1章12話 ヒヨコは過去の自分にがっかりする
「ぴよよっぴよよっぴっよっよ~」
「ピヨヨッピヨヨッピッヨッヨ~」
難民が北へ北へと歩く中、ミーシャはヒヨコ語(何を喋っているか分からない)で歌いながら、俺の背中に乗って進む。
暗い表情をした難民たちが何故かほっこりしたようにこちらを見るのは何故だろう?
病み上がりのマーサも村人に助けられながら進む。ちなみに荷物は俺の背中にごっそり乗っていたりする。意外とヒヨコの体は軽いので、重量物は堪えるのだが、訓練だと自分に言い聞かせて、俺はピヨピヨ言いながら必死に歩く。
背中が痛くならないよう上手い位置取りに荷物を置き、ミーシャが暴れても問題ないようバランスを取りつつ進む。
だがピヨピヨのヒヨコスタイルだと、ヒヨコ的に必死に顔をゆがめて歩いているのだが、どうも愛らしく見えるらしい。めっちゃ頑張ってるのに誰も理解してくれない。
白鳥は優雅に水の上を浮かんでいるように見せて、水の中で必死に足で水を掻いていると言うが、俺の場合、歩くのも必死な上に、皆が必死さを目撃しているにも関わらず、その必死さが全く伝わらない。
白鳥は皆に分かって貰えているのにヒヨコは分かってもらえないってどういう事?
『ピヨは運送LV1のスキルを獲得した』
頑張りが認められたのか、女神様からの神託が降りてきた。そうか、運送が得意なヒヨコになってしまったのか、俺は。
ちなみに俺はピヨピヨ言っているのは別にミーシャに合わせている訳ではない。合わせているのではなく、バテバテで息切れするとピヨピヨ言ってしまうのだ。まさにピヨッている状況である。
そんな弱っている俺にどこからともなく攻撃が加わった。
ズガッといきなり背後から鋭い嘴の一撃を食らってピヨッと前に転がる。ミーシャまで転がってしまうと思って慌てるが、いつの間にか背中に乗っている重さが失われ、俺だけゴロゴロ2回転。荷物も地面に落ちてしまう。
とはいえ、慌ててミーシャが巻き込まれなかったか周りを見渡す。荷物は落ちても大丈夫だが人間は落ちると大丈夫じゃない。
すると、俺の背後にはいつの間にかグリフォンがいて、ミーシャの服の首根っこを嘴で咥えていた。そしてグリフォンは自分の背中にミーシャを乗せる。
「グリちゃん、お仕事終わったのー?」
「グルー」
ミーシャに撫でられると、グリフォンは目を細めて甘えるような声を上げる。
だが、その後でグリフォンはドヤ顔で俺を見下す。しかも微妙に鼻で笑うように。
グリフォンの癖にミーシャの前で猫かぶってやがる!生意気な!
まさか、こいつ、ミーシャが俺ばかり構うから嫉妬して奪い返しただけではないか?いや、あのドヤ顔は間違いない。そこはかとなくバカにしたように見ている。
喧嘩を売っているな?
この野郎、やってやろうじゃないか。別にミーシャを奪い返したいとかそういうのは無いけど、腹が立った。
ピヨッと俺は嘴でグリフォンに襲い掛かる。だが、グリフォンは俺の体より大きな右前脚で撫でるように払うだけで俺はピヨコロリと転がって行く。
「ピヨヨ、ピヨピヨヨピヨピヨピヨヨピヨピヨピヨヨ(己、いつまでも自分が強者だと思うなよ)」
俺は嘴を食いしばり、いつか報復する事を心に決める。するとさらにグリフォンは鼻で笑い、同時に鼻息を吹かすと、嘲笑の鼻息一つで再びピヨコロリと転がされる。
悔しいがここは我慢である。このグリ公はいつか必ず俺の方が上なのだと分からせてやるのだ。いつか、きっと、そのうち、なんとなく、たぶん、おそらく……
「ピヨヨピヨピヨピヨピヨヨ~!(これで勝ったと思うなよ~っ!)」
俺は捨て台詞を吐いてから、荷物を右足でひっかけて背中に背負ってから、ピヨピヨと先に進む。
「グルルー♪」
背後から勝者の雄たけびっぽい何かが聞こえたが、所詮は獣よ。決してこれは負けたのではないのだ。戦略的撤退という奴だ。うん。
グリフォンは気持ちよさそうにズシズシ歩く。偶に俺をわざと踏みつけて行くが、無視である。戦っても勝てないから戦わないのではない。
子供の悪戯に目くじらを立てるのはヒヨコの矜持が許さないのだ。
多分そうなのだ。きっとそうなのだ。
くう。
べ、別に悔しくなんて無いんだからね。
いかん、心の中で弁解すればするだけ、本当に悔しく聞こえてしまいそうだ。
運送物が背中からいなくなって楽になったのに。
***
俺達は北へと向かう。次々と北へ向かう獣人達と合流していき巨大な列が出来ていく。俺の目の前にはグリフォンの背に乗ったミーシャと一生懸命歩いているマーサがいた。
俺はマーサの前に背を向けて乗るかと目で訴えてみる。
「大丈夫よ、ピヨちゃん。小母さん、元気だから」
「ピヨピヨ~?」
「心配そうにしないの。これでも三勇士の妻だったんだから」
だが、強そうに見えないのはなぜだろう?
確かに病弱な姿しか見ていないが、
仮にも三勇士の妻だったのであれば家を守るだけの力があってもおかしくはない。というよりもミーシャのやんちゃレベルからしてそういう家なのかもしれない。
そういえば村長はどこに行ったのだろうか?
あの爺さんも一緒に歩いているのだろうか?グリフォンの飼い主がいつの間にか消えていた。そのせいで俺は今、酷い目に遭っているというのに。
「前の方が夜営の準備で止まったようだ。我々も夜営に入ろう」
集落の警備をしていた若い男が声を掛け、集落にいた一団は夜営準備に入る。
俺も野営と聞いて獲物を取りに行く。ピヨピヨと皆に手羽先を振って一時の別れをしてから森の中に入る。
だが、おかしい。森は非常に生物の気配が無い。食える獲物がどこにも見当たらなかった。どういう事だろうか?
俺が必死に獲物を探していると、空をバッサバッサと巨大な影が過ぎる。
「ピヨッ!?」
通常、強大な魔物の近くには弱い魔物は近づかない。例えばミーシャ達の集落の周りは非常に魔物が少ない土地だった。
何故か?
何で俺は獲物を見つけられないのか?
今、ここで何で獲物を見つけられないのか?
それはあの集落にグリフォンがいるからだ。
あん畜生、お前のせいで獲物がいなくなっていたのか!
俺は恨みがましく空を見上げるが、その巨大な影はあっという間に空を駆けるように消えるのだった。恐らく、自分の気配で魔物が逃げたそのさらに奥まで追いかけて獲物を捕らえに行くのだろう。
魔物にとって天災のような存在である。
バジリスク以上に危険な魔物、ドラゴンとさえも互角に戦う魔物なのだから当然と言えば当然である。ヒヨコなんて簡単に料理されてしまうだろう。
俺は獲物を探しても見つからない事が分かったので肩を落としてピヨピヨトボトボと戻る。グリフォンなんて大嫌いだ。
俺が戻ると既にグリフォンが獲物を取って来て皆に振る舞っていた。
「ピヨ」
「あれ、ピヨ助、獲物を取れなかったのか?」
「仕方ないな。グリフォンが獲物を取って来たから俺達の分を分けてやろう」
俺が戻ると男達が温かく出迎えてくれる。
いつの間にか凄い人数が薪を囲むように集まっている。集落の獣人達は100人にも満たない数だったと思うが、あちこちで野営している人々がおり、その数はざっと見渡しても数千人以上はいそうだ。
周りを見渡すように警備をしている男達もおり、大規模な避難民集団になっているのが分かる。
「ピヨちゃん、獲物取れなかったの?仕方ないなぁ」
ミーシャに憐れまれる。
俺は悔しさを露わにして見せているつもりなのだが、ヒヨコなのであまり悔しそうに見えないらしい。
何故か俺を見る人々の目が愛玩動物を見るような目なのが悲しい。
「ピヨッピヨッピヨッ」
俺は必至になってグリフォンのせいで獲物が取れなかったことをアピールするが、何を言っているか全然わからないらしい。
誰も俺の苦労を理解してくれず、若干ささくれだった気持ちで貰った肉を啄むのだった。
おのれ、グリ公め。別に施してもらったなんて思わないからな。だってお前が魔物をここから遠ざけたから獲物が取れないんだし。俺の狩りが下手なんじゃなくてお前が悪いんだし。
とはいえ、生肉はあまりおいしく感じない。
俺は火の息を吐いて、肉を焼く。ジュウジュウと煙が舞い、良い感じに肉が焼ける。俺は焼けた肉を啄みウマウマと食事を堪能する。
この肉はグレートボアあたりだろうか。巨大な豚っぽいシルエットなので恐らくはそうだろう。確かにグレートボアは魔物でも食べられる範疇だ。
ちなみにバジリスクの肉は食えないので食ってはいけない。あれは危険だ。
そういえばマーサさんはどうして石化毒なんて厄介な病気になったのだろうか?
あれは俗にいうバジリスクやコカトリスなんかの魔眼を食らったりすると石化毒という状態異常だった筈。
自然形態からして、一般民間人がバジリスクと出会う事はあり得ないのだが。
人里ができる。
→獣は人里に近づかない。
→魔物は獣の多くいる人里から遠い場所に住まう。
→強い魔物は魔物を狩れる人里から遠い場所に住まう。
つまり人里やグリフォンの住む場所に魔物は余り近寄らないのである。
ピヨピヨと首を傾げていると周りの視線が何故かこちらに向いていた。
正確にはヒヨコではなくヒヨコの焼いた美味しそうな肉である。もっと薄く切っておかないと中まで焼けないのだが、そこは炎扱いに長けたこの俺の手腕である。
いや、今の俺には手も腕も無いけどね。
敢えて言うなら手羽先である。
中まで通る炎を使い上手く焼いているので大きい肉を啄むことが出来るのだ。生でも食べられるけど焼いた方が肉汁があふれて美味いのだ。
するとグリフォンがドスドスと歩いて来て俺の肉を取り上げてしまう。
「ピヨッ!?」
「グルルルルル~」
何か、今、俺の物は俺の物、お前の物も俺の物と言われたような気がする。おのれ、グリ公め、俺の肉を………もう、こいつ、大嫌いだ。
俺がショボンとしているとマーサさんが大きい肉を持って来てくれる。
「ピヨちゃん、お肉取られたから持って来てあげたわよ」
「ピヨヨッ」
マーサさんは女神か。いや、女神は他にいたっけ。
あの駄女神。あれと一緒にしてはマーサさんに失礼だな。うん。
俺が喜んで肉を啄んでいると数人の自警団らしき男達がやって来る。その中にはミーシャを探しに来た犬のおまわりさんもいた。
「マーサさん、無理しちゃ駄目ですよ」
「まだ病み上がりなんだから」
「子供達みたいに従魔の背に乗せてもらった方が良い」
と心配そうにする男達。
「大丈夫よ。病気自体は治っているのだし。リハビリには丁度いいわ」
「ですが……」
「それに、一番大事にすべきはミーシャだしね。私は祖父のように従魔の才能が無かった。私はあの子の為なら何だってするわ」
「マーサ様」
「様はやめてと言ったでしょうに。私はもう猫人族の姫では無いのだから」
ふーむ、なるほどマーサさんは偉い人だったのかー。……って、猫人族の姫様だったの!?
まじかー。やんちゃなミーシャの親にしては上品だと思ったけど。
そう言えば称号に猫姫ってあったな。
「エミリオは戦う前に全てを叔父の家に引き継がせましたし、今はただのマーサですから。それにミーシャはエミリオに一番似てますし」
「確かに何故か魔物を懐かせるし、あのグリフォンを育てたのもミーシャだったな」
「エミリオの従魔なのに、エミリオが死んでも何故かこの村に戻って来て普通にミーシャと遊んでたしなぁ」
「でも、ミーシャが次の三勇士とかないだろー」
「確かに」
男達は苦笑するように顔を引き攣らせる。
確かに三勇士は凄い連中だった。ぶっちゃけ、1対1なら王国の騎士では勝てないだろう。一騎当千の猛者、それが三勇士であった。
俺がいなければ獣人族の領地を突破する事は不可能だったと言える。
欲に駆られて勝てもしない相手に喧嘩を売ってしまったのだろうか?女神様はかなり王国を危険視していたようだが。
正直に言えば彼ら王国が獣王国に勝てるとはこれっぽちも思えなかったのだ。
「ですが、巫女姫様の仰っていた事は本当でした。獣人族の誇りで我らは大きい痛みを負う事になっています。巫女姫様がいくら子供であったとしても、従うべきだったと後悔ばかりしています」
「で、ですが……」
「獣王様は我らの誇りを理解しておられる。巫女姫様の言葉と言えど従えません」
「我らを蝙蝠と一緒にされる訳にはいかない」
マーサの後悔の言葉に男達が反論する。
「だからとて、未だ幼子であった巫女姫様を領地から追放すべきでは無かったと思います。エミリオは間違ってなかった。こうして私が生きながらえているのが何よりも証拠だったと思います」
「………」
男達は俯いてしまう。
俺の冒険の裏で、獣人達は獣人達で色々あったのだなぁと感じる。まあ、色々あったから戦争になったんだけど。
そう、俺は戦争で勝者側だった。
戦争ではエミリオは、自分こそが獣王軍最大の戦力であり100のグリフォンを使役する従魔士だと言って俺の前に立ち塞がった。自分を倒せなければ王国は早晩に滅びるだろうと嗤い戦った。
従魔士の危険性は当人の強さよりも魔物の強さにあり、獣人の軍勢よりも魔物の群、しかも100のグリフォンなんかに襲われたら彼の言葉通り王国は滅びただろう。
普通に戦争をすれば数の暴力で王国軍の方が勝機はあっただろうが。勇者がおらず専守防衛に徹すればの話だ。攻め込めば王国は絶対に勝てない。
だからこそ、王国と獣王国の関係は400年以上の歴史において変化が無かったのだと言える。
陰で魔物を操り着々とアルブム王国を侵略していれば勝てたのに、わざわざ勇者の前に姿をさらして殺し合ったエミリオという男の姿に獣人族のいくさ人としての矜持を見たのである。
そして、だからこそ、従魔士は殺さねばならなかった。
彼を殺した途端、従っていた魔物たちは散って行ったのだ。少なくとも間違った選択を取っては無かったと思う。
それを含めて、彼は手強い敵だった。魔獣を飼い慣らしているだけの男ならば怖くは無かった。だが、本人は使役する魔獣全てと戦っても勝てるだけの戦闘力があったから厄介だった。
獣王にも匹敵する戦闘力を持っていた従魔士。個の戦闘力だけなら獣王が上だが、従魔を含めた戦闘ならば間違いなくエミリオの方が怖かっただろう。
獣人族の弱点は真っ直ぐ過ぎた事。
不死王のように搦め手を使われてきたら俺は勝てなかったと思う。仲間を守りながらあれほどの猛者と対峙できるほどの技量を当時は持たなかった。
少なくとも聖剣が無ければ勝てる相手ではなかった。
だが、彼らは愚かにも俺だけを狙って来た。
そして最初に口にしていた。無理矢理戦争をさせられているのだと。だから無益な殺生をしないで欲しいと。
実際、獣王を倒した時にハッキリ聞いたのは、悪魔王が無数の命を生贄に捧げるよう口にし、どの種族でも構わないと脅していたらしい。
そこで南部の人間の国を狙ったそうだ。
獣人としては魔王の軍門に下っておきながら、やっぱり人間側に寝返るなんていう裏切り者みたいな真似は出来なかったらしい。不器用な連中である。
だからこそ、俺は戦後、獣人族への不干渉を王国に訴えたのだ。
「確かに。巫女姫様に従い勇者と手を結んで悪魔王に反旗を翻すべきだと訴えたのはエミリオ様だった」
「なのに、人間との戦を推し進めた俺達は生きながらえて、最後まで勇者との友好を求めたエミリオは殺された」
「くそっ、勇者め」
男達は悔しげに拳を握る。
とは言っても、結局はエミリオが敵対するならば、俺は彼を殺す以外に手立てはなかったのだ。実際、他の三勇士は殺していない。獣王国の戦士達もほとんど軽く払っただけで直接的には殺していない。
だが従魔士は別だ。複数のグリフォンを使役するような存在が敵というだけで大問題である。不死王も多くの不死の軍勢を使う輩であった為に非常に厄介だった。
だが、脅威度はグリフォン100匹の方が遥かに上だった。
獣人達は個々の実力で上下関係を決めるから彼は獣王では無かったが、脅威度は獣王よりも上だっただろう。でなければ他の三勇士同様ボコボコにしてプライドをへし折るだけで良かったのだ。
「巫女姫様は、自分を国から追い出そうとする私にこう言ったわ。無駄に命を散らすような真似はしないでくれと。そして………エミリオを殺した勇者に立ち向かおうとした私に人間の勇者は同じことを口にした。無駄に命を散らさせないで欲しいと。…………結局、勇者は言葉通り、万の獣王軍をたった一人で相手取り、立ち向かって来た獣人を倒してきたけど、彼と戦った獣人の死者は10人にも満たなかった。勇者を恨む前に、私達は自分達が判断を誤った事を反省しなければならないのよ」
「勇者を恨んではいないのですか?」
「恨んでいないというのは嘘になるかもしれないけれど、恨んではいけない相手だとは思うわ。あの戦争は私たちから始めた事だし、勇者は出来るだけ被害が出ないように戦っていた。私は今でも獣王様に進言したエミリオの言葉が忘れられない。誇りの為に大事な人の命を散らせても良いのか、と。その時、私は誇りの為に生きるこそ獣人としての本懐だと獣王様の側についた。夫を失い、自分もまた死ぬ間際になって心から思ったわ。誇りを捨てでも大事な物を守るべきだったと。遺されるのも、遺して逝くのも、どちらも辛いわ」
「……」
男達が俯いてしまう。
というか、マーサさん、戦場にいたんだ。つか、俺、そんな事言ったっけ?
ピヨピヨピヨ、ピヨヨヨーン。
全く思い出せないのだが。
どうもこのヒヨコヘッドは性能が悪くて、記憶力が怪しいのだ。
飛べないのにうっかり崖から飛んでしまったり、バジリスクをぱくついたり、今思えば間違ってもやらない事を平然とやらかしている。
当時の事を忘れてしまっていても仕方ない。
ま、まあ、3年前の事だしな!
「とはいえ、私も衰えた身ですし、今度は皆さんでバジリスクを退治してくださいね」
「いやいやいやいや、無理っす!」
「つか、人の身でバジリスクを倒すとか獣王様と三勇士以外じゃマーサさんだけですからね?」
マーサさんが悲しい雰囲気を打ち破るように話の方向転換をする。
すると男達は慌てたように顔を引き攣らせて首が千切れるかと思う程ブンブンと横に振る。
【驚愕】マーサさん、バジリスクを退治していた件
というか、石化毒はバジリスクを倒した時に呪われたって事?そういえばステータスは状態異常の所しか見てなかったけど、今のステータスってどうなってんだ?
名前:マーサ
年齢:30歳
性別:女
種族:猫人族
職業:武闘家
LV:50
HP:740/740
MP:171/171
STR:470
AGI:445
DEF:90
INT:148
MAG:55
称号:猫姫 拳聖
スキル:気配消去LV5 恐怖LV8 殺気LV5 覇気LV3 極撃LV9 腕力強化LV1 跳躍LV5 縮地法LV1 流水LV1 防御LV3 計算LV2 高速思考LV2 拡声 念話LV1 暗視 強嗅覚 気配感知LV3 索敵LV2 野生の勘 水泳LV3 書記LV1 家事LV1 料理LV1 解体LV2 舞踊LV3 騎獣LV2 挑発LV5 疲労耐性LV5 精神耐性LV3 衝撃耐性LV1 毒耐性LV2 病耐性LV1 呪耐性LV2 短剣術V1 投擲術LV4 拳闘術LV10 格闘術LV8 柔術L4 爪術LV5
っていうか、強っ!
三勇士の連中とステータスが大差ないんですけど!そりゃ、バジリスクを討伐出来ますわ。しかも石化毒を受けて治ったから色んな耐性が高い。
というか、称号の猫姫と拳聖という文言を見て思い出した。
マーサさんって従魔士のエミリオを守っていた黒い全身鎧を着ていた女拳士だ。
前衛が守り、魔物を使役するスタイルだから、従魔士は弱いと思って近づいたら従魔士がもっと強かったという驚きの相手だった。
獣王とエミリオはほとんど戦闘力が同格だったし。年齢からしてあと数年もしてたら名実ともに獣王だったんじゃないかっていう強さだった。
………というよりもだ。
今、気づいたけど、当時もこの神眼スキルがあったのに、相手の能力を見誤って痛い目に遭っていたような。
人間の頃から俺ってあんまりスキルを利用せずにうっかりし過ぎてね?
自分の行動にがっかりするヒヨコだった。