1章11話 ヒヨコの名前のレベルが上がった
俺が目を覚ますと暗い部屋にいた。すると、俺の羽毛の中に潜りこんでいたミーシャがいた。
「あー、ピヨちゃんが目を覚ました」
ミーシャはワシッとヒヨコの首に手を回して頬を摺りして来る。
「ピヨヨ?」
急な事で俺には全く理解できなかった。
さっきまで駄女神様と一緒にいた筈だ。そうか、戻ってきたのか。
「お母さん、ピヨちゃんが目を覚ましたよ」
「あらあら、良かったわ。あのまま目を覚まさなかったらどうしようかと思ったもの」
ミーシャがパタパタと部屋の外に行き、呼んできたのは母親のマーサだった。
しっかりとした足取りで病気だった姿は一切感じさせないものだった。
「ありがとうね、ピヨちゃん。貴方の魔法のお陰だったそうね」
「ピヨ」
俺は取り敢えず首を縦に振る。
とは言え博打だったのは否めない。どうやら死んだものの俺のこの行動が功績となって何かしら生きられる事になったっぽい。
そこら辺をちゃんとあのへっぽこ女神に聞くべきだったと後悔するが、恐らくもう二度と会う事もないので仕方ない。
「もう動けるかしら?これから移動する事になるけど大丈夫?」
「ピヨヨ?」
マーサさんは心配そうに俺を見下ろす。俺は座ったまま首を捻る。
「皆で北の方にお引越しするんだって。大きな街に行くんだよ」
楽し気に話すミーシャであるが、マーサさんは非常に困った表情だった。その様子に俺は全てを理解する。
恐らくは王国軍が攻めてきて北へと避難するのだろう。北部には獣王国の城塞都市カッチェスターが存在しているからだ。
さながら戦争難民である。
とはいえ子供にそんな事を説明できるはずもないだろう。
マーサさんは皆で引っ越すのだと伝えたように見える。
俺もこの時点でやっとこの地がどこなのかハッキリと理解する。
獣王国は王国の北に位置しており、獣王国は巨大な森の中にある土地だ。
獣王国の首都カッチェスターは獣王国の中央にある白い巨大な山の麓にあり、獣王国全土が山の麓にある小高い丘陵になっている。
恐らくこの集落は王国国境線とカッチェスターに挟まれている地域だ。
獣人族の集落は基本的に大森林の中にあるので王国北部の国境に近い場所だというのは把握していた。
だが、北にカッチェスターがあると言うのであれば、勇者時代に侵攻した道に近い事がうかがわれる。
俺は獣王と戦う前に獣人族の勇者であるエミリオとも戦かっており、当時はかなり手ごわかったのを覚えている。
俺は獣王の命は奪ったが、獣王の遺言に従い、それ以外の者達は殺さずに相互不干渉を王国に訴えた。
俺と獣王の戦いの痕跡で、軍が縦断するのは不可能になった為なのが大きい。
諦めて西部の帝国領へ入る事になったのだが。俺はそこでラファエルと出会ったのだ。
そう言えばラファエルの奴は元気だろうか?
思えば彼だけはちゃんと仕事をしていたし、聖女レイアの事をよく思っておらず、俺に彼女に騙されていないかと忠告してくれていた。
当時、デレデレして全く取り合わなかった昔の自分を殴ってやりたい。
ごめんよ、ラファエル。
俺、騙されていたよ。
ちゃんと話を聞いておけばよかった。君は正しかった。
とはいえ、女神様が言うように王国は獣王国の生贄を求めて攻めてきている事が推測できる。殺さないで捕まえる方向だろう。
だが、王国にそんな戦力が有るとも思えない。
王国の人口は100万弱、それに対して獣王国は50万程度だ。だが、獣王国の戦士の質は非常に高い。何せこの大森林で生きている為に戦いに困らないからだ。獣王国は一般兵士でさえ王国の一流の兵士に伍する。しかも男の大半は戦闘経験者だ。
軍がぶつかり合えば獣王国は間違いなく勝てる。
獣王国は非常に広く、その広大な土地に点々と存在する集落を兵士たちが魔物から守っている為、軍を集める事自体が困難な国でもある。
思えば元三勇士と言っていたマーサさんのお祖父ちゃんは、引退したと言えどこの集落を守っている戦士なのだろう。マーサさんも病に倒れていたが、レベルからして超一流の戦士だった可能性が高い。勇者の俺でも警戒するレベルを持っていた。
従魔で王国の動向を確認し、いざという時に戦う最後の砦になる可能性が高い。
獣王国本国はともかく、獣人族の集落は小さく分かれており、王国軍に大戦力をつぎ込まれると多勢に無勢となりかなり不利だ。
獣王国は兵を集めて王国に反抗すれば必ず勝てるが、集める前は王国の方が遥かに強い。
兵を集めても勝利した事があるのは俺が前線に出た時だけだ。
問題は今回の戦争において、王国は人質を取ってくる可能性が非常に高いという点だ。何せ生贄に使うつもりなのだから。人質を取られて情に厚い彼らが戦えるのか甚だ疑問だ。
俺が考え事をしていると、目の前にいたマーサさんはホッとした様子で笑顔を見せる。
「でも、本当に良かったわ。おいて行くわけにもいかないからどうしようかと皆で悩んでたのよ。さ、ピヨちゃんも一緒に行きましょう?」
「ピヨ」
「わーい、ピヨちゃんも一緒。ピヨちゃんも一緒」
俺はそれに従うように頷くと、嬉しそうにミーシャは喜んでいた。
本当は俺こそが軍に向かって戦いに行きたいのだが、この集落の獣人達も心配だ。王国軍が本気の軍勢を揃えた場合、グリフォン一匹でどうにかなるものではない。
まあ、ヒヨコ一匹でどうにかなるものでもないのだが。
俺は彼女達の避難を見届けてから獣人族達と一緒に戦おうと決意する。
とはいえ、彼女達の笑顔を曇らせたくもないのは俺の我儘だろう。駄女神様もきっと許容するだろう。問題は俺がどこまで戦えるかという事だ。
そこで俺は自分のステータスを見てみる。
名前:ピヨ
年齢:0歳
種族:???(ヒヨコ)
LV:26/50
性別:男
職業:無職
HP:200/475
MP:0/375
称号:復讐者 迂闊者 真の愚者 聖鳥<NEW> 神の使徒<NEW>
スキル:魔力操作LV10 忍び足LV2 高速移動LV1 回避LV5 暗視 神眼 神託 魔力感知LV10 音響探知 野生の勘 離陸LV1 火魔法LV10 水魔法LV5 氷魔法LV5 土魔法LV5 風魔法LV7 雷魔法LV8 神聖魔法LV10<UP> 疲労耐性LV10<NEW> 精神耐性LV10 炎熱耐性LV10 毒耐性LV7 麻痺耐性LV5 病耐性LV5 呪耐性LV10 即死耐性LV10 食い溜め 格闘術LV1 嘴術LV3 火吐息LV2
HPとMPは一般兵より強く、獣人兵と同等の能力が見られる。これならかなり豊富なスキルを併用すれば良い活躍が出来そうだ。
というか、聖鳥って何ぞや?聖女とか聖者とかそういう称号の鳥バージョンかな?
でも、実際に聖女の称号とか持ってる人を見た事無いんだよな。元カノの聖女は周りから聖女と呼ばれてただけで、そういう称号を持ってなかったし。
何かしら功罪があるとしたら、恐らく命を尽きるような神聖魔法で死にかけている人を癒したから……なんだろうけど。
ところで、神の使途がついているのと疲労耐性がカンストしてるのって、もしかして神の使徒なんだから疲れても戦い続けろ、とかそういうメッセージなのかな?
とにかく説明が少ないのだ。
あの駄女神、今度天界に行ったら絶対にヒヨコ嘴地獄を叩きこんで、ピヨピヨしてやる。
大きな荷物をもってマーサとミーシャの親子は家を出ると、既に避難を開始している住民がたくさんいた。俺はこの家の玄関から出れないので窓から外に出る。どうやら俺は窓から中に運び込まれたっようだ。
「おお、マーサさんにミーシャ。ヒヨコは起きたのか?」
外に出ると、荷物を背負って歩いている人達がマーサ達を見てうれしそうな顔をする。
「ええ。良かったです」
「いざとなったら俺らが荷車で運んでやったのに」
「何せ同胞を助けてくれた恩人、いや恩鳥か?だからな」
一体感の強い集落で近所は皆が仲良しの様だ。
知人の恩鳥にまで優しくしようとする心遣いに涙が出そうだった。世界を救ったのに燃やされた過去とはえらい違いだ。
思えば村の入口で見張りをしていた男も、お巡りさんも、皆、顔見知りで仲良しだったし。そういうファミリー感溢れる集落なのだろう。
俺の故郷も似たような雰囲気だった。
勇者が悪者となって死んだと聞けば、俺の故郷もがっかりしているだろう。
申し訳ない気持ちでいっぱいである。故郷の様子を少しくらい見に行きたい所であるが、ここから故郷に行くのは困難だ。俺の住んでいた村は帝国の国境沿いにあり、王国の南西部にある小さな農村である。
魔物となってしまった俺がそこに辿り着くには非常に難しいだろう。冒険者に討伐されてしまう気がする。
俺は荷物を担いでミーシャとマーサの2人と一緒に他の獣人達の進む道を歩く。小川沿いを進み小さな橋を渡り、森と森の間に出来ている山道を歩き続ける。
子供などは疲れたと泣きごとを言う子も多いが、ミーシャなどは終始楽しげであった。
やがて夕方になり大人達は集って夜営の準備を始める。
ミーシャを含めた子供達は暗い雰囲気はなく大人達に言われるまま夜営の手伝いをする。森の中に入らぬよう薪を拾い集めたり、食べられる草木を集めたりしていた。
「食料はちゃんと荷物に入ってるから心配ないわよ。ピヨちゃんは…」
「ピヨピヨ」
「森に行くの?危ないわよ」
「ピヨ」
俺は森の方へ行って獲物を取りに行くよとジェスチャーを示す。
何となく伝わった感じがするので、翼を振って一同に一時の別れをしてから森の中へと向かうのだった。
***
食事を用意してくれるのはありがたいのだが、俺のお腹はあの程度では収まらない。
あと、獣人達の食べられる保存食を俺が食うのでは彼らがいざという時に困るだろう。
なので新鮮な食べ物を狩って来るのは当然だ。保護対象から守ってもらうなどお断りである。何よりも決戦が近い。レベル上げをしておきたい所だ。
俺がピヨピヨと魔力感知を使って魔物の気配を感じる方へと走る。あ、魔物って言っても俺じゃないよ?
そこに現れたのはダークグリ…ではなく、レッドグリズリーだった。
ふっ…獲物には丁度いい。………熊は野生臭くてあまり旨くないけど、今のピヨちゃんの鼻はあまり効かないので問題ない。その肉を頂こうじゃないか。
グルルルルルと唸りながら俺を睨むグリズリー。俺は嘴で突っ込む準備をする。猛牛のように前脚で地面を掻きながらグリズリーとの間合いを見据える。レベル26となったヒヨコはグリズリーともいい勝負ができる筈。
グリズリーが先に動いた。俺は相手に合わせて前に突っ込む。レベルが上がった事でスピードが上がっているが、ルーク時代の方が早いのでスピードが急に上がって困る事も無かった。
グリズリーが右前脚を振り下ろして俺に爪を突き立てようとする。
だが、俺は首を回すようにして爪を見事にかわしつつ、ヒヨコキックでグリズリーを蹴りつける。
だがグリズリーの方が体が重いようで、逆に俺がよろめくだけでダメージは無さそうだ。
グリズリーは咄嗟に左前脚を横薙ぎに振るがその前に俺は距離を取る。
レベルアップによって勇者時代の動きに近い躍動感を感じる。
『ピヨは高速移動のスキルレベルが上がった。レベルが2になった』
という神託が降りてくる。
「ピヨッピヨッピヨッ」
俺はヒヨコの足に合うようにリズムに乗りながらフットワークを取る。
グルルルルル
熊は唸りながら前傾姿勢になって両前脚を地面について突っ込んできそうな構えを取る。速度重視で攻めて来ると見て俺は慎重になる。
グリズリーは正面から一気に突っ込んでくる。普通なら早くて対応できないだろうが、俺は元勇者、もっと早い相手との経験が豊富だ。
事実、三勇士の一人、狼王ウルフィードはスピード型の戦士だった。当時、彼ほどスピードを持たないルークにとっては遥か上を行く怪物だった。
目で終えない速度に獣人族の底力を感じたものだ。
今となってはそのスピードを経験したからこそ、たかが獣の速度に驚くことは無かった。
グリズリーの動きを見ながらヒヨコの体を動かして逆に懐に飛び込みつつ脇をすり抜けて背後に回り込むと、足の爪でしっかりとグリズリーの首を掴み、皮膚に食い込むくらい強くつかむ。
そして体を曲げて嘴をグリズリーの首と頭蓋の間を強く突く。
「グゴオオオオオオッ」
グリズリーは断末魔の悲鳴を上げて倒れるのだった。
おお、会心の一撃だった。まさにクリティカルヒット。
勇者時代の感覚にこの体が近づいてきているのが分かる。しかもヒヨコの体を操るのに慣れてきて、勇者時代よりも動きが良いような気がするのは気のせいじゃないかもしれない。
まあ、勇者時代はステータスが10倍以上あるので比較は困難だが…………。
こと戦う事においてはこの体の方が向いているような気がする。
『ピヨは爪術LV1のスキルを獲得した』
俺は爪術なるものを手に入れた神託を聞きつつ、死んだ熊を背に乗せてキャンプ地に戻る事にする。
嘴で突いた事より爪で相手を掴んだからか?こんなんで上がって良いのだろうか?
いや、そもそも魔物って基本的にこういう技能を持ってたな。
むしろ持ってなかった方がおかしいのか?
とはいえ自分の爪を見てみるが、まだプニプニで柔らかかった。
鋭さのかけらもないので、これに爪で傷つけるモンスターと同じように爪術がついているのは問題だと逆に思うのだった。
***
俺がキャンプ地に戻ると獣人達は驚きの声を上げる。何でだろうと首を捻りながらレッドグリズリーの死体をキャンプ地の広場に降ろしていると
「な、何でレッドグリズリーなんて狩ってるんだよ」
「これ、本当にヒヨコ?」
「伝説の聖鳥じゃないのか?」
「火を吐く鳥なのに、グリズリーに火傷が無いとすると身のこなしだけでレッドグリズリーに勝ったのか?」
住民たちは驚きの声を上げていた。どうやら俺に驚きの声を上げていたようだ。
「獣王様の持つ精鋭でもなければ一人で倒すのは困難なグリズリーだぞ?」
「ピヨちゃんだなんて可愛い名前に騙された」
いや、その名前を付けたのはミーシャであって俺じゃないから。
言われてみればこれだけ大きいグリズリーを相手にして一人で勝てる人間って思いつかないな。
騎士も装備の力でどうにか勝利するが有能な冒険者なんかも含めて少ないんじゃないか?
俺は12歳位の頃にレッドグリズリーの群に挑んで死にかけながらも、それを倒す事で真の勇者の称号を手にしたんだけどなぁ。
「ピヨちゃんは凄いんだよー」
「森の中でフラフラしてたから、わんぱくな子だとは思ってたけど、ピヨちゃんは凄いのねぇ」
ワシッと俺の体に抱き着くミーシャと、感心したように口にするマーサさんであった。
「そう、もはやただのピヨちゃんではないの。今日からピヨちゃんはグランンドピヨヨ、んん?なんか違う」
何かミーシャが言い出すのだが、なんだか白黒の鍵盤が並ぶ楽器みたいに言われた。断じて俺は楽器では無いのだが。
「そう、今日からピヨニッシモだよ!」
ミーシャ、まずピヨから離れて欲しいんだけど。
もっとヒヨカッコいい名前が欲しいんだ。でもピヨは要らない。
んー、自分でも何を言ってるのか分からなくなってきたけど、とにかくピヨは無しの方向性でお願いします。
「何か不満?」
ミーシャは不思議そうに俺を見て首傾げる。
「ミーシャ、ピアニッシモみたいな名前だとむしろ格が下がってる気がするのよ。あとその子のサイズはどう見ても小さくないから」
音楽にも教養のあるのか、マーサさんが娘の命名に突っ込みを入れる。獣人って音楽の教養があったんだ。知らんかったわ。
「じゃあ、じゃあ、うーんと……ピヨードル」
おおーっ!何か強そうなのが来た!だが、違う、違うんだよ、ミーシャ。俺はピヨから離れたいんだよ!
俺が惜しいなぁというような素振りを見せるとミーシャは首を捻る。
「方向性は正しいけどあともう少しって感じ。よーし、じゃあ、ピヨネス」
そっちじゃない!ピヨに拘らないでください。
俺は露骨に嫌そうな顔をする。
それを見てむうとミーシャは違うのかと言わんばかりに腕を組んで考える。
「むー。じゃあ、偉大なピヨちゃんだから……ピヨマグナス。略してピヨちゃん!」
「ピヨ……」
俺は肩…というか手羽元を落としてがっくりとする。
「ピヨちゃんは今日からピヨマグナスなの」
名前が偉大になった!?あまりうれしくないのだが。
『ピヨの名前のレベルが上がった。(笑)』
するとレベルアップの時と同じようなファンファーレと共に神託が届く。
余計な神託を入れやがった、犯人は分かっているぞ、あの駄女神め!
そもそも完全に笑いながら神託が入るなんて初めて聞いたぞ!
それに合わせて神眼で見える俺のステータスの名前欄まで『ピヨマグナス』に変わっていた。おのれ、あの駄女神め!嫌がらせをさせたら神クラスか!
いや、クラスもなにも神だった。
「でも、それ、保存食にしないと持ち運べないだろう?」
「グリズリーは魔物でも食えるタイプだけど、お前一匹じゃ食いきれないだろ」
と大人達はグリズリーの死体を見下ろしながらぼやく。
確かにその通りだ。勿体ないから持ってきちゃったけどどうしよう。
「ピヨ」
俺は皆で食べるかどうか訊ねるように見渡す。
「もしかして俺達の食料として食えって事か?」
「ピヨピヨ」
「そりゃ有難いけど、良いのか?」
「ピヨ」
俺は首を縦に振る。どうせ俺一人では食べきれないし、置いておくのももったいない。
皆でグリズリーを焼いて食べる事になるのだった。
「まさか、ヒヨコに食料を恵んでもらう日が来るとは思わなかったぜ」
「さすがピヨマグナスだ」
「よっ、ピヨマグカップ」
いかん、変な名前が定着しそうだ。というか、明らかに偉大でもない名前まで交じっているぞ?そこら辺を否定したいので必死に首を横に振るのだが。
「そう謙遜するなよ」
「魔物なのに人語を理解して、皆に食料を分け与える偉大なピヨ助め」
「魔物なのに謙虚な奴だな、ピヨマグナスは」
だが、何か謙遜しているように思われてしまう。ピヨマグナスじゃないのに、もうピヨマグナスが大人達にまで定着しつつあった。一部、変な名前が広がりそうで悪寒さえ感じる始末。
どうやらミーシャこそが俺の天敵のようだ。