4話10年前パート3 あ、そーいえば、私、王子の名前と顔を存じ上げません❗
(今まで魔法使っていて魔力切れになったことはないわ。私の身体、小さいのに、不思議だわ)
普通の5歳の魔力はせいぜい30分もてばよい方だ。魔力切れにならない私はおかしいと、当時の小さな脳ミソでも理解していた。
が、気にしてはいなかった。よくわからないけどむしろ便利だわー、と思っていた。
2時間シャドウを発動したまま城をウロウロしていてようやく私は気がついた。
「そーいえば、私は王子サマの名前もお顔も知らないです。その辺の人に聞こうかしら」
おそらく小さな子どもにメクジラをたてないのは庭師だ。花の世話は大変だから、子どもの世話なんてゾウサモないわね。だから、庭師にでも聞こうかと、目に入ったお城のガーデンに向かった。季節関係なく色とりどりに咲く花は、王宮にいる貴族の魔力によるものだ。
美しい花に目を奪われていたせいか、前に立つ人物にドンッと、ぶつかった。
「おっと、よそ見しないで。危ないよ。ちゃんと前を見て歩いてくれるかな?お嬢さん」
穏やかな声が降ってきて、ようやく私はよそ見していたことに気がついた。
ぶつかった私を支えてくれた人に謝ろうと顔を上げると、肩より少し短い美しいピンクの花のような髪色と、澄んだ淡い海、マリンブルーの瞳の女の子が困ったように首を傾けて私に尋ねた。
「で、君は迷子?」
時々カタカナは、フィリアが意味を理解せずに使う言葉です。