You、バイアスロン始めちゃいなよ!
味噌の香り…?
いい香りに誘われ目を覚ますとシムナが鍋を煮込んでいた。
「起きたか、ちょうど出来上がった所だ。」
お椀を差し出される。
「…いただきます。」
「いただきます!」
美味しい、熊の肉って初めて食べた!
「熊の肉って歯応えが良くてすごくおいしいですね。」
「そうか、肉抜きもして捌いたばっかだから臭みもない。味噌がで煮込むことで熊肉特有の旨みが際立つ…。」
料理に夢中になっていたが、自分の足を見ると包帯と木の板でガチガチに固定されていた。
「あの、これって?」
「足か?折れてるからとりあえず動かないようにしといた。」
「えぇ!?山降りれないじゃないですか!」
「いや、俺が背負っていってやるよ。そろそろ平野に降りて買い出ししないとなって思ってたし。」
なんかおかしな事言ってるけど突っ込まないでおいた。
3日後、体力の回復し、骨折以外の怪我をなおした私を背負ってシムナは山を降りた。
「たまに山から降りて必要な物を買うんだけど。」
そう言いながらまずは病院に連れていってもらった。
検査を受けた後、医者に言われた。
「これは無理ですね」
「は?もう一度言ってください。」
「貴方はもう走ることは出来ません。足の骨のこの折れ方…治療するのに1年は掛かりますし、もし治療出来ても激しい運動は難しいです。」
「来年オリンピック出場は…」
「無理ですね。」
「…。」
「そう、落ち込むなって、人生色々あるさ。」
励まされているがもう私は生きる気力を失ってしまった。
かなり頑張って来たんだけどな…。まぁ、通りすがりの猟師よりも射撃が下手で、板がないと雪上も歩けないような私なんて…。
今までの人生全てをかけてきたものを失ってしまってもうどうすればいいのか…。
ん…?
「ねぇ、シムナ?」
「なんだ?」
「君、オリンピック出てみない?」