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第三話 (criminal type)ジョンが生きていけないのはどう考えてもお前らが悪い! 2

 ジョンは空腹に耐えながら酒場の片隅にたたずむ。

 ジョンは辺りに漂う酒と肴の匂いに惑いながら酒場の片隅に立ち尽くす。


 ジョンは空腹と、辺りに漂う酒と肴の匂いに耐えながら酒場の片隅にたたずむ。




「なあ、受付の子ってさ……彼氏いるのかな」

「受付? どこの受付だよ」

「そんなんギルドの受付に決まってんだろ?」

「知るかバカ、丼が冷めるぞ」




 ジョンはなるべく食事を見ないようにしながら、あちこちで交わされる会話に聞き耳を立てる。




「今回も、成果なしか」

「次もダメなら、そろそろ考えんとな」

「そーね~」

「諦める、ってことか? それは依頼主が可哀そうじゃねえか?」

「アンタがそんな事気にするなんて珍しいね~……あっ、もしかして惚れた?」

「ばっ馬鹿言え、あんなお嬢様、俺じゃあ……」




 果たして、何事もなく酒場の夜は更けていった。




「おいアリダー、そろそろ注文を止めてくれ。店じまいだ」

 奥からガラガラ声が聞こえてきた。


「だとさ、ここまでは何もなかったな」

 アリダーと呼ばれた給仕の男はニヤニヤしながら言う。酒場の客は既にほとんど帰ったか、酔いつぶれて眠りこけている。

 このままでは、約束通り金を要求されてしまう……ジョンは頭を抱える。



(逃げようとしないのは、善良だからなのか馬鹿だからなのか)




 しかし事件は起きるのだ。



 トントンと扉を叩く音と、女の声がした。

「まだ、開いていますか……?」


「おっさん、どうする?」

 アリダーが奥のコックに確認すると、


「いいぜー、入れてやんなー」

 威勢のいい声が返ってくる。


「了解!」

 アリダーも、それに負けない声を返した。きっと今のジョンには出せない声だろう。


「いいぜ、入ってくれ」

「ありがとう……ございます」

 扉の向こうの声はそれらとは対照的に丁寧だった。その言葉と声に、ジョンはなぜかとても優しい印象を受けた。


 扉が開き、酒場に入ってきたのは一人の女だった。

 こんな夜更けに、女一人で出歩いているのか? そんなジョンの疑問をよそに、女は店内へ進んでいく。

 ジョンの横を通り過ぎるその姿は黒髪、そして大きな胸の膨らみ……どこかで目にしたような? 姿だった。


「あんた、一人かい? 一人なら、片付いてるテーブルを適当に使ってくれ」

「わかりました」

 女は立ち止まり店内を一通り見まわしてから、ジョンの側の席に着いた。



「冒険者にしちゃ、ちょっと綺麗で上品すぎるような」

 アリダーが女の注文を厨房へ伝えて、戻ってきていた。


「冒険者?」

「いくらこの町が平和だと言っても、普通の女ならこの時間に一人で出歩かないよ」

 ジョンは空腹のあまり、受け答えにも力が入らなくなってきた。


 少しの間、ジョンはぼうっとしている……



「なんだって!? あんた、料理に不満でもあんのか!?」

 アリダーの怒声で、ジョンは我に返った。


「不満はありません、ただ私には食べられないと言うのです」

 声のした方向を見ると、女はジョッキを一気にあおっていた。


「そりゃ料理に不満ってことじゃねーかよ」

「ふぅ……今はそんな言い争いをしたくありません、それより早くこの人に」

 女は飲み干したジョッキを置いて、すぐにジョンへ近付き……ジョンの手を取った。


 どういうことだ? なぜこの女は私の手を……  ッ!?

 ジョンは疑問を感じた。最初は女の行動に、次に女の引き手の強さに。


「虚ろな目、枯れたような唇、まるで死相……この店の方なのでしょう? どうしてこんなになるまで放っておくの?」

「あ、いや彼は……」

「とにかく、頼んだ料理はこの人に。お代は払いますから」

 そう言って女は片手でジョンを料理の前に引っ張りながら、もう一方の手で料理の横に銀貨を叩き付けた。

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