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落ちた勇者たちの贖罪録  作者: 一ノ瀬咲
レオナール編
2/7

scene2 沈む太陽

 剣を振るう。だが、腕は重く、刃は鈍い。

 目の前の相手——ギルドの新人冒険者は、軽々とレオナールの剣を受け流した。


「……っ、くそ……!」


 バランスを崩したレオナールに、相手の剣が容赦なく迫る。


「終わりだ」


 寸前で止められた刃。ギルドの訓練場に沈黙が走る。


「……また負けたのか」


 レオナールは膝をついた。

 かつて「勇者」と呼ばれた男の姿は、そこにはなかった。


 ***


 ギルドの酒場。

 薄暗い照明の下、レオナールは一杯の酒を前にしていた。


「おい、またあの落ちぶれ勇者が飲んでるぜ」


「もうEランクだろ? すっかり俺たちの仲間だな」


 周囲の冒険者たちの嘲笑が、耳に突き刺さる。


 ——勇者の称号を剥奪され、仲間も失い、実力も衰えた男。


 それが今のレオナールだった。


「……クソが……」


 酒を煽る。苦い液体が喉を焼くが、心の空虚さは埋まらない。


 (なぜ、俺だけがこんな目に……)


 ユークを追放した日から、すべてが狂い始めた。

 だが、それを認めることはできなかった。


「俺は……間違ってない……」


 自分に言い聞かせるように呟く。

 だが、その言葉は驚くほど軽かった。


 ***


 夜の王都をふらつく足取りで歩く。


「お前がいないと、俺たちは……」


 かつての言葉が脳裏に蘇る。

 ユークにすがりつこうとした、情けない自分。


 ——そんな姿を、彼は冷たく見下ろしていた。


「……チクショウ……!」


 拳を壁に叩きつける。

 その時、暗がりから声がした。


「ふふ……落ちぶれたな、元勇者」


「……誰だ?」


 黒いローブの男が、静かに佇んでいた。


「お前は……」


「お前に、力をやろう」


 ローブの男は、淡々と言った。


「力……?」


「お前が求めるものは、それだろう?」


 レオナールの心が、揺れる。


 (力が……あれば……)


 ——俺は、再び立ち上がれるのか?


 ローブの男は、ゆっくりと手を差し出した。


「お前が選ぶのだ。沈むか——蘇るか」


 レオナールは、その手をじっと見つめた——。


読んでいただきありがとうごさいます!

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