第四話 (declaration of war)うまいから闘うんやない 生きるために闘うんや、ジョン 1
declaration of war:宣戦布告
Declaration of War:?
ジョンは夜の闇の中で目をこらしながら、目的地までの道を歩く。
道中は、森の中に整備された林道といった趣である。ギルドで聞いた話では、森で果物を採ったり、獣を狩ったりできる豊かな森だということであったが……小鳥や小動物の気配すら感じられない。
それはジョンが出発した夜も、あくる日の朝も同様であった。
朝の日の光の下、ジョンはその明るさを頼りに……時折林道の脇に生い茂る木々の中へ分け入って食べられそうな果実を探した。しかし……ジョンの目に映るのは、枯れ萎れた果実ばかりであった。
どういうことだろうか? まだ冬にはだいぶ早い、この世界では果実の萎れるのが早いのだろうか?
枯れはてた果実を手に取り思案するジョンに、また女の笑い声のような音が聞こえる……
昼、ジョンはギルドでもらった地図に記された目的地にたどり着いた。森の中に、高木の生えていない開けた一角があり……そこに『オマ穀』なる草と『オマ幹』なる低木が生えている。その『オマ穀』の実と、『オマ幹』の幹をカバン一杯に集め持ち帰ることが依頼内容である。
そこに、同じくギルドでもらった図解通りの『オマ穀』と『オマ幹』が、大量に生えているという話だったが……
その大半は、枯れており使い物にはならなさそうだ。
また、ジョンの意識に……女の笑い声のような音が……
ジョンは荒れ地の中から、まだ枯れていない『オマ穀』を見つけ採集した。だが依頼の量にはまるで足りない。
このままでは戻れない、ジョンはひとまず辺りを散策して食料となりそうな果物や獣を集めようと考えた。しかし……そのような物は、辺りにはまるで見つからない。それらの気配、匂いすら感じられなかった。
これではまるで、生命の一つも居ない死の森……ジョンはそんなおそれを抱くが、それよりも空腹が問題であった。
ジョンは昼も夕も、夜も辺りを探ってみたが……糧となりそうなものは何も見つからない。喉の渇きをいやす夜露すら……ジョンの周りには存在しなかった。
まずい、腹も減って辛いが……喉の渇きはいかようにも耐えがたい……
また、ジョンの意識に……女のあざ笑う声のような音が……
やむを得ず空腹のまま枯草の中で眠り、翌朝目を覚ましたジョンは……身動きが取れなくなっていた。
か、身体が普段通り動かない……だるい……
まるで、あの時と同じ。病床で、命尽きたあの時と……
これは、まずい……そう直感したジョンは、必死に体の周囲を探る。すると、『オマ穀』を詰めたカバンが手に当たった。
そうだ、たしかこれは……魔法の飲み薬の原料になると聞いた。ならば、腹の足しにくらい……
ジョンは必死に『オマ穀』をむさぼる。すると、強烈な吐き気がジョンの上腹を襲う!
「ぐぉえっっ、げぇっ、がはっっ……」
ジョンは思わず液体を吐き出した。それはかすれた視界でも、はっきりと赤みを帯びていることがわかった……
だめだ、しぬ……
ジョンの意識が薄れていく。
「くふっ、うふふふっ、アハハハハ……!」
薄れていくはずのジョンの意識がはっきりと、女の笑い声を捉えた。