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第十五話 再生とリスタート

 二人は警察署で改めて取り調べをされた。

「よし! じゃあお前らの話は分かったから、帰宅していいぞ!」

「よっしゃ!」

「は、はい! ありがとうございました」

「と言ってもな……お前らの保護者に引き取ってもらおうと思って連絡したんだが……どっちも、出張やら 深夜(ヨル)勤務やらで、すぐに、来れる状況じゃないらしい……」

「え、じゃあオレたち親が来るまで帰れないのか?」

「えー!」

 二人は残念そうな顔で言った。

「いや、そういうわけじゃないから安心しろ」

「俺が送りますから!」

 若い刑事がひょこと髭面の刑事の後ろから顔を出した。

「マジか!」

「え! いいんですか⁉」

「うん! もちろんだよ!」


 二人は若い刑事が運転する、行きに乗ってきたグレーの車の後部部座席に乗り込んだ。

「じゃあ気をつけて帰れよ」

 髭面の刑事がパトカーのドアによりかかりながら言った。

「はい! ありがとうございました! ほら、昼間(ヒルマ)くんも!」

 (ヨル)は奥に座っていた昼間(ヒルマ)にお礼を言うよう(うなが)した。

「サ、サンキュな」

「いや、全然……礼を言われることはしてねぇよ。むしろお前のほうがすげぇよ、体張ってダチを助けるなんて、そうそうできることじゃない」

「……別に……当たり前のことだし……」

 昼間(ヒルマ)は髭面の刑事から顔をそらした。

「ははっ! 素直じゃねぇな! まぁ今度なにかあったらケンカする前にすぐ呼べよ!」

「は、はい! お世話になりました!」

「おう」

 髭面(ひげづら)の刑事はバタンッと車の扉を閉めた。

 二人を乗せたグレーの車はエンジン音を車内に響かせ、ヘッドライトを点灯させたのち発進し、警察署を後にした。


 しばらく二人を乗せた車がしばらく走っていると、月見川の河川敷にさしかかった。

 その時、(ヨル)が車窓から外を眺めた。

 (ヨル)の瞳に映ったのは、(ヨル)空の下、点々と明かりが灯っている住宅街だった。

 (ヨル)はおもむろにスマホを手に取って見てみた。

 するとスマホのデジタル時計には《20:00》と表示されていた。

「わっ! もう八時⁉」

 (ヨル)が驚いて声をあげた。

「……? まだ、そんな時間なのか? オレにとっては今からがゴールデンタイムなのによ……もう帰っちまうのか……」

 昼間(ヒルマ)は少し、しょげた様子で言った。

「もう、そんなこと言っちゃって……普段も、早く帰りなよ? 昼間(ヒルマ)くんがいくら強いからって、事故とか起きるかもしれないし……それに(よる)は暗くて危ないよ?」

「ん? お前は危険性の欠けらもないだろ? む・し・ろー……」

 そう言って昼間(ヒルマ)(ヨル)の鼻に自分の人差し指を伸ばした。

「オレ、お前といるの、結構好きだぜ」

そう言って昼間(ヒルマ)は自分の右手の人差し指で、つんつんと(ヨル)の鼻をつついた。

「ん?」

 (ヨル)の頭に一瞬はてなが浮かんだ。

「あっ! 違う‼ 僕のことじゃない‼」

「あはは! 冗談だって!」

 昼間(ヒルマ)は無邪気に笑った。

「もーからかわないでよ……」

 (ヨル)は呆れた眼差しを昼間(ヒルマ)に向けた。

「〝んッ〝んん……お二人さんこっちの道であっているんだよね?」

 若い刑事が二人の空気感に耐えられなくなり道を確認するフリをした。

「は、はい! 大丈夫です!」

「ちぇ……」

 昼間(ヒルマ)は、いいところだったのに……と言いたげな様子でそっぽを向いた。

「……」

 (ヨル)はまた車窓の外に見える景色に目をやった。

(でも、まさかあの占いが当たるとは思っていなかったな……)

 あの占いとは(ヨル)が先日、久しぶりにタロットカードで自分を占っていたことである。


 二日前、(ヨル)は危機感を覚えていた。

(……僕は本当にこのままでいいのだろうか……クラスには友達と呼べる人も一人もいない……毎日ボッチ飯……このまま行くと、孤独死⁇)

(ヨル)は思わず未来の自分の死体にハエがたかっている姿を想像した。

「はぁ」

(ヨル)はため息をついた。

(……)

 (ヨル)は無意識にタロットカードをスクールバッグから取り出した。

(……もういっそのこと自分を占ってみようかな……タロットカードなら当たる確率も割と高い……)

占いなんてせずも、ただ自分から人に話しかければよいことなんて(ヨル)は分かっていたがどうしても、占いに手を出してしまう自分がいた。

「よし……!」

 (ヨル)はカードをよく切ったあとに「スリーカード」と呼ばれるタロットカード占いの一種を実践した。

「スリーカード」とは名前の通り三枚のカードを表に返して並べるやり方であり、それぞれ左から〝過去〟〝現在〟〝未来〟を表している。

(ヨル)がまず初めに〝過去〟として引いたカードは『背を向けたおっさん』のカード、もとい「ワンド3」というカードの逆位置であった。意味は「コミュニケーションの問題 不安定な状況 熱を失う」である。

 補足で、タロットカードは、カードの絵が自分の方に向いていれば正位置、絵が逆さまの場合は逆位置という。逆位置の場合はたいていネガティブな意味合いを持つ。

 次に現在を表すカードを(ヨル)が引いたとき、(ヨル)は顔を思わずしかめた。

 なぜなら、引いたカードは……『人が落ちている』カード、もとい「塔」の正位置だったからだ。

 意味は、「災い」である。そして最後に引いたカード。それは……「死神」の正位置であった。

 

 意味は大きく二つ「終わり」と「始まり」である。


 そもそもタロットカードでの「死」というものは、あくまで比喩表現であり「変容・変化」という意味合いがある。

 つまりここでの意味合いは「自分にとって大きな転機が来る」という暗示である。


(多分、今が大きなターニングポイントだったのだろう……もし昼間(ヒルマ)くんと関わっていなかったら、僕はずっと一人で……自分のことを認めてくれる人なんてこの先、一生巡り合えなかっただろう……。ははっ……出会えて……よかったな……)

 (ヨル)の心は晴れ、おのずと笑みが浮かんでいた。

 死神には他に、「再生・新たなスタート」という意味合いも持つ。

 これは(ヨル)が占いに対して自信を取り戻すということを暗示していたのかもしれない。

 しかし――本当にそれだけなのだろうか。

 今回の出来事は本当にこれで終わりなのだろうか。

 もしかしたら、この二人の出会いはこれから起こる波乱の始まりに過ぎないの……かもしれない。

「あ! それにしても、今日は月がきれいだね」

 (ヨル)は車窓の外に見える満月を指さした。昼間(ヒルマ)(ヨル)側の車窓に視線をやった。

「あぁ、そう……だな………」

 昼間(ヒルマ)は頬杖をつきながら穏やかに笑って言った。

 二人はパトカーに揺られ、どこまでも続くような雲一つない消炭(けしずみ)(いろ)の空にポツンと浮かぶ満月を横目に見ながら帰路についた。


〝ピ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ブツンッ〟


「え、なんか警察来てんじゃん」

 高架橋の上から、河川敷の道路に溜まっていたパトカーを見物していた人影が不思議そうに呟いた。

(あれ……長田(オサダ)?)

 その人影が目を凝らして見てみるとそこには、パトカーの中に入っていく長田(オサダ)たちの姿があった。

「え、待って待って、アイツら捕まった感じ? えーマジかー じゃあ他の奴らも? うわ他の奴らもじゃん!」

 その人影はパトカーにぞろぞろと入っていく不良たちを目の当たりにし、独り言が止まらなかった。

 その間に数台のパトカーや救急車もろとも一斉に河川敷からはけて行った。

(灰原君のことが心配で様子を見に来たけど……もしかして無事な感じなのかな? 分からんけどー……)

「なんだ……無事なんだ……」

 その人影は、「はぁ」と息をついた。

「あぁあー‼ 残念だなー‼」

 女の声が河川敷の闇に響きわたった。

「灰原君が、しっかり、リンチされてるか心配でわざわざ来たのに、何で、アイツらは仲良く全員で警察のお世話になっているわけ⁉ アイツらマジで使えない‼ バカ‼」

 女はむしゃくしゃと頭をかいた。

(はぁ~、アイツらなら、灰原君をイイ感じボコってくれると思ったのになぁ~、ホント人間って扱いづらいわ。いや、灰原君のタロットカードを机からパクって、アイツらに呼び出されるところまでは何もかもうまく行っていたのに‼ まさか……灰原君も人狼? いやそんな訳ないか……それか……別の人間が乱入した? いや、どうだろー……)

「はぁー」

 女は深いため息をついた。

「まぁ~しょうがないな~! 占い師の存在はなんにせよ危険だし、できたら次の手を考えるとしますか~」

 女はぐーっと体を伸ばした。

「はぁ! 今日も授業中たくさん寝たから気分がいいな~♡‼」


 第一章 「完」

 次の章ではでは可愛い(?)子がでてくるかも!

 お楽しみに!

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