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孝徳天皇 壱
孝徳天皇、
初め軽皇子と稱し
皇極天皇の母弟なり。
皇極帝の四年、六月十四年庚戌、
爾を天皇に授けて、
阼を踐ましむ。
天皇、
古人大兄皇子に譲る。
皇子、
固辞し、法興寺に入りて僧となる。
是に於いて、
天皇、壇に升りて位に卽く。
是を天萬豊日天皇となす。
是の日、
皇極帝を尊びて皇祖母尊と曰ひ、
中大兄皇子を立てゝ
皇太子となす。
始て左右大臣及び内臣を置き、
阿部臣倉梯麻呂を以て左大臣となし
曽我倉山田臣石川麻呂を右大臣となし、
中臣連鎌足を内臣となして、
大錦冠を授け、
高向漢人弦理・僧妟
を以て國博士となす。
十五日辛亥、
金策を左右大臣に賜う。
※大錦は、当時日本で用いられた冠位である。13階中7番目で、小紫の下、小錦の上に位置する。