1章閑話 勇者と勇者の戦い
今から3年前の事だった。
獣王国本土では激しく揉めていた。それは獣人達に未来に関わる大きな問題だったからだ。
場所は連邦獣王国首都カッチェスターの会議室だった。
「もはや悪魔王に従うと決めたのだ。それを今更何を言っている!」
小さな会議室で、怒り狂い地面を揺るがすような怒号を放ったのは獣王アルトリウス・タイガーである。
3メートル近い巨大な体躯に加え、鋭い犬歯を持つ虎柄の耳と尾を持つ虎人族の長の怒りに、その場にいた多くの獣人達は恐れ跪く。鋭い視線は目の前にいる幼女を射殺すかのようで、白と黒の虎柄の長い髪がが逆立っているかのように見える程だ。
「もう一度言います。王国の勇者と手を組むべきです。勇者はいずれ悪魔王を倒します」
だが、獣人族の長に対して一歩も引かずに進言するのは、黄金の髪に黄金の瞳をした狐の耳の少女。3つの狐の尾を持つ幼い容姿をしている。未だ13歳ながらも必死に年上の獣王国の幹部達に訴える。
「断じてそのような話は聞けん。我らは鳥か獣かも分からぬ蝙蝠とは違う。大体、一度、手を組んだ相手を決めて裏切るなどできるか!我らの誇りを何と心得る!」
獣王の言葉によって堰が切られたかのように、他の5人の幹部の内の4人が口にする。
「大体、今までアルブム王国の連中が我らに何をしてきたと思っている」
「王国に従う位なら滅びの道をたどった方がマシよ」
「鬼人領のセシル陛下も悪魔王に下ったのだぞ」
「確かに悪魔王は気に入らぬが、悪魔王とアルブムのどちらと戦うと言えばアルブムに決まっておろう」
他の獣人達も激しい非難を示す。
アルブム王国と連邦獣王国の間には長い間、戦い続けてきた大きい亀裂がある。
近隣諸国でもアルブム王国やベルグスランド聖王国といった国々では、獣人は奴隷階級であり、人権さえ与えられていない。未だに蔑視されているのである。
獣王国の幹部にも家族がアルブムの奴隷だったと言う例は往々にみられる。
獣人差別のないローゼンブルク帝国が相手であったならばその案に乗る事も出来ただろう。
彼の国はあらゆる種族がいて、長寿種族でもなければ貴族にさえなっている。家柄以外にも個々の力を認める風土がある為、稀に帝国軍の将軍に獣人が立ったりするのだ。
だが、アルブム王国に同調すると言うのは国そのものを奴隷にするも等しい事になる。
いくら未来を見える巫女姫の進言でも心情的に不可能な事だった。先代の巫女姫ならば従ったであろうが。
「大体、アルブム王国に同調してどうなるというのだ。魔王は10万の生贄を求めたが、かつて王国は我々から十万の獣人を嬲り殺した国だ。いくら子供と言えど、400年前に引き起こされカルロス・メシアスの起こした惨劇を知らぬわけではあるまい」
アルブム王国の前身であるカルロス王国は邪神メビウスを呼んで世界を滅ぼしかけている。その時に最も犠牲になったのが連邦獣王国だった。
「ですが………我らが勇者と同調する事で全てが丸く収まる未来が見えました」
「王国と我らが同調するなどあり得ぬ」
「王国ではありません。王国の勇者とです」
幼い巫女姫は必死に自分の予知した内容を伝えようとしていた。
だが、周りの獣人達は難色を示す。そもそも彼らは王国に対して良い思いを抱いていないからだ。王国における獣人差別は厳しく、王国は人類主義である上に王侯貴族の圧政が厳しく、人間以外の種族に嫌われている国でもあるからだ。
幼い狐耳の少女を責め立てるように口にするのは獣王国の重鎮たちである。
獣王にして虎人族の王アルトリウス・タイガーを上座に、そのすぐ脇にいるのは二人の獣人。
1人は犬人族や狼人族の集う樹海西部の大集落ハウンドフォードの支配する狼王ウルフィード14世。痩身ながらも強靭な筋肉の鎧をまとった狼人族の若者で黒い獣の耳と尾を持つ戦士である。
もう1人は獣王国の首都カッチェスターの姓を持つ獅子王オラシオ・カッチェスター。獣王にも負けない巨大な体躯を持つ黄金の髪と髭に獅子特融の耳と尾を持つ獅子人族最強の戦士である。
そんな彼らの政治を司るのが多くの種族が集まる大森林の都フォレストハムの長老グレン・リンクスターであった。白髪に白い髭をたっぷり蓄えた猫人族の老人はかつての元三勇士であり、今ではご意見番として存在している。
「たった一人の人間に何が出来るというのだ」
「ただの人間風情に我々が負けるものか」
「聞けば勇者は王国の召使いのようなものだと聞いている。そんな者を取り込んで何が出来よう」
呆れるように口にするウルフィード、勝気に走るオラシオ、情報を元に溜息と共に口にするのがグレンであった。
「ですが………勇者と戦うのは我々にとってあまりよくない結果になる可能性が…」
心配するように口にする幼い狐人族の少女であるが、誇り高い戦闘種族でもある獣人達がその言葉に対して誇りを傷つけられたように感じるのは仕方ない事だった。
「いくら巫女姫様と言えどそれ以上は我らに対する侮辱です。それにあなたはまだ先代様と違い能力を使いこなしていないと聞いています。それが真実であると断言できますか?」
厳しく問いただすのは黒い鎧をまとったグレンの孫娘でもある三勇士候補として最も近い地位にいた猫人族の姫マーサ・リンクスターであった。
普段は私的に付き合いのある相手に公的な立場としてきつい事を言われてしまい、いつも以上にしおしおと巫女姫は萎んでしまう。
「そ、それは……」
狐耳の少女は耳を垂れさげて、3つある尻尾もしおしおと垂れ下がる。
自信がある訳でもないが、とんでもない悲しい事が訪れると感じての諫言である事が容易に分かる反応だった。
そんな中、一人の男が割り込むように口にする。
「私はステラ様の意見に一理あると思います」
由緒正しい獣人族の王の血筋を持たないながらも、グレン・リンクスター以上の従魔士として三勇士の一人になったエミリオであった。
三勇士は最強の戦士がなるものだが、1枠は従魔士枠と言うものがある。その枠で入ったのがエミリオである。グレンはかつて政治面で活躍していた為に獣王に参謀として使われていた。
「ふん、自分で戦いもしない従魔士もさすがに相手が勇者と聞いて怖気づいたか?」
どこか嘲笑うように口にするのはオラシオであった。
同じ猫系の獣人とあって三勇士の同僚であっても平民で己も戦う事のない従魔士であるエミリオを馬鹿にしていた。
獣王もまた呆れるようにエミリオを見る。
「元より人族と我らは立場が同じ。悪魔王の要求は10万以上の生贄なんです。手を合わせて魔王を倒せば、人族との恒久的な平和への一歩にもなり得ます。勇者とは魔王に伍する存在です。人族に現れたならばそれに組するのも一つの手かと」
「バカを言うな!」
「これだから誇りを知らぬ平民が」
「我らは戦いもせずにあちらにこちらにフラフラする惰弱な連中と同じになれと言うか」
「エミリオ、貴方が戦いを好まないのは知っているけれど、さすがに今回は許容できないわ」
獣王アルトリウスが怒鳴り、同じ三勇士たるウルフィードやオラシオも怒りを露わにして、そして妻でもある黒の猫姫マーサにさえも窘められてしまう。マーサはエミリオの護衛として付いている。
だがエミリオは口を強く結び首を横に振る。
「それでもステラ様は巫女姫である仕事をした結果からの諫言を無視すると言うのですか?この数百年の安寧も巫女姫様の尽力の賜物と聞きます。少なくともフローラ様はステラ様を自分以上の才覚があるとおっしゃっていたのです。一概に無碍にするなどできないと思いますが」
「ええい!戦を嫌う軟弱者が黙れ!三勇士として恥ずかしくないのか!」
オラシオはテーブルを叩き壊してエミリオに怒鳴りつける。
「エミリオは巫女姫様を信奉しすぎている。生い立ちを考えれば仕方ないのでしょうが」
グレンもまたエミリオを窘めるように首を横に振る。
「私は軍勢を持つ従魔士。私が死ぬのは最後になるでしょう。であるからこそ、他の者を殺されたくないと願うのが悪い事でしょうか?」
エミリオは戦いに対して否定的だった。そして巫女姫の言葉に対しても盲目である。
「ふん、誇りを捨てて生きるなど、生きているとは言えぬ。貴様も三勇士の末端であるならばわきまえろ」
「いくら従魔の才能があろうと、所詮は軟弱な従魔士よ。やはり貴様風情に三勇士の肩書は勿体ない話だったな。所詮は魔物の後で怯えている雑魚という事よ」
エミリオは説得しようとするが、他の三勇士はエミリオを侮っていた。
平民でありグレンに継がせられただけの形だけの三勇士という存在は肩書に見合うだけの敬意を持たれてはいなかった。
グレンの後継はマーサになるだろうと思われていたからでもある。
従来、従魔士は獣王を超えうる存在として高い地位があった。グレンはその筆頭ともいえる策士で、かつては獣王のすげ替えを指名できるほどの力があった。
今代の獣王アルトリウスはグレンの使役する従魔達を壊滅させ、腕力で引退に追い込んだ猛者だ。従魔士は従魔を使えば獣王を超えるというのが過去の在り方だったが、それを今回の獣王は覆してしまった。
だが、エミリオは三勇士に最も近かったマーサを嫁に取り、従魔士枠の三勇士に登ってきた男だ。
しかも、幼い頃は巫女姫フローラに育てられた孤児で、ステラにとっては兄にも等しい存在であり、政治的と言うよりは信仰的に強いのである。巫女姫教と言ってもいいほど、獣王国は巫女姫の信奉者が多いからだ。
「ふん。そんな事よりも王国の軍勢に勝つ方法を見通せ」
獣王はジロリと幼い巫女姫を睨みつける。すると巫女姫は首を横に振る。
「勇者との敵対はあらゆる破滅を招きます。少なくとも私の見た未来は全て破滅しました。あの人間は………魔王に匹敵する人知を超えた何かです」
「だが人間であることには変わりあるまい。魔法を使うと言うのであればその対策をすれば良い事。どのような敵なのかくらいは見えよう」
獣王は苛立ちを隠す事無く幼い巫女姫を睨みつける。だが巫女姫は首を横に振り顔を青ざめるばかりだった。
「勇者の魔法は全てを焼き尽くし、聖剣を振れば地形をも変えます。戦いになれば勝てる可能性はありません」
「使えぬガキよ。ふん、以前から俺はこの巫女という口先だけの役立たずなど使う事も好かんかったのだ。我ら獣王とその配下と同格のように扱うなど腹立たしいにもほどがある。中途半端に未来を見るからこそ我らの不安をあおるのだ。こんなものいない方がましだと言っているというのに」
獣王はフンと鼻を鳴らして口にする。
「ですが、獣王様。これまでは…」
「黙れ、臆病者が。今の獣王は私だと言う事を忘れるなよ。臆病者を生み出すような先読みなど要らぬ。この小娘は獣人領から放り出せ!」
獣王の言葉に三勇士の面々も流石に絶句する。
「じゅ、獣王様。それはさすがにやりすぎでは………。まだ子供ですし、役職を奪えば良いだけの事です。何より有史より我が獣人達を導いてきたフローラ様のご息女にそのような事をされては民心が離れます」
慌てるのは黒の猫姫である。獣王に賛同はしてもこの国は獣王が巫女姫に治めさせて貰っているという態である。
500年前の魔神大戦後、人間絶対主義的なカルロス王国に追い立てられて獣人達はこの大森林に逃げたという過去がある。そんな彼らを導いたのが巫女姫フローラだった。
フローラは獣人達を導き、獣王ミカエルを見出し、大森林を獣王国としてカルロス王国から獣人達を守ってきたのだ。
巫女姫フローラはいわば獣人達にとって神にも等しい存在であった。いや、この世界において女神教や聖光教といった女神信仰が存在するが、神は何も力を貸さず見守ってくれるものとされている。
だが、獣人達において、見守らず助けるように獣王国を立ち上げた巫女姫は神よりも信仰されているのだ。
今代の巫女姫はフローラの一人娘である。獣人達にとっては神ではなくても神の子ではある。根強い信仰を持っている部分があった。
「そしてこの領地に残して、どこかのバカがそれを利用して我らの足を引っ張る可能性が残るだろう。どこかのバカがな!」
「うっ」
黒の猫姫はそれ以上の反論はできなかった。
リンクスター一族こそがまさに従魔士家系として獣王を傀儡に使って獣王国の頂点に立っていたような家だからだ。
黒の猫姫自身は才能がなかった為に家から追い出され、リンクスター一族と関わりなく村で長閑に過ごしていた。リンクスター一族とは異なり腕力でのし上ってエミリオと婚姻をしている為、どうしても従魔士家系とは切っても切れない存在なのを自覚している。
「私でも抑えきれませんからな。仕方ないでしょう」
グレンは自分の息子たちが面倒なのをよく知っているし、グレンとて巫女姫信仰者の1人でもある。その面倒な息子たちが巫女姫に手を出すなど許す事ではなかったので獣王に賛同する。
「役職を奪い、足を引っ張るだけの存在に成り下がるならこの地から追い出す方がましという事だ!これは俺の決定だ!異論は認めぬ!」
「獣王陛下!そんな、子供に無体な命令を…」
エミリオは慌てて獣王をいさめようとする。
「黙れ、この臆病者が!我ら獣人族の誇りを賭けた決戦を前に、些事で我らを止める事は出来ぬと知れ!」
獣王アルトリウスを諫めようとするエミリオであったが、獣王の意思は固かった。こうして戦端は開かれる事となった。
***
「大丈夫ですか、ステラ様」
「もはや巫女姫でもないのです。お気になさらず」
獣人族領の端、樹海の西側に1人の少女が背中に荷物を背負って立っていた。狐の耳を持つ少女ステラであった。
そんな少女を獣人族の領地から安全な街道まで送り届けたのは三勇士の一人エミリオとその妻であるマーサであった。
エミリオは幼い頃に故郷が大量の魔獣に襲われ、たった一人で魔獣と戦い続けて、生き残ったという稀有な少年だった。
孤児となったエミリオを引き取って育てたのが当時の巫女姫でもあったフローラである。
巫女姫のいる場所は山奥で魔獣も多く、エミリオはそこで多くの魔獣を従魔にし、最強の軍勢を作り上げていた。
「ウチの祖父がすいません。まさか巫女姫様を追い出すなんて」
「いえ……もっともな事ですから」
ステラは狐耳を垂れ下げて背中に風呂敷で荷物を背負って俯く。
マーサは非常に心を痛めていた。
元々、マーサは従魔士の才能がなく、両親から粗雑に使われ、家の中に居場所はなかった。
祖父に家から追い出された時はいつか復讐をと考えたことさえあった。
やがてリンクスター家の突然変異と呼ばれ、戦場で猫姫と謳われ、三勇士候補とも呼ばれるようになり、エミリオと結婚したわけだが、言ってしまえば義理の妹みたいなものなのだ。
自身の憎き祖父がステラを追い出す事に加担した事は非常に腹を立てていた。
自分と同じかそれ以上に酷い事をされていたからだ。
「帝国までまだ長い距離がある。それまで人間が捕まえて奴隷にしようとする可能性もあるけど…」
エミリオは心配するように義妹を見る。
「大丈夫です。そういう予知はないので」
「だけどな」
エミリオはフローラに義理の息子として育てられた。
つまりは、今代の巫女姫ステラの義理の兄である。
エミリオからすれば、ステラは赤子の頃からよく知っている子供だ。幼い頃は病弱で、いつも目にかけて無ければいけない子だった。
幼い頃からステラの面倒をよくみたからこそ、国から追い出すのは非常に心苦しい事だった。
だからこそと追い出す役目を自分が志願したのであった。
これより西は獣人族領ではなく帝国への街道が伸びている道があり、少女は国外追放となる。
途中に経由する国はベルグスランドという獣人を奴隷とするような、獣王国にとって厳しい国である。
エミリオは心配そうにステラを見ているが、ステラは首を小さく横に振る。
「大丈夫です。それにお母さんには一人でどこでも生きて行けるように仕込まれてますし。それに、………こうなる可能性もあったのですし」
「ならば、何故あんなことを。アルトリウス様が代々獣王方より大事にされてきた巫女姫を嫌っているのは知っていた筈。それに戦争が起こっても貴女の命が脅かされる事態は起こらないでしょうし、どうして獣王様の意に背くような事を?」
マーサはステラを見下ろして訊ねる。
「事は獣人族だけの問題ではなくなるからです。私もいくつかの可能性ある未来を見ただけに過ぎません。ただ、王国と勇者は別の考えがあると思います。王国は我らを軽んじてますが、勇者はただ困っている人を助けたいだけで、そこに人間と獣人の差別もありません。我らが攻めて来なければ戦う事も嫌っているような未来を見ました」
「だから勇者につくべきと?」
エミリオの問いにステラは小さく頷く。
「それに、悪魔王を止めねばもっと大きな災厄が起こり、世界の破滅にもつながる未来が見えたからです。王国が嫌いだからと悪魔王につくのは危険です。結果的にもっと大きい破滅へと導きかねないと思ったのです。悪魔王側に勇者がつくのは危険です」
ステラはジッとエミリオを見る。
エミリオは故人以外で自身の秘密を知る唯一の存在となってしまったステラの言うことを理解する。
ステラは『エミリオ』が『悪魔王』と組むことが最も危険なんだと言っているのである。
「人間の勇者は悪魔王と同格だと君は予見した筈だが」
エミリオの問いにステラは首を縦に振る。
「勇者はただ人が良いだけ。我々と何も変わりありません。王国の平民は王国にとっての奴隷みたいなもの。恐らく獣人達の気持ちを理解できると思います。我らが助けを求めれば手を差し伸べてくれる未来が見えました。ですが前に立ちはだかれば………」
「そうか」
エミリオは少し考えこみ、ステラは心配そうにエミリオを見上げる。するとエミリオはステラの頭をワシャワシャと撫でる。
「守れなくて申し訳ない。だが、獣人族の未来は私がどうにか繋げて見せよう」
「!…………。お、お兄ちゃんも……決して無理はなさらないよう。今、考えた事をしては…」
「でも僕以外はどうかな?」
「……………」
少しだけハッとした様子を見せてだが慌てて首を横に振る。
「自分にも優しくしてあげて欲しいです。お兄ちゃんに何かあれば、ミーシャもマーサさんもとっても悲しむと思うから」
「ありがとう。その言葉が聞きたかった」
エミリオは優しい顔を綻ばして頷き、反対にステラは不安そうな顔で兄を見上げる。
ステラはこのやり取りを後悔する事になる。獣人族の未来が明るくなると共に、エミリオの未来がポッカリと消えてしまったからだ。
ステラが獣人族の領地を出て、また獣人族の軍は南部の王国領へと侵攻を開始する。戦線の主力は5000の獣王国軍ではない。
中央に位置する100のグリフォン、1000の強大な魔獣が進軍する。このすべての魔物を従魔として使役しているのがエミリオ、猫姫の夫となり猫王となった猫人族最強の戦士の力であった。
***
アルブム王国軍が目の前にしたのは恐るべき軍勢だった。
100のグリフォンに加え大地にはキメラやマンティコア、ケルベロスと言った冒険者の格付けでもA級以上に位置する魔獣が4桁も並んでおり、その奥には獣人の軍勢5000が立ち並ぶ。
対する王国軍は10万の総兵力を進ませていたが森林の細道を掻き分けてくるため縦に間延びしており未だ1万にも満たない軍勢しか戦場へと到着はしていない。
獣人族はいずれもが屈強な戦士であり数で劣るが単独戦力は人間の倍とも言われている。
互いにぶつかり合えば五分と五分であるが、勇者というアドバンテージがあって初めて勝利すると考えていた王国軍は、凶悪な魔物の集団にしり込みをしていた。
中央にいるのは腰に届く長い金髪に王国貴族らしい碧玉の如き美しい瞳を持つ金髪の聖女レイア。
ミスリルの輝きを持ち王国のシンボルでもある白い獅子の紋章が入った鎧を着こむブラウンの髪と瞳を持った筆頭騎士アルベルトを含む勇者パーティの2人であるが、彼らは顔を青ざめさせていた。
対する勇者ルークは平民で茶髪に茶色い瞳をしたどこにでもいるような青年である。
軽装ながらも聖剣を片手に持つ猛者で、敵を見ても顔色を変えずに少し考えている様子であった。
「ルーク、あんな軍勢を相手に戦うなんて……ここは引くべきです」
「そ、そうだぜ。一度こちらの軍をぶつけて主力である俺達は様子を見るべきだ」
レイアとアルベルトの意見にルークは彼らも下げた方が良いだろうと感じる。
ルークはどうすれば兵士達に被害を減らせるか考えを巡らせており、勝つために兵士を磨り潰すなんて少しも考えてなかった。
元より、この軍勢は膨大な金を使う。
ルークは戦争があるたびに苦しい思いをした村での過去を思い出す。
腹が減って苦しい思いを何度もした。食事を手に入れる為に何度も山に入って大きい獣や食べられる魔物を狩って厳しい日々を過ごした。他所の集落が滅び山賊になったと言う話もよく聞く事だ。
「皆は下がっている方が良い」
ルークは神眼で魔獣を見ると全ての魔獣が従魔として使役されている事が分かる。しかも使役者の名前が全て同じ『エミリオ』という名になっていた。
これほどの魔物を従えるなど正気の沙汰ではない。間違いなく獣王国の三勇士と呼ばれる存在だろう。
獣王国は弱肉強食、特に腕っぷしの強さが王者足りえる為、従魔士が獣王という事はあり得ない。
これほどの大軍勢を使役可能な従魔士が戦闘力に長けているなどあり得ないからだ。
「この魔物軍勢は一人の従魔士によって使役されている。それさえ払えば後は軍勢での勝利は可能だろう。とはいえ、あのマンティコアやケルベロスの群を相手では無駄に命を散らすだけだ。俺が1人で乗り込んで、従魔士を討ち倒すまで防衛に徹してほしい」
「お、おう。じゃ、じゃあ、俺達は指揮官として後ろに下がるか、うん」
アルベルトがそそくさと後ろに下がりそれにレイアも追従する。
「気をつけてね、ルーク。貴方に何かがあったら」
レイアはルークの腕を抱き、潤んだ瞳で彼を見上げる。
「う、うん。大丈夫だよ」
ルークはレイアに応え、たった一人で戦場を前にする。
***
互いに動き出す。
勇者は単身で戦場を走り出し、魔物の群もまた同時に動き出す。
「勇者が単身で飛び込んできました」
部下が走り込んで来て三勇士の2人に報告をする。
「はあっ?アホウか、勇者は」
「魔物の群に潰されて死なれては、折角こちらが叩きのめしてやろうと思っていたのが水の泡ではないか」
「これでは軟弱なエミリオなんぞに手柄を独り占めにされるではないか」
「さっさと我らが出た方がよさそうだな」
2人の三勇士は慌てたように前線の方へ向かうのだが、そこで見たものはあまりにも想定と異なり開いた口が塞がらないという状況だった。
勇者が聖剣を一振りするだけで目の前のマンティコアが真っ二つになるだけでなく、その余波が衝撃波となって大地を切り裂き天を破裂させ、空に舞うグリフォンさえも切り落とす。
魔物の群さえも足止めにならずに獣王国軍の軍勢を蹴散らしていく。
さらに魔物の群を突破すると次は獣人兵たちによる嵐のような矢の礫を盾一つで防御しながら、腰に剣を戻して拳一つで獣人族の兵士達をどかどかと吹き飛ばしていく。速度を緩めずエミリオのいる場所まで一直線に進んでいた。
「野郎!こっちの従魔部隊を狙って来てやがる!」
「当人は雑魚でもこっちの主要戦力だ!兵士共、死んでもエミリオを守れ!それまでに俺がそっちに行く!」
三獣士の二人、ウルフィードもオラシオも慌ててエミリオの守りに走る。
彼らは魔物を前衛に使い、自分の防衛に妻であり元三勇士の孫でもある猫姫を護衛に使うような軟弱なエミリオを好きでは無かった。
だが、彼の使役する従魔の戦闘力は圧倒的だ。
少なくとも、戦争においては軍事の半数以上の戦力を保持しているのが誰なのかよく分かっている。過去最高レベルの従魔士である事は確かだからだ。
グレンを超える従魔士が現れる等奇跡にも等しい。だからこそ彼らにとっては利を得る為にエミリオを優先しなければならない事を理解していた。
逆に言えばそういう存在だからこそ嫌いなのだが。
勇者は圧倒的な速度で進む。まるで軍勢が無いかのような速度で進み、勇者に襲い掛かる獣人達はまるで草木を掻き分ける程度の労力で遥か彼方へと吹き飛ばされて行く。
「これ以上は行かせぬわ、王国の勇者が!三勇士が1人、狼王ウルフィードが相手だ!」
ウルフィードは持ち前の速度で勇者の視界から消え鋭い爪で攻撃を仕掛ける。
「む、速いな」
勇者は反撃しようとするが、ウルフィードを捉えられない。逆にウルフィードは攻撃をするのだが、勇者へのダメージが入らない。
そこで、ウルフィードは勇者の急所でもある軽装鎧の隙間から見える腰への一撃を狙う。
だが、ウルフィードはそれが罠だと気付いていなかった。鋭い爪で肉を抉ろうとするが、強靭な筋肉がその爪を抑え込んで動きを止める。
「!?」
ウルフィードは引き抜こうとしても押し込もうとして爪が全く動かなかった事に驚愕する。
「蚊とか捕えられない時は、刺された後に力を入れると動けなくなるから、そこを叩くといいって祖父ちゃんが言ってたんだよ。さすが、昔から生きている人の知恵は役に立つね」
「ちょ、ま……俺は蚊と同じレベルかよ」
「よっこいしょ」
勇者は動けなくなったウルフィードを殴り飛ばすと3回転ほどきりもみして、仲間を巻き添えにして吹き飛んでいく。
遅れて現れるのは三勇士のもう一人、オラシオ・カッチェスターだった。獅子人族最強の戦士が勇者の前を塞ぐ
「ウルフィードを倒すとは中々やるようだな。だが、三勇士最強たるオラシオ・カッチェスターに勝てるとは思わぬ事だ!」
巨大な体躯をしたオラシオがルークの前を立ち塞がり、巨大な斧を高々と掲げ、ルークの脳天に向けて振り下ろされる。
だが、その巨大な斧はルークの手前で止まる。
「!?」
オラシオは何が起こったか理解できなかった。
ルークは人差し指と親指で摘まむように斧を抑えていた。
「ぐ、ぐぬぬぬぬ」
「ぬぬぬ。中々の力持ち。これが三勇士か。そこそこ手強い。いっせーの」
「ちょ、ま…………」
ルークは斧ごと放り投げるとオラシオは軍勢を巻き添えに10メートル位飛んでいくのだった。
あまりの強さに獣人達の足が止まる。恐怖が一気に伝染する。
自分達が束になっても勝てない三勇士の2人が何の足止めにならない強さに、誇り高い獣人達でさえも戦意を失うレベルだった。
勇者と戦えば破滅する、獣王国幹部達が巫女姫の預言が正しかった事を改めて思い知らされるのだった。
だが、その中で前へと歩いてくる存在がいた。
三勇士の一人エミリオだった。
「従魔士か」
ルークはエミリオを睨むのだが、エミリオは涼やかな顔で勇者を見る。魔物を扱いながらも後方にいた男をやっと前に引き摺り出したとルークは戦闘態勢に入ろうとする。
「エミリオ、前に出ては駄目よ」
「エミリオ様……だろう、猫姫殿。一応、僕が三勇士なんだから、戦場での序列は守って欲しいんだけど」
「!………で、でも、いえ、エミリオ様。前に出てはいけません。貴方は…」
「気付いているよ。彼、神眼を持ってるね。魔物を使役しているのが僕だと気付いている」
エミリオはルークを見てほほ笑む。
その余裕にルークは少し恐怖を抱く。これほどの戦闘力の差を見せつけられて笑える胆力が恐ろしかった。
エミリオを守る為に前に立つ前衛の黒い鎧の女がルークに向かって構える。
ルークは三勇士を守る相手を神眼で見ると、他の三勇士に匹敵する戦闘能力を有していた。
無論、ウルフィード程の速度もオラシオほどの力もないし、ルークにとって障害たりえない。
猫姫、拳聖という称号を持っているように、力や速度ではなく技術がありバランス型と見ていいだろう。
スピードのウルフィード、パワーのオラシオ、差し詰めテクニックのマーサと言った所か。
自分で確認して目の前の黒い鎧の戦士が女性であると気付く。
この技術というのもスキルのレベルを見れば分かるが、剣術を極めている自分からすればどんなに体術系スキルを極めていてもさほど困るレベルでは無かった。
「エミリオには指一本触れさせない」
「ぬ」
華麗な動きと鋭い攻撃にルークは一瞬だけ戸惑う。何発か攻撃を食らうが上手く捕まえられない。だが剣を振ろうとはしなかった。
猫姫が正面から来る瞬間、距離を詰めてシールドバッシュで抑え込み、そのまま地面にたたきつける。
「ガハッ!」
一撃で動けなくなる猫姫を見て、ルークはさらに前へと進む。
「も、もう、駄目だ!」
「まさか三勇士やマーサ様までこんなあっさり」
「化物だ!」
「撤退しろ!」
獣人達は怯えて逃走を始める。エミリオを残して獣人達は逃げだすのだった。もはや肉壁もない状況だが、それでもエミリオは余裕の笑みを湛えていた。
「逃げないの?」
「逃がしてくれるのかい?」
「無駄な殺生は好まない」
「それは甘いと思うけど。我ら獣人族は君達王国から10万の人質を奪うように悪魔王から言われている」
「それが不可能だと分かって尚も戦うのか?」
「悪魔王はそれが不可能なら我ら獣人から10万の人質を奪うと言っている。我が国の3分の1の人間だ。つまる所、我らは滅びるか君達を差し出すかの二択だったという訳だ。引ける筈がないだろう。それに………僕は決して魔王に同胞を生贄として捧げる事はしない」
「一緒に魔王を倒すという判断は出来ないかな?」
どこまでもお人好しな発言をする勇者の姿にエミリオは巫女姫の言葉に嘘は無かったのだと実感する。
「不可能だ!獣王様は一度下した判断を変えたりはしない。それに僕も従おう。そして、………他の連中と違い、僕は従魔士だ。僕の戦闘力を奪おうと、僕を殺さない限り僕の従魔は必ずや人間を襲い攫う!」
「っ………そっちがその覚悟なら仕方ない」
ルークは悲しげに己の腰にある剣に手をかける。殺さない限りこの獣王国の戦力が失われないと知ったからだ。
「そう簡単に負けるつもりはないぞ、勇者よ!」
エミリオが前に動く。ルークは後衛にいるエミリオは弱いものだと油断していた。ウルフィード並みの速度でルークとの距離を詰めて神速の蹴りを叩きこんでくる。
初めてまともなダメージを受けたルークは大きく吹き飛び地面に叩きつけられるが、慌てて体を起こす。
「まさか前衛も出来…」
神眼でステータスを見ようとするが既に目の前にいなかった。動きを捉えられないほどの速さで左右に動き自分に襲い掛かって来る。
「くっ」
盾で動きを止めようと守りに入るが、その瞬間後ろに回り込まれて鋼の爪で腹を貫かれる。
「がっ……」
「宝の持ち腐れだね、勇者。まさか僕の戦闘能力を把握してなかったのかい?僕と同格の同胞だろう?」
「くっ」
ルークは無詠唱の神聖魔法で慌てて体の傷を治しながらエミリオを見る。
先に王都を襲撃した鬼人王にも勝るとも劣らない強さを持った相手にルークは初めて危険を感じる。あれだけの魔物の軍勢を従えさせて、ここまで戦闘能力を持っているなんてありえない事だ。もっとも王国にとって脅威な存在が誰なのか初めて理解する。
確かにこの男が従っているのだから獣王も手強いのだろうし、鬼人王も違う意味で手強い相手だったが、魔獣を従わせると言う一点を考えれば、彼が本気で人間を蹂躙しようと思えば非常に簡単な事だった。
「化物め」
「君だけには言われたくない言葉だが……冥途の土産にもらっておくよ」
ルークはエミリオのステータスを見て驚愕する。
名前:エミリオ
性別:男
種族:猫人族
職業:従魔士
LV:125
HP:1660/1660
MP:246/246
STR:1060
AGI:990
DEF:220
INT:258
MAG:255
称号:真の勇者 従魔支配者 猫王
スキル:気配消去LV5 覇気LV3 勇気 超撃LV3 腕力強化LV3 跳躍LV7 忍び足LV8 高速移動LV10 流水LV3 脚力強化LV3 計算LV4 分析LV2 念話LV10 暗視 鷹の目 神眼 神託 強嗅覚 気配感知LV8 罠感知LV5 索敵LV5 野生の勘 水泳LV1 書記LV3 家事LV2 裁縫LV1 料理LV2 解体LV1 飼育LV8 騎獣LV8 従魔LV9 疲労耐性LV6 精神耐性LV10 衝撃耐性LV1 即死耐性LV10 拳闘術LV8 格闘術LV8 柔術LV8 爪術LV5
自分と同等のステータスを有しているだけではない。スキルに自分と同じ勇者に与えられるモノが存在し、そして称号に間違いなく刻まれていたからだ。『真の勇者』という己と同じ称号を。
ルークはエミリオの攻撃を防御しながらも
「我らと共に悪魔王を倒す気にはならないのか!?君は俺と同じ……」
「誰にも何処にも正義はある。僕はこの獣王国の正義に従うのみだ!君とどこが違う!」
「くっ」
王国の正義に従う勇者と獣王国の正義に従う勇者。
彼の言うようにまったくもって同じことをしている。鏡合わせのように。
「王国の軍勢が獣王国を蹂躙すれば、我らは奴隷に落とされる!魔王に蹂躙されれば我らは半数の同胞を生贄に捧げなければならない!」
「俺とアンタが手を組めば悪魔王だって…」
「その程度で悪魔王に勝てると思うな!もしもこの先を進もうと言うなら僕を倒してから行け!」
「くそっ!」
互いに譲らない戦闘。
ルークは聖剣を振るい、素手のエミリオと互角に戦う。恐ろしく強い目の前に相手にルークは歯を食いしばる。殺さなければ殺される、その位に能力が拮抗していた。
いや、むしろルークの方が押されていた。
それでも、互角の戦いは優に1時間以上続く。エミリオは決定打を持っていなかった。
だが、ルークは聖剣を持っていた。
徐々にだが、堪えていたルークだが、目の前の強者との戦闘経験によって優勢になっていく。
拮抗した戦いが崩れだすと戦いの終りへ一気にへと差し掛かる。エミリオとルーク、それぞれが致命傷を狙った攻撃を狙った為だ。
「くそおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
互いの攻撃が交差する。
ルークは鎧を引き裂かれ鮮血を体から散らせるが、エミリオは肩から腰まで袈裟斬りにされて地面に倒れる。
「じゅ……じゅう…じん……の……みらい……を………どう……か………たす…け……」
死に際にエミリオはまるで自分の重荷をルークに渡すかのように口にして、そのまま息を引き取る。
「分かった」
ルークは頷いて、そして倒れ伏すエミリオの姿を見る。自分のやってしまった事に吐き気を催すが必死にそれを堪える。
ルークにとって人を直接殺したのはこれが初めてだった。
何度となく戦闘をしていたが、魔物や獣はともかく獣人や鬼人らとの戦争では殺さないように素手で吹き飛ばし昏倒するだけに押しとどめていた。
全力で戦ったのはかつて王都を襲って来た鬼人王だけであるが、その時も鬼人王は途中で去ったので倒してはいない。
聖剣を使うに値する相手が鬼人王以外では、目の前のエミリオが初めてだった。故に、勝利という形で決着がついてしまえばどうしたって切り殺す結末になってしまう。
分かっていた事だ。だが、まさか始めて殺した相手が、自分と同じ境遇の戦士だったなんて皮肉にもほどがある。彼のステータスはそれを示すだけのものが存在した。
「え、……エミリオ………。う、うあああああああああああああああああああああああああああっ」
倒れていた黒い鎧を着た猫姫が怒りの咆哮を上げて形振り構わずルークへと襲い掛かる。
だが、ルークはその攻撃を受け止め、拳を鎧に叩きつけ相手を昏倒させる。
「これ以上、無駄に命を散らさせないで欲しい」
魔物たちの攻勢がなくなれば、王国を攻め込む手段も失われる。後は戦いを最後までやろうとする獣王さえ倒せば獣人達はこれ以上戦う理由がなくなるのだ。
ルークは自分と同じ『真の勇者』の称号を持つエミリオの遺志を汲み取り、先へ進むことを決意する。
魔王を倒し遍く全ての民に平穏を与える為に。
そして、『真の勇者』の称号とは何なのかという事をその頃から考える事になる。真の勇者は神に選ばれし未来の英雄になる存在の称号ではないと感じたのはこの時が初めてだったからだ。