6話 10年前パート5 魔力、今は必要ないわ。オウジに10年レンタルしてあげる。
(オウジ!? ……こんな弱く見えるなんて、誰からも聞いてないです!!)
目の前の相手を上から下まで見る。何度も見る。
コレがモノホンのオウジサマなら、剣、弓類は却下ですよね、としつけなく考えながらも、笑顔を作り目の前のオウジを見る。イヤイヤ、オウジか?オウジですよね。信じたくありませんが。
礼儀から、身分の上から名乗るべきだ。さっさと名乗りなさいなと、オーラを出すと、オウジサマは口を開いた。
「私は、カイル・アルフィート・キルラルトだよ。この国の第一王子です。君は?」
「私はフィリア・ティルーシアと申します。以後お見知りおき。今日は思いがけずデンカにお会いできて光栄です。ちょうどデンカに用事があり、探しておりましたの」
「そうだったのですね。君みたいな子どもがきちんとお話できるのはすごいな。私に用事が?聞こう」
挨拶が終わると、オウジサマ、カイルさまだっけは「言って?」と微笑んだ。
「ウーン……。カイルサマは魔力がほぼないとのことですが、クニを守るために、魔力の代わりとなるものを考えています?ないなら、私の魔力を貸してあげましょうか?」
「、、、、、えーと、魔力を貸すとか、不可能じゃないかなフィリア嬢」
「フィリアでよろしいです。オウジサマ。私は6属性プラスα能力があります。相手に移すのは可能ですわ。オウジサマが無防備は大問題。なぜなら、そちらにいらっしゃる暗殺の方に一秒後にヤラれます」
「……」
まさかそんなと、カイルは驚いて振り向くと、背後には幼い頃から共に育ってきた友しか見当たらない。
「フィリア。暗殺者なんていないよ。彼は私の友の侯爵家のヴェイルだよ」
「初めまして。フィリア嬢。ヴェイル・バートだ。暗殺とはひどいな。」
最初からオウジサマの隣にいて、空気のように気配消して服の中に毒ナイフ、針を隠している人間は暗殺者以外のなんでもないですね。
シャドウを消してから、フィリアの瞳は銀色だった。白魔法が発動されれば、闇の魔力を探知できる。目の前にいるオウジサマ友人は闇魔力プンプンだ。
「……しかたないですね。オウジサマ。先ずは白魔法をレンタルしてあげる。曇った目を覚ましてくださいね」
心の中で呪文を唱えると、私の身体から、銀色の珠が産まれてきた。
「さあ、受け取りなさい。ゆけ!光よ!」
珠は一直線に飛び、オウジを包んだ。
そしてふたたび目を開けてオウジが見たモノは白く輝く少女と、全身まがまがしい闇に飲まれそうな竹馬の友だった。
「ヴェイル、おまえ、ホントに竹馬の友のヴェイルか?内面性も真っ黒じゃないか。暗殺者以前に、7歳でどーしてそこまで黒くなれるんだ?」
竹馬の友とか、オウジサマ、見た目に反して古いのですね、そしてオブラートを知らないのね(おまえもな)とフィリアは思っていた。