願望と現実
初投稿、初小説です。
ですので読みづらい部分もあると思いますがよろしくお願いします。
「いやぁ~君たちのお陰で町の皆が軽傷ですんだよ~!」
そう僕たちに話しかけるのはこの町の警察官だった。本来なら、状況の聞き取り、現場の回復を行わないといけないのだが本部の人が応援に来てくれたということで僕たちはパトカーに乗って歩いてきた道のりを戻っている。
大きな音というのは、車がスリップを起こし山に衝突、その衝撃で山崩れが起きた物だった。周辺には山菜を採っている人や虫取りをしている小学生がいたため、本来なら考えたくもないほどの被害が出ていたそうだ。
しかし、春香はいち早く山崩れの前触れを察知し周りの人に危険を知らせたのだという。どこでそんな知識を仕入れてくるのか是非教えて欲しいものだ。春香は助手席で僕たちは後部座席に座っているので春香の顔を伺うことは出来ないがきっと鼻を伸ばしているに違いない。いつもなら「調子に乗っちゃダメだよ」と咎める僕も今回の働きでは何も言うことはない。
「着いたよ~先生も心配してるんじゃない?」
警察官は施設の玄関で立っている崎島先生を見つけてそう言った。崎島先生は滅多なことで誰かを心配するような人間ではないことを僕たちは知っている。愛想笑いを警察官に向けて浮かべてから、お礼の言葉を述べた。そして、先生と礼をしながらそのパトカーが去るのを見届けて、一度部屋に戻った。
この後には楽しい食事が待っているが正直、食欲がわかない。直前にあんな事故があったからという理由ではない。僕は割と精神的な面で強い方だと自負している。春香に付き合わされて鍛えられているからだ。もちろん、まったく気にしないわけではない。しかし、怪我人がいないと言う事であれば気にするだけ無駄だと思うようになっていた。僕には土砂崩れを修復する力はないし、それは専門の職業の人に任せておいた方が上手くいくという考えからだ。僕は進んでボランティアをするよりは気まぐれで参加するタイプの人間なのだろう。
さて、僕が食欲がわかない理由。それは、春香がまったく料理ができないということからだ。いくら知識、才覚を持とうとも、苦手なものを与えてくれるのは神様も凡人の僕達に慈悲の心があったというところか。
おそらくこの恐怖が一週間続く。
それを考えると恐ろしい日々が始まるのだと改めて感じるのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
嬉しいです。
また是非よろしくお願いいたします。
次回は明日(11日)の午前五時を予定しております。