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最凶ヒヨコ伝説 ~裏切られた勇者はヒヨコに生まれ変わったので鳥生を謳歌します~  作者:
第2部1章 ヒヨコ・ミーツ・ガールズ in 大北海大陸
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1章4話 ヒヨコの見た異世界転移者達

 そんな頃、ヒヨコはプラージ王国オタル市へとやってきていた。異世界人の女の子にも後ろ髪をひかれたが、あまり構いすぎると嫌われそうなので距離を取ることにした。


 ヒヨコは空気を読めるヒヨコである。

 どこか懐かしい感じがしたが、ヒヨコは異世界人とは接点がないので気のせいだろう。

 異世界神とは接点があったけど、彼はヒヨコの血肉(けいけんち)となって生きている。あれはよき友達(けいけんち)だった。


 あれから、ほぼ10年の歳月が過ぎていた。

 ヒヨコは未だに進化していない。レベルが全然上がらないのだ。そんじょそこらの魔物では経験値の足しにもならない感じだ。悪神騒動が終わった時点でレベルが88だったのだが、その後10年ほどが経ち未だにレベルは97.年に1度のレベルアップと考えると、あと数年は鳥になれそうになない。

 残念無念である。


 ヒヨコは街中を歩くと魔物として衛兵さんに追われる羽目になるのでこっそりと街の中に入る。

 どうやったかって?

 土魔法<大地制御(アースコントロール)>で壁を横抜きして、土魔法で壁を戻すのだ。そしてピヨピヨと家の屋根の上を静かに歩いて町の中を徘徊する。


 ヒヨコは感じたのだ。あの少女たちと同様に変な魔力をこの町から発生するのを。今、この世界に何が起こっているのだろうか?

 レンガ造りの家で、何とも質素な町である。だが大北海大陸に渡ってからは随分と質素な街並みにも慣れたものだ。

 大体、この大陸はこんなものだ。


 対して、現在のローゼンブルク帝国は魔導機関をつかった製品の開発ラッシュで文明革命が進んでいる。


 科学産業大臣を作り、その初代大臣を務める腹黒公爵さんはとっても忙しそうだ。

 当人は現場で開発したいようだけど、開発計画を作る方で動いているようだ。知識を必要としている為、地方にも大きな研究学校を作ったりして頑張っているようだ。

 戦時やダンジョン探索よりも政治家や技術者、支配階級に回る方が物凄い辣腕を奮っているんじゃないかとは周りの声である。


 この10年でヒヨコたちの住んでいたコロニア大陸は魔導機関によって大きく発展しているが、この大北海大陸における魔導機関はほとんど普及していない。

 それどころか入れる事も拒んでおり、魔導船も入れさせていない。


 イグッちゃん曰く、精霊と魔導科学は相性が悪いらしい。

 イグッちゃんが生まれた頃はその魔導科学が盛んで人の手は月にも届いていたという。

 当時も魔導機関開発ラッシュはあったらしい。無論、イグッちゃんが生まれる前の話だそうだ。これが始まると人類の文明は一気に伸びて、女神の恩恵を必要としなくなるらしい。100年で空を飛び、150年で月に行き、300年で超文明になるとか。


 だが、精霊的には魔導機関はよろしくないらしいのだ。

 なので帝国は、本州島に一度魔導船で来てから、大北海大陸に帆船で向かうという方法でコンタクトを取っていた。

 国との交流が深いだけあり、ニクス竜王国は青竜女王さんがいるから直接魔導船で移動できるが寒いので冬に船で移動するには大変だとか。ワッカナイ辺りは海が凍って移動困難だからだ。

 そういう訳で帝国からの魔導船は本州島にあるエド湾がほとんど終着点と言える。


 ヒヨコはどうせ貨物だろうって?

 そんな事は無いぞ。ヒヨコは貨物ではないのだ。何故ならヒヨコはとある方法を使う事で貨物に見えない姿になれるからだ。いや、ヒヨコ自体は貨物に見えないとは思っているんだけどね?


 さて、ヒヨコは町の住人に知られる事なく大聖堂へとやってきていた。

 そして、怪しげな気配のする場所へとこっそり向かうのだった。


 突然現れた魔力源を探りにヒヨコは大聖堂の奥へと侵入していた。

 潜り込んだ先は大聖堂にある奥の部屋だった。ヒヨコは音もなく天井裏へと潜り込み、ピヨピヨと突然現れた魔力が移動した場所へと向かう。


 そこには王冠をかぶった恐らくは国王、大臣と思しき細めの中間管理職臭のする細めの男、それに美しい女性神官が並び、その前には異世界人の称号を持つ一人の男がいた。


 異世界人、つまりこれが突然の変な魔力を持った存在か!?


「神より祝福を受けし異世界の勇者様。我が国は魔王により侵略を許しております。どうか助けてもらいたいのです」

 そんな事を口にするのは女性神官だった。

 すると異世界人の称号を持つ男は尊大そうに口にする。

「やれやれ、仕方ないな。あんまり力をひけらかすのは好きじゃないがやってやっても良いぜ」

 勇者と呼ばれた異世界から来た学生はにやりと笑う。

 そんな様子をヒヨコはこっそりと大聖堂に侵入して天井裏から覗き込んで、観察していた。


(魔王なんてこの大陸にいたっけ?竜の女王とかならいるけど)

 ピヨリンコと小首をかしげるのだった。


 ヒヨコが知る限りでは、この大陸は大きく分けて、竜神教、光十字教、精霊信仰の3つに分かれている。

 北にあるヒヨコの拠点でもあるナヨリ、それに青竜女王さんが住むワッカナイといった都市を持っているのがニクス竜王国だ。

 竜神教とは青竜女王さんを信仰する宗教の事を差す。イグッちゃんが暴れまわっている中、多くの残された竜の卵を守る為にイグッちゃんの前に立ち塞がり、幼竜なのに体を張って守ったのだ。今生きている大北海大陸のドラゴンは全て彼女の守った卵の子供や子孫なのでマザードラゴンとも呼ばれている。竜の神とはよく言ったものだ。

 黄竜女王さんは青竜女王さんに女王として認められているから竜の女王として崇め奉られている。神様と教皇様と言った感じだ。

 精霊信仰と言うのはどちらかと言うと幻獣の住んでいた場所で信仰されている。精霊を統べる幻獣を祀っているのでこの信仰の頂点は幻獣達を差す。

 それ以外は全て光十字教である。光十字教は光の精霊を信仰している宗教だ。


「まあ、5体の魔王がいて、俺に倒して欲しいってのはまあ、理解したわ。でもよ、帰る方法はないのか?」

「光の精霊様は5体の魔王を倒しこの大陸に張られている異世界との繋がりを妨げる結界を解けば光の精霊様が導いてくださると仰ってました」

 国王がへりくだった話をしていた。

「んだよ。ふざけんなよ。…っつっても文句言った所でどうしようもねえって話か。事故でここに迷い込んだって言うしな」

 何だか異世界の勇者とやらはまんざらな顔をしつつも、ぶつくさと文句を言う。

 ヒヨコ的に見て『面倒くさい系勇者』である。


「女神様の制約としてこの地で生まれた人間にはスキルを勝手に渡すことが許されないらしいのですが、光の精霊様は異世界の勇者様には配る事が出来るとの事でした。我々が異世界の方々を勇者様と呼ぶ所以です。実際、500年前にこの世界に降臨して、救世の女神様さえ手の焼いた魔神アドモスを異世界の勇者が滅ぼしております」

「つーと、神を殺せるくらい強くなる可能性があるって事か。でも、危ないんだろ?魔王って位だろうからな」

「無責任な話ですが、我々ではどうにもならないというのが現状です。光の精霊様の言葉により、我が国一番の騎士を白秋連邦に住む魔王ティグリス討伐へと向かわせたのですが……生きて帰るのが精いっぱいという感じでして」

「へえ」

 異世界の勇者ヤマカワ某はどこか楽し気に唇を舐めて笑う。

 ヒヨコ的に見て、この勇者、嬉しいのをしかめっ面で誤魔化しているように見える。いきなり別世界に来て喜べるものだろうか?

 異世界人の感覚はよく分からん。


「この世界って人間しかいねーの?ケモミミとかエルフとかさぁ」

「ケモミミ?とはよく分かりませんが、エルフはいますよ。東部諸国連合は多種族国家群ですので、とはいえ、この大陸にはハーフドワーフやハーフエルフはいても純粋なエルフはいません」

 と答えるのは女性神官さん。


 そう、ヒヨコもこの大陸に来て驚いたのだがハーフエルフなる存在がいるのだ。

 エルフやドワーフからそういう存在が生まれる事はそうそうないとエルフの森で教わったのだ。

 だが、エルフの男性が人化の法で人間になって子供を作らせた際に、耳の長い変わった人間が生まれたらしい。

 同様の方法でハーフドワーフが生まれたとか。思えばドラゴニュートや蜥蜴人族もイグッちゃにより生み出されたものだ。そういう事もあるのだろう。

 そう言えば師匠も仙人の類だったか。人類が進化して仙人になったとか言ってたしなぁ。


「ゴブとかって魔王の配下じゃねえの?」

「東部諸国連合は我等光の精霊様の信徒ですから敵ではありませんね。他大陸にはゴブリンの英雄、ゴブリン王を頂点にする多種族国家もあると聞きますし」

「……」

 ヤマカワは考え込むように腕を組む。

「それにしても我が国は幸運でした。レアな上級職を持ってこの地に来たのは3名。北海王国に降りた聖騎士タカギ様、光十字教国に降りた光戦士サイジョウ様、そして我が国に降りた魔剣士ヤマカワ様の3名だけでしたからな」

「高城と西条?ちっ、あのリア充共が。爆ぜれば良いのに。異世界に来たのにアイツらもチートかよ」

 ヤマカワは舌打ちする。

 ピヨピヨ、よく分からんが、リア充がいるのか?そうだ、爆ぜてしまえ!


「今から3月後、皆様が光十字教国の空中都市アサヒカワに集まるのでそれまでに多くの功績を残せば他の勇者たちよりも上の立場になれるでしょう」

「それだ。それだよそれ。良いじゃん。やってやるぜ」

 にやにやとヤマカワは笑う。

「よろしくお願いします」

 頭を下げる国王の姿があった。


「ところで奴隷売買ってこの国にはあるのか?」

「奴隷、ですか?」

 キョトンとするのは周りの者達だった

「ああ。騎士や貴族とかだと堅苦しくてな。俺はこの世界に慣れてないから自由に使える奴隷が欲しいんだよ」

 すると国王の横にいる側近らしき男が前に出る。

「それでしたら今日の夕方に北地区にある競売所に行かれてはどうでしょう?貴族なども行くような奴隷市場もあります」

「まあ、異世界転移と言えば奴隷は鉄板だからな」

 ヤマカワはそう言って、ポムポムと側近の男の肩を叩いて笑うのだった。


 何故異世界だと奴隷が鉄板なのだろうか?残念ながらヒヨコのいたローゼンブルク帝国は奴隷が撤廃されて久しい。

 ヒヨコは首を引っ込めて抜き足差し足忍び(ヒヨコ)足で天井裏から去るのだった。


 どうやら分かったぞ?異世界人が大量にこの地にやって来たって事だ。あのお姉さん達はどうやら光の精霊に確保されなかったらしい。

 ヒヨコは聞いていないが、もしかしたら遠い場所にいるステちゃんは聞いていたかもしれない。

 だが、ヒヨコはこの大陸に渡ってから3年は経つ。ステちゃんは向こうの大陸なので暫く会っていない。

 子守やピヨピヨ団の面倒を見たり、師匠の所に通ったり、大忙しだった。そもそもマスターを探して、時にピヨピヨフラフラと大陸のあちこちに足を延ばしているのだ。ちなみに今回の遠征原因はピヨピヨ団の子供たちがヒヨコから離反したことで引き留めに向かったのだ。お姉さんたちが心配だったので鳥逃してしまったが。


 子守の方は学校のある期間は他の人に任せられる。そろそろ学校が大型連休に入るとヒヨコは面倒を見なければならない。

 ピヨピヨ団は自立してしまったし、師匠の修行も一通り終わり、折角暇になったというのに、また厄介ごとに巻き込まれる予感がしていた。

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