽と手羽でフェルナント君を挟んでよっこらせと、ヒヨコとの立ち位置を入れ替える。
「ピヨピヨ【フェルナント君のことは忘れてそこの天然ジゴロさんと三つ編みお姉さん達異世界人同士で話し合ってほしい。ヒヨコはどういう結論でも皆さんの意思を尊重するぞ?】」
「むーむー」
ヒヨコにブロックアウトされて前に出れないフェルナント君は悔しそうにしていた。フェルナント君は無関係なのに首を突っ込むから問題なのだ。話が進まないじゃないか。
ヒヨコはお姫様と女騎士さんに問うようにつぶらな瞳を向ける。
「……そうですね。今は軍事活動中なのであまり時間を取っていただきたくはありませんが、しばし席を外しましょう」
お姫様も頷いてヒヨコの提案に乗る。
「い、良いのですか?姫様!?」
「ですが、勇斗様にとっては必要な事でしょうし、これから戦争があるというのに敵地に同郷の友人がいるというのは戦うに戦いにくい状況ですから、その心の痞えは取らねばなりません」
「ありがとう、マリエル」
女騎士さんが咎めようとするがお姫様は寛大だった。
そんなお姫様に柔和な笑顔で感謝する天然ジゴロ君。
そんなこんなで護衛兼部屋の監視役として女騎士さんが部屋の前に立ちヒヨコとフェルナント君とお姫様が部屋の外に出て行き、別の部屋に入る。
とはいえ、へそを曲げてしまったフェルナント君とムッとしているお姫様とでは話ができる筈もなく、ヒヨコは困惑の限りであった。
無論、武器を持った兵隊さん達がたくさんいる状況だ。
「ピヨピヨ【ところで状況を理解できないが光十字教は異世界人を集めて何をしてるんだ?】」
「光の精霊様はこの世界の平和を望んでいます。悪しき魔王たちを倒し、全ての民を解放することを」
「だから、そんな一方的な…」
「ピヨピヨ【フェルナント君よ。ちょっと黙っていて欲しい。ほら、お菓子でも食べて落ち着こう】」
ヒヨコは両の手羽で机の上に乗っているお菓子を挟んで回れ右してフェルナント君に渡す。
「でも、ピヨちゃん!」
「ピヨピヨ【そもそも戦争に正義なんてないぞ?戦争とは暴力で相手にいう事を聞かせたり奪ったりすることだ。盗賊と同じだ。それを国がしているだけに過ぎない。フェルナント君はまだ勉強不足なのだから、むきにならずに話を聞くべきだ。フェルナント君は一方的な方向でしか見る事ができないのだから。腹黒公爵さんならもっと紳士に対応するだろう】」
「ううう」
フェルナント君は不満そうにしながらもお菓子を食べる。
「ピヨピヨ【青竜女王さんは戦う事をせずご隠居しているし、倒す理由はあるのか?ドラゴンは基本政治にはノンタッチだが】」
「ですが、ドラゴンの間違った信仰を広めているのです」
「ピヨヨ?【青竜女王さんは別に信仰なんて広めてないぞ?周りの人間が勝手に信仰を作っただけだからな。それとも光の精霊様とやらは自分の信仰を集めるために活動とかしているのか?】」
「まさか、ソリス様はそのようなことはしておりません。無論、教会が布教活動をしてはおりますが」
「ピヨヨ~【聖光教会や女神教会と似た感じか】」
「女神教会ですか?コロニア大陸で信仰されていると聞いていますが」
「ピヨピヨ【10年前に悪神が降臨したせいで、女神教会の聖地オロール教国と聖光教会の聖地ベルグスラント聖王国が滅んだせいで、ほとんど宗教というものが無くなってしまったがな。花国はまだ女神教会があったと思うがその位かもしれん】」
「神が降臨したというのは真実なんですね。噂には聞きましたが。3つの国が滅んだと」
「ピヨヨ~【たしか北海王国はヒノモトを通じてマーレ共和国と貿易をしていたかな?】」
「そうですね。何というか魔物と世間話している今の状況がアレですけど、ご存じなのですか?」
「ピヨヨ~【そこのフェルナント君はコロニア大陸最大の国家ローゼンブルク帝国の皇位継承者。マーレは獣王国の庇護下にあった小国ではあるが、大陸外貿易に関しては鬼人領と並ぶ航海先進国だからな。割とこの大陸では有名らしいが】」
「マーレが獣人国家の庇護にある小国ですか?あれほど高度な製品を作れる国が……。少々信じられませんね」
「ピヨヨ【マーレは元々アルブム王国の穀倉地帯で農奴の集まりの土地だったんだ。国民が蜂起してアルブム王国から独立したが武力では勝てず、獣王国に武力を借り受ける事で奴隷から解放されたのだ。元々獣王国もマーレもアルブム王国の前身であるメシアス王国の奴隷だったという点では同じだからな】」
「ヒヨコさんは色々と詳しいのですね」
「ピヨピヨ【そう言う訳で、そこの9歳のお子さんは他大陸でその名を轟かす商業国家マーレをも超える大国ローゼンブルクの公爵家であり皇妹の嫡男という誇りがあるので、帝国を軽んじられるのが許せなかっただけなのだ。許して欲しい】」
「なるほど。とても理性的なのですね。分かりました。確かに私も無知ゆえに軽んじた発言をした事に関しては撤回いたします」
「むー、まずごめんなさいじゃないの?」
ベシベシとヒヨコはフェルナント君の頭を叩く。
「ピヨピヨ【王族が軽々しく頭を下げられる訳がないだろう。帝国とは違うのだよ、帝国とは】」
頭を柔らか手羽先でペチペチ叩かれ、フェルナント君は痛くはないが不満そうな顔をする。
「ヒヨコさんはご理解があるのですね」
「ピヨヨ~【ヒヨコはフェルナント君と違って大人だからな】」
「ヒヨコが大人って、とっても違和感のある言葉だよ」
むううと膨れっ面になるフェルナント君。気持ちは分かるが大人の会話をして欲しい。まあ、子供だから仕方ないのだが。
「それにしても他大陸の皇族が留学を?」
「ピヨヨ~【まだお子様だし、わがままも多いが、あまりに出来が良すぎるからか、家臣の中に次期皇帝に押し上げようとする者が多いのだ。既に15歳までの勉強を終えて高等学問に入ろうとしていたから、留学という形で他国の文化を学ばせようという体で、国から遠ざけたのだ】」
「そこまで優秀であれば皇帝を目指させればよいのでは?その器には見えませんが」
「ピヨピヨ【一人で何でも出来てしまう子だからな。王には向いていないのだが、有能故に持ち上げようとする人間が多いのだ】」
「有能……?」
「むー、何かバカにされてる気がするんだけど、ピヨちゃん。ここは力を見せる時では?」
「ピヨピヨ【おいコラ、自重しろ。帝国と違って大北海大陸は武力面では非常に弱いんだ。魔神の脅威がなかったから魔物も少ないのだ。青竜女王さんもドラゴン達に知的生物に対して暴力を辞めるように言っているから温厚なドラゴンが多いしな。コロニア大陸のように魔神もドラゴンも好き勝手にやってきた環境で生きてきた強靭な人間達とは違うのだ】」
「父上もそう言っていたけどさぁ。精霊文化がどういうものか学んで来いって言われて来たんだし。でも基本的にはシモーヌ叔母さんのいう聖光教会と光十字教って大きく変わんないじゃん。信仰しているものが違うだけで」
「ピヨヨッ!?【だからお前は皇妃様を叔母さん呼びやめい。というかフェルナント君は能力的には両親の良い所を継いでいるが、性格的には両親の悪い所を継いでいるよな】」
暴走しやすいと言われている剣聖皇妹さんと皇帝相手にも悪口を叩く腹黒公爵さん。ぶっちゃけこれは遺伝ではなく環境のせいなのでは?そういう意味では彼らと離して暮らすのは良い事かもしれないけど。
「他大陸からニクス竜王国へ留学する意味が分かりません。光十字教国など素晴らしい国があるというのに」
「ピヨヨ~【さっきもフェルナント君が言っていたと思うが、ローゼンブルク帝国は法律上、人間宣言に連なっている生物は基本的に人間として扱わなければならない。貴族には獣人もいるし、光十字教国みたいに人種差別をしていないのだ】」
「野蛮で無知な獣人を野放しにしているというのですか?」
「ピヨピヨ【それは光十字教の考えだ。帝国でもニクス竜王国でも普通に獣人は暮らしているし、貴族もいる。確かに獣人は賢さに関するステータスが伸びにくいという話も聞くが、獣人は過酷な環境下にいたせいか突発的な天才が生まれる事もあり、賢者の称号持ちも出ていた。人種差別の薄い帝国と人種差別を国法として定める光十字教国とは分かり合えないと判断して留学先がニクス竜王国になったのだ】」
「文化的融和性という事でしょうか?」
「ピヨピヨ【そういう事だぞ。ところで、光の精霊は何を考えているんだ?異世界人に力を与えて何をしたいのか分からん。今わかっているのはそれを利用して他の勢力を滅ぼそうとしているようにも見えるが】」
「ソリス様の深淵なる考えに我々は理解など仕様もありませんわ」
「ピヨヨ~【それじゃあ、仕方ないなぁ】」
ヒヨコはがっかりする。
恐らくこのお姫様は世界情勢をあまり理解していない敬虔な光十字教信徒だ。
親から、教師から言われたことをそのまま覚えて、それが正しいと実行してしまう良い子なのだろう。学問というのは宗教や国が絡むとろくでもないのだが。
「あ、あのところで、ちょっと触ってもいいですか?」
さっきからヒヨコに熱い視線を向けていると思ったらどうやらヒヨコをモフりたかっただけらしい。
まあモフられるのは別に嫌ではないが…。
ヒヨコは観念するかのように頭を差し出すのだった。