15話 ユーリとフィリア
ユーリは、黒髪のフィリアとは違い、明るい金髪で緑色の瞳を持つ少女だ。
二人は同じ年だが、ユーリは毎日店にでているからか、しっかり者に見える。町の高等学園には身分関係なく通えるそうで、彼女は経営学を学び、このお店を継ぐらしい。
将来はかなりのやり手経営者になりたいそうだが、きっと叶えるだろう。食事を共にしながら、もう1人の少女、フィリアに目を向ける。
彼女はユーリの話を熱心に聞いている。今日は聞き役に回るつもりなのか、相づちをうちながらユーリと俺に愛らしい笑顔を向けてくる。
町長に嗅ぎ回るなと釘をさされたが、俺の興味は目の前の少女に向いている。
フィリア。恐らく強い魔力を持ち、多様な魔法を使える貴族令嬢。本来は高等学園に行くはずだが、何故かたった1人でギルドの借家を買い上げた。借家に施された魔術は複雑なもので、宮廷魔術師が使うものに似ている。
さて、彼女はナニから逃げてきたのか、興味をそそる。見た目も黒髪に、緑の目だが、本来はどのような色合いなのか、見てみたい。
……恋はしない。そう言う彼女の瞳の奥には誰かがいる。ソレから逃げてきたのか、と思った。俺は、彼女の魔力に興味を抱くが、それ以上はない。ただ、逃げてきたなら、助けてやろう。ギルドの先輩として、人として。それ以上はなにも、ない。
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「アスラ様、フィリアちゃん。明日は二人でギルド登録するの?」
「ああ。彼女はギルドの登録の仕方など、分からないからな。……俺も今は暇だから、ついていく予定だ。町長から世話人として任命されているからな。今日はユーリとフィリアが友達になれば良いと思って連れてきた」
「そっかー。友達になれて良かった。ね、フィリアちゃん、町の高等学園に通ってみない?学費はあんまりかからないし」
「ああ、そういえば町長が、生活に慣れたらと進めていたな」
アスラが頷くと、フィリアはうつむいた。
もしも、家族やあの人が来たら、その時にすぐに去らなければならない。あまり、思い出や大切なものを作ると、つらくなるのは自分。今はただ、ゆっくり生活するだけでよいと思っていた。
「あ、ごめんね。無理にとかじゃないから。一緒に学園行けたら楽しそーだと思ったのよ。顔をあげて、ご飯たべよ?」
「申し訳ありません。……困らせちゃいましたね。ゆっくり落ち着いてから、考えます。でも、夕方にはユーリさん、お店にいるなら、毎日でも会いに来ていいですか?私は料理できないんで、当分こちらで夜は食べたいです」
「もち。いつでも歓迎するわよ~」
見ず知らずの初対面の相手に、素敵な人物だと思いました。
――この町の人たちは、みんなあったかいです。このあたたかみは、今まで知らなかった。
ライラお姉さまや父様に暴言ばかり吐かれたからか、ここに来てから満たされてばかりです。明日からのギルド登録、仕事がとっても楽しみです。
お会計を済ませて、風魔法で飛んで帰ることを伝えると、二人は驚きながら手を振って見送ってくれました。明日はギルドの前でアスラ様と待ち合わせ。早く帰って眠りましょう。
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「……アスラ様。ライザルの王子様。あの子のこと、可愛い後輩として面倒を見ていくつもりですか?」
フィリアが飛びさった空を見上げてユーリは傍らの男に問いかけた。
きちんとした挨拶、食事のマナー。貴族の令嬢らしい所作。加えて高い魔力。フィリアは知らないだろうが、風魔法で空を飛べるのは高位貴族だけだ。ユーリは軽々使うフィリアを心配していた。傍らの男に利用されないか心配だ。
じっと私を見つめると。アスラはやれやれと手を上げた。
「……今は、可愛い後輩として面倒をみる」
「側にいると、好きになるかもよ?王子様」
「まさか。フィリアも恋はしないって言ってたしな。俺は落とし種は作らない主義だ。今に出会う生涯一人だけを骨の髄まで愛し尽くす」
ユーリは(それがフィリアだって可能性もあるけどね)と思ったが言わなかった。
「あの子、この町に1人で来たなら、わけありね」
「……ああ、わけありだ。とてつもなく面倒な匂いがする」
「助けてあげてね」
アスラが苦笑いをした。
「もちろん。料理以外はな」




