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最凶ヒヨコ伝説 ~裏切られた勇者はヒヨコに生まれ変わったので鳥生を謳歌します~  作者:
第1部6章 帝国東部領シュバルツシュタット ヒヨコ無双
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6章4話 ヒヨコの別れ

 この日は最後の健康ダンスの日。


「ピヨッ」

「えーと、お集まりになった皆さん。この商店街で朝の元気体操『フルシュドルフダンス』は続きますが、トニトルテが卒業する事になりました。また、この度の出征でヒヨコは戦場に旅立ちます」

「ピヨヨッ!?(え、ヒヨコも行くのか?ヒヨコはお留守番じゃないのか!?)」

「寂しくはなりますが、皆さん、盛大な拍手で見送ってあげてください」

 ワッと拍手をする子供達。


 待ってくれ、ヒヨコはまだ行くとは言っていないのだが。

 ヒヨコまで出かける感じの雰囲気になっており、否定しているのだが、誰もヒヨコの言葉が分からない。


 子供達と握手会のようにトルテは並ぶ子供達と握手をしていく。

「トルテちゃん、またね」

「きゅうきゅう(まあ、100年後位には会いに行くのよね)」

「向こうに行っても頑張れよ」

「きゅうきゅう(お前が頑張れなのよね)」

「早く大きくなれよ」

「きゅうきゅう(来年にはお前を踏み潰せるのよね)」

「トルテちゃんがいなくなるのは寂しいよぉ」

「きゅうきゅう(悪いけど今後はヒヨコで我慢するのよね)」


 握手する子供達は一言かけて別れていく。

 存外にトルテは酷い返しをしているのだが、言葉が通じないから問題は無さそうだ。


 いや、トルテの言葉は聞こえなくても良いから、ヒヨコの言葉は聞こえてくれよ!

 そうだ、念話スキルだ!このスキル、そういえばこの半年くらいこれっぽちも成長していないぞ。分かってほしい人には分かってもらえるから、特に不便してなかったせいで全然気にならなかった!家事スキルや大工スキルが増えても何の役にも立たないのに!

 これは一体どういう事だ!?


「まだ、ヒヨコは出掛けるのを愚痴ってるの?」

 ステちゃんが呆れた様子でヒヨコを見る。

「ピヨピヨ(ヒヨコが折角家を買ったというのに家をフル活用できないのは寂しいのだ)」

「さらに人もいなくなるしね」

「ピヨピヨ(人というよりドラゴンだがな)」

「しばしとはいえ家を使わないと痛むともいうし、どうしたものかなぁ。前にヒューゲル様が来た時に聞いておけばよかった。空き家の管理方法」

「ピヨピヨ(ステちゃん、ヒヨコが残るってばよ)」

「むしろ女神様からご指名を受けたのはヒヨコでしょ」

 ステちゃんはジト目でヒヨコを睨む。むう、そう言われると弱いのだ。

「ピヨッ(ちぃ、あの腐れ駄女神め。ヒヨコになんか恨みでもあるのか?)」

「念話で器用に舌打ちしない」


※腐れ駄女神ではありませんよ。天罰を落とさないからと調子に乗っていませんか?


 子供達は学校に行くために商店街を出て行く。

 やっと解放されたトルテはヒヨコ達の方へと戻る。

「きゅうきゅう(まったく、人間はたかが別れくらいで大げさなのよね。)」

「あら、私的にはトニトルテが寂しいとガン泣きするのを楽しみにしていたのに」

「きゅう~きゅう~(ステラはアタシを侮りすぎなのよね。たかがステラと別れるのに泣いたりしないのよね)」

「まあ、私もトニトルテも長寿だからいつかは会えるだろうしね」

 ステラは苦笑しながらトルテの頭を撫でる。

「ピヨピヨ(ヒヨコは頭が軽くなるので喜んでいたのであった!)」

「きゅうきゅう(アタシの重みが懐かしくなる時が来るのよね)」

 日頃ヒヨコの頭に乗っていたのでいい迷惑である。

「ピヨピヨ(トルテのせいでヒヨコは首に筋肉が付きすぎて首が太くて頭と首の区別がつかなくなったぞ。どうしてくれる)」

「いや、元々ヒヨコは首と頭がよく分からない」

 ステちゃんは酷い言い方で否定する。ヒヨコはそんなデブではないぞ?

「きゅうきゅう(羽毛を刈れば分かると思うのよね)」

「ピヨッ!(ヒヨコを辱めるのは禁止だ!)」

 こんな和やかな日々も終わりを告げようとしているようだった。




***




 翌日には獣王国の皆が帰途に就くために帝国の入り口に集まっていた。

「ステちゃん、ピヨちゃん、トルテちゃん、グラクエス君、またね」

「きゅうきゅう(また会えたら良いのよね)」

『僕はその内飛んで遊びに行くのだ。だからさっさと悪神とか言うのをやっつけて欲しいのだ』

「多分、皆が頑張ると思うから大丈夫」

「ピヨピヨ?(ヒヨコがいなくて大丈夫か?)」

「大丈夫だよ」

 ミーシャは胸を張ってふふんと笑う。

「なー」

 シロがシュタッとミーシャの肩の上に乗って近づくヒヨコに爪先を振る。ヒヨコも慣れたものでシロの攻撃を咄嗟に避ける。だがシロの爪が衝撃波となって飛んできてヒヨコの頭をガリッと引き裂く。

「ピヨヨーッ!」

 ヒヨコは痛みに地面に転がって悶絶する。

 LV5になると衝撃波によって剣や斧から振ると衝撃波が繰り出されるという。いつの間にかシロは爪術LV5になっていた!?

 ごろごろ転がるヒヨコに

「きゅうきゅう(そいつはいつでもどこでもヒヨコを狙っているのよね。いい加減学ぶべきなのよね)」

 トルテは達観したようなことを言う。


「ピヨピヨ(こんなに善良なヒヨコなのに)」

『こんなに善良と程遠いヒヨコは初めて見たのだ』

「ピヨヨッ!?(何を言う、グラキエス君。)」

『僕の知ってるヒヨコはもっと小さくてピヨピヨしていて、純真無垢で可愛いのだ。ピヨちゃんみたいに悪巧みもしないのだ』

「ピヨピヨ(い、言われてみれば……ヒヨコはキングサイズだった!?)」

 ヒヨコは自分が一般的なヒヨコと比べると善良ではないと気付かされてしまうのだった。何故なら一般的なヒヨコは人畜無害度が相当である。むしろ大人になると家畜になるのだ。

 畜生め!


 すると腹黒公爵さんとイケメンオークさん、行き遅れ神官さん、そして種馬皇子の4人も獣王国の獣に乗って移動しようとしていた。

「ピヨッ?ピヨピヨ(おや、皆様はどうしたのか?)」

「俺達は獣王国側の守りの手伝いだ。」

「ピヨピヨ(獣王国には別に必要は無さそうな援軍だと思うが)」

「獣王国は強い戦士こそ多いが魔法の使い手がいないからな。魔物の中には物理攻撃が利かない奴もいる」

「ピヨピヨ(なるほど。つまり種馬皇子さんが獣王国にまでご迷惑をおかけすると)」

「さすがに自重するぞ。兄上に怒られる」

 どうも兄弟の中ではあの山賊皇帝さんはかなり人望があるようだ。ヒヨコ的には曲者としてしか認識はないのだが。

「ピヨピヨ(だが、ヒヨコは山賊皇帝さんにただ働きさせられた事は決して忘れない。そう、ヒヨコは恨みを決して忘れない。記憶力が良いだろう?)」

 ヒヨコの卓越したインテリジェンスの賜物だな。え?復讐者の称号はどこから来てるのかって?ヒヨコは過去を振り返らない(ヒヨコ)なので知らないのだ。


「一般人と同じINTだと思うんだけど」

『ピヨちゃんのINTはヒヨコの中では卓越していると思うのだ。ヒヨコにしては凄いのだ。ヒヨコなのにおかしいのだ』

「ピヨヨーッ(そんな馬鹿な!ヒヨコは凡百だったというのか!?)」

「いや、ヒヨコは昔からバカだったから。やっと人並みになっただけだから」

「ピヨピヨ(くう、ヒヨコは悲しい)」

「ピヨちゃん、元気出して。大丈夫だよ、バカでも生きていけるよ。むしろピヨちゃんはバカだから受けが良いんだよ」

「ピヨピヨ(ミーシャ。ヒヨコを慰めるにしても馬鹿を肯定しないでくれないか?)」

「え?」

「ピヨ?」

 ミーシャはヒヨコが賢くない子だという事を十分に理解したうえでの励ましだったが、ヒヨコ的には賢さを褒めて欲しかったのだ。


 ステちゃんは腹黒公爵さんの方を向いて訊ねる。

「でもてっきりヒューゲル様も私たちと同じく列車に乗ってケンプフェルトに行くのかと思っていました」

「まあ、ケンプフェルトは皇帝陛下の部隊が出て牽制がメインだからね。僕らは本格的に戦争をする獣王国の中に紛れてそのまま悪神を暗殺したい……ところだが、簡単にはいくまい。だが悪神を野放しには出来ないからね。そして出来る可能性がある人物は非常に少ない。神はヒヨコ君を指名しているが、よもや0歳のヒヨコに人類の全てを託すなど帝国もしない。そして俺はそれを成す能力がある」

「結婚して落ち着いたんだし、無茶な場所に行くのはお勧めしませんよ。私だって神を相手には予知が利かないのですから」

「妻が妊婦になって、親になると決まって初めて分かる。少なくとも王国を支配し、人を生贄にして版図を広げる悪神なんぞがいる世界を、生まれてくる子供に見せたくはない。フェルナンド、師匠が命懸けで娘のために戦った気持ちがね」

 腹黒公爵さんは苦笑して優しい目でステちゃんを見る。

「気を付けてください。悪神だけではありません。他にも二つの巨大な力が感じますから」

「無論、どれほど手強いかもよく知っている。これでも長く神の眷属である邪眼王のいたダンジョンを潜っているからね」

 腹黒公爵さんは苦笑しながらうなずく。

「それに獣王国とは今後も重要な付き合いがある。最初は我々が良いだろうというのは仕方ない事だからね。まあ、親善大使みたいなものだよ」

「ピヨピヨ(つまりヒヨコとおなじ親善大使という事だな)」

 ついに腹黒公爵さんはヒヨコ達と同じ親善大使にランクアップしたか。

 ……はて、公爵と親善大使、どっちが偉いのだろうか?


「というよりも物理の効かない相手要員ってことだけどね」

「ピヨピヨ(ヒヨコのようなブレスもちではないと大変だろう)」

 なるほど、獣人は魔法が使えないみたいだから魔法要員という事か。

 たしかに腹黒公爵さんは魔法使いだった。


「いや、森の中でヒヨコ君のブレスが吹かれたら、獣王国の村ごと焼けちゃうから」

「ピヨ~(そうか、ヒヨコは獣王国に行くとブレス禁止なのか。大会ではそれで負けたからな。ヒヨコはブレスの吐ける場所に配置という事か。だが、それならヒヨコは帝都でお留守番でもよいのでは?)」

 ヒヨコは家を守らねばならぬ。

「女神様から指名がある以上、何かあるんじゃないのかい?」

「ピヨッ(ちぃ、またしても女神か。奴のせいでヒヨコには自由がないのか。ヒヨコはいつか女神のいない地に行きたいのだ)」

 そうかヒヨコが強制参加は女神のせいだったのか。あの駄女神め、いつかピヨピヨしてやる。


「ピヨピヨって何?」

 ステちゃんは不思議そうにヒヨコを見る。そんなのはどうでも良いのだ。

 分かるか?ヒヨコは家に引きこもりたいのだ。

「でも残念。私が出掛ける以上、ヒヨコはお留守番できないのであった!私のペット扱いだから放置したらペットを放置したことになっちゃうじゃない」

「ピヨッ!?(そんな事が!?いや、だが、ステちゃん。ヒヨコももはや有名(じん)。大丈夫だと思うんだが?)」

「有名だからこそ、放置するとまずいと思うんだけど?それに武闘大会で反則している前科があるし」

「ピヨッ(くう、前科持ちは辛いぜ)」

 愕然と項垂れるヒヨコ。


 するとそこに後輩君がやってくる。

「ピヨッ(おお、後輩君じゃないか!)」

 すると後輩君はヒヨコの頭をグイッと押してヒヨコロ転がしつつ、

「ミーシャ。そろそろ出発するぞ」

 後輩君はヒヨコロ転がしてからミーシャに声をかける。

「えー、もう?」

「きゅうきゅう(それじゃあ、サヨナラなのよね)」

「ピヨピヨ(ヒヨコは次に会える時を楽しみにしているのだ)」

 ヒヨコは起き上がりながらミーシャに声をかける。


「また会おうね。絶対だからね。前みたいに勝手にいなくなるのダメだからね」

「ピヨピヨ(残念ながらヒヨコは覚えていないのでノーカンという事で)」

「むう」

 ミーシャはふくれっ面でヒヨコをギューと強く抱きしめる。

『僕は直に飛べるようになって遊びに行くからさっさと悪い奴をやっつけて欲しいのだ』

「それはガラハド君が」

「って、人任せだな!?」

 ミーシャはビシッと後輩君を指差し、後輩君は苦そうな顔で呻く。

『じゃあ、僕からは虎君にプレゼントなのだ』

 グラキエス君はヒヨコの羽毛の中に手を突っ込むと硬そうなとんがりが出てくる。

「ピヨヨッ!?(おい、グラクエス君!?ヒヨコの羽毛の中に何を入れていたのだ!?)」

 いつの間にか仕込まれてびっくりである。ヒヨコの羽毛はアイテムボックスの魔法ではないぞ?


『僕が成竜になった時に生え変わった歯なのだ』

「いやいや、抜けた歯とか別にいらないから。お子様の宝物的な感じで渡すなよ」

 グラキエス君が後輩君に渡そうとするが、後輩君は拒否する。まあ、成竜時の体形は4メートを優に越す巨体なので牙も手で握れる程度には大きい。

 するとステちゃんは

「ぜひお納めください」

 と進言する。


「えー」

 露骨に嫌そうな顔をする後輩君。気持ちは分かるぞ?


「竜の牙は神をも殺すと呼ばれています。神を相手にするには巫女姫の当てにならない予言より、ドラゴンの牙が役に立つと母も言っておりました。我が父も魔神の眷属と戦う際には拳に付ける武器として使っていたと言います。どうか、グラキエス君の厚意をお納めください」

「そ、そうなのか?」

 ステちゃんの言葉に対し、後輩君は困惑気味に首を傾げる。


「そのままでは使えないでしょうし、向こうに帰ったら仕立て直すのが良いでしょう。簡単にはいかないでしょうが敵の急所を叩く際にはそれで貫くのが良いかと」

『優勝賞金の半分かその位の価値にはなるのだ』

「え?そんな高級品なの?」

 後輩君はゴクリと息を呑み手元にある大きな白い竜の歯を見る。

 いや、むしろそんな大きいものをヒヨコの羽毛の中に隠していたグラキエス君にびっくりなのだが。


『大事に使って欲しいのだ。僕はもうちょっとこっちの世界を見てみたいのだ』

「ピヨピヨ(だからってヒヨコの羽毛の中にたからものを隠す的な事は辞めてもらいたいぞ?)」

「…大事に使わせてもらう」

 後輩君はギュッと竜の牙を握り頷く。


「じゃあ、声掛けするね。グリちゃん、こっちこっち」

「グルル」

 ドシンドシンドシンと歩いてやってくるのは大きいグリフォン。

「ピヨッ!」

 強そうな魔物が現れてヒヨコはスススと下がる。

「グル~」

 ゴスゴスッと嘴でヒヨコを突くのでヒヨコはコロリと転がってしまう。

「ピヨヨッ!?(な、何をするんだ?ヒヨコを食べてもおいしくないぞ?)」

 グリフォンはなんだかとっても強そうだ。ヒヨコは精いっぱいの見栄を張ってみる。

「ピヨちゃん、昔仲良かったんだよ」

「ピヨヨ~(ほ、本当に?)」

 ヒヨコはちらりとグリフォンを見上げる。

 はて、ヒヨコはとんと思い出せぬ。グリフォンは怖い感じだ。むしろヒヨコは食べられそうになった過去があっても驚かないぞ?


「グルッ」

 ミーシャはグリフォンの嘴に咥えられてから、背中に乗せて貰う。

「うん、それじゃあ、またな。ヒヨコはいつか決着をつけるからな覚えてろよ」

「ピヨピヨ(いや、ヒヨコはそういう熱血系は結構です)」

「それじゃあ、行こうぜ!全員、帰投するぞ!」

 そう言って後輩君は近くにいたグリフォンに飛び乗る。


「きゅうきゅう(ミーシャ、また遊びに行くのよね。忘れたら許さないのよね)」

『元気でいるのだ』

「ピヨピヨ(それじゃあ、また明日~)」

「いや、そんなに早く来れないでしょ」

 ベシリとヒヨコの頭にハリセンが落ちる。ステちゃんは決してツッコミを忘れない女だった。


「またね。皆!」

「グルルルル~」

 バサバサと翼をはためかせて空を舞うグリフォン。他の魔物達もだ。獣王国の来賓さん達+腹黒公爵さん達冒険者パーティは獣王国へと向かって進む。


「ピヨヨ~(じゃーねー)」

 ヒヨコは翼を振って去っていく客人たちを見送る。


 物凄い大量の空飛ぶ魔物の群れが100人以上もの獣人達を背負って飛んで去っていく。

 あっと言う飛んで地平の奥へと消えていくのだった。

「ピヨピヨ(ヒヨコも斯く在りたいものだ)」

「え?何になりたいの?引きこもりじゃないよね?」

「ピヨピヨ(決まっている。空飛ぶ魔物にだ)

「そっちか~。確かにヒヨコが飛べたら便利だけど」

 ステちゃんは呆れたような視線をヒヨコに向ける。だが、ヒヨコが空を飛べないなんておかしいじゃないか。ヒヨコとは空を飛ぶ………


 …………いや、飛べないな。

 うん、飛べない。だが、しかし、いつかは空に飛びたいのだ。


 ん?何故便利か?

「ピヨピヨ(普通にステちゃんは自分が乗せて貰う事を前提に会話してないか?ヒヨコはフリーダムなヒヨコ。ステちゃんなんて乗せる位なら綺麗なお姉さんを乗せるに決まっている)」

「私が綺麗なお姉さんになった時に後悔するが良い」

「ヒヨコが思うに、ステちゃんはいつまでもステちゃんだと思うぞ?どこかで別れて数年ぶりに出会ったらステちゃんはまんまステちゃんだったというおちが待っているような気がする。」

「ないね。絶対にないね。巫女姫たる私が断言するね。むしろヒヨコがアクロバットな土下座をしてソファーになりたがるような傾国の美女になっていてびっくりするね」

「ピヨピヨ(まあ、噂ではステちゃんのお母さんを娶ろうとした獣王さんが民の反発にあって殺されたという逸話があるからある意味で傾国)」

「きゅうきゅう(さあ、さっさと家に帰るのよね。豪勢な料理を期待しているのよね。ヒヨコのお金で)」

「ピヨピヨ(トルテよ。ステちゃんは細々と暮らしているからって、リッチなヒヨコにタカるな。ステちゃんのなけなしのプライドが一瞬で破裂するじゃないか)」

「というか、そろそろヒヨコはお金が減って来てるからそろそろ走りに行った方が良いんじゃないの?」

「ピヨピヨ(そうか、ならば戦場に行くのは辞退しよう。ヒヨコ、ついにダービーへ!)」

「きゅうきゅう(ステラ、こいつに引きこもる口実を与えるのは良くないのよね)」

『ピヨちゃんは今、家に引きこもるのがブームなのだ。さあ、数日後にはもう出かけるのだから腹を決めるのだ。ベッドの中から出たがらないトルテみたいな事は辞めるのだ』

「ピヨピヨ(ヒヨコがトルテと同類のように言うのは辞めて欲しい。ヒヨコが最も危惧しているのはそこじゃないんだ!)」

 そう、ヒヨコが最も危惧しているのはそこではない。ドラゴンやステちゃんは良いだろう。帝国人権宣言に認められているのだから。だが、ヒヨコはただの魔物だ。どうしてもいやな予感がしてならない。




***




 そして数日後、魔導列車に乗ってヒヨコ達は出発する。

 帝都の駅には巨大な列車は10両編成。家屋のように大きく、そして城壁のように長い列車が停まっていた。ヒヨコ達はそんな列車の前の方に乗るのだった。


 そう、ヒヨコの嫌な予感は的中した。


 ゴトンゴトンと揺れる列車が長い長い線路をひたすら走っていた。

 列車の中は暗く、所々に軍備用の荷物が置いてある。剣や武器、砲弾、食料などが所狭しと並んでいる。

 ヒヨコはそんな重火器や剣や鎧の中に紛れ込んでいた。


「ピヨヨーッ(また貨物扱いかよ!)」

 だから行きたくなかったのだ。

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