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2章2話 ヒヨコは忍者を狩猟する

 ヒヨコとトルテとグラキエス君の三羽は罠のあった場所に向かう。

「きゅうきゅう【兄ちゃん、掛かってないのよね?】」

『そう簡単にはかからないのかもしれないのだ。もうすこしかかりやすそうな場所を探すべきだったかもしれないのだ』

「ピヨピヨ【まて、何かがものすごい勢いで近づいてきてるぞ?隠れよう】」

 ヒヨコは気配を察知し、トルテとグラキエス君は茂みの中に隠れる。



 すると、黒い影がものすごい勢いで走ってくる。そして見事に走っている最中、グラキエス君の罠を踏み抜くのだった。


「ほえ?」


 間抜けな声を上げて、やってきた影の足にロープが巻き付いて一気に体が空へと吊り上げるのだった。

「なななななな、何でござるかーっ!?」


「きゅうきゅう【おおー、獲物が捕まったのよね。肥えた旨そうな豚なのよね】」

『僕が図書館で得た知識に間違いはないのだ』

「ピヨピヨ【残念無念。知的枠がグラキエス君に奪われてしまった。ヒヨコこそが知的でいたかったというのに!】」

 ヒヨコは獲物を捕まえて満足したが、ちょっと面白みに欠けると思いつつも、知的枠がグラキエス君の頭上に舞い降りたことが悔しく感じていた。

 ヒヨコ達は茂みから出て獲物を確認しようとすると


「た、助けてほしいでござる。拙者はおいしくないでござるよ?」


 ………


 はて、人間だろうか?だが、こんな寒い森に人間がいるはずもない。


「ピヨピヨ【確かに脂肪が多くて美味しくなさそうだぞ?食べる部位が少ないのは良くないな】」

「きゅうきゅう【魔物じゃなくて猪鬼(オーク)だったのよね】」

猪鬼(オーク)は人類だから狩猟禁止なのだ。残念無念なのだ』

 がっくりと肩を落とすグラキエス君であった。

 そうか、人類だったのか。残念無念だ。

 しかし、この獲物、如何すれば良いか?


 すると捕まった獲物はロープから逃れようとして地面に何かを投げつける。


 ドロンと煙が巻き上がる。

 ヒヨコ達は何だ何だと困惑していると、捕まっていた獲物は華麗に縄抜けをして逃れる気配をヒヨコは察知する。


「きゅうううっ!?【いつの間にか、捕らえた猪鬼(オーク)が消えたのよね!?】」

 トルテは煙が晴れると捕らえた筈の獲物が丸太になっていることに驚く。

『すごいのだ!捕らえていたのが丸太に変わってるのだ!』

「ピヨピヨ【しかし、ヒヨコの目はごまかされぬぞ。鳥ならぬ神の瞳を持つヒヨコは逃げた猪鬼(オーク)を捕らえたのだった!】」

 ドラゴン二羽が驚いて困惑している中、ヒヨコは冷静に逃げた獲物を縮地で上からうつぶせに倒して両足で胴体を抑え込んで確保する。


「な、何という魔物でごるか!?拙者の変わり身の術が!?」

「ピヨヨ!?【変わり身の術!?】」


 拙者?語尾にゴザル?変わり身の術?

 何だろう、この心躍る単語の数々は。


「きゅうきゅう【ま、まさか……】」

『この猪鬼(オーク)さんは伝説の忍者なのだ!』

「ピヨヨ~?【なんと、忍者さんですか?】」

 何と忍者さんなのか?恐るべし忍者。実在したのかー。

 否、よくよく考えればヒヨコがいる以上実在しているといっても過言ではない。何故ならヒヨコは勇者ヒヨコにして忍者ヒヨコ。そして貨物ヒヨコ!


 ………誰が貨物だ!?


 閑話休題(それはそれとして)、分身の術も使えるのだぞ?だが、元祖忍者がいないので、果たしてヒヨコは忍者を自称しているだけの偽物ではないのだろうかと思いつつあった。


「きゅうきゅう【モノホンの忍者なのね?偽物の忍者ヒヨコとは格が違うのよね!あたしと握手するのよね】」

「ピヨピヨ【ヒヨコも!ヒヨコも!握手してほしいぞ!そしてヒヨコは忍者になりたい!偽物じゃない本物の忍者ヒヨコになりたい!】」

 トルテはうつ伏せで倒れている忍者さんと背後から手を回して握手する。ヒヨコも背に乗ったまま忍者さんと握手をする。


「異世界恐ろしいでござる!まさか拙者が捕まるなんて!?身代わりの術を使って身をくらませたはずなのになんで逃げられないでござるか!?」


「ピヨピヨ【……知らなかったのか…?大きいヒヨコからは逃げられない…!】

「しかもヒヨコが大魔王みたいなことを言っているでござるよ!?」


 大魔王ではなく大ヒヨコだぞ?魔王風情が大を付けたところで、ヒヨコに肩を並ぶことなどありえない。つまり「ヒヨコ>>越えられない壁>>>魔王」という具合だ。

 ピヨピヨ、片腹痛し。


「きゅうきゅう【とりあえず食い物じゃなかったけど、忍者が引っかかったのは嬉しいのよね!】」

「ピヨピヨ【言われてみれば!早速、ヒヨコ達の取った獲物を皆に自慢しよう!】」

「って、拙者、魔物のコミュニティで晒し者にされるでござるかっ!?待ってほしいでゴザル」

 ヒヨコの足元にひれ伏している忍者は涙目で訴える。

「ピヨピヨ【失敬な。誰が魔物か!?】」

「きゅうきゅう【アタシ達は魔物なんかじゃないのよね。これでも立派なドラゴンなのよね】」

『まあ、仕方ないのだ。よわっちい空飛ぶトカゲみたいな魔物もいるから間違ってしまうのはよくある事なのだ。僕は心広いドラゴンだから快く許すのだ』

「ピヨピヨ【たしか、………。わい、バーン?】」

『その発音だとワイバーンじゃなくてピヨちゃんがバーンさんみたいなのだ』

「あながち違うとは言い切れない前振りだったでござるよ!?」


 何を言っているんだろう、この忍者は。わいはピヨや!プロダンサー・ピヨや!決してバーンさんではないのだ。


『とはいえ、食い物じゃないなら、今回は失敗なのだ。もう一度罠を張って帰るのだ』

「きゅうきゅう【忍者を捕らえる罠だからとっても凄いのよね】」

「ピヨヨ~【言われてみれば………】」

 ヒヨコは忍者を足の裏で踏みながらうむうむとうなずく。

 さすがはグラキエス君。ヒヨコの親友なだけはある。

『とはいえ、獲物を生きて持ち帰るのは骨なのだ。僕かトルテどっちか大きくなって咥えていくと良いと思うのだ』

「きゅうきゅう【ならばここはアタシに任せるのよね!ヒヨコを潰せる大きさになったアタシをご覧あれなのよね!】」

「ピヨヨ~【本当か?実はまだ大きくなれてないという落ちはないのか?】」

「きゅうきゅう【そんなのあるはずがないのよね。ちゃんと神眼でアタシのステータスを見るのよね!ぷんすか】」

 まあ、確かに種族名がサンダードラゴン(成竜)だけどね。

 ステータスのスキル欄にしっかりと〈人化の法〉とある。

 トルテはそういうとむくむくと体を大きくさせる。ずると体長4メートルくらいのドラゴンへ変化するのだった。そしてヒヨコの足元で確保してある忍者の首根っこを咥えて立ち上がる。

「ぎゅうぎゅう【どうなのよね。見上げて崇め奉るが良いのよね】」

 鳴き声が少し低くなって、きゅうきゅうがぎゅうぎゅうになったぞ!?

 そういえばグラキエス君もあまり鳴かないが、前に聞いた鳴き声は『きゅいきゅい』から『ぎゅいぎゅい』だった。

 

「ピヨピヨ【とりあえずその状態でヒヨコの上にさえ乗らなければ万事おっけ-だぞ?】」

「ぎゅうぎゅう【そういう事を聞きたいのではないのよね。とりあえず崇め奉るのよね】」

 トルテは忍者の首根っこを咥えたままヒヨコをムギュッと踏みつける。

「ピヨピヨ【それは全然おっけーじゃないぞ?なぜヒヨコの嫌がることをやるのだ。】

「ぎゅうぎゅう【ヒヨコが嫌がるとき、トニトルテがそこにいるのよね、えっへん】」

「ピヨピヨ【大きくなったからと調子に乗りおって】」

『じゃあ、凱旋なのだ~』

「あのーすいません。拙者どうなるのでしょう?」

「ピヨピヨ【皆に狩りの成果を見せてヒヨコ達がどや顔したらそれで終わりだぞ?】」

『ナヨリの町で皆に見せるのだ』

「そんな魔王の町なんかで宴の肴にされたくないのでござるよ」

「ピヨピヨ【さあ、戻るぞ】」

「きゅうきゅう」

 ヒヨコとトルテとグラキエス君はピヨピヨトテトテドッスンドッスンと走ってナヨリの町へ戻るのだった。

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