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9話 彼女と妹

「許せない! そんなことしていいのはお兄ちゃんだけだよ! 」


 紫苑の話を聞いた菜のはは立ち上がって憤慨していた。


 お兄ちゃんだけって…… おいおい、その辺りはお兄ちゃんには意味分からないんだけど。


「あの…… 菜のはちゃんは燈馬君に手を出してもらいたいの? 」


「当然です! 女としてお兄ちゃんを好きな気持ちは誰にも負けませんから! 」


「ダメだよ菜のはちゃん! 兄妹でそれはダメ! 」


 あのー…… 論点がどんどんズレていってますが……


「妹だからってなんですか!? チューも出来ない妹は妹じゃないんですよ! 」


 いやいや、それは違うぞ妹よ……


「燈馬君…… 菜のはちゃんとキス、したの? 」


 信じられないという表情で振り返る紫苑に、俺は引きつる事しか出来なかった。


「それがどうしたんです!? 嫌なら紫苑さんが塗り替えて下さい! でも中途半端な気持ちなら私がすぐ塗り替えちゃいますから! それだけ本気ですから!! 」


 喜んでいい事なのか、叱るべきものなのか分からなくなってしまった。


 紫苑と菜のははしばらくお互いを見つめ合ったまま動かない。


 先に口を開いたのは紫苑の方だった。


「負けないよ。 やっと私を救ってくれる人に出会えたんだもの、妹だろうと誰だろうと負けない! 」


「紫苑さんのそこが嫌い。 怖さを理由に他人任せな所が 」


 本気で睨む菜のはを初めて見たような気がする…… でも菜のはの性格上、それだけ紫苑をしっかり見ていたという事だ。


「お兄ちゃんはきっと惜しみなく紫苑さんを助けるよ? 後先考えないアホだから。 でもそれに全てを頼って欲しくない 」


「…… えへへ…… どっちが年上でどっちが大人なのか分からないね。 私、ホント子供だ…… 」


 肩を震わせて紫苑がそう言うと、菜のははコロッと笑顔になって紫苑に両手を差し出してきた。


「頑張ろうね紫苑さん。 お兄ちゃんの取り合いは紫苑さんが落ち着いてからにしようよ 」


「ありがとう菜のはちゃん。 頑張る…… 」


 なんだか都合のいいように解決した…… のか? 俺が何一つ口を挟むことがなかったのは、女同士でしかわかり合えないものがやっぱりあるらしい。


「それじゃ、初詣に行くか? 」


 重い話はこれで一段落と思い、雰囲気を変える為に出かける話を切り出してみた。




 大きな神社までは出向くことはないという二人の意見もあって、俺達は一番近くにある『明援神社』を訪ねることにした。


 名前の通り、明るい後世を支援するというご利益があるそうで…… 紫苑のこれからの暮らしが明るいものになるようにと賽銭を投げ入れて頭を下げる。


「あっ! 私大吉だ! 」


 おみくじを引いて結果を喜ぶ菜のはの隣では、紫苑が『よかったね』と静かに微笑む。


 あぁ…… おみくじも今くらい空気読めよ。


 菜のはにせがまれて見せてもらった紫苑のおみくじは、案の定『大凶』だった。


「紫苑、良かったじゃないか 」


「え? なんで大凶が良かったの? 」


 モノは考え様…… 所詮おみくじなんだから、どう捉えようが自身の勝手だ。


「今がこれ以上下がりようがないって事だろ? これからは上向きにしかならないんだから、悪い()はここに全部置いて行こうぜ! 」


 子供だましかとも思ったが、紫苑はフフッと笑って『うん』と静かに答えた。


「えー! それじゃ私は下がる一方にしかならないよお兄ちゃん! 」


「お前はずっと大吉じゃないか。 これからも大吉なんだよ、きっと 」


 菜のはは満足そうに笑ってバッグにおみくじをしまう。


「そういう燈馬君はどうだったの? 」


「うぇ? 小吉だけど 」


 ふーん、と二人は微妙な反応…… なんだそれ?


「普通…… だね 」


「面白くない! お兄ちゃん地味なんだよ! 」


「いやいや、おみくじに普通も地味もあるかよ! 」


 そう言い返してやると、二人ともいい笑顔を俺に返してくる。


「おや、燈馬じゃないか 」


 その声に振り向くと、神社の入り口から蒼仁先輩と吹石先輩が車から降りて来ていた。


「あけましておめでとうございます! どうしたんですか? こんな小さな神社に 」


「ここに来れば君に会えるんじゃないかと思ってね 」


 相変わらず凄い読みだな…… というか、俺発信機とか付けられてないよな?


「菜のはちゃん! あけおめ! 」


 菜のはの顔を見るや否や、吹石先輩は菜のはに飛びついてその胸に抱きしめている。


「え…… 何かあったんですか? 」」


「ひどいなぁ、何もなくてもいいじゃないか。 全くと言っていい程連絡もくれてないからね、寂しいんだよ? 僕は 」


 蒼仁先輩の手が俺の肩に伸びる。


 今年はそう簡単に腰砕けにされてたまるかよ! と、スッと一歩退いてその手をかわした。


「フフッ 甘いよ燈馬 」


 蒼仁先輩の姿が視界から一瞬の内に消えた! と思ったら既に俺の左後ろに回り込んでいて、トンと例のツボを押されてしまった。


「ふわっ! 」


 抵抗できずに蒼仁先輩の腕の中に吸い込まれ、すぐに迫ってくる蒼仁先輩のイケメン顔に恐怖を覚える。


「うわわわわっ! ごめんなさ…… 」

 

「本当に期待を裏切らない反応だね。 大好きだよ燈馬、今年も何卒よろしく頼むよ? 」


「は…… はい、こちらこそ今年もよろしくお願いします…… 」


 クルクルとダンスのように回りながら蒼仁先輩が解放してくれた時には、体にも力が入るようになっていた。


 紫苑や菜のはを始め、神社内にいた人達からミュージカルみたいだと拍手を受ける。


「吹石先輩も止めて下さいよ、彼氏の暴走 」


「あら、私は別に構わないわよ? ボーイズラブは好きだもの 」


 いやいや、そこは止めましょうよ!


「最近は問題ないかい? 僕で良ければ喜んで協力するよ? 」


 何かを感じ取っているんだろうか…… 蒼仁先輩の全てを見透かしたような目には、マジで驚かされる。


「紫苑、蒼仁先輩に助力をしてもらっていいか? 」


「え? …… えっと…… 」


 紫苑は俺と蒼仁先輩を交互に見て、俺の裾をギュッと掴んできた。


「おや…… まあ僕の愛する燈馬の頼みだからね、悪いようにはしないと約束しよう 」


 紫苑が頷くのを待って、俺は蒼仁先輩達が乗ってきた黒塗りの高級車に視線を移した。


「ここではちょっと…… 」


「そうか、では少しドライブでもどうかな? 」


 話の意図を瞬時に理解してくれて、蒼仁先輩は自家用車へと招いてくれた。


「あ、でもこの人数じゃ乗れないですよね 」


「問題ない。 今すぐにワゴンを用意させよう 」


 蒼仁先輩が運転手さんに『友人を招きたい』と伝えると、10分もしないうちにこれまた黒塗りのお高そうなワゴン車が到着した。


「すご…… テーブルまでついてるよお兄ちゃん! 」


 蒼仁先輩曰く、会長車として最近導入した6人乗りのミニバンらしい。


 ホント、二ノ宮クリニックってスゲー…… じゃなくて、それを私物化してる蒼仁先輩がすげーのか!






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