記憶の中の自分
赤山和馬が、なぜ、友人たちから目を背けるのか。
理由は新人戦にあった。
不幸な少年が回想するあの日の断片をご覧ください。
「かーずまっ!!」
「ん?……あぁ、蘭か」
「なによ、もぅ」
そういって、頬を膨らまし、横に並ぶのは高山蘭。
(なんで…ここに…)
「蘭、お前、部活は…?」
「んー?今も部活してるよ」
「はぁ?お前、バリバリ下校してるじゃん」
「退部しかけのバスケ部員を勧誘に参りました!!…イタッ」
ふざけた敬礼をしているバカに拳骨を入れて、溜め息をつく。
(はぁ…。どいつもこいつも迷惑な)
(俺だって好きで止めたんじゃ、ない)
高校、新人戦、関東支部大会決勝戦。
バスケの試合は8分4ピリオドで行う。
俺はエースガードとして、背番号11をつけ、コートに立っていた。
「1本!」
(一真…ハイポスト!!)
フリースローラインの端辺りのハイポストに中学からの親友を立たせ、鋭いパスをいれる。
そのまま彼は振り向いてシュートを決めた。
途端に、会場が沸く。
(よっしゃ!行けるッ!)
「よぉし!ディーフェンス!!」
「オッス!」
キャプテンの声に返事をして、マークマンへ向かって走り出す。
(あれ…?)
ぐにゃりと曲がる視界。
遠くなって消える聴覚。
ふわっとした一瞬の浮遊感。
その日、俺、赤山和馬は急性肺炎で緊急手術をし、同時に発覚した悪性のガンの摘出手術のため、入院。
肺を患った為に、呼吸器が弱り、体力も落ち、強豪校でバスケをすることは、不可能になった。