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僕の答えをいつまでも  作者: 星野詩乃
第1章「林間学校にて」 
7/41

僕の背中は誰がみる

初投稿、初小説です!

ですので読みづらい部分もあると思いますが読んでいただけると嬉しいです。

 ざわざわ


 木々の葉が擦れる音。セミの鳴く声。木漏れ日。僕たちは春香の独断で山の麓の左から歩いていく。歩きながら気づくのは、今までの道のりでこの場所が最も涼しく感じたということだった。道は舗装されている、というわけではなく簡単に木を切り倒して慣らした土の道。車は通るほどの幅であった。


 しかし、落ち着いた自然の音をかき消す轟音が道の先から聞こえてきたことに強制的に気づかされた。


ドォォォォォン!!!


 激しい音。何かと何かがぶつかる大きな音。

 どこに隠れていたのか鳥たちも数羽が森からバサバサと飛び立つ。



「この音は……」



 僕はすぐに事故ではないかと考えた。


 誰かが怪我をしているかもしれない!

 早くいかなきゃ!!

  

 僕達は涼太を先頭にその音の元へと駆け出す。


「待って! みんな!」


「どうしたんだよ! この音はただ事じゃない! 誰か怪我してるかもしれないだろ! 俺たちが行かないと! 春香!!」


 涼太が緊迫感のある表情と声で訴える。僕は面倒なことに巻き込まれたくはない。しかし、人命がかかっているとすれば別だ。僕はそこまで人間を辞めたわけじゃない。


「土地勘の無い私たちが向かってもどうするの!? 危険が増すだけよ! ……戻って近所の人に知らせたほうが!」


「もちろん俺はどういう状況か知らない。……だけど行けば救えるかも知れないだろ!」


 少しの沈黙が流れる。一瞬ではあったが、僕自身、時間を無駄にしている暇はないと考えた瞬間


「私が行くから……私が行くから皆は近所の人に知らせて!」


「もしかして僕たちのことを心配し――」


「はやく!!」

 

 春香の鬼気迫る顔は今まで見たことがなかった。こんなに必死な春香は初めて見た。


「いや、僕も行くよ」


「いいから行きなさい!」


 幼馴染だからこそ分かる気持ち。そして彼女への信頼から僕は出来るだけ感情を抑えて答えを伝える。


「わかったよ」


 春香の声が背中を叩いたかの様に僕たちは今来た道のりを戻る。

 

 しかし何なんだ一体。春香が滅茶苦茶なのはいつもだがこんなに怒ることなんてあったか?僕は走りながら振り返る。春香は横目で僕たちのことを見送っていた。ただ、普段の彼女からは想像もできない不気味さで口角を少し上げていた。



 ・・・気がする。


 いや、春香も今の状況で鼓動の高まりによって息が上がっていたのだろう。そんなことを一瞬でも信じたくなかった僕は、とにかく前へ進むことにした。


 その様子を見届ける春香。彼女も音の方へと走り出す。


 僕たちがお互いの存在よりも与えられた目標を達成する気持ちが高くなった頃。


ゴォォォゥゥン!

 

 と大きな音また鳴り響いた。


 しかし、僕はもう振り返らない。もちろん引き返して、春香を追いかけようかとは考えた。


 ただあの表情を思い出すと、僕はまた背中を押された気がしたのだった。


読んでいただきありがとうございました。

嬉しいです。


また是非よろしくお願いいたします!

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