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最凶ヒヨコ伝説 ~裏切られた勇者はヒヨコに生まれ変わったので鳥生を謳歌します~  作者:
第1部6章 帝国東部領シュバルツシュタット ヒヨコ無双
153/327

閑話 ヒヨコのメリークリスマス

「ピヨヨ~ピヨヨ~ピヨピヨヨ~」

「きゅきゅきゅ~きゅ きゅきゅきゅ~」

「ピヨピ~ヨヨ~」

「きゅう!」


 ヒヨコとトルテは船のヘリの上に乗りながら仲良く歌を歌っていた。


 今は帝暦507年12月24日。丁度帝国から北国リゾート都市ヴァッサラントへと豪華客船にて移動している頃の話だ。

「何故、クリスマスソングを…」

 ステちゃんがヒヨコとトルテの背後に現れる。

「きゅうきゅう(聞いたのよね、ステラ。なんと今日はクリスマスイブという日らしいのよね)」

「あー、帝国でもやっている奴ね。確か勇者シュンスケがいた世界では世界的な祭りの日だとか。何でも神の降誕祭?だとかなんとか。よく知らないけど」

「きゅうきゅう(聞くのよね!良い子にしているとサンタクロースとかいう格好いい技みたいな名前の赤いおっさんが深夜に乙女の部屋に忍び込んでプレゼントをくれるらしいのよね!)」

「トルテトルテ、それは犯罪臭しかしないからダメよ」

「きゅ~(乙女であるアタシは待ち焦がれているのに、ダメなのよね?)」

 トルテは船のヘリの上に立ったまま、後にいるステちゃんを振りむいて首を傾げて訊ねる。

「ピヨピヨ(そこを敢えて、不審者はとして通報し、持っているプレゼントを根こそぎ奪うのだ!)」

「きゅきゅーっ!(ヒヨコ、あんたは天才か!?)」

 ヒヨコのナイスアイデアにトルテは目を輝かせる。

「そういう悪い子の所にはサンタさんは来ないと思うな」

「きゅきゅきゅ~(そんな~)」

「ピヨヨ~(そんな~)」

「それにしても、何で異世界の神の生誕祭なんてあるんだろ。うちの世界の女神様の生誕祭はないのに」

「ピヨピヨ(女神とは何年も生きているお婆さんなのだから年齢を数えさせる事をさせていないのだとヒヨコは推測するぞ)」

「きゅうきゅう(ババアでも女としての権利を行使するのは当然なのよね。ヒヨコはレディに対して失礼なのよね。だからモテないのよね)」

「ピヨ!?(何を言う!ヒヨコは商店街で占いをしているステちゃんの隣に立てばガールが群れなしてピヨちゃんピヨちゃんと黄色い声をかけて来るほどの人気者だぞ!トルテはヒヨコの頭の上で寝ているから知らないのだ)」

「きゅうきゅう(人が寝ているからって話を盛るのはよくないのよね)」

「ピヨヨ~(ステちゃん言ってやってくれ、トルテにしっかりと!ピヨチャン、ウソツカナイ)」

「まあ、幼女に限らず子供たちの人気者ね」

 ステちゃんは呆れたようにヒヨコを見る。

「そうね、ヒヨコは人気者なのよね~。良かったのよね~」

 トルテはトルテでフッと鼻で笑う。

 何故、ヒヨコを残念なもののように見るのだ。今日のヒヨコは貨物じゃないのに!?




***




 そんな頃、アルブム王国ではオロールとの戦争を前にレオナルドの姿をしたネビュロスは軍隊を引き連れていた。馬車に揺られながら先へと進む。

 帝国が首を出す前に戦争を終わらせようとネビュロスは素早く行軍をしていた。

 そんな折、ネビュロスは驚くべきことを耳にする。

「そう言えば、帝国ではクリスマスという祭りをしているそうです」

「は?」

「ご存じありませんか?」

「……な、何故?」

 ネビュロスは考えながらダラダラと冷たい汗を流す。


 この世界に来る前の世界に行われたクリスマスを思い出す。

 何でこっちの関係ない世界でクリスマスなんてものがあるのだ。あれは悪魔である我々にとっては天敵でもあるキリストの生誕祭だった筈だ。今では神を信仰してなくても行われたりする普遍的な祭りでもあるが、このせかいにもまさかそんな存在がいるとでもいうのか!?

 あれがこの世界にいたら、危険過ぎる!ありえない!

 唯一にして、多くの信仰を束ね2000年もの祈りを受けてきた巨大な神だ。この世界にもいるとしたら私ではとても敵わん!

 元の世界にいた神々は多くの神格を得ている為、戦うのは避けん無ければならない。それはちっぽけな国の神であっても侮れない。

 東の小さな島国にある無数にある神の一角で、スタンプラリーのようなちっぽけな神の一角であっても、それが実はシヴァ神の一部である場合がある。

 神の中には想定外の存在を呼び出す場合があるのだ。故に慎重に対処しなければならない。

 ネビュロスはここに降りた際に手に入れた情報網を使い検索する。


 <クリスマス>検索


『クリスマス。異世界の神の降誕祭。500年前にこの世界にやって来た勇者シュンスケ・オキタが広めた祭り。クリスマスイブにはケーキと鳥を食べ、家族で過ごす。決して恋人と過ごしてはならない。ここ重要。夜にはサンタクロースがやって来て良い子にプレゼントを置いていくという言い伝えがある。ちなみに本来は七面鳥なのだが、この世界には七面鳥がいない為、主に鶏が代用として食べられる』


「なんだろう、このエセクリスマスは。シュンスケ・オキタ、語感からして日本人か?……たしか日本は家族で過ごすのではなく恋人と過ごすというのが多いという話だが………。もてない男の僻みと妄念が入った情報網だな」

 さすがのネビュロスも面を食らっていた。

 あからさまにロクでもないモテないダメ男が作ったような祭りだった。


 だが、ネビュロスは少しだけホッとしていた。

「向こうの神が本当に出てきたらシャレにならぬわ。びっくりさせやがって。500年前の勇者と言うのはロクでもない奴だったんだな」

 ネビュロスは知らない。500年前の勇者などがどのような人物だったかを。だが、真に言い当てていた。ロクでもない奴だったという事に関しては。

 ネビュロスは気を取り直してオロール攻略に向けて進む。

 やがて平原にはオロール軍が立ち並ぶのが見えてくる。

「ここで良い。隊列を組み敵軍を警戒しておけ。すべて私がやる」

 ネビュロスは兵士の1人に声をかける。

「で、ですが……」

「巻き添えでお前たちは死にたくないだろう?」

 三日月のように口角を上げて、邪悪に開かれた口から恐るべき言葉が放たれたのだった。

 神の如き力を振るうという姿を見せる事で自分の信仰の力を高め、女神教会そのものを喰おうという狙いでもあった。


 後に歴史ではこのように伝わる。『ブラン平原の虐殺』と。




***




 そんな頃、イグッちゃんこと赤い髪をした美しくもたくましい美丈夫イグニスは人間となって、シレッと客船に紛れ込んでいた。


「参ったな。これはあれか?トニトルテにプレゼントを上げねばならぬのか?我が領地にはそんな風習は無かったから問題なかったのだが。くそっ、シュンスケの奴、余計な仕事をして逝きやがって。何もかも忘れてピヨピヨしているのがさらに腹が立つ!」

 かつて悪神を相手に共に戦った戦友を忌々しそうな顔で思い出す。

 異世界文化、異世界イベント、異世界音楽を広めて去って行った。功績も大きいのは分かるが、奴のせいで余計な問題が発生していることは否めない。


 とはいえだ。

 娘が期待しているならば応えてやらねばならぬ。

 だが、この祭りの事はグラキエスには教えないでおこう。

 いや、それぞれの母親に子供達にプレゼントを準備してもらうべきだ。とはいえ、今すぐフリュガを呼んでトニトルテへのプレゼントを渡してもらう訳にはいかない。ドラゴンとなってこっちに飛んで来たらそれこそ大パニックだ。


 ここは父親として頑張ろうじゃないか!


 イグニスはそんな事を考えて、この客船を歩き店を探す。

 客船は大きい。大きいホテルや商店街がまるまる入っているようなものだ。

 女と言えばファッションやアクセサリーだ。

 だが、ドレスやアクセサリーは、トニトルテは全く興味を示さない。

 人化の法を覚えれば服は喜ぶだろうが、人化の法を使えないので服に興味を持っていないようだ。

 キラキラ光るものは大好きだが、所持スペースが無いのでアクセサリーも今は興味ないようだ。

 ここは美味しいものが良いだろうと考える。保存がきいてトニトルテが喜ぶ大好物だ。

 プレゼントをしようと考え要望に合うものが売られている小売店を探す。


 イグニスが見つけた小売店では肉なども売られていた。

「この最高級の干し肉を1キログラムくれ」

「まいど~」

 店主は干し肉を1キロ分切り落とすと布に包んでくれる。

 美味そうなものが並んでいるので他にも何か買おうかと他にもピックアップしていく。

 そんな中、ふと身に覚えのある単語が目に付く。


「フルシュドルフのマトンジャーキー?」

 イグニスは聞いた事がある地方だとは思うが記憶を掘り起こしても思い出せなかった。


 ……羊は中々の美味であるな。まあ、これは俺のつまみ用として買っておくか。


 そんな事を考えてイグニスはマトンジャーキーもついでに自分用として購入しようと袋の一番上に乗せて購入するよう店主に言う。

「あとこれらもまとめてくれ」

 イグニスはそんな事を考えて取り敢えずまとめて色んなものも購入する。

 イグニスは店主にポンと金貨を握らせる。お釣りを出そうとする店主だが釣りはいらぬと去っていく。

 貴族や大商人が多いこの豪華客船では、貴族は金を持たず後で請求する事になるし、商人は絶対にお釣りを要求する。その為、店主は金払いの良い客に面を食らうのだった。





***



 夜が訪れる。

 この日は客船の中でもクリスマスパーティーが開かれていた。

「ピッヨヨピッヨピッヨ~ピヨピヨピヨヨ~」

「きゅっきゅきゅきゅっきゅっきゅっきゅ~きゅきゅきゅきゅきゅ~きゅ~きゅ~」

 今日のヒヨコとトルテのピヨドラバスターズの選択した曲目は『赤●のト●カイ』だった。


「ピヨピヨ(ステちゃん、気付いてしまったのだが聞いてくれないか?)」

「何よ突然」

 客船の大広間では貴族は商人などが多くいて、優雅に旅をしている金持ちばかりだ。

 ステちゃんも外出用にドレスを着てビュッフェを楽しんでいた。

 無論ヒヨコもだ。


「ピヨピヨ(この赤い鼻のトナカイと言う奴は嘘だろ?)」

「さあ、500年前に勇者が伝えたお話だから真実か嘘かは分からないわね」

「きゅうきゅう(いやいや、サンタは良い奴なのよね。見直したのよね。トナカイを上手くだまくらかして奴隷のようにソリを運ばせるとか、立派な詐欺師になれるのよね)」

 トルテはきゅうきゅうとサンタのやり口に感動している様子だ。


「ピヨピヨ(ちょっと待てよ、トルテ。この話はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ないと思うぞ?)」


「きゅう?(何を根拠に?)」

「ピヨピヨ(よく考えろトルテよ。ある所に若いハゲの男がいました。皆に笑われているような酷い禿げ散らかした禿げです)」

「きゅ~(禿げ散らかしているのよね?それで?)」

「ピヨピヨ(お前の頭がピカピカで夜道を照らすから役に立つ!素敵!なんて言われて喜ぶハゲがいるだろうか?いや、いまい)」

「きゅうきゅう(そこはサンタクロースの言葉の巧みさなのよね。ステラを見れば分かるのよね)」

「ピヨヨ~(ステちゃんを?)」

「きゅう~きゅう~(ステラは若禿げのあんちゃんがお悩み相談に来た時に、上手い感じに誤魔化して翌日からはスキンヘッドのお兄ちゃんとして人気ものになったのよね)」

「ピヨピヨ(そう言えば!?)」

「きゅうきゅう(つまり!若禿のお兄ちゃんも何でそんな事に騙されたのかと聞きたくなるようなステラのような口車に乗せられて、お兄ちゃんはピカピカの頭で夜道を照らして喜んでたのよね)」

「ピヨピヨ(なんて哀れなお兄ちゃん。これだからステちゃんは)」

「きゅうきゅう(そう、ステラが悪の元凶なのよね)」

「今の話でまさか私が黒幕に飛び火するとは思わなかったわよ!」

 赤鼻のトナカイの歌はステちゃん黒幕説が生じたのだった。


 赤羽のヒヨコは戦慄せざる得なかった。ヒヨコ的には危機である。何故なら、赤鼻のトナカイ君とは仲良くなれそうだからだ。


 真っ赤なお羽根のピヨちゃんはいつもみんなの笑いもの


 共通点的にはばっちりだ。まあ、ヒヨコは笑わせているのであって笑われているのではないぞ。ほんとだぞ?

 そして言葉巧みにステちゃんに操られているヒヨコ的には黒幕ステちゃん説が有望とみられる。




 たくさん食べたヒヨコ達はビュッフェパーティ会場から出て、ステちゃんの部屋へと向かう。

「お客様」

 するとステちゃんとトルテと一緒に歩いているとヒヨコが声を掛けられる。

 ピヨピヨ、どうしたのかな?


 ステちゃんは足を止めて振り向く。

 やって来たのはスーツ姿のコンシュルジュ的な何かだろうか?客船の乗組員の1人だろう事は予測される。


「申し訳ありませんがお客様。貨物を勝手に部屋に持ち込まれるのは困ります」

「ピヨヨーッ!」

「あー、そう言えば……」

「きゅうきゅう(ヒヨコの持ち込みは禁止なのよね)」

「ピヨピヨ(だれかヒヨコを持ちこんでください!)」

 ヒヨコの嘆きを聞くものはこの場には誰もいなかった。


 暫くすると、ヒヨコは客船乗務員の人が台車を持ってきて、ヒヨコを乗せて貨物へと連行されるのであった。ふとヒヨコが見上げるとそこには神眼で職業が愛玩動物から貨物へと丁度変化するのが見られた。

 断固拒否したいところだが、それは敵わない。貨物ヒヨコが暴れたら大変なことになってしまう。それはもう船の中がタイタニックだ。いや、大パニックだ。

 タイタニックじゃない。船で移動中に不謹慎な言葉だった。


 ピヨピヨリ…………はて、何でタイタニックという言葉が、あたかも船が氷山にぶつかって沈没しそうに感じるのだろうか?

 ヒヨコにはさっぱり分からないがそう感じてしまったのだった。


 だが、……そうか、ヒヨコは貨物なのか…。ヒヨコは涙を流して甘んじて受け入れるのだった。抵抗が出来ないので仕方ない。だが、これだけは言わせてもらおう。


 ヒヨコ カモツ ダメ ゼッタイ



 ヒヨコは知らなかった。

 近い将来、再び列車の貨物や船の貨物として運ばれ、何度となく貨物体験する羽目になる事を。




***




 そんな夜の事。

 イグニスは世のお父さん達と同じく夜な夜な娘の枕元にプレゼントを置くべく、見回りの客船乗務員の目を盗み、ステラ達の停まっている客室の前へと辿り着いていた。

 そして、錬金術で鍵を作り、鍵を開ける。

 ドラゴンでありながら暇なので人間としてのスキルも異様に高いイグニスであった。さすがは1000年以上生きている竜王である。

 だが、錬金術による鍵づくりスキルは単に夜這いの為に身に着けた技という情けない理由でもあった。


 ステラとトニトルテはスヤスヤとベッドで寝ていた。

 トニトルテはと言えば靴下を持っていないので、ステラに頼んで男性用の大きい靴下を買って貰い自分のベッドに吊るすのだった。


「きゅう~」

 トニトルテはコロコロと転がっているとベッドから落ちてしまう。

 ドサッという音にイグニスはビクッとする。


「きゅうきゅう」

 寝ぼけていたトニトルテはステラのベッドにもぐりこむ。普段からステラと同じベッドに寝ている為だ。

 イグニスはホッとしてそそくさと暗い寝室の中を移動し靴下の元に辿り着く。

 そこに布袋に包まれた干し肉を入れる。


 ふう、どうにか任務完了だ。あとはここを…


 イグニスはホッとした様子で部屋から出ようとすると


「きゅう?きゅうきゅう!(誰なのよね!まさかサンタ!?サンタなのよね!?サンタを狩ってヒヨコにトニトルテの武威を自慢するのよね!)」

 なんとトニトルテが起きてしまう。


 入り口側がトニトルテに抑えられてしまったので、イグニスは慌てて逃げようとし、窓を開ける。

「きゅうきゅう!(ステラ起きるのよね!サンタ発見なのよね!あの赤い頭は、間違いないのよね!)」

 トニトルテはゆさゆさとステラを揺すってきゅうきゅうと騒ぐ。


 イグニスは人間になっても浮遊スキルの発展系<高速推進>によって空を跳ぶことができる。慌てて空を跳んで逃げて行くのだった。


「きゅうきゅう(待つのよね!逃がさないのよね!)」

 トニトルテはカパッと口を開けて<電気吐息(エレクトリックブレス)>を放つのだった。

 暗い夜空に光が走る。


 だが、イグニスとてその程度では負けたりはしないが痺れてしまう恐れがあるので、手元に持っていたおつまみ用に持っていた自分の荷物の中から、一番上の袋を一つ投げつけて電撃を直撃させて自分からそらすのだった。


「ふう、危なかった。我が娘ながらサンタ狩りなど恐ろしい事を考える。……もうこれを理由にサンタが来なくなっても問題ないよな?」

 イグニスは二度とやるまいと心に近い空を飛んで逃げるのだった。


 イグニスの投げた自分用のおつまみであるマトンジャーキーはブレスにぶつかり大きく吹き飛んで貨物室の排気口へと落ちて行く。

 回収は不可能と考えて諦めるイグニスはちょっとだけ残念がって船から離れる。




***




 ステラはサンタの正体が誰なのかを察していた。

 トニトルテは腕を組んでしきりにうなずいていた。

「きゅうきゅう(まさかサンタが実在したとは驚きなのよね。子供だましだと思っていたのよね)」

 トニトルテは割と現実的だった。

「そ、そうね」


 竜王様は大丈夫かなぁ、まあ、トニトルテに雷を食らって落ちる事はないと思うけど…

 ステラは悲しい宿命を負った父親の方を心配しつつもふとトニトルテ持っている靴下を見る。


 トニトルテは靴下から荷物を取り出すと1キロの高級干し肉だった。

「きゅきゅきゅきゅっきゅきゅ~」

 トニトルテは喜び舞い踊る

「きゅう~きゅう~(サンタは分かってるのよね!これはアタシの分なのよね!ヒヨコには一切れたりとも恵まないのよね!)」

「そ、そうね。それでいいんじゃない?」

 ステラは話を合わせるべく、実のお父さんからのプレゼントだし、友達に恵む必要も無いだろうと思い、うんうん頷く。

「きゅうきゅう(ヒヨコに見せびらかせながら食べるのよね)」

 トニトルテは自分のベッドに移って肉を抱いて再び寝るのだった。




***




 翌朝、ヒヨコは目を覚める。靴下も無ければ部屋でもない。

 薄暗い貨物の中、ヒヨコは悲しい気持ちで目を覚ます。

 サンタ?あんなものはいる筈がない。

 何故なら貨物室迄やって来てプレゼントをくれる奇特な存在がこの世にいる筈がないからだ。

 きっと世のお父さんが子供達にプレゼントをあげているのであり実在しないに違いないのである。

 世のお父さんたちが作った都市伝説に違いない。

 子供達をよい子にする為に、良い子にしているとサンタが来るという嘘を吐いたのだ。

 知っている。ヒヨコは何でも知っている。

 大体、サンダークロスとかトルテがその内編み出しそうな必殺技みたいな名前をしている辺りがうさん臭さ倍増である。


 だから、良い子のヒヨコの元にサンタなんて現れないのだ。

 父ちゃんも母ちゃんもいない孤児であるヒヨコの元になんて……


 するとヒヨコの寝ていた枕元付近に何故かフルシュドルフ産のマトンジャーキーが置いてあった。

 ヒヨコは昨日まで何もなかった場所に朝起きたら大好物が置いてあった。

 小首をコテンと傾げて考える。


「ピヨヨーッ!」

 ヒヨコは驚愕するのであった。ヒヨコが欲しかったものがここに!?

 これが、これがサンタパワーなのか!?ヒヨコは確信する。


 サンタはいたのだ!


 それがイグニスの落としたおつまみの一つだとは知らず、ヒヨコはサンタに感謝する事になる。ヒヨコはサンタをいると暫くは本当に思い込むことになるのだった。


 あとがき担当の女神です

 作者が頑張ってくれました。

 クリスマススペシャルと言う事でクリスマスの小噺をちょろっと載せています。

 時はさかのぼり客船でヴァッサラントに向かう12月24日ころのお話です。

 昨日投稿しようと頑張り、仕事が忙しく送れなかった哀れな作者がいたという図です。


 この世界にも悪しき勇者によってクリスマスと言うイベントが作られました。

 さすがのネビュロスもびっくりですね。彼は地球ではネビロスと名乗り私の下で少将の地位にいる地獄の総監督官などをやっていましたが、さすがに向こうの神がこっちにいるのかもと思って焦るのは分かります。


 ちなみに私は地球ではわりとメジャーで色んな分体を持っています。

 以前のあとがきで金星の……と言う話をしましたが神話に詳しい人は金星と聞けば様々な存在に思い当たるでしょう。それら全てが私の分体と考えてください。


 メソポタミアやギリシヤ、ローマなどの豊穣や美などを司る女神として登場する神です。更に言うと日本では悪い神として登場してます。やんちゃしていた頃ですね。そこでアマテラスちゃんと知り合いました。敵同士だったんですけどね(笑)

 神の子でもあり悪魔でもあり同一存在でありながら別の私と言う事になります。

 何せ聖書では悪魔に落ちた熾天使でありながら、同書では輝く明けの明星<救世主>としてうやまれている存在なのですから。

 それはもうエントリーシートを送る先を間違えてしまって掛け持ちをしたのが間違いだったのでしょう。

 認めたくないものですね、若き日の過ちと言う奴を。

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