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第一話 (alleged)ジョン太の転生前夜 1

「ヒマ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


 白い光が強く照るだけの虚ろな空間に、女の絶叫が響き渡った。



「いやまあ、うん、まあ暇なのも、私の世界創造、経営能力が高すぎるからだけどね〜。私のおかげで、下界は今日も平和そのもの。まったく、私の才能が憎いわあ……」

 白い空間に、金髪の女以外は誰もいない。女は敢えて独り言を声に出して、耳に伝わる己の言葉に酔っている。


「そんな才色兼備の私♪ だけど、今は暇で暇でとてもつまんない思いをしている。それは変わり映えのない日常」

 両手を拡げながら空を見上げるような体勢を取って、女は嘆いてみせる。



 女は少しの間、己の声と身振りに感じ入っていた……が、不意に目の前の空間が音もなく裂ける。それを感知した女は、姿勢を正し平静を装って裂け目を注視する。


「そにあサマ、コンニチハ。ラッしゃセー、ラっシャセー」

 女に声をかけながら、鳥のような姿の獣が裂け目から身を乗り出してきた。獣は頭に帽子を被り、背には二対、つまり四枚の翼を生やしている。


「久しぶりね、マレンくん。今日は『異魂』? 『礎体』?」

「キョウのしんしょうひんハ『イコン』、ソレもニンゲンのオウサまダッタラシイ『イコン』ダヨ」

 『異魂』とは、文字通り異なる世界の魂である。幸か不幸か、マレン──魂を掴む怪物によって本来の輪廻から引っぱり出された魂。


「『異魂』かぁ。悪いけど今は要ら……」

 女は要らない、と言いかけたところで動きを止める。



 そうだ、そいつでちょっと……遊んでみよ。

 王となる運命を持ちながら、その世界に護られなかった『異魂』……王でありながら、世界に必須と認められなかった程度の魂。

 きっとそれは、プライドばかり高いお馬鹿さん、なのだろう。


 ソニアと呼ばれた女の目元が、ぐにゃりと歪んだ。



「わかった、私のトコで引き取るわ。最速で届くよう手配してくれますか?」

「カシコマりマシタ、そにあサマ」

 女の目とは対照的に、注文を受けた獣の目は可愛らしく、つぶらにまたたく。


「ゴチュモッチョー! チョー! ァザスショー!!」

 獣は張りのある叫び声を上げながら、出てきた空間とは別の場所に裂け目を開き……声と共に消え去っていった。




 獣が去ってからどのくらいの時間が経っただろうか、女の眼前には若い男の裸体が現れていた。


「何だ、ここは……? 私は、死……」

 男は漫然と辺りを見回していたが、やがてソニアの存在に気付き声をかけてきた。


「そこの天使のような奥方よ、教えてくれ。ここは、父なる神のおわす王国か? それとも、私の魂を清める煉獄か?」


「ここは神の座、しかし貴方の考える神がいる世界ではありません」

 ソニアは優しく答える。敵対心を持たれないように。


「それはつまり、サラセン人の神がいる場所……ということか?」

「さらせんじん? それは知りませんが、ここは私の世界。ここでは私が神たる存在です」

 男は理解が及んでいないのか、目を泳がせている。


「私はこの世界で、ソニアと呼ばれています。貴方の神の名とは、違うでしょう? なぜならここは、貴方が生きていた世界とは別の世界なのですから」

 ソニアは順を追って、男に状況を説明していくことにした。積極的に男への協力、善意を見せることで自身の心の奥底によどむ悪意を取り繕っていく。


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