1章15話 ヒヨコより強い人間
そんな翌日、ヒヨコは人間姿になって、残念お姉さんや三つ編みお姉さん、師匠と4人で城門内にある剣道場へとやってきていた。
剣術をやるヒヨコと残念お姉さんと師匠の3人ははかま姿で、三つ編みお姉さんは見学なので
「足元って畳や床じゃなくて…コンクリート?石で出来ているんですね」
首をかしげる残念お姉さん。
「ああ、日本ではともかく、この世界は魔力があるからね。魔力を使った身体能力向上を使うと、踏み込んだだけで畳をぶち抜いてしまうんだ。ここの道場は我々以外にも使うから。僕やピヨ殿ほど足遣いが巧みであればそのようなミスはしないが、他の者はそうはいかないんですよ」
「えー」
残念お姉さんはヒヨコへなぜか侮る視線を向けてくる。
「残念お姉さん。ヒヨコをまさか侮ってはおるまいな?」
「誰が残念お姉さんだ!」
ブンッと残念お姉さんは手で持っている木刀でヒヨコの頭を狙ってくるが、ヒヨコはヒョイッとかわす。
「回避特化のヒヨコに剣を当てようなど砂糖のように甘い考えだ。コーヒーに砂糖を1さじ入れるほどに甘々だ」
「いや、それはそこまで甘くないから」
「ヒヨコの一さじはスプーンではなく、大匙だ!」
ぶんぶん振り回す残念お姉さんだが、ヒヨコは足元を動かさずにスイスイとかわす。
「ピヨ殿は確かにヒヨコなれど、世界でも屈指の使い手ですからね」
師匠はハハハハと笑いながら木刀を持ちながら眺めていた。
「くうっ、こっちは女子剣道インハイ出場者なのに!ただのヒヨコなんかに!」
「誰が無料のヒヨコだ!1羽300ニクスのカラーヒヨコとは違うのだよ!染物でないヒヨコをご覧あれ」
まあ、今はヒヨコ姿ではないのでジロジロ見られても黒髪黒目の人間ですが。
人間姿のヒヨコは残念お姉さんの攻撃をいなし終えると、木刀をもって道場の真ん中の方へ歩いていき構える。
「では久しぶりに剣を合わせましょうか」
師匠もまたヒヨコの前に立ち、平正眼で前のめりな感じで構える。
ヒヨコは両手で木刀を握り八双の構えで距離を取る。
「ヤアアアアアアアアアアッ!」
師匠は一気に踏み込み飛び込んでくる。
ヒヨコはその攻撃をいなしつつ、腕を狙う。
師匠は即座に木刀の軌道を変えてヒヨコの木刀をはじくように振り上げるがヒヨコは万歳をしないように大きく後ろに跳んで距離を取る。
だが師匠はそこで斬撃を飛ばしてヒヨコに切りかかる。
ヒヨコはその攻撃を木刀で受け流す。背後にドカンと音が鳴り、残念お姉さんは驚いた様子を見せる。
「遠当て!?」
「ファンタジーだねぇ」
驚く残念お姉さんに、ぼんやりぼやく三つ編みお姉さん。
そんなことを外野で話しているが、ヒヨコは構っていられない。師匠と久しぶりに修行している最中だからだ。
魔力を足に込めて加速する。脚力強化を使った縮地法によって一瞬で師匠の背に回り魔力を使った腕力強化による上段からの斬撃を放つ。
師匠の目の前から消えると同時に斬撃を繰り出したヒヨコだが、師匠はその攻撃を受け流して逆に体をねじって回転して横なぎを放ってくる。
ヒヨコはその横薙ぎを縮地法で距離を取って外しつつ衝撃波も一緒に来ていたので流水で受け流す。
「くっ!さすがはピヨ殿、既にそこまで使いこなせるか!」
「だてに神殺しのヒヨコではないのだ。必殺、ヒヨコ乱舞・刃!」
人間姿のヒヨコが剣をもって10人ぐらいの分裂したように見える早業で師匠に切りかかる。
しかし師匠はさすがにもヒヨコ乱舞にも対応する。大陸最強の七光剣みたいな、そんじょそこらの剣士とはわけが違う。
しかも手数は互角以上。否、師匠の方が上だ。ヒヨコは離れたいが離れられない。実践を想定して戦っているので、ヒヨコの間合いの外に出ることの危険性を師匠は良く知っている。ヒヨコは一瞬の溜めを与えると非常に危険なのだ。
ヒヨコは剣術の練習なので敢えて間合いの外に出ようとは思わないが、師匠は実践を想定して前へと出てくる。
いかん、ヒヨコ乱舞をきっかけに乱戦に持っていかれてしまった。
何という短慮をしたんだ、ヒヨコは!?
ヒヨコの前世のルーク時代ならパワーで押し勝てるが、今のヒヨコでは師匠の腕力にはわずかに届かない。
残念ながら今の師匠の勝てるものは種族特性によるブレスと魔法を支える莫大なMPの二点のみだ。それ以外は総じて僅かだが負けている。
とはいえ後輩君の時もそうだが、息をつかない攻撃のやり取りは非常に厳しい。技術は互角だが、魔法系以外のすべてのパラメータで負けているのが明らかにわかる。
ヒヨコはピョインと背後に飛ぶと、師匠は平正眼の構えから得意の突きを繰り出してくる。
牙突か!?
ピヨピヨ、何だその技の名前は?勝手に名前を付けてはいかんな。
だが、師匠は一気に距離を詰め、ヒヨコに十連突きを放ってくる。すべて縮地でかわし続けるが流石に縮地の10連続の小移動は厳しかった。つるんと足元を滑らせて転びヒヨコの口元に師匠の木刀が突き付けられる。
勝負はこれで終わりと言わんばかりに師匠は木刀を腰の帯に差すのだった。
「まだまだ人間の体に慣れていないねぇ」
「いやいや、慣れても流石に師匠程の力量ある剣士相手では厳しいぞ。無論、戦争ならばやりようはあるが、師匠もそれを想定して息をつかせずヒヨコへ接近戦で突っ込んできているのだからいやらしい」
「それはそうですよ。せっかく転生して、仙人になり不老長寿の肉体を手に入れたのですから、剣士として頂点を極めたいじゃないですか」
「というか、ヒヨコも黄竜女王さんも基本的に人間じゃないからな。人類最強は師匠で間違いないと思うぞ。少なくともヒヨコは師匠より強い人間の剣士は見たことないからな」
「転生して30年で大陸最強と呼ばれるようになったものの、仙人になった時点で競争相手を人間とする事は卑怯なんですよ。最近ではフリュガ殿が構ってくれますが」
ふふふと自嘲気味に笑う師匠。
黄竜女王さんもそういえば剣術が好きだったな。技術だけなら同じ剣術LV10な剣聖皇妹さんも図抜けた存在だが、身体能力が師匠達と比べると低いから実践となると厳しいと思われる。
「はいはい!次、私。手合わせ願います!」
と挙手をするのは残念お姉さんだった。
「良いよ。やりましょうか」
「あの、師匠。彼女は……」
ヒヨコは懸念する。師匠と最初に手合わせしたとき、かなりこっぴどくやられているからだ。
残念お姉さんは確かに剣術LV3もあるかなりの猛者だが、ステータスは一般人と大差ない。
この世界の戦闘者の平均にも達していないように見える。
「分かってるよ。手加減するさ。受けに回ろう。僕も生前は剣術指南役としてはへたくそだったけど、こっちでは多くの弟子を持ってきたからね。まあ、少々厳しくはあるけど」
師匠は木刀をもって体を半身にし、再び前傾姿勢気味の平正眼の構えを取る。
対する残念お姉さんは中段で構える。
「やあああああっ!」
互いに間合いを取りながら剣先が当たるか当たらないかの場所で剣を交わす。
残念お姉さんが少し師匠の剣をカチあげると大きく踏み込む。だが、それより早く師匠が踏み込み剣の間合いの中の更に中に飛び込んで残念お姉さんを突き飛ばす。
バランスを崩したところで師匠は残念お姉さんの頭上で木刀を止める。
「剣術は何も剣で切りあうだけじゃありませんよ。前に踏み込むことで逆に間合いから外れることもあります。実践と道場では全く別物ですからね」
「は、はい!」
起き上がると再び残念お姉さんは師匠と間合いを取って、今度は下段で構える
どうもあの平正眼の構えに対して剣を上に持っていくのはやりにくいようだ。だが師匠のあれは関係ない。何故なら突き狙い、切られる前に切るというか、切られる前に突き殺すという剣術だからだ。
「もう一丁!はああああああっ」
残念お姉さんは必死に剣を振るうが師匠に軽くいなされるのだった。
前へ前へと突っ込んでくる師匠のいやらしい剣術に、技術だけで対抗しても全く手も足も出ない残念お姉さんであった。
***
戦いを終えるとヒヨコと残念お姉さん達は幼竜姿のグラキエス君と合流し、近くのおいしい蕎麦屋さんに向かう。ヒヨコは人間を辞めてヒヨコ姿に戻っていた。
人間を辞める、なんとも物騒な響きである。
「異世界に行ってソバか~」
「何だろう。折角の異世界なのにすごく悲しい」
「ピヨピヨ【そう言えば、師匠が麺ソバの開祖なんだ。元々はソバを丸めてきな粉に包むのが主流だったらしい。これは500年前の勇者が広めたことだがな。サトウダイコンから砂糖を作るのがこの地の名産なのだ】」
「ソバ、大豆、てんさい、いろいろあるのね」
頬に手を当てて悩まし気な様子でため息をつく三つ編みお姉さん。
ちなみにヒヨコもそばを丸めてきな粉で食べる方が好きだ。麺ソバも好きだけどね。
「でも治安は他よりましだけど、やっぱり文明的には中世って感じよね」
「あまり公に姿を現すことは少ないけど、貴族も割と面倒だぞ?ヒヨコは問題を起こさないようペコペコして嵐が過ぎるのを待つだけだ」
『僕も人化の法でピヨちゃんと一緒に冒険者ギルドに通っているけど、手柄とか奪われるから、あまりギルドにはいかないのだ。飲食店で肉の取引をするのだ』
ヒヨコの言葉にグラキエス君もうなずく。
「一応、そっちは竜王様のご子息でしょう?」
『いるのは知られていても、人間姿で出るときはお忍び中だし、暴れると母ちゃんに怒られるから大人しくしているのだ。ちなみに冒険者姿での名前はラキなのだ』
ヒヨコの横で暖かいお茶を飲んでいるグラキエス君も、ヒヨコと同じ冒険者。冒険者ランクはヒヨコと一緒のDである。
「あ、人間姿バージョンもあるんだ?」
『ドラゴンにとって人化の法はたしなみなのだ。あと母ちゃんは不器用で人間になり切れないのだ。割と古いドラゴンはそんな感じなのだ』
「そうなの?普通に人間だったじゃん」
とは残念お姉さんの言葉だが、青竜女王さんたちは人化の法を極めていない。人化の法LV9という状況だ。見た目は完全に人間だが中身はドラゴンの名残である魔肺が残っている。
その為、ドラゴン族でもイグッちゃんに匹敵する莫大な魔力を、冷気として人の形になって縮小した魔肺にため込んでいるため、喋るだけで冷気が洩れてしまうのだ。その為、喋るだけで目の前の人間だけでなく世界を凍結させてしまうのだ。
イグッちゃんが人化の方を極めていなかったら喋るだけで世界が燃えてしまうが、イグッちゃんは人化の法LV10を極め、完全な人間体になれるので問題ない。
『母ちゃんはため息一つ、怒りの言葉一つで世界を凍らせてしまうから、早く人化の法をマスターしてほしいのだけど、もうあの年で身につかないとなると、無理なのだ。将来、母ちゃんみたいに人里から離れて暮らすのは嫌なので人化の法を必死に覚えたのだ』
「ピヨピヨ【青竜女王さんはいい人なのだが、どうにも不器用な竜だからな】」
「あの青い髪のお姉さんよね?」
残念お姉さんはふーむと思い出す様子で虚空を見上げる。
「ピヨピヨ【本来は体長50メートルくらいの巨大なドラゴンだ。あ、帰る時に見てたから知ってるか。ちなみにグラキエス君も幼竜スタイルで歩くのが一番警戒されないからこの姿だが、実際は5~6メートルくらいのドラゴンで、そっちが真の姿だぞ?】」
『その姿で歩くと町の人の邪魔になるし、だからと言って人間になると侮られるのだ。それにこの国ではドラゴンは身近でも、他国では父ちゃんの影響で怖いものだと思われているから普通の姿は他国からのお客さんからするとびっくりさせてしまうのだ』
「ピヨピヨ【ヒヨコと並んでかわいいと評判の幼竜バージョン。お子様にも人気です】」
「確かに可愛いけどね、見た目は」
「だね」
二人はあっけらかんとぼやく。
いわれてみればグラキエス君は街にいる時は基本幼竜姿だった。
『ピヨちゃんも小さくなれば省スペースなのだ』
グラキエス君はそんなことをいう。確かにこの席、人間が2人座る席だが、ヒヨコが7割でグラキエス君が3割という割合。もしかして邪魔なのだろうか?
だが、ヒヨコはこの国でも稀に邪な人間が流入することもあるらしく、青竜女王さんには一緒にいるときはグラキエス君をお願いされている。
聞いて驚くことなかれ。ヒヨコの現在の職業は<護衛>なのだった。シークレットサービスとルビを付けて呼んでくれて構わないぞ?
職業が<貨物>だったのははるか昔の事よ。ピヨピヨ。
「ピヨピヨピヨ【ヒヨコも人化の法を使うと頭を人間と同じサイズにすることができるので体長60センチくらいにはなるのだが……ヒヨコは要人護衛でもあるからな。常に最強状態でいたいと思うのだが】」
『そういえばそんな設定だったのだ』
「ピヨヨーッ!?【設定っていうな!?】」
ヒヨコ達は食事を済ませておなか一杯といわんばかりにポムポムと腹を撫でていると、パタパタと走ってくる人がいた。兵士の姿でヒヨコ達の方へとやってくる。
「殿下、ピヨ殿。ご歓談中のところ申し訳ございません」
『?……どうしたのだ?』
「ピヨヨ?」
伝令係のお兄さんだった。偶に師匠からヒヨコのところに連絡をよこしてくる人である。
「それが先程、ヴィンセント大公閣下にセントランドの使節団が光十字教国領内にて山賊らしき集団に襲われた旨を報告している最中に留学中の御方に知られてしまい出て行ってしまったとの報告を受けまして、ピヨ殿に即座に連絡せよと」
「ピヨヨ~【セントランドの使節団?】」
「どうも戦争が白秋連邦とアレクサンドロ帝国との間に始まったらしくセントランドと白秋連邦との交易路が封鎖されてしまったらしいのです」
『あ~、多分塩不足の可能性があるからその為の使節団と思われるのだ』
「塩?」
二人のお姉さんは同時に首をかしげる。
『セントランドは内陸で塩は輸入に頼っているのだ。白秋連邦との交易路が途絶えると塩も途絶えてしまうのだ』
グラキエス君が説明をする。
この口ぶりだとたまにある事なのかもしれない。
だが、問題はうちの殿下が出て行ってしまった事だ。早く回収しに行かねばなるまい。
『じゃあ、食事が終わったらその使節団の救出に出るのだ。とりあえず大公のところに行くのだ』
「ピヨピヨ【久しぶりにピヨドラバスターズの活動開始ですな】」
『と言う事で僕らが動くから国境前まで護衛団を動かすように。山賊に会った場所だけ教えてくれる?一度、大公の屋敷に向かうのだ』
「はっ!承りました」
連絡係の人は走って去っていく。
「出かけるの?」
三つ編みお姉さんは首をかしげる。
「ピヨピヨ【そうなるな。おバカのお守りをしに来ているのに、おバカが無用な正義感でフットワーク軽すぎるからとても困ってます】」
『将来、大物になるのだ』
「ピヨピヨ【一応、帝国皇帝の甥っ子だからな。何もしなくても立場上はかなりの大物だ】」
「そういえば、ヒヨコってこの大陸の外からやってきた高貴な御曹司のお付きで来てたんだっけ?」
残念お姉さんがヒヨコ達の会話に割り込んでくる。
「ピヨヨ【そうだぞ?】」
「そんな子供のお守り」
「ピヨピヨ【詳しく説明すると、ヒヨコは割とお出かけすることが多いんだ。そこで帝国にあるヒヨコ屋敷の管理を任せているのがローゼンハイム公爵、帝国皇帝の妹婿になる人に委任している。お守りをしているのはそのローゼンハイム公爵の御曹司だ】」
「皇帝の甥っ子ねぇ。めちゃくちゃ偉そうじゃん」
「ピヨピヨ【本人は父親同様に平民気質なのだが帝位継承権はかなり高い。元々、今の皇帝よりその妹であるローゼンハイム公爵の奥方の方が、帝位継承権は上だったからな。帝位継承権は現在、皇帝の息子たち3人、その次にローゼンハイム公爵夫人、そしてその息子、つまり帝位継承権5位に位置する。さらに言えば帝国で一番影響力あるのがローゼンハイム公爵なので、周りの貴族はその子を押しているんだ。一位の皇帝の息子よりも】」
「厄介な状況なんじゃないの?」
「ピヨピヨ【そうなのだ。悪い子ではないし、『将来はカール兄ちゃんの役に立つんだ』と言っているんだが、出来の良い両親によく似てしまってな。5歳くらいには皇族史に残る天才とうたわれていた。やんちゃ過ぎて両親も周りの貴族を御せなくなりそうだから外に放り出したのだ。次期皇帝のカール君は良い子だが、凡庸でな。真面目なのだが周りが才気あふれているため、ネガティブでよろしくないそうだ。子供を育てるのは難しいと大人たちは溜息をついていた。まあ、その兄妹達も次期皇帝だった凡庸な弟が暴走してしまい、繰り上げで皇帝になっているだけに息子たちにそうなって欲しくないと思っているそうだが】」
「頭良いの?」
「ピヨピヨ【頭は良いはずなのだが、バカなのだ】」
『ピヨちゃんは頭が悪いけど賢いのだ。丁度良いのだ』
「ピヨヨーッ!?」
グラキエス君の言葉がヒヨコのハートにチクチク刺さって厳しい!
ヒヨコの賢さが低いというのは禁止だ!
「……そ、そっか。出かけちゃうんだ……」
三つ編みお姉さんはとても不安そうな顔をしていた。
「ピヨヨ?」
「まあ、不安なのはわかるけど、ここには過ごせる家も貰えたし、大丈夫だと思うよ。ヴィンセントさんだっているんだし」
残念お姉さんは三つ編みお姉さんをなだめていた。
ああ、そういえばこの国に来るまで、二人はヒヨコがいないとまともに生活ができていなかった。
ヒヨコが離れるのは不安であろう。もう少しこの国に頼れる友達ができればよいのだが、まだそういう友人もいない。
ヒヨコ離れのできないお子様は仕方ないな、ピヨピヨ。
『同行したいなら問題ないのだ。僕やピヨちゃんならば山賊なんてただの有象無象なのだから別に危険な場所に行くわけでもないのだ』
「ピヨピヨ【確かにグラキエス君がいれば安全だろう。ヒヨコ一羽では守りという面がアレだからな。ちょっと光十字教国まで遊びに行くか?】」
「っていうか、大丈夫なの!?」
逆に残念お姉さんの方がひきつる。まあ、残念お姉さんの方はむしろ危険地域の方が危ないと感じるだろう。やんちゃだからな。師匠に剣術を挑むなどそんじょそこらのやんちゃ少女ではあるまいて。
「ピヨピヨ【大丈夫だぞ?2月後辺りにはいつかはいく予定の場所だ。ちょっと領地の中を観察すればいいと思うぞ】」
「それじゃあ、私と智子もちょっと付いていくわ」
と言う事でヒヨコ達の山賊討伐は何故かお姉さんがセットで付いてくることとなった。
だが、山賊討伐であるが、別に帝国皇帝を討伐する訳ではないからな?