平たい人生
初投稿、初小説です。
ですので読みづらい部分もあると思いますがよろしくお願いします。
僕は暗がりの山の中を歩いていた。少し坂になった小道で周りは腰より少し低いくらいの草で覆われていた。もちろん木が生えそろっていて、視界が良いとは言い切れない。そういった道を僕達4人はずっとずっと歩いていた。肝試し。とは名ばかりで蓋を開けてみると先生たちが用意したビックリ装置ばかりだった。
昨日に使った釣り竿に糸を通し、針の先にこんにゃくをさしたり、どこかで買ってきたのか人工火の玉が燃えているのが見えた。パチパチと音を立てていたので、花火の類なのだろう。
春香は「なんだこんなものか」と言わんばかりの顔でぐんぐんと目的地へ向かっていく。もう少し先生の気持ちを考えてあげればいいのに。僕は今日の朝5時だったかに崎島先生に会っている。先生は欠伸をしながら僕と会話し、この肝試しの用意をしにいったのだ。ということは他の先生たちはもっと朝早くから作業していたに違いない。少しも驚いてあげないのはなんだか申し訳ないではないか。
「――ヒャッッ」
現に彩ちゃんは素晴らしい反応を見せている。僕達より先、後に出発したグループも絶叫コースターに乗るまでとはいかないが良い声が聞こえてくる。笑い声も聞こえないことは無いが……。なんにせよ春香はホンモノとやらにしか興味がないらしい。
涼太はこんなとき、一番に騒ぎそうなイメージだったが存外、こういった類の物は苦手らしく静かに春香の背中の影に隠れている。まだ幼い子どもが母親に守ってもらっているかのようだ。そのおかげで彩ちゃんは僕の方についてきている。役得。役得。
さて、僕たちに与えられた任務はこの先にある神社でお参りして帰ってくるという簡単なものだけだった。このままだと本当に行ったかどうかわからないので先生がチェックポイント役としてハンコを押してくれるらしい。夏休みのラジオ体操ではないんだから、そこも何か工夫すればいいのに、とは思ったが朝の先生をみているので、その考えは消え失せた。
「あ~! もう! なにか面白いものはでないのかしら!」
「おいおい……。大きい声出すなよ……。」
春香の憂さを晴らす声量に、涼太は肩をビクッと1つ大きく上下させた。完全にいつもとは違い女々しさすらも感じさせる声だった。
――
僕たちはそれからも何もなく、ただただ歩き続け、やがて神社の本殿が見えてきた。伝統的な神社建築だった。僕は専門家ではないので詳細な特徴はわからないがとにかく古い。それだけは確信をもって言えた。
「崎島先生じゃない!」
お~来たか来たか、とショッピングについてきたお父さんが結局、車で待機していた時のような顔をして言った。怖かっただろう? と尋ねられた。
「それはとても口では言い表せません……」
僕は春香が答える前に答えた。本来なら春香がものすごい速さで否定的なコメントすると予想していた僕は、質問と答えを何パターンか考え準備していたのだ。恐る恐る彼女の横顔を伺う。
「優、怖がりだったかしら……」
彼女は妙に冗談が通じないところがある。それは、今はかまわない。
「それよりスタンプ押してください」
「ああ、そうだった」
春香が変な気を起こさないうちに帰りたい僕は、いの一番に押してもらう。
全員押してもらった後、僕たちは約束事のように神妙な顔をしてお参りを済ませたのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
貴重なお時間を割いていただきうれしいです!
また次回、是非よろしくお願いいたします!