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【短篇版】セクハラ疑惑で追放されたおっさん呪術士ですが、他の仲間は『催眠術』でみんな俺の味方なんですけど勇者さん大丈夫ですか?~戻ってこいと言われたってもう遅い。 自由気ままにハーレムパーティーを目指


 「おっさん、アンタはもうクビだ」

 

 おやおや、突然勇者アンドレー殿の口から解雇処分が言い渡されマシタ。

 

 場所はとある酒場の一席。 いつもと何も変わらず仕事帰りに皆で食事を取っているときのことデス。

 

 「ク、クビ? ワタクシがデスか? どうしていきなりそんナ……?」

 

 「いきなりじゃねえよ。 俺はずっと前から考えていたんだ。 アンタはうちのパーティーに相応しくないってな」

 

 「具体的にはどのへんガ……?」

 

 「まず実践能力。 アンタの職業…… 【呪術士】だっけか? 相手を呪って能力を低下させられるらしいけど、いまいち役に立ってる気がしない。 というか、そんなことしている暇があったら普通に攻撃した方が早い」

 

 「し、しかし……」

 

 「それだけじゃねえ」

 

 アンドレー殿は一際表情を厳しくして続けマス。

 

 「バレてないと思っているのかもしれないけど、おっさん、しょっちゅう他のメンバーのことチラチラ見てんだろ」

 

 アンドレー殿はその場に居合わせたパーティーメンバーを一瞥してそう言いマシタ。

 

 女剣聖ヴェランナ。

 竜魔姫シリカ。

 天都女王カサドラ。

 

 皆、旅の先々で苦労してワタクシ達のパーティーに引き入れた優秀な人材。 何にも変え難い大事な仲間でございまス。 決してやらしい目で見ていたなんてことありまセン。

 

 「えっ? アッ、ソレハ……」

 

 「けっ、図星かよ。 見た目だけじゃなくてやること成すことまでキモいぜ。 おっさん、アンタ自分が何やったかわかってるか? セクハラだよセクハラ。 アンタがこの子達に嫌な思いさせているんだよ。 見ろよ、三人とも出会ったときは普通だったのに、今じゃ表情も凍りついちまって、 ほとんど言葉を発することもない。 これがおっさんのせいじゃなかったらなんだって言うんだ」

 

 アンドレー殿が申しました通り、ここにいる淑女お三方は言葉を発するどころか目蓋一つ動かすこともありマセン。 まるで人形のよう。 端から見れば少々不気味な光景でしょうか。

  

 「……」

 

 ワタクシ、ついつい返す言葉に詰まってシマイマス。 何せワタクシ正直者デスから、嘘がつけない性分デスから、 彼女達が黙りこくっているのはワタクシのせいだなんて言われたら、NOとは言えないわけデス。

 

 ……まあ、決してアンドレー殿の想像しているような理由ではないわけデスが。

 

 「そういうことだから、今日中に荷物まとめておけよ」

 

 アンドレー殿は用件だけ伝えてさっさと酒場を後にしてしまいマシタ。 先程の言い分けらして、果たして彼女達とワタクシを一緒に置いて良かったのか疑問デスが、まあ彼は細かいことは気にしない方デスから、いいのでショウ。

 

 「……さて、それじゃあ行きまショウカ」

 

 パーティーリーダー、加えて人類の救世主であられる勇者アンドレー殿のご意向デス。 彼がシロと言えばシロ、クロと言えばクロ。 ワタクシが不要だと仰られるなら、それに従い大人しく去るのみデス。

 ……けれど、彼はどうやらワタクシの真の力に気づいていないようですネェ。

 ワタクシがひた隠しにしてきた真の力…… ソレハ【催眠術】!

 どんな者だろうと、目さえ合ってしまえばワタクシの思うがまま操ることが出来てしまうのです!

 女剣聖、竜魔姫、天都女王などという勢力の異なる有力人物を手中に収められたのは強力な【催眠術】を有するワタクシめのおかげだというの二……

 彼女達のことを見ていたのだって、その都度術をかけ直していただけなのに二……

 

 ああ、なんと嘆かわしい! 神よ! どうしてアナタ様はアンドレー殿に勇者の才を授けておきながら、人を見る目を与えなかったのか!

 

 とても残念だ。 勇者といえど、仲間が一人もいなければどうすることも出来ない。 おそらくは、最後の敵である邪神を倒し世界を救うこともとても難しくナル。

 

 明日の朝になったらアンドレー殿はさぞ驚かれることデショウ。 ワタクシだけでなく、お三方までいなくなってしまわれるのデスから。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 翌日。

 

 「おい! 待ておっさん!」

 

 おやおや。

 

 街の関所に向かう道中、アンドレー殿が追いかけてきたではありまセンカ。

 

 「どうされましたアンドレー殿? そんなに慌てたご様子デ」

 

 「どうしたもこうしたもねえ! 宿の部屋にいないと思ったら、どうしてヴェランナ達がおっさんと一緒にいる! 三人とも、早く戻ってくるんだ!」

 

 アンドレー殿は必死に訴えかけますが、お三方はピクリとも反応しまセン。 ワタクシの支配下にある限り勝手な行動など許されるはずもないのデス。

 

 そんなことよりも彼をどうしたものカ……

 

 早々に諦めていただくにハ、この方法が手っ取り早いかもしれませんネェ……

 

 「お三方、よろしくお願いしますよ」

 

 「はい、マスター」

 

 ワタクシの声一つでヴェランナさん達は動きます。 ワタクシを守るように、それぞれ武器を手に取りながら前に出たのデス。

 

 その光景を目にして、アンドレー殿はうろたえマス。

 

 「ど、どういうことだ? どうしてお前達が俺と戦おうとするんだよ……? 俺達はこれまで苦楽を共にしてきた仲間だろ!」

 

 アンドレー殿の訴えかけに、カサドラさんが答えマス。

 

 「仲間? ふざけたことを仰らないで。 マスターのことを無能扱いするような人を仲間だとは思えません」

 

 「マスターって、さっきから何言ってんだ! まさかおっさんのことか!? どうしてソイツを庇うんだよ!」

 

 次にシリカさんが答えマス。

 

 「マスターはとてもかっこよくてスゴい人なんだよ? わたしそんなマスターのことダイスキ。 あなたのことダイキライ。 だからマスターの味方するの」

 

 ヴェランナさんが続けマス。

 

 「アンドレー、 はっきり言っておまえの振る舞いや言動には辟易していたところだ。 仲間を評価せず、自分がパーティーの主役だとワンマンプレーばかりする。 おまえは周りが見えていない」

 

 「そんな! 俺はヴェランナ達のことをちゃんと評価していたさ!」

 

 アンドレー殿は弁明しますが、突如放たれたヴェランナさんの剣先が首筋のすぐ横を捉えマス。

 おおコワイ。 あと三ミリもあれば真っ赤な血が噴き出してあるところデスよ。

 ヴェランナさんは相手を睨み付けながら言いマス。

 「……だから、そういうところがダメなんだ。 本当にスゴイのはマスターだ。 おまえが知らないところでマスターはこのパーティーのために頑張ってきた。 今このパーティーがあるのもマスターのおかげだ。 そんなことも知らずに、私達のマスターを馬鹿にするな」

 

 みなさんなんて仲間想いなのでショウ。 ワタクシ、おもわず感極まってしまいまシタ。

 別に大したことはしてないんデスけどネェ。 ほんのちょちょいと目と目を合わせて暗示を掛けただけデス。

 

 「それに、マスターが私達のことを見ていただとかセクハラだとか言って批難したのも気にくわない。正義感ぶるな偽善者、女に気に入られようと必死で気色悪いぞ」

 

 「う、うぐ……」

 

 「うろたえている暇があるなら謝ればどうだ? 今ならまだ取り返すがつくかもしれないぞ?」

 

 「謝る!? どうして俺が!?」

 

 「出来ないならおまえとはこれまでだな。 一人で邪神に挑むといい」

 

 さあ、行きましょうマスターとヴェランナさん。 けれどワタクシ、どうしてか彼の言葉が聞きたくなつてしまったので待つことにしまシタ。

 

 「さすがマスター! 優秀なだけじゃなくてとても優しいの!」

 

 「そんなことないですよシリカさん。 やはりアンドレー殿もワタクシ達の仲間だったんですカラ、多少は慈悲を与えないト」

 

 そうして待っていると、アンドレー殿が固い口を開いて頭を下げてきまス。

 

 「お、俺が悪かったです…… もう二度と馬鹿にしたり生意気なこと言ったりしないのでパーティーに戻ってきてくれませんか……?」

 

 アンドレー殿の声は震えていました。 どうやら彼の勇者としてのプライドが自分を許せないようデス。

 

 けど、どうやら今のじゃワタクシ以外の三人へ彼を許せないようデス。

 

 「誠意が足りない。 しょせん上辺だけの謝罪だな。 どうして俺がこんなことをしなくちゃならないんだと顔に書いているぞ」

 

 「やっぱり勇者キライ。 もう消えてほしいの」

 

 「謝るくるいだったら最初から大人しくしていれば良かったのに、二度と姿を見せないでください汚らわしい」

 

 「そ、そんなぁ! 」

 

 あらあら、アンドレー殿が半ベソかいちゃってますヨ。

 ワタクシのことを想ってくださるのは嬉しいのデスガ、何もそこまで言わなくたっていいのに。

 

 ……まあ、これで彼も諦めてくれることでショウ。 邪魔者がいなくなったからこれからは四人で冒険ができマス。

 しかしこれといった目的がありませんネェ。 そうだ、せっかくだからモットモット仲間を増やすのもいいかもしれまセン。

  

 ワタクシのお友達になった方々はみんな従順でなんでも言うことを聞いてくれますカラ、とても楽しみですネェ。

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