1章19話 ひょんなところからヒヨコの旧友が
突然、雷が横なぎに降ってきて異世界人たち5人は全員しびれて地面に伏せていた。
実行犯の方向にヒヨコ達は視線を向けると、そこには一人の少女がいた。否、その少女の膝の上で丸まっているのは黄色い幼竜だった。
「ピヨヨッ【ま、まさか……】」
「きゅうきゅうきゅうっ!【折角旅に出たというのに山賊に襲われたから、弱虫のふりをして悪者の親玉のトコまで行って、首をもって凱旋しようと企んでいたのに!どこの愚か者がアタシの邪魔をするのかと思ったらヒヨコだったとは!いつまでも邪魔するやつなのよね!】」
「ピヨヨッ!【トルテ!】」
ヒヨコは驚いた。なぜかトルテがいた。しかも幼竜姿で。9年前に別れてから姿かたちが変わっていなかった。
二度と同じ姿で会う事はあるまいと思っていたのだが。
「ひ、姫様。大きいヒヨコさんとお知り合いなのですか?」
「きゅうきゅう【前に言っていたアタシの子分なのよね】」
「ピヨヨッ!【誰が子分だ、トルテのくせに生意気だ!】」
ヒヨコはトルテに襲い掛かるが、トルテも少女から飛び立って角でヒヨコの嘴に対して応戦する。
カツンカツンとぶつかり合う角と嘴。
すると空からドラゴンが下りてくる。
『相変わらずなのだ~』
「きゅうう~【兄ちゃん、5年ぶりに遊びに来たのよね!】」
『最後に会った5年前より小さくなったのだ。どうしたのだ?』
「きゅうきゅう【ヒヨコが来ると聞いて、人化の法をちょっとだけ覚えて小さくなることに成功したのよね!】」
そういってトルテはヒヨコの頭に、よっこいせ、とよじ登る。
「きゅ~【あたしのポジションはここなのよね】」
「ピヨヨーッ!【そんな事の為に人化の法を覚えるな!】」
ヒヨコの悲しい念話の叫びが山の中に木霊するのだった。
***
「つ、強いんだね、そこの子もそうだし、ええと金色のドラゴンさん?」
地面にグラキエス君が下りると、三つ編みお姉さんが感心したのか怖がっているのか腰の引けた様子で声をかけてくる。
残念お姉さんも一緒に地面に降りてから二人で歩いてくる。
グラキエス君はするすると幼竜姿になってからきゅうと鳴いて説明を開始する。
『僕の妹のトニトルテなのだ。セントランド共和国の竜王フリュガ母ちゃんの子供で10年前にピヨちゃんの飼い主の所にホームステイしていたのだ。二人はとっても仲良しなのだ』
「ピヨヨッ!【仲良くない!】」
「きゅうっ!【仲良くない!】」
見事にグラキエス君へのツッコミがハモッてしまった。
何故だろう二人のお姉さんから生暖かい視線を送られるのは。まさか喧嘩するほど仲が良いみたいに思われていないだろうか?
「あのさー、ところでピヨちゃん、あの人たち異世界人ってあるんだけど、初めて見た称号に困惑中の僕を放置しないで」
迷子の子供のようにヒヨコの手羽をつかんでゆっさゆっさと揺するフェルナント君である。
「異世界人!?」
驚きの声を上げるのは三つ編みお姉さん。残念お姉さんと二人は視線をフェルナント君の見ている方向に移す。どうやら二人はヒヨコ達の声を聞こえていなかったようだ。
カエルのようにビクンビクンしている5人の男女。ヒヨコが足止めしていた女の子は腰を抜かして座り込んでいた。
フェルナント君はその少女を見ると慌てて視線をずらす。
あられもない恰好をしているからだ。
「花山さん!」
すると三つ編みお姉さんが声を上げる。知り合いなのだろうか?
「っていうか、こいつら鬼頭と三島のクズビッチグループじゃん。花山、アンタ、異世界まで来てこんなクズ共に連れまわされてんの?」
呆れた様子で残念お姉さんが歩いて花山と呼ばれた少女の方に向かう。
「み、岬さん。……ふえええええ。岬さーん」
少女は赤ん坊のように泣きだし残念お姉さんに抱き着いてめそめそと泣いていた。残念お姉さんもよしよしとあやしていた。
「ピヨピヨ【なんなの、アレ?】」
「あー、花山さん、三嶋さん達に虐められててさ。百合ちゃんがいつも助けてあげてたんだよね。百合ちゃん、昔っから悪いと思ったことには相手が誰でも文句言う所あるから」
「ピヨピヨ【それで山賊にボコボコにされたりしてたのか。この世界じゃ弱者が歯向かうのは危険なんだが】」
「いや、中学時代は頭の回る友達がいて、百合ちゃんが無茶したらフォローしてくれてたんだけど、その友達が死んじゃったから……。ちなみにその友達がいじめられて引き籠ることになったのが、あの人たち」
三つ編みお姉さんがカエルのように倒れている3人の男を指さす。
花山という少女をなだめながら残念お姉さんは話を聞いていた。
「はっ!何だ?異世界人が8人もいる。ピヨちゃん、どういう事だ?」
そこで気付いたのがフェルナント君だった。三つ編みお姉さん達を見てさらに驚いた様子だった。
「きゅうきゅう【どういう事なのよね】」
ヒヨコの頭に乗っているトルテもヨコの頭のアホ毛を引っ張って尋ねてくる。人のアホ毛を引っ張るのはやめてもらいたい。昔はこんなことしなかったのに、グレたのだろうか?お母さんは許しませんよ!
大体、皆でいろいろ言われてもヒヨコに何をしろというのだ。
『説明するのだ。最近になって光十字教圏の国々に80名くらい異世界人がやってきたらしいのだ。どうもあっちの国はそれを大きい戦力に仕立て上げて精霊信仰や竜神教系国家に戦争を吹っ掛けそうなのだ。多分、この子たちはその時に来た異世界人だと思われるのだ。そして光十字教国からあぶれたそっちの二人はピヨちゃんが保護してうちの国に滞在することになったのだ。その光十字教とのいざこざの余波でセントランドは塩が手に入りにくくなってウチに助けを求めて、使節団がやってきたという状況なのだ?OK?』
「ピヨピヨ【さすがはグラキエス君。よくまとまっているぞ】」
「きゅうきゅう【よくわからないけどお塩が欲しいのよね。アタシは要らないけど、皆欲しがってるのよね】」
「ピヨピヨ【人化の法を使うとお塩のおいしさが分かるぞ?まあ、人にもなれないトルテ如きでは分かるまい】」
「きゅうきゅう【生意気なことを言っていると頭のアホ毛を引っこ抜くのよね】」
「ピヨヨーッ【痛い痛い、やめろ~】」
ぐいぐいヒヨコの頭のアホ毛を引っ張るトルテ。何という暴挙に出るのだろうか?ただでさえピヨピヨ団と同行してた頃、朝起きるとアホ毛が抜けてなくなっているという恐ろしい事が多々あったというのに。ヒヨコは抜け毛に敏感なのだ。
「あのー、それよりもこの人たちどうするの?山賊たちは全員お縄につかせるとして、ピヨちゃんの知り合いのお姉さんたちの知り合いなら持って帰る?」
フェルナント君はヒヨコの手羽をちょいちょい引っ張りながら訊ねる。普段は勢いに任せてやるのだが、何が正義かわからないと困ったような顔でヒヨコに頼るのだ。
まだまだ10歳にも満たないお子様の証拠であり、かわいい所でもあるのだが………
はっきり言おう。ヒヨコに頼るのは明らかに間違いだ!
おバカなピヨちゃんにアドバイスをもらうのは違うだろう?
確かに勇者としては先輩だが、齢1桁年齢で賢者の称号をとったお子様勇者をヒヨコが導くとか無理だから!
確かに人生20年、鳥生10年だが、先の20年をほとんど忘れているし、精神的成長の見られないヒヨコに頼られても困る!いや、ホント、マジで。
こういう話はむしろ父親の専門分野。どこまでも優しい青竜女王さんや脳筋の師匠とか明らかにチョイスが間違っている。
確かに腕力系ではヒヨコ達は圧倒的だ。いざとなればフェルナント君がグレても暴力で軽く押さえつけられる。
イグッちゃんに唯一並び立てる青竜女王さん、人類を超越している師匠、神殺しのヒヨコ、確かに戦いの分野では数少ないフェルナント君の導き手になろう。
だが知力面では明らかにダメダメ集団だ。勇者は導けても賢者は導けないのだった。
「ピヨピヨ【どうしたものかなぁ】」
ヒヨコは考える。だが、勇者の先輩として導いてやらねばならぬのだ。
ヒヨコはちらりと残念お姉さんと泣きじゃくってる慰み者にされていたお姉さんを見る。
同じ異世界人の仲間を冒険者たちに売り渡すような連中だ。人として腐っている連中の始末をどうするか?死刑で良いんじゃね?ダメかな?ダメだろうなぁ。
少なくとも青竜女王さんは人が傷つくのも好きじゃないからな。
人権的にも勝手に仕留めてしまうのはまずいだろう。帝国でも殺さないよう逮捕するのだが、ここは他国の領地で逮捕した相手を捕縛しても犯罪者として町とかに押し付ける方法はない。
お姉さん達の法律ならばどういう扱いなのだろうか?彼女達はヒヨコ達よりも穏やかな土地で生きてきたと聞く。彼女たちの納得するけりのつけ方が必要かもしれない。
「じゃあ、こいつらはサクッと殺しておこうか」
残念お姉さんは物騒なことを口にしながら、泣きじゃくってるお姉さんの肩に上着を掛けてあげながらやって来る。
「ゆ、百合ちゃん、さすがにまずいよ」
「ほら、日本じゃないしさ。こいつら花山を虐めてただけじゃなくて、咎める奴もいないからって強姦はするわ、今回一緒になった冒険者たちの慰み者にするわ、最低よ?日本だったとしても、私は奴らを殺しかねない暴挙よ」
「……うわ……。こっちの大陸の山賊と同じレベルだ……」
頭を抱える三つ編みお姉さん。残念お姉さんはそういう人だぞ。ヒヨコも短い付き合いながらも分かってきた。
悪・即・ピヨを実行するヒヨコの同志であると。
だが、しかし、大北海大陸におけるヒヨコは不殺ずの流浪鳥。拙者、迂闊にピヨピヨできぬでござるよ。
「大体、うちのバカが死んだのだって鬼頭のせいじゃないとは決まったわけじゃないし。もう、こいつら日本に戻らせるのまずいって。人として終わってるってば。日本の為にここで殺しておいた方が良いんじゃないの?日本の恥だって。ここでなら完全犯罪が成立するから」
「き、気持ちはわかるけど……」
分かっちゃうのか~。
三つ編みお姉さんが言うには余程ダメなのだろう。
そうか、こっちの世界に順応するほど倫理観がダメな奴らなら、向こう世界でもはみ出し者なのだろう。そう思われるのも仕方ないのかもしれない。
「ピヨピヨ、ピヨピ~ヨ【とりあえず、足の取れちゃったお兄さんの足を直そう。このままだと失血死するし。<完全治癒>】
ヒヨコはオギノとか呼ばれていた男の足を治癒魔法で直す。
「あ、足が治った?」
オギノと呼ばれていた男は体を起こして足がくっついていることに気づいて安堵する。
するとオギノという男は慌てて起き上がり倒れている仲間の方へ行くが、自分ではどうにもならないことに気づき、
「おい、花山!テメエ、さっさと仲間を回復させろよ!トロいんだよ!」
と怒鳴り散らす。
「ああん?アンタ、バカなの?仲間なんて思いもしてないくせに相変わらずクズよね」
帰ってきたのは残念お姉さんの蔑んだ視線だった。
「……うあぁ。な、何で、……み、岬がここに?」
今気づいたかのように、オギノと呼ばれた男は動揺をあらわにする。
「花山。あんな連中のいう事なんて、聞かなくていいから」
「ふ、ふざけんなよ!俺らは光の精霊の加護を受けている勇者だぞ!お前、光の精霊の加護を受けてないらしいじゃないか。だったら俺らの方が上なんだよ。なんの加護も貰ってないんだろ?俺の所に来ればかわいがってやるぜ」
オギノと呼ばれた男は急に強気になる。
なるほど、光十字教で光の精霊の加護を受けた勇者という立ち位置なのか。たしか光の精霊の加護持ちは聖人とか聖女とか呼ばれるって聞いてたけど……。
「………。ヒヨコ。あいつ殺して良いよ」
「ピヨヨーッ【殺人教唆キターッ!】」
クイクイッと親指を立てて首を掻っ切れと言わんばかりのサインをだす残念お姉さんにヒヨコは困惑する。
オギノと呼ばれた男は腰が一気に引けてしまう。
「て、てめ、い、いいのかよ。俺たちにつけば、い、いい思いさせてやるぞ。ま、マジで。そっちは魔王側だぞ。分かってんのか?そっちにつくって事は俺らの敵だからな」
オギノ某はそれでも腰を引けた状態のまま残念お姉さんに訴える。
「ピヨピヨ【あまり強い言葉を使うなよ。弱く見えるぞ】」
「おお、ピヨちゃん、何だか強そうだ!とってもクールだ!」
ヒヨコの言葉にフェルナント君は拍手する。
三つ編みお姉さんが「またも日本の二次元ネタがピヨちゃんから…」とかいうぼやきが聞こえたが、ヒヨコには関係ないことです。
まさかヒヨコ名言集が日本のニジゲンネタとかいうものではあるまい。
なんか見知らぬ誰かからツッコミを得られたようだが、ヒヨコは一切気にしないぞ?
「ピヨピヨ【任せるが良い。ヒヨコはいつだって格好いい言葉を使うのだ】」
「中二病臭いけどね」
残念お姉さんが余計なことを突っ込んでくるが、ヒヨコには全く関わり合いのないことです。
「きゅうきゅう【そんな事よりあの耳に三つ穴の開いてるのを殺しておきたいのよね。うちの国の護衛隊長を殺したのは奴なのよね。役に立つ奴だったのに残念なのよね。しっかり報復してあげたいのよね】」
『トニトルテが人間にやさしくなってお兄ちゃんは嬉しいのだ』
という事で、ヒヨコはグラキエス君と頭を寄せ合い、そこにトルテもやって来る。
ピヨピヨきゅうきゅうピヨピヨきゅうきゅうきゅうきゅうきゅうピヨピヨ
ピヨドラ会議勃発。どうするの?どうするのよね?どうしても問題ないのだ。
そんな感じでヒヨコ達はピヨピヨと会議をする。
『判決、放置の刑で』
いつの間にか議長に就任していたグラキエス君が小さなハンマーでポムポムと地面をたたく。でも、グラキエス君は使い終わったらちゃんとヒヨコに返すので、ヒヨコは<異空間収納>の中に戻す。
「きゅう~【放置なのね?アタシとしては首を取ってお土産にしたいのよね。体があるから大丈夫なのよね!体は返してあげるのよね】」
『首を塩漬けにするにしても塩がないからうちに来ている途中なのだ』
「ピヨピヨ【トルテよ。それ以前に首は戻っても命が戻ってこないぞ?】」
「きゅう~【それは、うっかりなのよね~】」
トルテは目を×にして、しくじったといわんばかりに頭を抱える。本当にやりそうで怖いぞ。
「きゅうきゅう【でも馬車が壊れたし動けないのよね】」
『それは問題ないのだ。その為に僕らが来たのだ』
「えー、放置なの?」
「ピヨピヨ【申し訳ないが残念お姉さんには発言権はないぞ】」
『意見は聞くけど、これは共和国と竜王国の問題なのだ。腹が立つのは分かるけど、一応竜王国の王子としては穏便に済ませたいのだ。それに……』
グラキエス君はちらりと倒れている連中を見る。
『トニトルテのブレスで暫く動けないのだ。運が悪ければ野犬にでも食べられて終わるから、これ以上何かする必要はないのだ。運が良いことを僕は祈っておくので、お姉さん達は運が悪いことを祈ればいいのだ』
「なるほど」
グラキエス君の折衷案にお姉さん達も納得した様子だった。
グラキエス君は相変わらずの交渉上手。理不尽なトルテのお兄ちゃんは伊達ではない。
だが、グラキエス君にあるまじき残酷な裁定である。温厚であるがそれなりに腹に据えかねているのかもしれない。
「くっ……ふ、ふざけるなよ……岬ぃ……。てめぇ……後で殺す…」
すると耳にピアスを入れてる男が苦しげにうめく。体がしびれて上手く声が出ないようだ。
「はあ?負け犬が何言ってんの?って言いたいところだけど、グラキエス君が言うように私はなんの加護もなくて弱いし、この子たちに何か言える立場じゃないからね。好きにすれば?」
と残念お姉さんはプイッとそっぽ向く。
「ピヨちゃん、大丈夫なの?」
心配そうなのは三つ編みお姉さんである。確かに殺めるのはよくないが、だからと言って放置して大丈夫なのかという点については疑問が残ったようだ。
「ピヨピヨ【大丈夫も何も、光の精霊の恩恵なんぞヒヨコからすれば子供がすごい武器を手に入れただけのようなものだ。ヒヨコはもっとすごい武器をたくさん持っていて、それを使いこなしている。そしてそんなヒヨコと互角のトルテやグラキエス君がいて、ヒヨコよりも強い青竜女王さんや師匠がいるのに、何を恐れる必要がある?】」
ヒヨコはコテンと首をかしげる。
「………な、なるほど」
三つ編みお姉さんは心配そうにしていたが、ヒヨコの言葉に納得を示すのだった。
戦闘力を考えれば異世界の勇者など取るに足らんのだ。本当に光の精霊の……ソ、ソ…ラ?…ケ?ケロリンだったか?ケロリン?は何を考えているのかさっぱりわからない。
ヒヨコ達は捕縛されていた共和国の使節団の皆さんを解放してから、その場を離れて馬車の方へと向かう。
馬車を直そうとしていた山賊の連中を追い払ってから皆を馬車に乗せる。
車輪の壊れた馬車と横転して馬がいなくなった二つの馬車を見て、グラキエス君が車輪の壊れた馬車の下に潜り込んで成竜化して馬車を持ち上げる。
ヒヨコは馬のいなくなった馬車の馬代わりになる。
狭くなるが皆に二つの馬車に乗ってもらって
「ピヨピヨ、ピヨヨーッ!?【じゃあ、ヒヨコが馬車を引こう……と思うが……どうしてヒヨコに二人も乗るのだ!?】」
頭の上にトルテ、背中にフェルナント君。
「何故ならヒヨコライダーだから!さあ、行くぞピヨちゃん!ニクス竜王国へ!」
「きゅうきゅう【元祖ヒヨコライダーとしてはこのポジションは譲れないのよね!】」
そしてトルテとフェルナント君はバチリと目が合う。そして…ガッと握手して互いに頷きあう。なぜか分かり合う二人。
そこはヒヨコへの騎乗をめぐって争う所ではないのか?
2人でヒヨコの上に乗って分かり合わないで!?
『ピヨちゃん、さっさと行くのだ』
グラキエス君は馬車を背負って空へと飛び立つので、ヒヨコはそれを追いかけて馬車を引いて街道を北上するのだった。
今日もヒヨコは馬車馬のように働くのだった。
………………いや、馬車馬のようにではなく、馬車馬そのものの働きだった。